稲穂の上の仕事
都会で暮らしているきみ。
きみはきっと想像しているに違いない。
どこまでも透明な秋空の下。
♪今年は豊作やにか~
えんや~、そうやちゃ~
どっこいしょ~
そんな、民謡を歌いながら、村中総出で稲を刈る景色。都会の喧騒をわすれて鎌をふるうきみ。
ひと汗をかいてひとやすみ。大家族、古民家の縁側で食べる大きなスイカ。
「ほら、この冷えたとこ、食べられ」
ミヨちゃんはきみに言うだろう。
「おやおや、このっさんのスイカだけずいぶんでかいのう」
「もう、おとうさん、なに言うとるが」
「ほれ、顔が赤くなとっるにか」
「知らんちゃ」
ぷいとそっぽを向くミヨちゃんの横顔に、きみはときめきを覚えるに違いない。そして、
(田舎暮らしも悪くないな)
きっときみはそう思うだろう。
しかし、実際の稲刈りは、男2人かせいぜい3人の仕事です。
(ぶい~ん)
「店チョー、軽トラ、そっちに移動させて! 」
「はい」
「おい、向きが違うよ! 」
「は、すんません」
(ざ~)
「はい、乾燥機に入れてきて! 」
「は」
(ぶ~ん)
「行ってきました」
「軽トラこっちに移動させて」
「はい」
「だから、向きが違うって! 」
「は、すんません」
そんな繰り返しです。
そう。現実とはそんなもの。だからはやまってはいけない。ここで暮らすことについて、もう少しよく考えたまえ。
そして、稲刈り手伝いの昼休憩。きみは、濱田ファームの近く、ラーメン店「やまや」へ行くことになるだろう。クリンリネス、サービス、味わい、すべて裏切らない、いや、裏切られたというのか、安定のハード系。
そして、むりやり看板に追加された「大喜」の文字に、
(そうか。ここが有名な『大喜』のブラックラーメンだったんだ)
きっと、きみはそう思うに違いない。
2020.09.16 | Comments(0) | Trackback(0) | 日記