僕はひとりでおうちごはんのときはフライパンのままいただくパターンが多いです。藤子不二雄作品の小池さん、または「男おいどん」のような、四畳半的な気分に浸れます。
焼うどんって乱暴さかげんがいいですよね。えっ、うどんなのに焼いちゃうの? みたいな。焼きそばは屋台という、ある意味ありがちなイメージがありますが、僕にとって、焼うどんは場末のスナックの昼ごはんというようなイメージがあります。煙草やアルコールのすえた臭い。カウンターの中、ガラガラ声のママさんが無愛想に作ったというような。
ママ「ほら、できたよ」
ボク「はっ、ありがとうございます」
ママ「ところで、あんた、今晩1万円でどう」
ボク「えっ、・・・いやいいです」
ママ「なによ、あたしを値切らないでよ」
ボク「・・・いやほんとうに」
ママ「じゃあ、×××を△△△で5千円! 」
ボク「かっ、かんべんしてください」
ママ「もう◇◇◇で3千円! 」
ボク「ひぃ~! 」
とか。これは、僕がまだウブなヤングのときに、ある街角で聞いたセリフですが、真昼間から、そんなえげつない話をするたくましい方が、この世の中にはいるものです。
ラーメンも袋めんのほうがやさぐれた気分にさせられますが、あえてスープを自家製で作って、生めんを別に茹でてほおりこみました。そして、ニンニクとニラをめちゃくちゃ入れます。もう、意識が高いのか低いのかよくわかりません。
僕はフライパンでそのまま出す食堂を出店できないものかという野望があります。
客席はカウンターのみ、メニューはありません。客が来たら僕がこのような料理を適当に作ります。そして、ドンとフライパンのまま料理を置くだけ。
客「すみません、おひやもらえますか」
僕「ないね」
客「・・・はい」
そう、その店では僕が法律です。
行儀が悪かったり、食べ残しをすると、それがおあいそに反映されます。
僕「はい、五千円」
客「えっ! そんなに! 」
僕「なにか文句ある? 」
客「あっ、ありません。・・・はい」
僕「おい、なんか忘れてるよ」
客「おつりですか?」
僕「消費税だよ。ウチじゃ、アベがなんて言おうが今日から10%! はい500円!」
なんて。
そんな商売をしてみたいものです。
どうですか。こんな素晴らしい構想に共感するだれか、僕に出資しませんか?
2016.06.03
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僕「へい、らっしゃい。今日はおひやあるよ」
客「えっ、そうなんすか。ありがとうございます。じゃください」
僕「はい、千円」
客「えっ! お金とるんすか! じゃあ、いりませんよ」
僕「おい、だめだよ、もう入れちゃったもん。ウチのミネラルウォーターは特別なんだよね」
客「おもいっきり蛇口ひねってるの見えてますが・・・」
僕「いや、水道止められちゃってるからね。この蛇口は雨水ためたやつなんだよ」
客「・・・」
僕「はい。今日は焼きそばだよ」
客「おっ、焼きそばいいっすね」
僕「麺はあらかじめお湯でほぐして、油抜きするとうまいよな」
客「なんか、屋台の味っすね」
僕「そうそう、焼きそばは原価が安いんで、テキ屋商売にもってこいなんだよ。でもよ、あんなふうに儲けちゃいけないよ。はい、今日は2千円」
客「・・・屋台の4倍ですが」
僕「今日はおひやと、おひやのチャージ料もあわせて5千円でいいよ」
客「・・・」
僕「らっしゃい、今日もおひやあるよ」
客「・・・いや、もうこりごりですよ。おひやは」
僕「そう、今日はスパゲティだけどいいの」
客「おっ、トマトソースですね。いいっすね。今が旬の新玉ねぎとニンニクたっぷりだ。いただきま~す。うわっ、なにこれ、辛っ! 」
僕「唐辛子もめちゃくちゃ入れたから激辛なんだよね」
客「くっ、苦しい! 水! 」
僕「はい、おひや? 」
客「しまった! 罠か! ちっ、ちがいます! みっ・・・」
僕「みっ、何? 」
客「いや、みっ・・・」
僕「みっ?」
客「み・・・」
僕「み?」
客「・・・♪みつめちゃイヤ~」
僕「・・・♪ハニ~フラッシュ! 」
客・僕そろって『かわるわよ~! 』
2016.06.13
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僕「へい、らっしゃい。今日もおひやあるよ」
客「おひやはもういいっすよ。いったい、なんなんすかこれ。シリーズ化する気ですか? 」
僕「うん。最終回はきみが植物人間かなんかでさ、全部きみの妄想だったみたいな感じにしようと思ってんだよね」
客「どっかできいたような、ありがちな終わり方っすね」
僕「ほら、今日はベトナム風の麺だよ」
客「うわっ、すっぱくて、香りが強烈ですね」
僕「最近発見したんだけどさ、パクチーみたいな野菜をほとんど生でぶちこんで、ニョクマムとレモンをぶちかけたら、なんでも『ベトナム』風になるんだよね」
客「う~ん。乱暴だけど、たしかにそんな味がしますね」
僕「そう、モハメド・アリ戦のアントニオ猪木みたいな乱暴さだろ。相手がパンチできないよう寝転んでキックしちゃうみたいな・・・」
客「う~ん。まったく伝わりませんが・・・」
僕「へい、らっしゃい。今日もおひやあるよ」
客「だから、おひやはもういいっての」
僕「今日は雑炊だよ」
客「ん・・・。これはこのまえ食べたベトナム風の味に似てますね」
僕「似てるもなにも、きみがこのあいだ残したやつに、ごはんとたまごを入れただけだよ」
客「・・・」
僕「どうせ、客はきみだけだしね・・・」
客「・・・」
僕「それに、俺自信だってさ、きみの妄想にすぎないしね・・・」
客「えっ・・・!」
SE(ピー。ピー。ピー)
医者「おい、きみ、やっと目を覚ましたか」
客「・・・あっ、これが最終回なのかっ!」
2016.07.11
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僕「らっしゃい。アラン・トワイライトくん。今日もおひやあるよ」
客「だっ、誰ですかそれ」
僕「・・・誰だって? ふふふ。 ♪誰が殺したクックロビン~」
客「もう、いいからなんですか、今日の料理は」
僕「だまってエサを食え、アラン。鏡にうつってないぞ」
客「・・・だから、あんた誰」
僕「これはね、麻婆茄子を作ろうと思ったんだけれどさ、途中で疲れちゃってね、ゆでた素麺をぶちこんだんだよね」
客「またしても乱暴な料理ですね」
僕「昔の恋人シーフレイクさんを待つ窓辺のママに体当たりして突き落としちゃう、ティムくんみたいな乱暴さだろ」
客「・・・マニアックすぎて、ぜんぜん伝わりませんが」
僕「それとさ、妹が『胡瓜でかいとつくり過ぎたちゃ~。お兄さま、たべられま』っていうんでね、それも塩もみしてぶちこんじゃったよ」
客「・・・メ、メリーベルって畑やってるんですか。・・・しかも富山弁」
僕「そして、バンパネラのくせに、生のニンニク、ニラたっぷりっていう」
客「もう、なんでも、ありですね」
僕「さながら男でも女でもなれちゃうフロル・ベリチェリみたいな感じだよね」
客「・・・すいません。今回、まったくボクついていけないんですけれど」
2016.07.20
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僕「らっしゃい。ぴかぴか」
客「なっ、なにが『ぴかぴか』ですか、しかも全身黄色いかっこうで」
僕「見りゃわかるだろ、『ピカドン』だよ」
客「・・・も、もしかして『ピカチュウ』ですか? 」
僕「最近、『ポケモンヒロミGO! 』流行ってるから、商売に導入しようと思ってさ。
客「・・・ヒロミはよけいですが」
僕「『ヒロポン、ゲットだぜ!』みたいな感じで・・・」
客「・・・よく知らないならやめたほうがいいと思いますが」
僕「なに言ってんだい、ゲームウォッチのことならまかせろってんだ」
客「・・・もういいから、なんですか今日の料理は」
僕「これはね、カレーソーメンだよ。ぴかぴか」
客「ぴかぴかはもういいっすよ」
僕「失敗したのはね、鶏軟骨があったんでぶち込んだらさ、麺のツルツル感と軟骨のコリコリ感がぜんぜん合わないんだよ。ニンニン」
客「・・・ニンニンじゃねえよ」
僕「さながら、『ギンギラギン』なの? 『さりげなく』なの? いったいどっちぞな、もしかして~! 」
客「・・・あんた誰なんだよ」
僕「さ、そんなんで、今日はモンスターゲットしちゃってくれよ~! ほらあそこにチャバネゴキブリ出現! 」
客「・・・」
僕「今ならアースジェット5000円でレンタルするぜ! 」
客「・・・」
僕「・・・1000円にまけるナリ」
客「かわいこぶんなよ」
2016.08.03
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僕「・・・らっしゃい」
客「どっ、どうしたんですか。今日は目が腫れてますね」
僕「いや、きのう金曜ロードショーで『もののけ姫』みたらさ、泣けてきちゃってね」
客「うわ~、大人げないですね」
僕「黙れ小僧! お前にあの娘の不幸が癒せるのかっ! 」
客「しかも、セリフもやけに詳しい。・・・オタクっすね。もしかして、高校のころ、ナウシカが連載していたアニメージュ買ってたとか」
僕「だっ、だまれ、その喉切り裂いて、二度と無駄口叩けぬようにしてやる! 」
客「うわ~。どんだけ」
僕「おい、じゃあなんだい、てめえはどんな高校生だったんだよ」
客「僕っすか、そうっすね。柔道ばっかりやってましたよ」
僕「えっ・・・? 」
客「全国大会も武道館までいったんすけれどね・・・」
僕「えっ、・・・そっ、そうなんですか」
客「・・・急に敬語になりましたが」
僕「そっ、そんなことないでござりまする」
客「もう、へんな言葉使いはいいから、今日のメニューはなんですか? 」
僕「きょ、今日はですね、素麺でナポリタンを作ってみました」
客「えっ、素麺でですか? 」
僕「もっ、申訳ございません! パスタを切らしておりまして、代用したのですがっ! 差し出がましいことをいたしましたっ! ひらに~! 」
客「いいっすよ。あっ、意外とうまいっすね」
僕「なっ、なにをおっしゃいますか、滅相もございません、身に余る光栄でございます」
客「・・・あんた誰?」
僕「お肩おもみいたしましょうか? それとも、へっへっ、だんな、芸者でも・・・」
客「・・・」
僕「あっ、もしかして! 代官様! あたしをそのような目で見られてはいやでございますぅ~」
客「うるせえよ」
2016.08.17
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僕「♪わか~れ~るこ~とは、つらい~けど~。しかたが~ないんだ~きみのため~」
客「どっ、どうしたんですか。ポケットに手をつっこんで、小指たてて歌ってますが・・・」
僕「あっ、なんだよ! 入るときはノックしろよな! 」
客「ノックしなければいけない店って・・・」
僕「今度さ、町内の若者たちとカラオケに行くから、練習してたんだよ」
客「その歌、ちょっと古くないすか」
僕「えっ、そうか? ヤング向けだと思ったんだが」
客「だめだめ、もっと、ノリのいい曲のほうがいいっすよ」
僕「よっ、よし。わかった、これならどうだ。 ♪さっらっばラバウルよ~ また来るまでは~ しっばっしわかれの~ 涙がにじむ~」
客「・・・カラオケ。絶対行かないほうがいいと思いますよ」
僕「なんだと、このガキャ! じゃあてめえだったらなに歌うっつうんだよ! 」
客「えっ、僕すか、僕だったら、こんなのかな・・・。♪ジャスライカ、ボ~! ベイブ! ベイベべイベイベ~! チェチェ! ・・・チュエン~~ン!!! 」
僕「なっ、なんでございますか。それは? 」
客「・・・また、急に敬語になりましたが。ジャニス・ジョップリンっすよ」
僕「てっ、敵性語の歌。・・・非国民」
客「あんた、いつの人間なだよ。もう、いいから、今日のメニューはなんですか? 」
僕「今日はですね、明星一平ちゃんをフライパンで作ってみました」
客「えっ、カップ焼きそばをわざわざフライパンで? 」
僕「はい、お湯を沸かすのさえ面倒なのでそのまま水に麺を入れて、火をかけて作ってみました。なにか不都合でも・・・」
客「うわ。さすがにこれはひどいっすね。ありえない。もう。ちょっとどいてください。ボクが今日は作ります」
僕「・・・はい」
客「・・・ほら、しかたないから、冷蔵庫にあるもので鮭チャーハンを作ってみましたよ」
僕「どれ、ひとくち。うわ~、口の中でとけちゃう~! 」
客「・・・」
僕「ごま油と鮭とお野菜のハーモニー! 絶品ですね! もう、肩もんじゃおうかな~」
客「やっ、やめてください、気持ち悪い! 」
僕「そんなこといわないで、ほら 」
客「あっ・・・」
僕「・・・」
客「・・・」
僕「きみって、・・・」
客「・・・は」
僕「なで肩なんだね・・・」
客「・・・はい」
(つづく)
2016.09.05
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