『裏田本』の「図8」。(p.46)
「図8」の説明には、「日本人検閲官がのこした貴重な資料。コード番号やPCモノグラムの意味を記入してある」と書かれている。
『裏田本』の掲載画像では、画像に書かれた文字が読みにくい。
そこで、画像処理したものを作製した。(下図)
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(再掲)『裏田本』の「図8」(p.46)。
(文字判読のために、画像処理したもの。)
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すると、この資料にはいくつか奇妙な点がある事に気付く。
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C.C.D.J-2400
25-8("金魚鉢"の枠内上部に手書き)
検閲印"金魚鉢"
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この検閲印"金魚鉢"(CCDJ-2400)に対して、次のような説明が書き込まれている。
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1. C.C.D.に対して、"Civil Censor Department"
2. Jに対して、"Japanese"
3. 2400に対して、"検査員個人番号"
4. 25-8(手書き)に対して、"日ヲ先キニ月ヲ後ニ/ 検査日ヲ記入スル"(縦書き)
5. モノグラムに対して、"円内ノ字ハ/ CPノ組合セ /「検閲済」"(縦書き)
"Censors Passed"
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『裏田本』では、"Censor Passed"と書いてあるが、実際には、"Censors Passed"、Censorの複数形である。
私は、最初、用紙の汚れかと思ったが、他の"s"と同じ書き方で書かれた"s"である。
単語間の空白としても、"s"がある方が、"s"がない場合よりも自然である。
しかし、"Censors Passed"だと、私には意味不明である。
"アポストロフィs"かとも思ったが、"Censor's Passed"でも、私には意味不明である。(最後に"stamp"が省略されていると仮定すれば、もしかしたら意味が通じるのかもしれないが、英語に弱い私にはわからない。)
こんな英語に弱い私でも、明確に奇妙だと指摘できる点がある。
CCDに対して、"Civil Censor Department"と説明している点である。
"Department"は間違いである。
"Detachment"が正しい。
これらの奇妙な点を考慮すると、この説明文は、当時の日本人検閲官が、(その当時に)書き残したものだとしても、完全には信用できないのである。
この資料を残した日本人検閲官に、いつ誰がこれらの事を説明したのかは不明である。
古参の上級日本人検閲官だろうか?
説明した人物の元々の説明自体が正確なものではなかった、という可能性があるだろう。
GHQのアメリカ人や日系2世の上役が説明していたとしても、ネイティブの流暢な発音を、この日本人検閲官が正確に聞き取れなかった可能性もあるだろう。
(説明したのがアメリカ人であったとしても、その説明内容が正確であったとは限らない。)
裏田氏も、上の資料のこうした奇妙な点に気付いていたに違いない。
だから、『裏田本』では、この資料の詳しい説明を避けたのだろう。
そして、この資料に書かれていた"CP"印の呼称を積極的に採用しなかったのだろう。
(次回に続く)
(25.03.28)