思い出の宿 その3
2015年に家族でバリ島に行ったのですが、ウブドのジュンジュンガンというホテルはテラスから見渡す田園風景が美しかった。そして、早朝から声をあげて鳥を追いはらう農婦さんの姿は印象的でした。
「働くってたいへんなことだよなあ」
としみじみ思ったものです。
そうそう。私は長く働いていた仕事が終わり、新しい仕事に就くタイミングだったので、そのような気分だったのかもしれません。そして、娘も高校を卒業、カミさんもアルバイトを辞め、我が家族の再出発といった雰囲気の中の旅だったので、よけいに心に残っております。
宿で借りた自転車で、街まで買い出しに行くのも楽しかった。野良犬に追いかけられ、坂をのぼって買ってきた、バナナの葉につつまれたナシチャンプル、ぬるくなったビンタンビールはうまかった。
海外の人はこういう場所でリラックスするのがとても上手ですよね。ホテルのあちこちで自分のペースで読書していたり、ゆったりとワイングラスを傾けている人たちを見かけました。
しかし、我が家の女子たちは、
「もったいないからプール入らんなん! 」
と、むりに泳ぎまくって、ゼイゼイ言っておりましたが。
「ウェルカムフラワーがだんだん枯れていくのが寂しかった」
とカミさんが言っておりました。そう、つかの間の旅でもそれが色濃いと、現実へと戻ることが苦しくなってしまうものですよね。