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【レビュー】『野狗子: Slitterhead』をクリアした後の正直な感想…

2024年11月17日
レビュー 1

野狗子SS

個人的に超絶期待していた新作に斬り込む。




『野狗子: Slitterhead』とは?

野狗子SS


PS4、PS5、XBOXseriesS/X、PC向けに2024年11月8日発売。

カルト的人気を誇るホラーゲーム「サイレントヒル」「SIREN」を手掛けたクリエイター、外山圭一郎氏を中心に立ち上げられたBokeh Game Studio(ボーカゲームスタジオ)が送り出す、注目の第一作目となるタイトル。

公式の記載によるとジャンルはアクションアドベンチャー。実際にサイレントヒルやSIRENなどこれまでのホラーゲームとはプレイ感が異なり、本作はバトルやアクション要素を前面に押し出したシステムとなっている。



前置き

野狗子SS


筆者はPS5版を発売日に購入し、難易度「ノーマル」でプレイ開始。

そして先日、約20時間掛けて本編をクリアできた。

ちなみに「本作をメチャクチャ楽しんでプレイ」していたことが前回の記事に記録されているので、筆者の狂喜っぷりについてはこちらを参照して欲しい↓


【感想】SIRENクリエイターが手掛ける『野狗子: Slitterhead』がおもしろ過ぎたので語りたい

【感想】SIRENクリエイターが手掛ける『野狗子: Slitterhead』がおもしろ過ぎたので語りたい

長年待っていた甲斐があった。...


つまり個人的な好きの度合いで言えば本作は既に「最高のゲーム」なわけだが、美点汚点それぞれに容赦なく斬り込んでこそレビューというもの。

クリア後にまた一段階深く見えてきた本作の正体について、今回も忖度無しで書き殴っていきたい。

シナリオに関する具体的なネタバレを避けつつ、なるべく抽象度を上げて語っていくので未プレイ勢でもご安心。多分…。



良かったところ

野狗子SS


独自性の高いゲームシステム


本作の特徴的なシステムである「憑依」を使った移動や戦闘は、序盤からすぐにゲームとして没入させてくる要素でありながら、実に20時間にも渡って最後まで飽きずに楽しませてくれた。

それだけ触り心地が良く、演出にも拘わって作られていた証だろう。一言でいえば、洗練されまくっていた。

筆者は既にゲームをクリアして収集要素もコンプリートした段階だが、このシステムに少しも飽きていないどころか、"まだまだ使い足りない"という渇望さえ覚えている。


人間から人間へと「憑依」で伝ってハイスピードで移動したり、戦闘で敵の背後に居る「通行人」に憑依して奇襲を仕掛けるなど、本作のプレイ感は唯一無二の次元にある。ついでに一般人を高所から落下させてショートカットしたり、血液爆弾として利用したり、現実ではまずあり得ない背徳感も「ゲームならでは」であり好印象。

芸術としての「独創性」を持ちながら、ゲームとしての触り心地も洗練されているシステムなので、まさに神懸り。

世には「可愛い女の子が出てくるから…」という理由だけでゲームを購入する層が居る。となれば本作も「憑依が味わいたいから…」という理由だけで購入されるべきだ。



キャラクターデザイン


主要な人間キャラクター達を始め、本作の象徴でもあるクリーチャー「野狗子」にまで至って本作のキャラクターデザインは個性的で魅力に溢れている。

人間キャラクターについては少女に始まってホームレスから老婆まで登場する多様っぷりでありながら、昨今の作品にありがちな「ポリコレに媚びた結果、違和感が出ている」ということが全く無い。多様性の見本としても評価されて欲しいほどだ。

デザインはもちろん、それぞれ内面的にもキャラが濃く、どのキャラも一度知れば印象に残るものに仕上がっている。キャラクター同士の掛け合いにも癖があり、お互いの個性が衝突し合う。よって話にリアリティが出ている。



戦闘が面白い


戦闘が終始楽しかった。

人間キャラ、野狗子(クリーチャー)共にモーションがカッコよく、適度に重みを感じさせるものになっている。ヒット感も鈍くズシンと響くタイプで良い感じ。その上でモーションブラー(残像が見えるエフェクト)が掛かっているので、戦闘画面にAAA級タイトルにも遜色ない高級感を見た。

難易度ノーマルでプレイした限り、本作の難易度は平均的なアクションゲームよりも若干高めといった印象。「憑依」や「ディフレクト(弾き)」を活かして戦って丁度良いバランスとなっており、一般的なゲームのような「脳死でボタン連打」が通用しなくなっている。

また敵の一撃が重く、血が飛び散ったり腕が切断されてしまう被ダメージ演出も含めて、戦闘では最後まで手に汗握る緊張感を味わえた。

進むに連れて敵側も回避、ガード、特殊能力を駆使してくる為、戦略的な駆け引きが楽しめる点も良かった。個人的にはフロムソフトウェアの『ブラッドボーン』をプレイしている時の感覚にも近いなとも。



BGMが神


個性派かつ良曲揃いで文句無し。

他のゲームでは聴いたことがない雰囲気のBGMが多く、新鮮さも楽しめた。



雰囲気がカッコよすぎる


キャラクターの精神と向き合うかのような「TALK(拠点で仲間と会話できるシステム)」の画面演出と言い、血液を武器にして戦い、血だまりを吸って回復するシステムと言い、それぞれのSEと言い、サイトジャックで相手の視界を盗撮して追跡する展開といい、黒ヘルメットのライダーが刀で怪物狩りをする絵面と言い、「野狗子」が正体を現すときのおぞましさと言い、とにかく本作はあらゆる要素がオシャレでカッコイイゲームだった。最高過ぎる。



背景がもはや狂気の域


本当に頭がおかしい(誉め言葉)

現実世界の「九龍城」同様、本作の舞台では建物同士が継ぎ接ぎされた奇怪な景観が再現されており、更にちょっとした小物やシナリオ上訪れることのない室内にまで至って「ちょっと待て、ここまでやるか!?」という程に作り込まれている。

壁の汚れや、何故か膨大な種類がある張り紙にまで徹底した拘りが見られ、あまりにも作り込んでしまったせいで単なる視覚情報を超えて「空気」とか「匂い」といったものまで生じてしまっているのだ。一体なんてことをしてくれたんだ…。

そしてそもそも本作はグラフィック自体がかなり綺麗な部類のゲーム。そのせいもあって、テレビゲームというかもはや美術品の領域にまで来てしまっている。そっち方面に興味がある人間ならば、ただ何もせずフィールドを見て回っているだけでも楽しめてしまうことだろう。

正直、定価で買ってもこの要素だけでお釣りが返ってくる思っている。



悪かったところ

野狗子SS


音声の不足


本作は所謂フルボイスの作品とは違い、キャラクターが音声で話すのはストーリー中でも特に重要なムービーシーンのみであり、その他の部分は全て旧ゼルダシリーズのような「短い嘆声+テキスト」で賄われる。

開発の規模からして予算上の都合があっただろうことは察しが付くし、こうした形式が取られたこと自体に一切異論は無い。むしろこの手の「部分ボイス」のような作品は好きなので個人的に嬉しかったくらいだ。


ただ、本作の場合はここに明確な問題点を抱えている。

それは「部分ボイスのパターンの少なさ」に起因するものだ。例えば某キャラクターを例に挙げるならば、部分ボイスが英語音声の「ライト」と「オールライト」程度しか用意されていない為、「常に同意し続けている人間」のようになってしまっている。当然テキスト内容まで常に「同意」なんてことがあるわけないので、テキストとボイスの不一致という演出上の違和感が生じてしまっているわけだ。

どのキャラもだいたいボイスパターンが少ないため、残念ながらゲーム中のほとんどの場合でこの違和感が出てしまっている。もし、この部分ボイスがもう少し数が用意されており、常に状況に対して適切なものが再生されていれば、この作品の価値はもう一段階高まっていたことだろう。



失速気味なシナリオ


序盤に登場するセリフや、収集要素のテキストからは「登場人物たちの悲願に満ちた、壮大なシナリオ」を想起させられており、実際のストーリー展開にも気迫があったことからどこまで行くかと期待させられていたが、結局は思ったよりもだいぶこじんまりと纏まってしまった印象。

スタッフロールを迎えても結局「謎」のまま深掘りされなかった要素が多々あるので、本作は広げた風呂敷を畳めなかった感がややある。この読後感は「連載打ち切り作品」を読んだ時の名残惜しさにもちょっと似ている。

雰囲気も良いしセリフの質も高いのだが、予算の都合上削りに削らざるを得なかったということなのだろうか。『SIREN』の盛り上がりには及ばないので、ストーリーにはあまり期待せずに手に取るのが良いと思う。



受動的なゲームプレイ


本作には「プレイヤーが自力でマップを探索してシナリオを進める」場面が少なく、ほとんどの場合は「インフォメーション通りの位置に移動してイベントや戦闘を行う」という極めて受動的な展開となっている。

外山圭一郎氏が手掛ける『SIREN』でもゲーム開始と共に明確な「目標」が表示されるシステムになっていたが、その方法や手段は全てプレイヤーの探索と行動に委ねられており、それによって常に「プレイヤーによる能動的なゲームプレイ」が確保されていた。

対して本作は指示やアドバイスに"やり過ぎ感"があり、ただ指示に沿うだけで解決できる場合がほとんどなので頭を使う余地がない。良く言えば「ストーリー主導型で迷わないゲーム」。ここがゲーマーとしては非常に窮屈に感じられる点だった。「もっとプレイヤーを投げ出して、絶望させて欲しかった」というのが率直な意見となる。



リプレイ性の欠如


本作は斬新なシステムとセンス抜群のビジュアルを誇っていることに対して、リプレイ性という面でかなり古臭いゲームだと言わざるを得ない。

「スタッフロールを見た後はやることが無くなる」、「なのでクリアしたら即売る」というのが昔のゲームの在り方だったが、時代が進むに連れてアクションゲームであってもRPGに倣ったやり込み要素搭載したり、クリア後に大型のエンドコンテンツが解禁されたり、オンライン対戦へ誘導したりと、何かしら繰り返し遊び続けられる工夫がなされていった。今では「クリア後からが本番」という扱いをされるゲームも珍しくない程だ。

一方で本作にはエンドコンテンツややり込み要素といったものが特に存在せず、クリア後は「難易度を上げてストーリーをもう一周する」くらいしか遊び続ける手立てがない。しかも要素を引き継いでの二周目(所謂強くてニューゲーム)ですらなく、新規にセーブデータを作成する必要があるという不親切っぷりだ。展開の変化や引継ぎ要素があるならばまだしも、一度見たストーリーをもう新規でもう一周するという選択肢はほとんどのプレイヤーにとって魅力には映らないだろう。つまり本作は、「クリア後はやることが無い」という問題に容易に陥るようになっている。

一応「キャラクターの育成要素」が存在しているが、あっさりカンストするオマケ程度のものなので育成ゲームとして遊ぶことも不可能だ。根幹となるシステムやバトルが面白いだけに、このリプレイ性の低さは惜しくてならない。



総評

ブログ運営ネタ 総評


75点/100点満点中

判定→「令和の奇ゲー。粗削りだが、ゲーマーには是非手に取って欲しい情熱的な作品」


かつて「視界ジャック」や異質なセンスでゲーマー達を震撼させた『SIREN』クリエイターの最新作は今回も強烈なキワモノだった。

「LSD」や「BAROQUE」など奇ゲーが続々登場していたかの"PS初期"を彷彿させる奇抜なゲームデザインをしており、一度プレイすれば二度と忘れられなくなる魔性の作品。

ジャンルに「アクションアドベンチャー」とある通り追跡アクションとバトルがメインの超戦闘脳ゲームであり、『SIREN』とは打って変わってステルスやホラーはほんのオマケに過ぎない点は要注意。


個人的に本作の雰囲気が悉くドストライクなこともあり、出来れば当ブログ初の「100点満点」を出したいところだったが、アクションアドベンチャーゲームとして精査した場合、残念ながら避けては語れない粗も見付かってしまった。それでもなお他人に勧めたくなってしまう、異常な拘りと情熱を帯びたゲームである。

開発陣の狂気と情熱に感銘を受けて、今後もこの『野狗子』とボーカゲームスタジオを推し続けることを胸に誓う筆者であった。

奇ゲー愛好家に「野狗子を買わない」という選択肢などない。



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DLC展開や新作にも期待しています…!!











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隔離コ
書いた人: 隔離コ
ゲームを遊ぶことに生き甲斐を見出しているらしい自称硬派ゲーマー。
その実態は腕前も遊ぶ本数もそこそこでしかない量産型のミドルゲーマーである。
実は自分でゲームを語るよりも、他人が熱く語るのを鑑賞する方が好き。
ただいまPS5、ニンテンドースイッチに絶賛ハマり中。

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名も無きコアゲーマー

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2024/11/27 (Wed) 17:41