2020.06.09
プールの中でも熱中症に注意
名張市教育委員会事務局 市民スポーツ室
■ 2018年 猛暑でのプール利用中止
名張市では、例年、夏期において、体育施設指定管理者の管理の元、市民プールの営業を行っています。(午前・午後2部制(完全入替))
昨年(2018年)の夏は、全国的に厳しい暑さが続きました。名張市内も猛暑に見舞われ、プールの気温や水温が異常に高く、危険な状態にあったことから、指定管理者より、「利用を中止した方が良いのではないか」との相談がありました。
公共的な施設については、可能な限り市民の利用に供するべきだという考え方もあると思います。しかし、市民スポーツ室としては、利用者の安全を最優先と考え、状況に応じて利用の可否を判断することとしました。
コンクリートの照り返し等もあって、プールサイドは、気象台等の観測所で測る気温に比べて、ずっと暑くなります。プールサイドで実際に測った気温と水温を足した数値を暫定的な目安として、市と指定管理者とが随時、協議を行い、2018年においては9回利用を中止しました。(全て午後)
■ プール利用中止基準の策定
2018年の事例を踏まえ、本年も猛暑となることが予想されたので、市と指定管理者とが連携して、プール利用中止基準の策定に向けた情報収集を行い、独自に利用中止基準を策定しました。
利用中止基準の策定にあたっては、学校の授業でプールを利用する際の、気温や水温が低い場合の中止基準に加えて、環境省が熱中症予防情報サイトで公開している「運動に関する指針」を参考に、新たに高温時の中止基準を追加しました。
熱中症予防のため、プールの利用を中止する基準としては、WBGT(暑さ指数)31℃以上になった場合と定めました。WBGTというのは、気温、湿度、輻射熱(地面や建物・体から出る熱)の3つから計算される温度の指標です。
2018年の時点で、名張市内のすべての小学校において、WBGT測定器を導入しており、WBGT(暑さ指数)31℃以上になった場合は、プールの利用を中止していました。この小学校での活用事例も参考に、2019年からは、専用のWBGT測定装置を購入してプールサイドに設置し、利用中止基準に従って、プールを運用しています。
結局、2019年の夏は、10回にわたって、利用を中止せざるを得ませんでした。中止は2018年同様、いずれも午後の半日です。気温上昇とともに、水温も高温で推移した7月31日から最終日の8月17日までを見ると、午前午後ともに営業できたのは、4日間だけでした。
■ 利用者の反応
利用期間中は、毎日、利用開始時刻の1時間前に気温等の計測を行います。午前の利用は9時からなので、8時に計測し、午後の利用は13時30分からなので、12時30分に計測します。
計測結果が、中止基準に合致した場合、プールの利用は中止になります。市民スポーツ室としては、利用者の安全を第一と考えています。中止基準に合致した後で、改めて中止するか否かを協議するというようなプロセスはありません。
指定管理者は、市民スポーツ室へ中止基準に合致した旨の連絡を入れるとともに、市政記者クラブへ資料提供を行い、ホームページで市民に利用中止を周知します。
ただし、プールの利用中止3日目で、記者クラブから「資料提供はもういらない」と言われたため、その後は、資料提供を取りやめました。
2018年は手探りの対応で、中止基準が明確でなかったため、一部の利用者からは、よそのプールは公開しているのに、名張市はなぜ利用できないのかという意見もありました。今年(2019年)は、利用者から苦情等はなく、理解を示す声がほとんどでした。プールサイドで気温等を測定している様子を、実際に利用者が見ていることも影響していると思います。
■ 気候変動影響の現状と将来リスク
気候の変化について、2017年までは特に実感はなかったのですが、2018年と2019年の暑さについては、気候が以前とは違ってきていると強く感じています。プールサイドの気温が42℃に達する日もありました。今までに経験したことのない高温です。また、体調不良になるスタッフも出てきました。これが、プールの利用中止を検討するきっかけにもなっています。
一般に、プールに入っていれば熱中症にならないと思われていますが、暑すぎると体に熱がこもります。対策としては体を冷やすことが有効です。市民プールには日陰が少ないので、テントを増やしています。50分ごとに10分間の休憩を設けていますが、休憩時には「気温が上昇しているので、水分補給をしましょう」という放送も流しています。しかし、一番重要なのは、利用者自身が熱中症の危険性を意識することだと思います。
利用中止基準はうまく機能したと思っていますが、これが万全ではありません。参考となりそうな情報を調べて作ったのが、現在の基準です。
温暖化がこのまま進行した場合、プールの安全な利用への影響は大きいと思います。引き続き、国や県、他の自治体等の取組も参考にしながら、安全で快適な施設運営を目指して行きたいと考えています。