2016年10月21日(金)13時よりジャスマックプラザの5Fザナドゥで開催された「Kita-Tech 2016」(キタテック)に行ってきました!
取材・構成・撮影 : 赤沼俊幸 取材日 : 2016年10月21日
ジャスマックプラザのザナドゥで開催
ジャスマックプラザは地下鉄南北線すすきの駅徒歩5分、中島公園駅徒歩3分、豊水すすきの駅徒歩2分の場所にあります。
ジャスマックプラザ
〒064-8533 北海道札幌市中央区南7条西3丁目425
「Kita-Tech 2016」はジャスマックプラザ5Fのザナドゥで開催!
Kita-Techとは?
「Kita-Tech 2016」(キタテック2016)は「北海道のIT丸ごと味わう 北海道IT企業合同技術交流会」として、技術を中心に交えた北海道のIT企業が集まる1年に1度開催される交流会です。
北海道本社の企業を中心に、今回はビットスター株式会社、株式会社ノースグリッド、ネットスター株式会社、株式会社インフィニットループ、さくらインターネット株式会社、株式会社ダイナシステム、有限会社サイレントシステムが参加。
今回の発表内容はAR、AI、IoTと旬な技術が多く、主催の一社であるビットスター株式会社取締役COO若狭敏樹さんに「旬な技術が多かったのですが、テーマ指定はあったのでしょうか?」と聞くと、
「以前の開催では経営層からテーマを与えていましたが、去年からテーマを任せるようになりました。技術者は新しい技術・情報を取り入れること、知らないことに挑戦することは大好きです。結果として、その時々の最先端のことをやりたいっていう傾向が強い。さらに言うと、こういうところで勉強して仕事につなげていきたいという願望はかなり強いと思います」
とのコメントをいただきました。Kita-Techは北海道のIT技術者が、今、最も興味のある技術の発表が行われる交流会です。
今回のKita-Tech2016は発表20分、質疑応答10分。「インターネット関連技術に関わるもの全て、ソフトウエア、サービス等についてはプロトタイプを作成すること」という発表ルールになっています。この発表や質疑応答から審査され、大賞、発表賞、技術賞が授与されます。今回、審査をする審査員はこの方々です。
それでは発表を紹介します!
ARを活用したメッセージアプリ
ビットスター株式会社 荻原利悠大 戎屋淳平 小田島耀
ビットスターチームからは、現在地にメッセージを残し、近くに居る人にARでメッセージを共有できるWebアプリ、ARISE(アライズ)を戎屋さんが発表します。
ARISEはGPSで位置情報取得後、スマートフォンのカメラから写した風景にコメントを残せます。登録不要で利用可能です。
ARISEの活用シーンとしては、介護送迎や、介護事業者の町内会での見回り、災害地復旧のための情報共有、観光地やイベントの情報表示を考えています。
実際に制作してわかったこととして、位置情報取得にjavaScript(HTML5)を利用していますが、20メートル単位でしか情報が取得できないのが難点。ただ、Google GearsのAPIであれば、誤差2〜3メートルでの取得が可能とのことです。
審査員からは「他と比べて最もビジネスに近いプロジェクトになりえる。信頼できるデータと組み合わせると、いい仕事になると感じました」(有限会社サイレントシステム取締役中本伸一さん)と講評がありました。
ディープラーニングが切り開くAlの未来
株式会社ノースグリッド 岩崎玄弥 島田旭雄 苗加悠貴 長谷川雅俊
ノースグリッドチームからは長谷川さんが発表。まずは現在のAI事情についての解説です。現在の第一次AIブームから第二次ブームについて説明、そして現在はディープラーニングが注目され、第三次AIブームを迎えています。ディープラーニングの元を考えたのは日本人の福島先生という方のようです。
AIを一躍有名にしたのがGoogle Catです。GoogleがYouTubeにある大量の猫の画像を学習し、画像から猫を判別できるようになりました。長谷川さんは犬と猫の分類問題を会場に問いかけます。
会場の方に「猫は何番だと思いますか?」と尋ねます。会場の方はもちろん全問正解。長谷川さんは答えた方に猫の絵を、”猫の絵と思った理由”について聞きます。「全体的に猫っぽい。今までの知識で判断しました」
「そうです。人間は今までの経験で犬っぽい猫っぽいというのがなんか、わかる。この、なんか、わかるというのが大事で、これをコンピュータがやってくれるのがディープラーニングのすごいところ。なんらかの傾向学んでいくのがディープラーニングです」
続いては実際にノースグリッドチームが手がけたディープラーニングについて紹介。AKB48のチームAの5人の画像、各80枚を学習データとして用意し、ディープラーニングにかけます。
そしてAKB48チームAの5人が写っている画像を用意。ここからチームAに所属している小嶋陽菜の顔を当てるデモを行います。画像を読み込むと、小嶋陽菜の顔が赤で囲まれ、正解。
今回、使用したのはTensorFlow。Pythonで書くことでき、高速で動くフレームワークです。その後、AIの事例を紹介し、最後に、長谷川さんは「いやーAIって本当にいいものですね。また来年お会いしましょう」というセリフで締めくくり、会場から拍手が贈られました。
審査員からは「最近、仕事で『ディープラーニングとはなんだ』というように聞かれることが多いが、説明が難しい。『畳み込み』の話をすると、『柔道の技ですか?』と言われちゃう。ノースグリッドさんの説明聞くと、AKBで例えればいいんだと思いました。使わせていただきます」(ネットスター株式会社取締役の荒川靖章さん)との講評など、他の方からもプレゼンテーションの技術を評価する声が多くありました。
IoTで可視化する水道の利用状況に関する考察
ネットスター株式会社 渋谷一将
セキュリティ関連製品、サービス開発のネットスターチームからは渋谷さんの登壇です。水道の利用状況を調べるIoTを発表します。
流れた水の量を調べるために、流量センサーで測定します。手をかざしたかどうかを判定するために赤外線センサーで調べます。
流量センサーと、赤外線センサーを会社の給湯室につけ、無駄にした水を調べます。データはクラウドで分析します。
9月8日から10月5日の約一ヶ月間の測定結果は以下の通り。
使用が1937.2リットル、無駄867.5リットルと、31%の無駄があることがわかりました。ただし、センサーの圏内に手が無い場合でも使用している場合もあるので、今後は精度が課題とのことです。
審査員講評では「最もビジネス化に近いと感じました。例えば、ホテルでシャワーの洗面器のところにつけるのが考えられると思います。意図しなくてもポタポタと一晩中流し続けちゃう人もいると思うんです。ホテルに対して、2〜3割の水道代を減らせますよ、と提案することもできるのではないでしょうか」(株式会社ダイナシステム執行役員斉藤一郎さん)と評していました。
あらゆるイベントを可視化する! Raspberry Piで作るLED警告灯ソリューション
株式会社インフィニットループ 水野源
インフィニットループチームからは水野さんが発表です。インフィニットループではサーバーが落ちた時、何かしらのアラートをパトライトと音声で流れるインフィニットループのアラート通知システム、「通称ゆっくり」を運用しています。
サーバー運用を行っている水野さんはこの仕組みを便利と考え、全チームに導入したいと考えます。しかし、パトライトは高く、全チームに導入するには予算オーバー。そこで水野さんが考えたのはパトライトを自作することです。
「皆さんの机の引き出しの中にも使っていないRaspberry Piが2、3個入っているでしょう」
この発言に会場が沸きます。心当たりがあるエンジニアが多いようです。
市販のパトライトは決められたプロコトルでしか使えず、簡易的な監視機能も弱い。Raspberry Piであれば、低コストが利用でき、Linux上で自由にいろんなものが実装できます。
試作、ソフトウェア設計、耐熱試験を行い、社内への試験的導入を行い、社内からのフィードバックを得ます。改善された最終試作機がこちら。
SlackのMention通知や、ネットワークトラフィックの可視化、新着メールのお知らせ、屋内から天気を知る、ということに活用できます。そして最後にこの場でサプライズ発表も…
本発表の内容で自作したライトを「CrystalSignal Pi」と名付け、実際に発売予定であることを発表しました! 11月6日発売予定。OSC東京でもデモを行う予定です。販売価格は3980円を予定。
株式会社インフィニットループ技術ブログにCrystalSignal Piの詳細や、今回の発表の様子やスライドが掲載されていました。合わせてご覧ください。あらゆるイベントを可視化する! RaspberryPiで作るLED警告灯ソリューション
審査員講評では「Kita-Techはビジネス化を競っているわけではないのですが、まさか値段までついて、商売までなるレベルになっているとは思い、驚きました。デザインもけっこうカッコ良くて、アクリルの棒を下から照らすだけで、良い感じになると思いました」(株式会社ノースグリッド代表取締役菊池敏幸さん)とデザイン面、すでにビジネス化している点を評価していました。
開発が作るドキュメントで運用が消耗した話
さくらインターネット株式会社 玉城智樹 吉田美香
さくらインターネット株式会社からは運用側の立場から玉城さんと、開発側の立場から吉田さんの掛け合いで発表が行われます。
通常、さくらインターネットは開発側が運用するドキュメントを書き、そのドキュメントを元に、運用側が運用します。
しかし、開発側が書いたドキュメントが必ずしも運用側が運用しやすいドキュメントかというと、そうではありません。運用には開発が想像しにくい苦労もあり、ドキュメントの「作業の順序を変えたい」「注意点を変えたい」と思っても、、、、
ドキュメントは開発側とも共有していますので、勝手に変えてはいけません。ドキュメントを編集しようにも、編集方法や段取りがわからず、疲弊してしまいます。運用側では「とりあえず、周知でカバー」や「別の手順書でカバー」「運用カバー」という方法が対応しますが、いずれも場当たり的な対応にしかならず、新人はついていけません。そこで定めたのが以下のルール。
ドキュメントの管理は変更を含め、開発側ではなく、運用側がしっかり行う。ということです。これによって、運用側がより運用しやすいドキュメントになっていきました。その他にも手順書の見直し、フローの整理を行うことにより、消耗しづらい運用体制が実現したということです。
審査員からは「構成が物凄く良くできていた。何を伝えたいのか、という意思がはっきりしていて良かった」(ソニー平山さん)との講評がありました。
特別講演
全ての発表後、ソニー株式会社R&Dプラツトフォーム研開発企画部門技術戦略部チーフUXストラテジストの平山智史さんと、さくらインターネット株式会社代表取締役社長の田中邦裕さんによる特別講演がありました。
ソニー平山さんからは「UXを知る企業がイノベーションを成功させる」と題し、「イノベーションのジレンマ」を例に出しながら、自身の所属するソニーの歴史を絡めて、オーディション分野におけるイノベーションの歴史を解説。結論としてイノベーションは新興企業に有利と話します。Kita-Techに参加する企業のほとんどの新興企業にとって、勇気づけられる話でした。
さくらインターネットの田中さんからは平山さんの講演でも話が上がっていた「イノベーションのジレンマ」を例に出しつつも、さくらインターネットがイノベーションを起こす方法を紹介します。
さくらインターネットは創業20周年を迎え、企業も大きくなってきました。専用サーバーなど売れ行きの良いサービスが走っている環境では新サービスを立ち上げようとも、新サービスの立ち上げメンバーが既存サービスに取りあげられてしまう可能性があります。
レンタルサーバーなど他サービスがある中、さくらクラウドのサービスを立ち上げるときは、4人で新しくマンションを借りて、サービス開発に勤しむことで、イノベーションのジレンマを避けようとしました。
今はAIによる第四次産業革命を迎えようとしている認識の中で、さくらインターネットはAI分野でどのように貢献していくのか。AIで仕事が奪われつつも、新しい仕事が生まれていく時代に、どのようなサービスが求められるか。「これからのサービスとしてはモノづくりがサービスのキーワードとなりつつも、モノを使ってサービスを売っていく時代になる」と結び、講演を終えました。
懇親会と結果発表
同会場で懇親会が開催されます。懇親会の冒頭では思わぬサプライズが行われました!
歌とダンスのショーもあり、会場は大盛り上がり!
いよいよ審査結果発表です! 「プレゼンテーションレベルが非常に高いもの」に贈られる【発表賞】は・・・「ディープラーニングが切り開くAlの未来」を発表した株式会社ノースグリッドチーム!
次は【技術賞】です。こちらは「技術的に非常にレベルが高いもの」に贈られます。【技術賞】は・・「IoTで可視化する水道の利用状況に関する考察」を発表したネットスター株式会社チームです!
最後に【大賞】の発表です。大賞は「発表並びに技術的にも非常に優れているもの」に贈られます。大賞は・・・「あらゆるイベントを可視化する! Raspberry Piで作るLED警告灯ソリューション」を発表した株式会社インフィニットループチームです!
受賞されたチームの皆様、おめでとうございました!
参加した感想
キタゴエでもたびたびレポート記事を書かせていただいているように、札幌にはすでにさまざまな技術勉強会があります。ただ、ほとんどは個人発の有志による勉強会で、平日夜、土日に開催される勉強会は参加できる方、参加する方が限られます。業務時間以外に行われるため、プライベートの時間を犠牲にしなければいけません。
Kita-Techは会社が主催している勉強会であり、平日日中の業務時間内に行われます。そのため、プライベートを犠牲にする必要はありません。会社が主催しているイベントのため、おそらく業務時間中に発表の用意をすることもできるでしょう。日中行われているイベントということで、普段、勉強会に参加しない技術者の方も参加していたと思います。そのような技術者とも交流できます。
技術の発表や調査、研究できるイベントを会社が主催。このようなイベントを主催してくれる会社は、所属する社員にとって、本当にありがたいと思い、今後もこのような技術力と発表力を高めるイベントを続けていただきたいなと思いました。
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