健康、病気なし、医者いらず 健康、病気なし、医者いらず
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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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胃ろうは、回復の見込みがある人に
胃ろうっていうのは、ご飯を自力で食べられなくなった人に、
胃に直接穴を開けて、栄養剤を入れて栄養が摂れるために
するための治療です。

本人の意識があって、食欲だけがなくて、栄養状態が
良くなれば元気になって元に戻れる可能性がある患者さん。
そういう人に胃ろうを造る事は、すごく良い治療だと思います。

でも現実的は、胃ろうを造っている患者さんの多くは、
回復の見込みがない人なんですよ。

脳梗塞になったりして寝たきりの人で、
口からご飯を食べる事が出来ない人。
急性期の病院に施設か病院には、そういう患者さんが
たくさんいます。

急性期の治療が終わったら退院しなくちゃならないけど、
自宅に帰るのは難しいですよね。
そしたら、施設か療養型の病院に転院する事になります。

口から食事を食べられないんですから、
点滴で栄養補給をしている状態なんですけど。
点滴があると、基本的には施設へ転院するのは
かなり難しくなります。

点滴があると、転院先が少なくなっちゃうから、
胃ろうを造りましょう。
という事で、多くの患者さんに胃ろうが作られている、
というのが現状です。

もちろん、家族や患者さんの意向を聞かずに
医療関係者が勝手に胃ろうを造る、という事はありません。
患者さんや家族に、そういうお話をしてから、
胃ろうを造っているんですけど。

本当に、患者さんも家族も希望されているのか、
と言われると、何とも言えません。

本来、回復の見込みがある人に造る、
というのが胃ろうの適応だと思いますが。
転院先の確保、という別の理由で造られている事の方が
現実的には多いような気がします。

今までは、きちんとしたデーターがなかったので、
感覚的なものでしかなかったんですけど。
医療経済研究機構の調査が出たので、
これを読んでみてください。



胃ろう、回復見込めない人に6割 
研究機関、情報分析 
本来は一時的な栄養補給手段


口から食べられなくなったお年寄りらの胃に
直接栄養を送る胃ろう
本来、回復する見込みのある人への
一時的な栄養補給手段だが、実際には
約6割で回復の可能性がない人につけられていることが、
医療経済研究機構の調査でわかった。

厚生労働省の補助金を受けて、昨年12月~今年1月、
全国約800の病院、約1360の
介護施設から回答を得て分析した。
胃ろうにした1467人の患者情報が集まった。
約2千人の家族から回答があった。

胃ろうをつけた時点で将来、口から食べるよう
回復する可能性があったのは24%で、
可能性なしは59%を占めた。
つけた後にはのみ込みの訓練が必要だが、
訓練を受けた患者は全体の49%にとどまった。

胃ろうにした時に困ったことを家族に聞くと、
「本人の気持ちがわからなかった」が55%、
「時間的余裕がなかった」が31%。
胃ろうにしてよかったことは、
「生きていてうれしい」が63%、
良くないことは「本人が幸せかわからない」が59%だった。

胃ろうなどの人工栄養について、
日本老年医学会が昨年、苦痛が増えるなど
患者の人生に有益でないと判断される場合には、
差し控えや中止も選択肢とする指針をまとめている。

調査を担当した飯島節・国立障害者
リハビリテーションセンター自立支援局長は
「後先考えずに胃ろうにするのは問題だ。
回復の見込みがある場合につけ、適切なリハビリをする
という正しい使い方をしてほしい」と話す。


『朝日新聞 2013/9/13』



胃ろうって、胃に穴を開ける手術ですから。
昔は外科が開腹手術をしていたんですけど、
今は内科的に胃カメラを使って造る事ができます。

手技が簡単になったから、胃ろうの手術件数が増えた、
という技術的な問題もあるとおもいます。
でも、それ以上に転院先とか、行き先の問題の方が
大きいような気がします。

胃ろうを造らないで点滴もしなければ、
人間の寿命って2週間くらいしかもたないんですけど。
胃ろうを造ると、2年位長生きする事ができるようになります。

寿命が延びる事は良い事だ、という考え方もあるでしょうけど、
寝たきりで意志の疎通も出来ない人に胃ろうを造って、
長生きさせる事は、本当に良い事なんでしょうか。



そんな話を含め、「在宅医療・療養を支える仕組み」
について、10月13日に勉強会がありますよ。
興味がある人は、是非参加してね!

第二部の福田先生の話は、何回も聞いた事ありますが、
くせはあるけど、超おもしろいっすよ。



<イベント>第7回医療の未来を考える会
「在宅医療・療養を支える仕組み」

 第7回医療の未来を考える会では、
「在宅医療・療養を支える仕組み」をテーマに、
10月13日(日曜)に、東京・神田にて開催することになりました。

最近、話題になっている終末期の胃瘻不要論や
嚥下障害について訪問歯科医である戸原先生にお話いただきます。
 
ケアマネジャーの役割と連携の実際については、
東京で実際にケアマネとして活躍されている
水下さんにお話いただきます
(雑誌「地域連携・入退院支援」(日総研:刊)にて
『医療・介護連携を機能させる重要ポイント
~ケアマネジャーをもっと知る、活用する~』連載中)。

第二部では医療・福祉分野で働く人材の育成や人事マネジメント
について国際医療福祉大学で教鞭をとられている
福田啓造先生からお話をいただきます。

 ぜひふるってご参加ください。

↓お申込みはこちらまで
『第7回、医療の未来を考える会』


■開催日時:10/13(日曜) 午後1時 開場
     午後1時半~開始
     午後4時半頃 修了

<第一部>
1.「知っていると役に立つ!(在宅への橋渡し、
(ケアマネジャーの活用について~」(仮)
 水下明美先生(株式会社ナイスケア推進事業部)

2.「胃瘻の実態調査:訪問歯科の現場から」(仮)
 戸原 玄先生
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 
老化制御学系口腔老化制御学講座 
高齢者歯科学分野 准教授)

<第二部>
3.福田啓造先生(国際医療福祉大学 非常勤講師)
 「これからの医療/介護を支える人材システム」(仮)

■会場:フォーラムミカサエコ
【住所】〒101-0047 東京都千代田区内神田1-18-12
    内神田東誠ビル
Phone:03-3291-1395(代)

『フォーラムミカサ エコ』

JR線 神田駅 西口より徒歩5分
東京メトロ銀座線 神田駅 4番出口より徒歩5分
東京メトロ丸の内線 淡路町駅 A2・A4番出口より徒歩5分
東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅 B6番出口より徒歩6分、
A4番出口より徒歩5分
都営地下鉄新宿線 小川町駅 B6番出口より徒歩6分、
A4番出口より徒歩5分

<講師略歴>
■水下明美先生
 株式会社ナイスケア推進事業部地域担当。介護支援専門員、
社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、
日本ケアマネジメント学会認定ケアマネジャー。
 大学でカウンセリングを専攻。卒業後、知的障害者福祉を
国立秩父学園にて学ぶ。
その後、総合福祉施設で、身体・知的・
精神障害児・者福祉に従事する。
祖母の認知症発病を機に高齢者福祉に携わる。
特別養護老人ホームの介護職員、生活相談員、
在宅介護支援センターのケースワーカーなどを経て、
現在は居宅のケアマネジャー。
「介護認定」岩波ブックレット(共著)
「一歩進んだ医療連携実践Q&A」じほう(分担執筆)
「医療と介護の融合」日本医療企画(分担執筆)

■戸原 玄先生
1997年 :東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
2002年 :東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了
2001-2002年 :ジョンズホプキンス大学留学
2003年 :東京医科歯科大学歯学部付属病院高齢者歯科
2008年 :日本大学歯学部摂食機能療法学講座 准教授
2013年―:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系
口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野 准教授

 摂食・嚥下リハビリテーション、地域医療連携、
チーム医療などについて、訪問歯科の現場から発信をされています。
今回は胃ろうについての研究の結果なども含めて、
在宅歯科医療の現場からお話を頂く予定です。


■福田 啓造先生
株式会社 エフケイズコンサルツ 代表
国際医療福祉大学 非常勤講師
 1977年、東京大学医学部卒業。同年、日産自動車株式会社入社。
1990年退社独立後、株式会社エフケイズコンサルツを設立、
人事総研グループの主宰として全国各地に関連組織を設立し、
新時代に向かっての組織と個人との新たな関係づくりとして
「仕事/役割(コア・ミッション)」を軸とした
「仕事等級制度(ミッション・マネジメント・システム)」
(特許出願中)という経営/人事管理概念を構築、
中堅中小企業ならびに病院の経営/組織改革支援や
人事諸制度の設計等のコンサルティングを手掛けて現在に至る。

近年になって公益法人のマネジメントシステム構築の
必要性を痛感、各種非営利活動団体の理事として
全国の公益法人に対する各種
マネジメント・サポート・サービスを実践中。
特に、現在は東京都福祉局からの要請のもと、
社会福祉法人経営改革推進プロジェクトへの参加や
都下の特別養護老人ホームなどへの
経営/人事改革指導を展開中


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医療の未来を考える会
事務局 井上雅博
E-mail:mjl.lm.net@gmail.com
HP: http://mjl2010.jimdo.com/
医療訴訟対策入門
第5回医療の未来を考える会」が
11月23日の祝日にありますよ。

『第5回医療の未来を考える会』


今までも、医療経営や制度などについて、
非常におもしろい勉強会をやってきましたけど。
今回のテーマは「医療訴訟」です。


メーンスピーカーは、医療訴訟に関しては
日本一の権威、と言っても良いくらい有名な
弁護士の、井上清成先生

良く引き受けてくれましたね。
個人が主催している勉強会なのに。

そしてもう1人は、眼科の医師で趣味は医療訴訟
毎週裁判所に医療訴訟の見学に行っている、
知る人ぞ知る峰村健司先生です。

これで3000円は、安いですよ、ホント。
他にも医療訴訟を専門にしている現場の弁護士も
参加してディスカッションする予定ですし。
こんな機会はめったにないですから、
是非参加されたら良いですよ!




テーマ:「医療訴訟対策入門」

開催:2012年11月23日(金)
時間:午後2時〜4時半(開場:午後1時半)
事前申し込み制


講演1:峰村健司先生
演題「医師の眼から見た医療訴訟の現状と問題」

講演2:井上清成先生
演題「医療訴訟対策入門ー刑事、民事」

横浜市大病院の患者取り違え事件、広尾日赤病院事件の
医療報道をきっかけに医療訴訟の件数が大幅に増えました。

近年は医療訴訟をめぐっては実際の法廷での証言よりも、
裁判の結果が独り歩きして、
医療現場の委縮を招いたりしています。

医療事故を巡っては事故調査委員会については医療事故
被害者方たちや日本医師会は法案の成立を求めています。

また、医療事故については民事事件でありながら、刑事
事件として検察審査会に対して起訴を求める動きもあります。

今回は、あまりこれまで知られていない医療事故の裁判
の実際と、司法で医療を裁くことについて考えたいと思います。

あまりこれまで知られていない医療事故の裁判の実際と、
司法で医療を裁くことについて考えたいと思います。



開催概要

テーマ:「医療訴訟対策入門

<日時>
2012年11月23日(午後2時~午後4時半)
開場:午後1時半~

<場所>
貸会議室プラザ 貸会議室プラザ 八重洲北口
東京都中央区八重洲1-7-4 矢満登ビル 5階-3号室
電話番号:03-3274-7788

アクセス:東京駅八重洲北口から外堀通りを渡り、
八重洲北口通りに入り日興コーディアル証券の並び
1階 CafeRenoir ニュー八重洲北口店

<地図>
『東京都中央区八重洲1-7-4 矢満登ビル』


参加費 3,000円(税込)
定員 70人(先着順)
申し込み開始 2012年10月03日 09時00分から
申し込み終了 2012年11月22日 18時00分まで
懇親会 午後5時~午後7時
懇親会場所   未定
懇親会費 4,000円程度(税込)
懇親会定員   50人(先着順)
主催     医療の未来を考える会

申し込みはこちらから!

『第5回医療の未来を考える会、申し込み』

震災後、南相馬市を守ってきた医師がSOS
事故を起こした福島第一原発で
南北に分断された福島県の浜通り。

その分断された北側の南相馬市原ノ町で、
震災後も産婦人科・内科の医師として、
分娩を含む被災地の医療を守って来た
一人の医師がいる。

原町中央産婦人科医院
(福島県南相馬市原町区橋本町1丁目3−2)
の理事長 高橋 亨平 先生。
http://www6.ocn.ne.jp/~syunran/

その先生がに冒され、一人で維持してきた
医院を閉じる瀬戸際となり、
引き継いでくれる医師を探しているという
ニュースを、先ほどNHKで紹介していた。

私にはHPの片隅にある
「2012/8/12 私の体の現状と医師募集のお願い」
の(PDF)を紹介することしかできません。
皆さん、読んでください。
そして拡散紹介してあげて下さい。
http://www6.ocn.ne.jp/~syunran/isibosyuu.pdf



私の体の現状と医師募集のお願い

                          
平成24年8月12日
                            
医療法人誠愛会
                         
原町中央産婦人科医院
                            
理事長 高橋 亨平


外なる敵と戦っている間にも、という内部の敵は
決して手加減はしてくれなかった。
そして又、抗がん剤の副作用に耐えられなく、
もう治療はやめようと思い、
やめてしまった人もたくさんいると聴いた。

確かにその理由も分かった。
自分でも、何のためにこんな苦しみに
耐える必要があるのかと、
ふと思う時がある。

しかし、この地域に生まれてくる子供達は、
賢く生きるならば絶対に安全であり、
危険だと大騒ぎしている馬鹿者どもから
守ってやらなければならない。

そんな事を思いながら、もう少しと思い、
原発巣付近の痛み、出血、の緩和のため、
7月25日から、毎日放射線治療を開始、
通院している。

午前9時から12時まで自医院の外来診療、
その後、直ちに車に乗り
1時間20分かけて、福島医科大学放射線治療科へ、
そこでリニアック照射を受け、直ちに帰り、
3時から再び自医院の外来診療を6時まで、
しかし、遅れる事が多かったので、
最近は3時から4時に変更した。

そんな私の我侭に対しても、
患者さん達は何も言わずに、
ちゃんと待っていてくれた。

それでも、多い日は100人以上、
少ない日でも70人は下らない。
産婦人科医でありながら若き日の信念から、
全人的医療(holistic medicine)
を目指し、現在に至っている。

原発事故後、分娩できる施設が無かった
南相馬市も、南相馬市立病院の産婦人科、
西潤レデイスクリニック等
今年の4月から分娩を開始した。

私の役割は終わったと思ったが、
どうしてもという患者さんは断れない。
もういいかなとふと頭をよぎる誘惑に、
頑張っている20名の職員の笑顔がよぎる。

こんな医療法人誠愛会から
全国のドクターにお願いがしたい。

こんな診療所ですが、勤務していただける
勇気あるドクターを募集します。
分娩は止めて、ももう大丈夫だし、
婦人科、内科、消化器科、循環器科、
総合診療科、なに科でも結構です。
広く学ぼうとする意思と実践があれば充分です。

との闘いながら、頑張ってきたが、
あまくは無いなと感じることが多くなってきた。
何時まで生かられるか分からない・・
神の思し召すままに・・
と覚悟は決めていても、苦しみが増すたびに、
もし、後継者がいてくれれば
と願ってやみません。

私の最後のお願い、
どうか宜しくお願い致します。

※連絡は下記へ、忙しい時間帯は
対応出来ない事もあります。
電話:0244-24-3355
(自宅も、かしの木ホールも、職員寮も転送可能)
FAX:0244-24-6910



「うろうろドクター」さんも
ブログに書かれていますので、
ご参考までに。

『命を懸けて患者を助ける産婦人科医の最後の依頼 』



南相馬市 自らも。命を懸けて患者を助ける
産婦人科医の最後の依頼

南相馬市のある産婦人科医の戦い

医療法人誠愛会・原町中央産婦人科医院の理事長である
高橋亨平さんは自らがと闘いながらも
毎日多いときは100人以上、少ない時でも
70人は下らないという多くの患者の治療を続けている。

高橋さん自身は7月25日から
毎日放射線治療のために通院している。

午前中、自分の医院の外来診療を終えたあと、
車で福島医科大学放射線治療科まで急ぎ、
放射線治療をする。

その後はまた医院へとんぼがえりし、
午後4時から6時まで再び患者たちの診療にあたる。

南相馬市という東日本大震災で甚大な被害を受け、
いまだに原発の恐怖から抜けることのできない
この地域で彼が命をかけて戦う理由は
いったいどこにあるのだろうか?

高橋さんは言う。

この地域に生まれてくる子供達は、
賢く生きるならば絶対に安全であり、
危険だと大騒ぎしている馬鹿者どもから
守ってやらなければならない。

高橋さんのこの戦いは自分のためではなかった。
この地域でこれから生まれまた育っていく
次の世代へと笑い声と希望にあふれた
未来を託すために今自分にできる
精一杯のことをしているのだ。

自分の治療を続けながら、
患者と向き合っていくことは
生半可な決意や根性で
達成できることでは決してない。

南相馬市は原発事故の後、
分娩できる施設がこの医院以外になかった。

しかし、今年の4月から新しく分娩ができる病院が
2つ与えられ、彼は自分の役目はもう終わり、
自身の治療に集中できるのではないかとも考えた。

彼をそうさせなかったのは自分を待っていてくれる、
自分を必要としてくれる患者がいるからだ。

また、困難を共にしてきた20名の職員がいるからだ。

彼らの笑顔が高橋さんを前に進ませる
原動力になっている。


2012年08月30日 
PM01:00 Q Life Pro医療ニュース
患者の死ぬ権利を尊重しよう
患者死ぬ権利(患者の自己決定権)」と
救命(医療上の必要性)」。
どちらが優先されるべきだと思いますか。

患者本人は、もう助からないので無駄な治療なんか
せずに苦しまずに死なせて欲しい。
これが、死ぬ権利患者の自己決定権)
でも、人工呼吸器をはずしたら死んでしまうからダメだ。
というのが救命(医療上の必要性)です。

みなさんだったら、もう助からない事が
はっきりとわかっている、このままだとあと数日しか
命がもたない、とわかった時、人工呼吸器とか
延命治療をしてまで命を延ばして欲しいと思いますか。
多くの人が、そうは思っていないですよね。

でも、今の日本では、仮に医師や医療従事者が
患者本人や家族の希望に答えたい、と思っても、
人工呼吸器がついている患者の人工呼吸器をはずして、
患者が亡くなってしまった場合、殺人罪
嘱託殺人罪・自殺ほう助罪で告発される事になります。


ちなみに、こういう話題になった時に、
尊厳死」とか「安楽死」という言葉が出ますから、
言葉の説明をまずしますね。


尊厳死:末期患者等が自分の意思で延命治療
やめてもらい、安らかに人間らしい死をとげる事。
(その結果、死期を早めることもありる。)

安楽死:苦痛から免れさせるため
意図的積極的に死を招く措置を取ること。


尊厳死というのは、もうこれ以上、延命治療はせずに、
放っておいてくれ、という事。
安楽死は、死が近づいたら、心臓とか呼吸を止める薬を
使ってでも、楽に死なせてくれ、という事です。


日本以外の先進国、例えば、スイスやオランダ、フランス、
アメリカでもイギリスでも、尊厳死(消極的安楽死)に関しては
きちんと法律が整備されて、認められています。

安楽死(積極的安楽死)に関しては、国(アメリカでは州)
によって違っていて、スイス、オランダ、そしてアメリカの
オレゴン州は積極的で、根拠法で一定の条件が
満たされた場合では、安楽死も認められています。

先進国の中で、尊厳死に関しての法律が整備されていない国
っていうのは日本しかないんですよ。

日本では、尊厳死に関しての法律がないので、
人工呼吸器を止めたり、延命処置をやめて患者が亡くなったら、
医師や医療従事者が殺人罪に問われる可能性があるので、
残念ながら今の日本では無駄な延命治療が行われています。

誰のためにもならない延命治療を続けても、
単に医療費の無駄なだけですから。
きちんと法律を作って、無駄な延命治療をやめて、
尊厳死を認めましょう、という事は
以前から言われていたのですが、
やっと法律が出来るかもしれませんよ。



呼吸器取り外しも可能に 
議連の尊厳死法案


超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」
(会長・増子輝彦民主党参院議員)は5月31日、
議員立法での国会提出を準備している
尊厳死に関する法案の原案を修正し、
免責対象となる医師の行為を、
人工呼吸器の取り外しなど
「現に行っている延命治療の中止」
に拡大する方針を決めた。

これまでは「新たな延命治療の不開始」に限っていた。
がんなどで終末期にある患者本人が
尊厳死を望む意思を表示している場合で、
2人以上の医師の判断を条件とする点は変わらない。

議連は6月6日に総会を開き、修正案を公表する予定。
障害者団体や医療関係者、弁護士らの意見を聞いて
さらに検討を続け、今国会か次期臨時国会での
法案提出を目指す。
ただ生命倫理にかかわるため、各党には
反対の議員も多く、提出や成立の見通しは不透明だ。

修正案には、障害や重い病気で意思表示が
難しい人を対象外とするため
「障害者の尊厳を害することのないように
留意しなければならない」との文言も追加。
いったん示した意思を撤回することも可能にした。

議連は3月、法案の原案を公表。
患者本人が健康で正常な判断ができる間に
延命を望まない意思を書面にしていること
などを条件に、新たな延命措置を
開始しないことを容認。
医師は刑事、民事、行政上のいずれの
責任も問われないとしていた。

修正の理由について議連関係者は
「延命中止が除外されれば法制化の意味がない
との意見を参考にした」と説明。
「『障害者らの命の切り捨てになる』
との懸念にも配慮した」としている。

共同通信社 6月1日(金) 配信



ちなみに、日本で尊厳死・安楽死に関する判決で、
最初というわけではないのかもしれませんけど、
有名なのが山内事件の判決です。
ここで、安楽死の6要件というのが出されたので、
これが今でも新聞等でも引用されています。


1)山内事件判決(名古屋高判昭和和37年12月27日)

裁判所の判断 ・安楽死の6要件

1)病者が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、
  しかも死が目 前に迫っていること。
2)病者の苦痛が激しく、何人もこれを見るに
  忍びない程度であること。
3)もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされること。
4)病者が意思を表明できる場合には、
  本人の真摯な嘱託または承諾のあること。
5)医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合は、
  医師により得な いと首肯するに足りる特別な事情があること
6)その方法が倫理的に妥当なものとして認容しうること。


安楽死に関しても、尊厳死に関してもこういう定義だ、
という法律そのものはないんですけど。
裁判所の判例で、そういうもんだ、というのが出たので、
今でもそれが生きている、って事っすわ。

ちなみに、尊厳死に関しては、尊厳死そのものが
争われたわけではないんですけど、
医師殺人罪に問われたはじめての安楽死裁判。

東海大学病院事件判決(横浜地判平成7年3月28日)
ここで、判決が出ちゃっています。

ちなみに、この事件の概要は、こちら。


東海大学病院事件判決(横浜地判平成7年3月28日)

平成3年4月。 多発性骨髄腫の末期患者
昏睡・意識不明の状態にあったが、
苦しそうないびきをかいているのを見た
家族の者から「楽にしてやってほしい」
「早く家に連れて帰りたい」などと
強く懇願されたため、担当医が、
(1)点滴 や薬、フォーリーカテーテルの撤去(延命治療の中止)、
(2)死期を早めるかもしれないがいびきをおさえるための
  鎮痛剤等の投与(間接的安楽死と呼ばれる行為)、
さらに、
(3)塩化カリウム製剤等の注射
  (積極的安楽死と呼ばれる行為)、
という一連の行為の結果、患者を死亡させた事件。
患者自身が死を望む意思 表示がなかったことから、
嘱託殺人罪ではなく、殺人罪で起訴された事件。



裁判所の判断は、
・起訴されたのは、
(3)塩化カリウム製剤等の注射(積極的安楽死と呼ばれる行為)
のみだったんですけど、裁判所は、(1)と(2)
についても、それが適法になる要件について
書いちゃったんですよ。

(1)治療行為の中止

適法になされるための要件

1)、患者が回復の見込みのない末期状態にあること
2)、患者の推定的意思であり、それによって中止できる
  医療の内容はすべての範囲に及ぶ。


(2)死期を早めるかもしれないという副次的効果は
  あるものの苦痛の緩和等が
  主目的とされる間接的安楽死

適法になされるための要件

1)耐え難い肉体的苦痛
2)死期の切迫
3)患者の推定的意思


(3)積極的安楽死

適法になされるための要件

1)患者が耐え難い激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
2)患者は死を避けられず、その死期が迫っていること
3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を付くし
  他に代替手段がないこと
4)生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示がある。



この裁判では、(3)について、1)と4)の要件を
満たしていないとして、懲役2年、執行猶予2年。
という判決が出ているんです。

(3)については、まあしょうがないかな、とは思うんですが。
(1)と(2)について、地裁(傍論)と言えども、
公的機関が要件を示してしまったので、
その要件を満たさなければ違法とされるから、
警察や検察は殺人罪の適用を考えざるを得なくなった。
というのが、今の日本の現状です。


それじゃあ困るね、って事で議員立法で
尊厳死に関する法律を作りましょう、
という事だったんだと思いますが。


>議連は3月、法案の原案を公表。
患者本人が健康で正常な判断ができる間に
延命を望まない意思を書面にしていること
などを条件に、新たな延命措置
開始しないことを容認。
医師は刑事、民事、行政上のいずれの
責任も問われないとしていた。



正直言うと、この3月に出た原案だと、
何の意味もないですよ。

今までも、書面で延命処置をしてくれるな
という事をきちんと書いて、延命処置をしなかった。
という事で、裁判で訴えられて負けた医師
というのはいませんでしたからね。

むしろ、延命治療をしてくれるな、っていう
文書があるのに家族や患者本人の意志に反して
延命治療を行っている医者の方が問題
でしょ。
今でも。

困っているのは、延命処置(人工呼吸器)を
止めたら殺人罪が適用されてしまいますよ

って事ですから。

今更、そんな法律を作っても何の意味もありません。


平成10年の川崎協同病院事件や、平成16年の
道立羽幌病院事件、そして平成12年の
射水市民病院事件や平成18年の
和歌山県立医科大附属病院紀北分院事件など、
医師末期患者の人工呼吸器を外して患者が死亡し
書類送検された事件は、その後もいくつかあります。

ちなみに川崎協同病院事件は、人工呼吸器を
はずしただけでなく、その後筋弛緩剤を注射したので、
裁判になって最高裁まで行っています。
そいで、この事件は東京高裁で懲役1年6か月、
執行猶予3年の判決が出て、2009年12月7日に
最高裁が上告を棄却し高裁判決が確定しています。

それ以外の事件では、医師が殺人罪で書類送検は
されたんですけど、結局不起訴にはなっています。


結果的に不起訴になったとはいえ、本人も家族も
望んでいるとしても、末期患者の人工呼吸器を止めたら
医師が殺人罪で書類送検される、という事ですから。
問題ですよね。
もしかしたら、起訴されるかもしれないんですから。

そうならないために、きちんと法律を整備する、
という事は医療関係者にとっては最も重要な事ですし、
患者さんや家族の人にとっても大事な事だと思います。

もちろん、法律を作ったらそれだけで解決する、
という問題ではないんですけれど、
早く法整備されると良いですね。
「トモダチ作戦」日本人女医が先駆け
いつのまにか、東日本大震災から、
もう一年が経ってしまいましたね。
早いもんですねー。

テレビでも、また良くやるようになりましたが、
やっと復興庁が出来たばかりで、予算の執行も
まだまだこれから、ってとこで。
ほんと、日本の政府、役人は腰が重くてダメですね。

トモダチ作戦」って作戦をアメリカ軍が行った、
という事は皆さんもご存知だと思いますけど。

実は、日本人の女性医師がその先駆けだった、
って事、知ってましたか。
私は、今回の記事を見て初めて知りました。

この女性医師もすごいと思いますけど、
やっぱり米軍はスピード速いですよね。
行動力あるし。

平時であれば、きちんと手続きを踏んで
じっくり時間をかけてやる、ってのも良いけど。
有事にも同じ事をやられると、困りますよね。

個人的に、すごくおもしろかった記事なので、
ちょっと紹介しますね。



トモダチ作戦」 奔走した日本人女性医師 
「被災地へ薬を」 米軍に直接交渉

 ■祖母の悲報乗り越え任務遂行

東日本大震災では米軍による支援活動
トモダチ作戦」が大きな成果を上げたが、
その先駆けが被災地への医薬品の
輸送だったことはあまり知られていない。

東京・本駒込の日本医師会(日医)に
医薬品が集まるめどが立ったのに、
輸送手段が見つからない。

厳しい局面で機転を利かし、米軍
直接交渉したのは、米ハーバード大学の
人道支援組織の一員として派遣された
有井麻矢(ありい・まや)医師(31)だった。
(河合雅司)

                 

震災発生から1週間もたたない昨年3月16日。
被災地から「医薬品が足りない」
との声が日医に相次いでいた。

製薬各社の協力で確保できたが、
問題は膨大な量をどう迅速に運ぶかだった。
期待した航空自衛隊から色よい回答を得られず、
落胆が広がった。

米軍に協力要請できるかもしれません」。
声を上げたのは、たまたま居合わせた有井だった。

当時、米エール大学に所属していた有井が、
人道支援組織「ハーバード・ヒュマニタリアン・
イニシアティブ」のメンバーとして
一時帰国したのは前日15日だ。
初対面の有井の提案を
日医幹部は即座に受け入れた。

有井は「絶対に成功させよう」と腹をくくった。


 ◆逆に「アリガトウ」

米国を出発する前にエール、ハーバード両大学の
同僚らから紹介された人々に電話や
メールを送り続け、18日未明、
米国大使館から返事が来た。
交渉の末、米軍機による輸送は19日と決まった。

「アリガトウ」。
連絡を取り合っていた米軍担当者からの
言葉に有井は戸惑った。

自分たちが頼んでいるのに、なぜ感謝されるのか。
医薬品輸送は大震災発生後、横田基地からの
支援としては初めての大型作戦だった。
米軍も活躍の場を求めていたのだと感じた。

 
アクシデントが起きたのは輸送前日だった。
横田基地からのメールには
「USAID(米国際開発局)が最終的に
承認しなければ、われわれは動けない」とあった。

輸送要請の申請書を記入してほしいという。
寝耳に水だった。急ぐしかない。
夢中で書類を書き、1時間後にゴーサインが出た。

出発当日の朝、米軍と最終連絡を取っていた
有井に母親から電話が入った。
祖母が亡くなった知らせだった。
輸送機には英語が堪能な有井が1人
同乗することになっている。
「しっかりしなければ」。
5分ほど一人トイレで泣いた。


 ◆各部署の総力結集

集まった医薬品8・5トンは、
横田基地までパトカーが先導した。
横田基地でも特別扱いだった。
ゲートはノーチェック。
荷降ろし、梱包(こんぽう)、輸送機に積み込む
作業にはさまざまな部署から何十人もが駆けつけた。

「私たちはオバマ大統領に日本の
人道支援のためにと集められたチーム。
人命を助ける作戦に参加できてよかったです」
と口々に語った。
米軍兵士の表情は誇りに満ちていた。

 
輸送機は岩手県の花巻空港に無事降り立った。
しかし、次に向かった仙台空港は
闇に包まれ着陸できない。
管制塔とのやりとりが緊迫感を増す中、
誘導の明かりがともった。
自衛隊だった。
自衛隊は降ろされた医薬品を
被災地に陸送する任務も引き受けた。

 
数日後、有井の姿は宮城県気仙沼市の
被災地にあった。
そこには医薬品だけでなく、食料や水、
トイレが足りず、プライバシーが
確保できていない避難所が広がっていた。

当時を振り返って有井はこう語る。
「災害医療では、医療や薬だけでなく、
公衆衛生を含めて現地ニーズを迅速に把握し、
対応できる協力体制が必要。
知識とトレーニング、そして行政との連携が重要です」

   

【プロフィル】有井麻矢

ありい・まや ハーバード大救急科医師
専門は国際救急。
慶応大医学部卒業後、慶応大病院、
エール大病院などに勤務。
神奈川県出身。


『産経新聞 :2012年3月18日』


この記事から推測すると。
3月16日かそのくらいから、
有井先生が電話やメールを送り続け、
18日未明、米国大使館から返事が来た。
米軍機による輸送は19日と決まった。

って事ですから、3日ですかね、多分。
そいで、輸送前日に
「USAID(米国際開発局)が最終的に
承認しなければ、われわれは動けない」。
という事で、輸送要請の申請書を書いたら、
1時間後にゴーサインが出た。

という事ですよ。

横田基地までパトカーが先導した。
横田基地でも特別扱いだった。
ゲートはノーチェック。


というのも、スピード重視って事もあるし。
やはり、こういうのに関しては、
アメリカというか米軍は、
日本よりも数段上ですね、確実に。

日本も、こういうとこ、見習ってもらいたいです。



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