糸魚川(その2)
何故だかその頃私は見すぼらしくて美しいものに強くひきつけられたのを覚えている。風景にしても壊れかかった街だとか、その街にしてもよそよそしい表通りよりもどこか親しみのある、汚い洗濯物が干してあったりがらくたが転がしてあったりむさくるしい部屋が覗いていたりする裏通りが好きであった。雨や風が蝕ばんでやがて土に帰ってしまう、と言ったような趣きのある街で、土塀が崩れていたり家並が傾きかかっていたり。
市内を散歩していると、まさに、梶井基次郎、檸檬状態ですね。
自身、分析してみると、どうもノスタルジーということよりも、「朽ちていく」「なじんでいく」「同化していく」ということに、何かしらの興味があるような気がします。ある意味力学的な情緒とでも言うのか。カミさんは大好きな古道具屋へ入るも、僕自身はそれほど古道具そのものに興味がなく、むしろ古道具が染み付いたような風景が好きなのです。
カミさんがなかなか店から出てこないので、僕は海を見渡せる展望台にのぼってみました。なぜか虹のようなデザイン。
Somewhere over the rainbow
虹の彼方のどこかで
Bluebirds fly over the rainbow
虹を越えて青い鳥が飛んでいる
Why then oh why can't I ?
あたしにも行けるはずでしょう?
If happy little bluebirds fly
もしも幸せの青い小鳥たちが
Beyond the rainbow
虹の向こうに飛んでいけるなら
Why oh why can't I ?
あたしにも行けるはずでしょう?
帰り、焼山温泉「清風館」に寄りました。湯の花が舞うここの温泉は素晴らしい!
温度の調整なし、源泉そのままという、少しぬるめの一角があり、雪をながめながら、そこで僕はすっかりうとうとしてしまいました。
家に戻り、戦利品、加賀の井。
ぐい飲みでひとくち。あっというまに僕は、不思議なオズ王国へと旅立ちます。
2016.01.29 | Comments(0) | Trackback(0) | 休日