国道148号線に出て、松川を渡ります。
いいのか、悪いのか、こうやって山々の緑にきりとられたようなスキー場のコースが見える景色が、このあたりの風情になっておりますね。
そして白馬駅付近に到着し、今回のセッションは終了。
そうそう、小谷村を過ぎたあたりから、辻々にこの道祖神の石碑がやたらと目につくようになりました。なんでも村々に災厄が入ってこないよう祈念して建てられた守り神のようなものらしいですね。ですので、迷いやすい旧道を見分けるのにはいい目印になっております。
こういう信仰の場は、長い年月をかけて人々が念を込める場所なので、なにかしら神秘的な雰囲気を僕は感じます。
今回の出発地点千国駅まで大糸線で戻り、駅の近くに「いっちゃ」という居酒屋があったのでそこで昼ごはん。久しぶりに唐揚げ定食。お新香、粗目の豆腐、お味噌汁などの副菜がなんとなくこのあたりの風情を感じさせます。それほど遠くありませんが、案外、富山のナンバープレートが珍しいようで、
「なかなか、帰ってこなくてねえ」
と、女将さんは富山で暮らしているという息子さんについてぼやいておりました。
帰り際、小谷村の猫鼻の湯へ。
少し昼寝をしてからお風呂に入ろうと河原に車を止めると。お風呂番のお姉さんが出てきて、
「あなたお風呂に入る人?」
「はい」
「じゃあ500円」
財布から500円を渡すと。
「入って左ね。お湯と水、適当にひねって加減してね。あたし草花の写真撮ってくるから・・・」
そして、小屋に入ると、ごらんのようなワイルド系温泉。姫川も眺望でき、野趣にあふれてなかなかいい感じ。お湯はどう見てもかけ流し、ちょっと鉄っぽい感じの泉質でした。
「いやあ、いいなあ。こんなとこで暮らしたらどんなもんかなあ」
と、またもや現実逃避的な空想が僕の頭をかすめます。ですが、こういう思想がいけないのかなあなどとも思う今日この頃。
小屋も手作り感が素晴らしい。
お風呂から出て車に乗り込むと、ちょうどお姉さんはカメラを片手に戻ってきたところで、いい写真が撮れたのか、満足そうな顔で、またきてねと手を振ってくれました。
2017.09.29
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白馬村へと入る手前の辻に前山百体観音群。よく見てみるとどの石像も表情豊かで見ごたえがあります。サージェント・ペパーズのジャケット状態。
ペンションというのか、ロッジというのか、栂池高原の宿泊施設の名前がずらり。世界観を絞り出したような独特なネーミングが微笑ましいですね。まるでアマチュアバンド、ライブのタイムテーブルのよう。
途中から山道になにかテープが括ってあるのを見かけたのですが、どうも前日、バイクなのか、走りなのか、トレイル大会的な催しがあったようで、そのコースの目印のようでした。せっかくなので、しばらくそのルートを歩きます。微妙に塩の道から外れ、電気柵などをおっかなびっくり越えることになりましたが。
このあたりで、朽ちかけている、へんに立派な跨道橋のようなものを見かけたのですが、これはいったい何だったのだろうか。失われていく構造物の強度と、それに反比例して繁茂する植物の力強さが僕の心をくすぐります。
そして、古風に案山子を設置してある田んぼもよく見かけました。これの場合カラスより人間に効果がありそうですね。70年代にマネキンが動いちゃう的なホラーがけっこうありましたが、そんな雰囲気がします。
2017.09.27
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さて、今回のセッションは前回足を痛めて断念した千国~白馬間です。実は前日うっかり飲み過ぎてしまって二日酔い気味だったのですが、早朝に千国駅をスタート。
道すがらに千国口留番所がありました。
役人「まだまだ営業前じゃ、そこで待っておれ」
僕「いや、すんません。時間がないんで・・・」
役人「なんだと! おのれ、関所破りか! 」
僕「・・・ちょっと、道あけてくださいよ」
役人「曲者め! 叩き切ってやる! ふふふ。だがな、小判かおなごを差し出せば話は別じゃ! 」
僕「うわ、ストレートな賄賂の要求だな」
町人「助太刀いたそう」
僕「えっ、あなたどなた?」
町人「いや、名乗るほどももんじゃございやせん。ただの町人でさ。ただ、このあと桜吹雪の入れ墨が見えちゃうかもしれませんが・・・」
僕「なんだよ、遠山の金さんかよ」
と江戸時代だったらそんな騒ぎになっていたところですね。
旧家の多いこのあたりの集落では、祭事らしく「奉献」と記された提灯が各軒先にさがっておりました。
親坂は石畳になって、沢もあり、いかにも古道らしくいい感じ。ただこのあたり、ちょっと涼しくなってきたせいか、やたらと藪蚊が多く難儀しました。
信濃らしく、蕎麦畑も多い。咲き始めのようで、白く可憐な花などもずいぶん目につきました。
栂池高原スキー場を横目に、なだらかな道が続きます。
2017.09.25
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秋がやってくるころ、なにか空気が急に冷たく乾いて、いぶしたようなにおいがしますよね。
太陽の光線もキラキラと輝きはじめます。
食欲も出てきて、カレーライスのようなメニューもじっくり時間をかけて作りたくなりますね。
そんな季節になると、僕はなぜか、例えばキーホルダーの金属だとか、ベルトの皮だとか、ほころびたジーンズだとか、そのような使い古されたものがへんに懐かしくなったりします。
こんな季節にやってくる手紙や絵葉書も、とてもうれしい。
きっと、秋になると、暑さで恍惚としてしまいがちな夏に比べて、感受性も少し鋭敏になるのだと思います。
そう。谷内六郎の絵はいいですよね。日常や季節の中に、プリミティブな幻想を重ねる独特の感覚が僕は好きです。
2017.09.22
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知らなかったのですが宇奈月の五叉路、火事にあったようですね。ひさしぶりに行ってみると「よか楼」という店名に変わって、店内が少しリニューアルされておりました。でも、メニューはほとんど変わっておりませんでしたので、おなじみの辛味噌ラーメンを所望。もう、歳のせいか辛さを処理する能力も弱り、夕方にはトイレに行ったり来たり、非常につらい思いをするのはわかっているのですが、好きなんですよね辛い系。そして、ゴクゴクと汁まで飲んでしまったことは、どうかカミさんに内緒にしておいてください。
そして、その日はそのまま「とちの湯」へ。ここは景色を楽しむのにはベストな温泉ですね。しかも平日早い時間だったので貸し切り状態。ときどき遠くでカタコトとトロッコ電車の走り去る音も聞こえ、しばらくのあいだ、ぼんやりとその情緒を楽しみました。
また、別の日ですが、飲み会で知り合ったIさんと酔ったいきおいでライブをご一緒することになり、その打ち合わせで上市へ。ひるどきに到着したので、山本屋という食堂でラーメンを所望。ひさしぶりにこのようなスタンダードなラーメンを食べたような気がします。この店は定食から麺類など幅広く、地元の方でにぎわっていたので、おそらくメニューにハズレがないような気がします。でも、「ウチはこれだ」みたいなメニューがあればもっといいように僕は思いました。
そして、それでも時間があったので、大岩不動の湯へ。ここはこじんまりと綺麗な温泉で、なかなか落ち着きます。
ついでに大岩不動にもお参りしたのですが、素麺で有名な門前街の旅館も、いくつか「閉店のお知らせ」が貼ってあるのが目につきました。かつて栄えていただろう、風情のあるこの参道は好きなのですが、残念ですね。この世の無常を感じます。
生死事大 無常迅速
ですので、僕のようにラーメンを喰らって、温泉につかってのほほんとしておりますとあっというまに、くだばってしまうことでしょう。限りある人生、有意義な時間を過ごすよう心がけいただくことをおすすめします。
2017.09.20
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今年も黒部市国際文化センターにておこなわれたチャリティーイベント「24時間ぶっとおしライヴ」にオールスターズとして参加させていただきました。オープニングとエンディングを飾るこのバンド。みなさま技術とモチベーションが高いので、ここで演奏させていただくのは、自分にとって「腕を磨く」場のようになっております。いや、というよりも、一生懸命背伸びして、やっと仲間に混ぜてもらっているというほうが正しいようですね。
さて、当日は出番から出番の間が約22時間ほどあるので、「チャリティー」イコール「走っちゃう」みたいなイメージも手伝って、僕はその間、海辺を無駄に走ってみました。
この日はちょっと不思議なことがありました。ある河口付近の地点から5kmほど走って折り返し、そこへと戻ってみたのですが、ゴール近くになると、ご年配が車を砂地にスタックさせてしまっており難儀していたので、押したり、持ち上げたり、砂を掘ったりと、僕はその手助けに骨を折っておりました。そのあいだ河口付近ではヘリコプターやら救急隊などが、なにやら訓練らしきことをしている様子が見えております。ジャッキを使ってやっと車を救出して、その河口付近に戻ると、さっきキャンプをしていた家族を見かけたテントが青いビニールシートで目隠しされており、救急車や、野次馬で騒然としております。そう、訓練ではなく、水難事故が本当にあったようなのでした。
でも、翌日の新聞になにも載っていなかったようなので大事には至らなかったようですね。僕がちょっとした人助けをしていたら、その先で、レスキュー隊が本当に人名救助をしていたという話です。
そして夕方近くにステージへ戻る僕。
ちょうどその時、
新しいお仕事にチャレンジしたばかりAちゃんも見かけ、イベントの進行を地元高校生と初々しくこなしているところを拝見しました。
無事演奏も楽しく終えることができました。
僕は90年代以降のロックは「どうせ過去の焼き直しなんじゃね」みたいな思い込みがあり、ほとんど知らないのですが、課題曲、レディオヘッドというバンドの「クリープ」という曲を演奏してみたら、これがまたすさまじくシンプルでカッコいい曲でした。とくに、耐え切れず、崩壊していくような、エモーショナルなギターの間合いがすばらしい。
もうこのイベントも20年を迎えるらしいですね。手弁当で参加され、昼夜問わず、がんばっている皆様には本当に頭が下がる思いです。
後日、運営委員会の場で、
「これからはハンデのある方がいっしょにステージで参加するということが、こういう趣旨のイベントの方向性なのではないか」
というある方の意見を聞いて、なるほどとも思いました。いまどきは「なにかしてあげなければ」ということではないのですね。同じ場所に立つということが大事なのかもしれません。
2017.09.18
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「だ~」
おい~、牛乳こぼすなよ。みたいな。
「ロ~ボコン。0点! 」
ガンツ先生?
「ワレワレハキカイテイコクヲ~」
「ちくしょう! そうはさせないぞ! 」
(ピコ~~~)
「うわ~! 」
人類に歯向かう系のロボット。
「ごめん。つい踏んづけちゃって・・・」
「ええんやで、気にすな。それよりあんた、そそっかしいねんな~」
「えへへ」
「こいつ~。あはは」
気は優しくて力持ちなタイプ。
「それから二人で顏を見合わせて腹の底からこみ上げて来るような笑い声を出したかと思うと、一しょに立ち上がって、厨を駆け出して逃げた。」
これは寒山拾得の図ですね。
2017.09.15
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お盆明けころ、濱田ファームにて開催された「夏だよ!BBQするよ!!流しそうめんもやっちゃうよ!!!」という集いに参加してまいりました。濱田家は交友関係が幅広く、集まる人たちがなかなか面白い。こうやっていきなりドローンを飛ばしちゃう方がいたり。
朝採ってきたアワビを豪快に調理しちゃう方がいたり。
そして流す方も、待つ方も、全身全霊で流れていく素麺に向き合います。
いろいろな立場の人が、こうやって集まれる場はなかなか貴重ですね。1960年代後半、ヒッピーたちは自らがドロップアウトすることによって平等や愛、平和を訴えましたが、高度に情報化された現在においては、ありきたりの日常や価値を共有することによって、国家や階級、貧富の垣根を越えることができます。理不尽な圧政に苦しむ彼の国も、情報の力で国民が目覚め、変革が訪れたら良いのですが。どんな国の国民にも、少なくとも人権はもたらされるようになるべきだと僕は思います。
まあ、能書きはともかく、みなさんと、駆け回る子供たちを眺め、お酒や食べ物を楽しみ、グダグダと過ごす一日はなかなか楽しかった。夜の部ではみなさん楽器を持ち寄り、濱田ファーム代表ともまる氏はこんな歌なども歌っておりました。
2017.09.13
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知らない街を歩くのは楽しいですね。
ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているのだ――という錯覚を起こそうと努める。
という梶井基次郎「檸檬」の一節が僕にはわかるような気がします。記憶やら、空想やらとその風景を「二重写し」にして歩いていると、どんどん現実から遠くなっていくような感覚になります。
車窓からの景色も好きで、電車に乗ると僕はじっと外をみている時間が多いです。
電車から見える風景って、どちらかというと裏庭的な場所が多いですよね。その死角のようなスペースが実に興味深く、流れていくそれらを眺めていると、あっという間に時間が過ぎていきます。
何もない景色をただぼんやり眺めているのもいいですね。
たまにはスーパーで買った安いコロッケをかじり、発泡酒を飲みながらそんな景色を鑑賞します。
この日、海はひどく汚かったのですが、台風がすぎたあとの、洗われたような雰囲気は僕はすきです。
2017.09.11
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そして、東京タワーから下駄をカラコロと鳴らしつつ、ひるどきにビヤホールライオン銀座七丁目店へ。
親父は所謂「銀ブラ」が好きで、僕が幼いころ、スエヒロやら、インド料理店(デリーだったのかな)などに連れていってもらいましたが、中でもよくライオンにはよく連れていってもらいました。親父は食事などにはほとんど手を付けず、ジョッキのビールを静かに飲んでいたものです。そう、この日、ちょうど、そのような親子連れを見かけ、なんだか二重写しのように見えました。
「故人について、思い出話などをすることが供養なのです」
と、以前法事のときにご住職がおしゃっていたのを思い出し、しばらく親父を偲びながら、美味しいビールをいただきました。
そうそう、国内最古のビヤホールと言われているだけあって、なかなか内装の雰囲気も趣があって飽きません。
太宰治の「禁酒の心」という、戦時下、ビヤホールに群がる人々を滑稽に語る随筆があるのですが、そのビヤホールはここだろうと僕は睨んでおります。そう、後にルパンでの有名な写真があるくらいですので、銀座あたりはけっこう飲み歩いていたことでしょう。きっと、太宰もここで頬杖をついてビールなどをたしなんでいたに違いないと僕は想像しながら飲んでおりました。
最後にジンでしめるのが本場流みたいなことがメニューに書いてあったので、うっかりストレートのジンまでたのんでしまいました。もう気持ちは深夜モードです。
薄暗いビヤホールから出ると、午後の陽ざしがまぶしい。
「え~。まだ昼なのか」
みたいな。
2017.09.08
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