ここはどこ! 私は柚子!?
「はっ」
メディカルルームで目を覚ました柚子。
びしょ濡れだった服は脱がされ、下着姿で寝ていたということで。
「きゃああああっ!」
大音声の悲鳴を。
「どうした!?」
と、その声にいち早くやってきた黒咲。
そしてそれに続く沢渡。
「――え?」
「ん?」
下着姿の柚子と目が合ってしまい。
「きゃああああ!!」
「失礼した」
手近にあったものを投げつけられ、慌てて出ていく二人。
「どうして私服着てないのよ!」
「それはお前がずぶ濡れだったからだろ!」
「まさか、あなたたちが脱がしたの!?」
「それは誤解だ!」
「ちゃんと女性の看護師にやってもらいました!」
「なら、いいけど」
と出てきた柚子は服だけでなく、コートまで着込んでいる。
「私、基地に戻らないと!」
「何言ってんだ。お前気絶してたんだぞ」
「今は安静にしていろ!」
二人の制止も聞かない柚子。
「私見たの! 遊矢の記憶を! それを確かめないと!」
一方、EVEとのデュエル。
遊矢から盤面を引き継いだユート。
その眼前には、幻魔帝、ナンバーズ、時械神の3体が並び、自信のライフも2000。
「現れましたね、榊遊矢のもう一つの人格…。いや、あなたの正体は…」
ユートの正体を口にしようとするEVEに対して、ユートは激昂。
「黙れ! それ以上は言うな! 言うというならば、絶対にお前を許しはしない!!」
「榊遊矢を守る悲しき守護者…」
「お前が余計なことを口にする前にデュエルに決着をつける!」
「私の場には伝説のモンスターが三体。手札0のあなたが私を倒せますか」
「なめるな! 私のターン! ドロ――!!」
ユートは自身の場にいる『スモーク・モスキート』の効果を発動。
一ターンに一度、エンドフェイズまで、このカードのレベルの自分の場のモンスター一体と同じにする。
場の『ファントム・ドラゴン』と同じレベルを7に。
「レベル7のスモーク・モスキートとオッドアイズ・ファントム・ドラゴンでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!!」
「闇の帳を切り裂きしは、新たな力を得た反逆の牙!!
ダーク・アンセリオン・ドラゴン!!!」
「現れましたね、あなたのエース。エクシーズとペンデュラムのハイブリッド・モンスター」
そしてユートは『ダーク・アンセリオン』に装備魔法エクシーズ・ウイングを発動。
その上で、ORUを一つ使い、効果発動。
ターンの終わりまで相手モンスター一体の攻撃力を半分にして、その数値分の攻撃力をアップ。
そしてその分のライフを回復。
更に、この効果を使用したターン、『ダーク・アンセリオン』は破壊されない。
――デビルズ・ドロップ!!
そして対象に選ぶのは、『幻魔帝ドリオジーグ』。
トリロジーグの攻撃力を半分の2000にして、『アンセリオン』の攻撃力を5000に上昇。
そしてユートのライフも4000に回復。
そして装備魔法『エクシーズ・ウィング』の効果。
装備モンスターは『一ターンに一度ORUを使用する効果』をもう一度使うことが出来る。
もう一度、デビルズ・ドロップ。
今度は『インフィニティ・ダークホープ』を対象に。
攻撃力を半減させ、その分『ダーク・アンセリオン』の攻撃力を上げ、ライフを回復。
これで『アンセリオン』の攻撃力は7000になり、ユートのライフも6000に。
「ほう、攻撃力7000…」
「バトルだ!」
「…」
『ヴルガータ』の攻撃力は0。
しかし、バトルダメージを0にして、バトル終了時に全ての相手モンスターを除外するという恐ろしい効果を持っている。
ならば。
「ダーク・アンセリオンで幻魔帝トリロジーグに攻撃!!」
「この攻撃が通れば俺の勝ちだ! アブソープ・エクリプス!!」
『アンセリオン』の攻撃。
「的確な攻撃です。そして伝説のモンスターに果敢に立ち向かう勇気は褒めてあげましょう」
そう余裕の言葉を発するEVE。
「ですが! No.XXインフィニティ・ダークホープの効果!
バトルの時、ORUを一つ使いバトルダメージを半分にし、モンスターが破壊された場合、そのモンスター一体を特殊召喚できる!」
これで、EVEのダメージは半減され、2500ダメージに留まる。
「この瞬間、装備魔法『エクシーズ・ウィング』の効果!! 装備モンスターがモンスターを破壊した時、相手に500ダメージを与える!」
これでEVEのライフは2000に。
一方、ユートにバトンを渡した遊矢。
自身の中にあるアダムの因子へ。
「この鼓動…。これが、EVE達が言うアダムの因子だったのか」
遊矢の言葉に呼応するように、その鼓動が激しさを増す。
そしてそれは、ずっと眠ったままだった、ユーゴとユーリにも伝わり、二人同時に目を覚ます。
ユーゴは即座にDホイールに乗り。
「何事です…、ユーゴ」
ふらふらした様子で遅れてきたユーリに、後ろに乗るよう急かす。
「遊矢があの場所にいる!」
「あの場所…。
『アダムの因子』!!」
事の重大さを察知したユーリを乗せ、急ぎ走るユーゴ。
「EVEが欲しがるG・O・Dを目覚めさせるトリガー…。こんなものが、どうしてオレと零児の中にあるのか知らないけど…」
そう呟きながら、遊矢はワールド・イリュージョン。
過去へ飛ばされたあの瞬間に思いを馳せる。
(オレはワールド・イリュージョンで自分の意識が混乱して、オレの人格が幾つにも分裂したんだと思い込んでいた…」
しかし。
アダムの因子を前にした遊矢は、それが事実でないと確信するに至る。
そして遊矢を視認できる所までやってきたユーゴとユーリ。
現状把握ができてしまったユーゴは思わず膝をつく。
「うう…遊矢…。お前は気づいちまったのか…」
「せっかく君が壊した記憶をアダムの因子が復元してしまったようですね。皮肉ですよ。倒すべき敵の力が遊矢の真実の記憶を呼び起こしてしまうとは…」
「遊矢…」
ユートとEVEのデュエルの続き。
「見事ですユート。伝説のモンスターを破壊し、私にダメージを与えるとは…」
「くっ! 今の攻撃で倒しきれなかったか!」
「ですが、全ては無駄! インフィニティ;・ダークホープの効果!」
これで『トリオジーグ』は蘇生。
そして『トリロジーグ』の効果。
自分フィールドに墓地からモンスターが特殊召喚された時、相手モンスター一体の攻撃力の半分のダメージを相手に与えることができる。
EVEは攻撃力7000となっている『アンセリオン』を選択。
これで、3500バーン。
ユートのライフは2500に。
「自ら攻撃力を上げたことが徒となりましたね。更にNo.XXインフィニティ・ダークホープの効果!!
自分場に特殊召喚したモンスター一体を選びターンの終わりにその攻撃力分のLPを回復する! 私が選ぶのは当然幻魔帝トリロジーグ!
さぁ、あなたに手が残されていますか?」
「くっ! 私はこれでターン・エンド!」
この瞬間に、それぞれ変動していたモンスターの攻撃力は元に戻る。
「更にインフィニティ・ダークホープの効果でトリロジーグの攻撃力分私はLPを回復する!」
これでEVEのライフは6000に。
「これで私のLPはさっきより回復しました。あなたたちの戦況はますます悪くなったわけです」
「うっ…」
EVEの言葉にたじろぐユート。
そして、そんなタイミングで遊矢を追ってきた柚子が。
遊矢からユートに代わっていること、そして対峙しているEVEを視認すると。
「この人は…。まさかこの人が未来から来た敵?」
「未来から来たことは事実です。敵かどうかは、あなた達次第ですが」
「G・O・Dを操り、世界の時空をねじ曲げる者が敵でないだと!?」
「ユート、あなたが遊矢を守りたい気持ちはわかります。だからこそ、私にアダムの因子を渡しなさい。
G・O・Dを完全に覚醒させれば、あなた達が望む世界を与えることが出来る!」
「そんなことは…」
「あなたは望んでいるはずです。遊矢と共にいられる世界を。
なぜなら、あなた達は…」
「黙れ! もうそのことは…!」
EVEが決定的なことを口にしようとするのを、何としても阻止しようとするユートだったが。
『ユート、もういんだ。もうオレたちのこと、隠す必要はないよ』
「遊矢!?」
『オレはもう知ってるんだ…』
そして、再びユートから遊矢へとチェンジ。
「ありがとうユート…。君のおかげでオレは覚悟を決める時間ができた」
「遊矢!」
「柚子…」
「私、見たの! 素良と戦った時、あの水槽の中であなたの記憶を。
あそこで不思議な球に触れたとき、私の中に見えたのは、間違いなくあなたの記憶!
遊矢・ユート・ユーリ・ユーゴ。あなた達四人は…!!」
「ああ…。オレたちは…」
「オレたち四人は、本当の兄弟だったんだ…」
ありし日の親子の姿…。
というところで次回につづく。
さて、まず何から語っていきますかね。
………………。
これしかないですよね。
応募者全員サービス、全然繋がりません。
………………。
閑話休題。
幻影騎士団どころか、新規ドラゴンすら出ずに、ユートの出番終了。
いや、これは、流石に、あんまりにあんまりじゃないですか?
しかも、これORUを持たないアンセリオンが棒立ち。
ハンドも0。
それでライフの変動もほとんどなく、再びEVEのターンって……。
厳しい盤面ですね。
あとは柚子のラッキースケベイベント……。
は、さて置いて。
柚子が触れた記憶は遊矢のものでしたか。
何かしら重要なイベントになるかとは思いましたが……。
思いましたが……。
うん、これ、柚子が特に触れなくても、遊矢は記憶を取り戻していましたし、滞りなくイベント消化はされていたんじゃないかなぁと。
それを思うと、なんとも言えませんが……。
しかし、遊矢達が、結局血の繋がったガチの兄弟って話なんですか?
えっと、意外と言えば意外ともいますし。
でも、どちらかと言うと、なんか捻りが無さすぎて、意外という気持ちの方が強い。
幼少期のユーゴの記憶とかもありましたし。
しかも、普通に遊勝パパンが普通に皆の父親ってこと?
うーん、クローン説とか、遊勝黒幕説とか、遊勝=遊矢説とか色々と考えていたんですけどね。
コメントでは言っていませんが、加筆です。
僕は結構、この辺の関係というか、色々と考察はしていますので、答え合わせが気にはなっています。
遊矢たちが兄弟だったという衝撃の事実。
僕が驚き切れないと思ったのは、ユートがEVEがこの事実を口にしようとした時に見せた、あの感情。
ただ、兄弟であることを暴露されそうになっただけで、冷静なユートがあれだけ激昂するとも思えないんですよね。
それだけにユートが本当に隠したかったことは、実は兄弟だったという話ではなく――。
今、ユート達がEVEに言わせれば『榊遊矢を守る悲しき守護者』となっている、その理由なんだろうなぁと。
このEVEの言い回し、そして遊矢と取り巻くこの現状。
間違いなく色々と裏があるんだろうなぁと。
ですので、少し触れたクローン説とか、遊勝黒幕説とかを唱えたわけなのですが……。
なんて言えば良いのか。
遊矢というデュエリスト――って言えば良いのか。
まぁ、遊矢という存在を作り上げるための、犠牲になっているんじゃ的な印象が拭えないんですよね。
ただ、連の存在とか色々とネックにもなってくる。
一概にコレだとも言えないんですよね。
ですので、僕的には、実は兄弟だった。
はいいのですが、もう少し踏み込んだ話が欲しかったというところですかね。
次回、遊矢の口から語られるかもしれませんが。
またお預けになりそうな気もしますので。
もう少し書きたいこともあるのですが。
そこまで書くと、ちょっとまとまらないですし、これといったオチもないですので、とりあえずはこの辺で。
あぁ、書き忘れていました。
あと、遊勝が黒幕ではなかった場合。
以前に少し触れましたが、遊矢達と遊勝が実の親子ではなかった的なことも大いにあり得るのではと。
何かしらの実験施設的なものから、4人を救出したとか。
まぁ、予想というよりも、妄想に近いものがあるとは自覚しているんですけどね。