思い出の宿 その4
2018年に香港旅行に行ったのですが、このときカミさんの予約した宿にはぶっとびました。そうチョンキンマンション。まるで在りし日の九龍城砦のような雑居ビル。
「シャチョウサン、シムカードアルヨ! 」
「ニセモノトケイアルヨ! 」
と、入り口でいきなり中東系の人々に囲まれます。
地階、1階、2階はアメ横をもっとハードにした感じのフロアで、よくわからない商店が連なっております。もうブレードランナー状態。
めちゃくちゃわかりにくいエレベーターをやっと見つけ、へとへとになってゲストハウスへと向かうも、窓ひとつない二畳ほどのスペースのワンルームでした。いや、カプセルというのか、おもいっきり引いてもこの写真です。
「すまんが、宿、変えられる? 」
私はカミさんにそう言ってしまったくらいに面食らったものです。
「えっ? なんかあかんかった? 」
「なんかって・・・」
宿くらいちょっとリラックスしたいものですよね。贅沢は言いませんが、さすがにバックパッカー的な宿を泊まるには心の準備がいるものです。でも、カミさんはわりと寝られれば宿はどうでもいいタイプで、むしろこのような雰囲気は、幼いころ育ったサウジアラビアやクウェートを思い出し、居心地がよかったらしいです。
結局は滞在中ずっとここが拠点になりました。案外慣れるとそこそこ安らげるようになるから不思議なものです。まさに修行の成果ですね。タトゥーをした強面の人々も、エレベーターの中でおばあさんの荷物をもってあげたりと、案外いいやつが多い。
最終日にビル内のパキスタン系の料理店で昼食をいただいたのですが、めちゃくちゃうまかった。そして、このような宿でも、去るときにはすこし寂しい気分になったものです。
あとになって知ったのですが、ここはウォン・カーウァイの「恋する惑星」の舞台にもなったビルだったようです。