どれも謎の部分が多い・・・ バンド・デシネ的なものとは、あんまり相性が良くないのかなと思いかけている部分もありますが、「かわいい闇」は、「自殺の森」ともども大注目しています。
kazuouさんも推しておられるのならなおのことですが、出版社の内容紹介を見ても何だか内容が掴めない、kazuouさんの文からも内容の想像がつかないという謎な感じも興味を引きます。(自殺の森の方は、その点は何となくは想像ができる気がしますが)。
「月の部屋で会いましょう」ともども、購入予定ですが、寄ることのできた小さめの書店では扱っていないようで、まだ入手できていません。
ヴォネガットはそもそもあまり読んでいなかったのもありますが、短編をこれまで読んでいないのでどんな感じだろうな?というのはあります(大森さん訳ということは、きっと面白いのでしょうが・・)。
シリアスな「母なる夜」が好きなのですが、他に読んだ作品が「猫の揺りかご」「スローターハウス5」だったりして、ヴォネガットはこういう作家だという統一したイメージが頭にないのも、好きな作品がありつつも何となく他の作品にまでは手を出しにくい要因にもなっているのですが。
こちらの知識になかったものでは、「まちあわせ」、気になりました。『害虫駆除局』の内容も、昨今の世相を何となく想起する部分もあって興味深いですし・・・『プリマーテス』は、「火星戦争」を連想したり(でもこちらは昔から共存している設定なんですね)、また一方で大昔に学校の司書さんに薦められて読んだ「大地の子エイラ」シリーズを連想したりしますが、さて・・・
『きんきら屋敷の花嫁』も何となく気になりますし(選評ということは、ホラー大賞の受賞作?)、『アンチクリストの誕生』はペルッツの、しかもスリリングそうな作品みたいでこちらも気になります(ページ数が少なめのためか、きっとお高いのだろうと思ったら案外にお手頃そうですね・・・)。
【2014/08/15 02:35】
URL | Green #- [ 編集]
『かわいい闇』はほんとうに説明しにくい作品なので…。内容がどうというよりは、どちらかというと表現手法が新しいというべきなんでしょうか。
ヴォネガットの短篇集は面白かったですよ。
ミステリ、SF的な要素があるなしにかかわらず、独特のユーモア感があるところが魅力です。
『きんきら屋敷の花嫁』は、『幽』怪談文学賞の受賞作品ですね。『幽』怪談文学賞の作品は、今まであんまり肌合いが合うものがなかったのですが、これはすごく良かったです。
【2014/08/15 10:52】
URL | kazuou #- [ 編集]
月の部屋で会いましょう カレン・ラッセルやキジ・ジョンスンとも異なる肌触りの短編集です。
男性作家だからでしょうか。軌道の狂ったジェットコースターにメチャクチャに
振り回されて気分が悪くなり、でもすぐに降ろされて吐くことも出来ないような。
「ささやき」のラストの男のセリフが怖い。これがキングだったら、しつこくネチッこく
恐怖を描くのでしょうが、すぐにポンッと投げ出されて途方にくれてしまう。
「まちあわせ」は表題作が少し救いがありました。巨獣のデザイン、特に手が思いもかけない部位に多数ついているのが不気味でした。
【2014/08/18 11:37】
URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]
>奈良の亀母さん ヴクサヴィッチは、話の展開がどうなるかわからないところが面白いですよね。解説では、ラファティの名前なんかも出されていましたが、ラファティよりは発想がソフトなところに、一般受けしそうなところも感じられます。
『まちあわせ』の表題作もいい作品だと思いますが、ほかの収録作品のインパクトが強烈で、すこしかすんでしまった感がありますね。
【2014/08/21 17:36】
URL | kazuou #- [ 編集]
蝿の王+ビリー・ミリガン×線香花火? これ、確かに傑作でした。作者が一つの意味に収斂させないようにと考えていたからか、何も考えずに楽しめる一方、読後にいろいろなことを却って考えてしまうような作品だった気がします・・
いろいろなサイドエピソードが何となく現れては消えて行くうちに物語がいつの間にか進んでいる、という印象で、なんだか線香花火がいろいろな姿を取って行くのを眺めているような気がしました。(粗筋が説明しにくい訳ですね・・)
登場人物たちは、妖精と言うよりも体が小さいだけの現実的な存在、という感じで、むしろ、少女(あるいは幼児)の様々な側面をそれぞれ人格化したような印象で、その意味では "24人のビリー・ミリガン" がそれぞれ実体化してサバイバルしたような印象も受けました。(はっきり男と分かるキャラクターが、王子様のようで実は子供っぽいだけのエクトール一人なのもそんな訳かなぁと)
勝手で残酷な存在のようでいて、たぶん実はそれは子供の行動そのままなんですよね(子供時代にあまりいい思い出のない人間の偏見かもしれないですが・・)。子供が周りを支配できる力を持ったらどうなるかというのは、「蝿の王」のほかソールの「ゴッド・プロジェクト」とか、ビクスビーの「今日も上天気」なんかでもテーマになっていましたが、この作品では大壇上に構えず。もっと肩の力を抜いた感じと言うか、日常的な生活のエピソードの中に残酷や死がおや、と思う形で組み込まれていてそこがいい味になっていましたね・・
はっきり恐怖や残酷を
ゼリーとその取り巻きが、(女の子らしい?)虚栄と権勢欲など暗黒面みたいなものを象徴する存在になっていましたけれど、別にそんなキャラクターばかりだった訳でもなく、親の消えた赤ん坊の面倒を見ようとするティモテとか、ブリムをハチから助けるこどもなんかもいましたが、知恵や謀略を象徴しない彼らは結局悪意や脅威に抗えず(それを意識することも、そこに抗うことを考えつくこともなく)消えてしまうんですね。
一方、世話好きのオロール(字面を見るとオーロラの意味なんでしょうかね)は、献身ゆえに善を象徴する存在のようでいて、パーティーが思った通りになってくれなかったからと言って、好意を示してくれていたネズミにした仕打ちは(ダメにするきっかけを作ったリスと勘違いしたなら誤解?)、「寛容」を標榜する人が、その対象から少しでも敵意を受けると反転して熱烈なヘイトになったりする現実の人間のありようを想起させたりして、作者の作品に込めた意図の複雑さに恐れ入るばかりでした(この主人公が、別に悔恨もなくその後冬の寒さをしのぐのに彼の毛皮をまとっている辺りも象徴的な・・・)。
個人的には行動力のあるジェーンが格好良かったですね。彼女もあまり他人への共感はないキャラクターでしたが。
あと海外の読者は山小屋の男に殺人鬼の影を見たようでしたが、こちらは全然そんなことは感じなかったのであとがきを読んだ時は意外でした(作者も特にそんな意図はないようでしたが)。
背景と人物たちの画風が違うのも、話の中でとても効果的でしたね(この作品の中では、むしろ画風を近づけたとのことでしたが)。
一つには、現実とありえない動き、残酷とかわいらしさとユーモアなどが同居するシュヴァンクマイエル作品などを連想したりもしましたが、それとは別に、これは自然界と人間の脳内空間との対比のようにも感じられて、それゆえに背景の画風によって描かれる存在と、ユルキャラのような脳内空間の産物であるキャラクターが対峙する場面はスリリングでしたし、実際の人間と自然界の起こす摩擦がそこに現れているように感じました。
人間の側からは虫の足をむしる様な仕打ちを悪意もなく自然に対して行って、一方で知識もなく自然の中に踏み込んで行った者はその脅威の犠牲になる・・・ この辺り、人が人にする行為以上に圧巻に感じた所でした(雛に交じって餌を親鳥に貰おうとした者の末路とか、発想も展開も斜め上を行っていました)
ユルキャラがあふれる昨今、我々もより子供化している感もあって、こうした脳内空間と自然とがこすれあう場面は案外絵空事ではなく迫ってきたりして・・・・
* * *
「自殺の森」も読んだので、一応そのことも簡単に。こちらは人間の孤独をサブテーマにした、シリアスな、普通に怨霊もののホラーでした。怪異の場面の描写は、初期の伊藤潤二の描線をラフに太くしたような印象。良く出来た作品だと思いましたが、意外性や新しさなどは特になかったですね(海外作品を翻訳した高価な本を買って読む意義、という点で)。
あと、(もうご紹介と何の関係もないですが絵本つながりで、完全に子供向けのものですが)ジョン・クラッセンの「どこいったん」「ちがうねん」を買ってシンプルですが「ちょっとこわい」話を楽しみました。絵柄が素敵な作家さんで、読むだけなら立ち読みで十分でしたが、何故かそれでは飽き足らずに買ってしまいました。
【2014/08/31 07:22】
URL | Green #- [ 編集]
登場人物たちが、それぞれ善と悪を象徴するようでいて、じつは善悪の区別も特別ないんですよね。明確にひとつのメッセージが伝わってくる…という作品ではないので、読む人それぞれ、感じ方も解釈も違っていていい…という多様な読み方を許す作品だと思います。
僕も、山小屋の男が殺人鬼だとは感じませんでした。そういう解釈もありだと思いますけど、特別それについての描写などもなかったような…。
『自殺の森』も丁寧に描かれた作品だとは思いましたけど、かなりオーソドックスでしたね。本国では、日本を舞台にしたエキゾティズム的な観点から評価されているのかもしれません。
【2014/08/31 08:15】
URL | kazuou #- [ 編集]
「月の部屋で会いましょう」読みました 色々な話がありましたが、僕は「ノー・コメット」が好きです。
量子物理の世界では、「観察する事が対象に影響を及ぼす」
というのを高校だか大学で習った(原理は忘れました)のですが、
ここまで応用できるとは…
真面目に言うなら、望遠鏡の電波が当たってる時点でアウトですが(笑)。
あと、「僕らが天王星に着くころ」で、宇宙で消火器を使った加速は
とても良いアイディアですが、あんまり速くなりすぎると天王星の引力を
振り切るので、減速用も残しておくと良いかと。
ただ、私はどちらかというと地に足がついた話の方が好みなので、
何話かは読み飛ばしたりスルーしてしまいました。
【2014/09/12 21:28】
URL | bear13 #- [ 編集]
>bear13さん 『ノー・コメット』、トンデモSFだと思いますが、僕も大好きです。
レイ・ブラッドベリなどと同じで、科学的に正確な描写とかはどうでもよくて、あくまで題材として使えるか、という感じなんでしょうね。
僕はあんまり科学的素養がないので、そういうところも「ファンタジー」として読んでしまうんですけど。
【2014/09/13 09:05】
URL | kazuou #- [ 編集]
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