【Dolby Atmos/DTS:X】イマーシブシアターが完成して思うこと【オブジェクトベース・オーディオ】 - Audio Renaissance

【Dolby Atmos/DTS:X】イマーシブシアターが完成して思うこと【オブジェクトベース・オーディオ】

【オブジェクトベース・オーディオ】イマーシブシアターへの道【Dolby Atmos/DTS:X】 Dolby AtmosやDTS:Xが採用するオブジェクトベース・オーディオは没頭そのものを意味する「イマーシブオーディオ」とも呼ばれ、...

 Dolby AtmosやDTS:Xといったオブジェクトベースオーディオ規格。
 トップスピーカーも含めた複数のスピーカーに「オブジェクト」として音をマッピングし、上方向まで含めた完璧な定位感・移動感・包囲感を実現する。

 理屈はわかる。
 現に私も非常に非常に非常に期待し、夢を膨らませた。
 で、天井にスピーカーを取り付けるなんて狂気の沙汰までやらかしたのである。
 

 一通りいろんなソフトを聴いて、結果としてわかった重要度は、

トップスピーカー<越えられない壁<サラウンド&サラウンドバックスピーカー<越えられない壁<フロント&センタースピーカー

 である。
 

 そして、サラウンドを構成する定位感・移動感・包囲感の実現で重要なのは、

トップスピーカーの有無<越えられない壁<スピーカーの厳密なセッティング

 である。
 

 駄目押しに、最終的に再生される音のクオリティを考えれば、

雑にスピーカーを配置してAVアンプの音場補正に頼った、単にオブジェクトオーディオを再生できるというだけのシステム<<<途方もなく巨大な壁<<<機材とセッティングを真剣に突き詰めたチャンネルベースのシステム

 である。
 どっかで似たような話があったな。
 

 つまり、今までと何も変わっていない
 

 オブジェクトオーディオは魔法などではない
 オブジェクトベースであることは、それを収録するパッケージソフトの音質やそれを再生可能なシステムの音質を担保するものではない。
 チャンネルベース(DTS-HD Master Audio 5.1ch)の『プライベート・ライアン』の音を凌駕するタイトルがいったいどれだけあるというのか。
 

 サラウンド音響という体験を味わいたければ、今までと同じようにAVアンプを買ってきて、まずはその辺に転がっているスピーカーをとりあえず後ろに2本置いてみればいい。たったそれだけで、「後ろから音が聴こえる! すげえ!!」という最も重要にして決定的な瞬間が訪れる。

 その後は、気合を入れたフロント2chスピーカーを使って、フロントスピーカーを買い替えたなら以前のスピーカーをサラウンドに回して、余裕があればセンタースピーカーも導入して、住環境と相談しつつ可能な限り理想的なセッティングを目指していけばいい。

 「オブジェクトオーディオならスピーカーの設置環境に関わらず素晴らしいサラウンドが実現します!」などという話は真に受けないほうがいい。
 逆に、「オブジェクトオーディオでなければ素晴らしいサラウンドは実現しません!」などという話を真に受けて、「天井にスピーカー付けるなんて無理だから高品質なサラウンド体験は諦めるしかないのか……」などと嘆き悲しむ必要もない。

 今まで通り、基本に忠実にやっていけばいい。

 オブジェクトオーディオの導入/トップスピーカーの設置なんて恐ろしい所業は、既にチャンネルベースのスピーカーセッティングをとことんまで突き詰め、「機材を買い替える以外にもうやることがない」という段階に至ってもなお、さらなる地平を目指す奇特なユーザーが道楽でやればいいくらいの代物である。
 それに正直言って、現状ではオブジェクトオーディオによる音の伸びしろは期待していたほど大きくなかった。決して伸びしろがなかったというわけでもないが。
 

 Dolby Atmos、DTS:Xといった新たな音声フォーマット、「オブジェクト」という方法論は、間違いなくサラウンドの新たな地平を切り開いてくれると思っている。

 しかし、オブジェクトベースオーディオの可能性をひたすらに喧伝する一方で、従来のチャンネルベースのサラウンドをこき下ろすような展開にはなってほしくないし、AV業界は絶対にそんな方向に行ってはいけないと思う。
 サラウンドという概念やホームシアターという趣味さえまともに浸透していないなかで、「サラウンドを楽しむためには天井にスピーカーを付ける必要があります」なんて言葉が入り口から登場するようでは、もはや絶望しかない。
 

 オブジェクトオーディオは良い。

 しかしそれは、「マルチチャンネル・サラウンド」における最後の隠し味であって、入り口ではない。

 天井にスピーカーを取り付ける前にやるべきことは腐るほどある
 
 

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