猫の毛玉 映画館 政治

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映画感想文を体内で丸めて吐き出す。

グリーン・ゾーン 【戦場と ニセ情報と 陰謀と】

tag 戦争 アクション サスペンス 政治

『グリーン・ゾーン』 GREEN ZONE
2010年・フランス=アメリカ=スペイン=イギリス
2003年イラクの戦場を舞台に、米兵の疑念を描く。

 マット・デイモン主演×ポール・グリーングラス監督の『ボーン』シリーズ2・3コンビが送る戦場アクション。アメリカを中心とした多国籍軍がイラク―バグダットを制圧した直後、ミラー准尉(マット・デイモン)は大量破壊兵器捜索の任務に就いていた。

 アメリカのイラク制圧後、バグダッド中心地の近代的な建物群が並ぶ地域を連合暫定統治当局が拠点としたことから、この10k㎡エリアをインターナショナル・ゾーン通称グリーン・ゾーンと呼んだ。ので、そんな映画タイトル。このグリーン・ゾーンは国家権力の象徴的な地域(フセイン時代は宮殿があった)で、今では主権はイラクに返還されている。しかしながら映画は2003年が舞台なので、まだバリバリ米国が支配していた。

 ああ眠かった。この日は映画3本目ってこともあって、疲れてたので眠くなっただけかもしれないけど。何だろう、ああアメリカってこういうことやりそうだよねって感じで。特に展開が面白いわけでもなく、想定の範囲内の出来事が描かれるだけ。確かに、監督が戦場ドキュメンタリー出身だけあってリアルさはあった!うん、明確にこのテーマで映画1本作ったってことが価値あるのかもしれない。
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インビクタス/負けざる者たち 【復讐は 何も産まぬが 赦しこそ】

tag ヒューマン スポーツ 政治 歴史 動画付き

『インビクタス/負けざる者たち』 INVICTUS
2009年・アメリカ
南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領伝記映画。

 マンデラさんといえば名高き反アパルトヘイト(人種隔離政策)の騎士。マンデラさんについて映画を作ろうとしたら、何時間あっても足りないような生ける伝説。それをクリント・イーストウッドはうまく纏めた!といっても原作本はあるんです。ジャーナリストのジョン・カーリンがマンデラさんの全面的協力を受けて書き上げたノンフィクション『インビクタス~負けざる者たち』(原題"Playing the Enemy: Nelson Mandela and the Game That Made a Nation")がソレ。

 映画は1995年のラグビー・ワールドカップを巡るマンデラさんの暗躍にフォーカスをあて、枝葉は思い切って削ぎ落としたシンプルなドラマとなっています。

 オラ、ラグビーとアメフトの違いわっかんねぇな!と悟空が言ったかどうかはわかりませんが、私は違いのわからない女。知らなくても映画は楽しめます。ニュージーランドに住んだことあるからオールブラックス(世界的に人気のあるニュージーランドの最強ラグビーチーム)はよく存じ上げておりますよ。カマテカマテ!(ka mate=死)カオラカオラ!(ka ora=生)

 タイトルは"invincible"(=無敵の、揺るぎない)のラテン語形。映画で描かれるとおり、19世紀英国の詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの短い詩の題。詩人ヘンリーは12歳の頃病魔に冒され左足の膝下を切断する悲劇にあいました。子供が片足を無くし、皆と遊べなくなるのはどれほどの孤独だったろう。

※詩"Invictus"原文はコチラ⇒Invictus (ポエムハンター)

 当ブログでも『チェンジリング』『グラン・トリノ』『ミリオンダラー・ベイビー』と書いてきたイーストウッド監督作。どこか冷徹なカメラワークと、語りすぎない演出と、言いたいこと以外には重きを置かないシンプルさが好きです。毎回違ったテーマ(信念、贖罪と救済、尊厳死など)をグサリと抉るように描くスタイルも好きです。次回作はマット・デイモン主演のスーパーナチュラル・スリラー"Hereafter"2010年12月に米国公開予定!何でも死者とコミュニケーションできる男の話らしいよ。
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キャピタリズム マネーは踊る 【マネーとは 寂しがりやと 見つけたり】

tag ドキュメンタリー 政治

『キャピタリズム マネーは踊る』 CAPITALISM: A LOVE STORY
2009年・アメリカ
突撃隊長マイケル・ムーアが送る、米国資本主義への痛烈な批判。

 まずわかっていて欲しいこと。ドキュメンタリーは、人の手が加わることによって事実ありのままとはいえない。例えば『アース』はエコ・ビジネス的な主張をするし、『The Cove』は科学的データの不十分なままイルカ保護布教活動をしている。人の手が加わる限り、そこには主義主張が存在するのだ。これは当たり前のことなので、本作も勿論マイケル・ムーアが言いたいことを主張するために編集された映画だよ。

 私はこの映画を観て良かったと思った。なぜなら『スペル』の婆さんの気持ちがわかったから!『スペル』では伝わってこなかった社会背景が、やっとこ垣間見れた感じ。これはぜひ、2本立てで観たいものです。DVD発売の際はぜひセットで!

 原題にはラブ・ストーリーとあります。ある愛の物語。それは本来、資本主義における金持ちのカネに対する愛の深さを皮肉ったタイトルだそうです。が、私にはマイケル・ムーアのアメリカに対する愛の物語に見えた。この人は愛国者だよね。アメリカよ、このままで良いのか?そう強く問題提起する姿に、最後は涙が出た。

 現在は東京のシャンテと大阪の梅田の2箇所でしか公開されていないけど。2010年1/10~全国に拡大公開されるので、お近くで上映していたら是非!

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実験室KR-13 【全体の 利益のためには 何を為す】

tag ホラー サスペンス 政治

『実験室KR-13』 THE KILLING ROOM
2008年・アメリカ
とある実験室で起こる異常な体験。密室スリラー。

 CIAが1945年('53年とも)から行っていたとされるマインド・コントロール実験―プロジェクトMKウルトラ。ナチスに敬意をはらってドイツ語のMIND KONTROLEの頭文字をとってMK。元々ナチスが研究していたものだから。

 MKウルトラ実験では、薬物(LSDなどなど)を使って洗脳するなど人権無視な実験を秘密裏に行っていた、と言われています。'73年に関連資料がすべて破棄されたため、真相は藪の中ですが。裁判にもなってたりするので、まあCIAのやりそうなこったっと受け止められている様子。

 で、この映画の方ですが。現在もそのMKウルトラ実験が続行されているとしたら…という設定で描かれます。なかなか緊迫感があってテンポが良くて、シチェーション・スリラーとしては面白かったですよ。役者も渋い実力派ですし。

 原題は殺戮部屋。=実験室!誰が殺されるのか?なぜ殺されるのか?実験の目的はなにか?生きてここを出られるのか?
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"World War Z"映画化企画に新しい脚本家

tag ホラー パニック 政治 ゾンビ SF

 企画がつつがなく進行しているのかどうか、心配な作品てありますよね。一時パっと映画化決定!などと話題になって、その後ぱったり音沙汰がないとか。そんな作品のひとつが"World War Z"です。原作は、監督メル・ブルックスのご子息マックス・ブルックスが書いたドキュメンタリー風ゾンビ戦記。

※詳しくは昨年12月に書いたエントリ参照⇒"World War Z"は2010年公開予定

 原作小説の邦訳が出ていないので、この映画化を非常に楽しみにしとるのですが、2010年公開の予定がどうも遅れているようなのです(2012年公開予定に軌道修正した模様)。で、なんと、今になって脚本の修正をすべく新しく脚本家を雇ったというのですよ。

 元々のJ.マイケル・ストラジンスキーが脚本化したものに、この度雇われたマシュー・マイケル・カーナハン『大いなる陰謀』『消されたヘッドライン』『キングダム/見えざる敵』)が修正を施すってことらしい。

 なんだかバタバタしてますなぁ。原作者のブルックスはストラジンスキーが書いた脚本に大変満足していた、と伝えられていますのに。でもまあ、カーナハンのこれまでの実績を考えれば、期待は高まりますね。ドキュメンタリー・タッチに政治的に描かれるゾンビワールドを早く観たいと楽しみにしてます。

※'09/7/27追記:マーク・フォスター監督降板!バタバタは続く。
※'10/4/24追記:マーク・フォスター監督降板してなかった。製作続行だそうです。
ただいま脚本修正中だって。

Paramount Renews Their Option on a World War Z Adaptation(FirstShowing.net '10/4/23の記事)

あとは一刻も早く原作の方を日本でも出版していただきたく!ひらに!ひらに!
(追記:2010/4/10邦訳版が文藝春秋から出るとのこと『World War Z』浜野アキオ訳)
WORLD WAR ZWORLD WAR Z
マックス・ブルックス

※読んだけど超面白かったですよ!


2010/07/22追記:ブラッド・ピットの出演が正式に決定!
Brad Pitt to Record the Zombie Uprising in World War Z (BeyondHollywoodより)
 原作者マックス・ブルックスによれば、2012年夏公開を目指して製作中。製作のブラッド・ピットが公式に出演を決め、監督はマーク・フォスターで続行。

 ピット、記者の役かなあ。ていうか、どんな構成の映画にする気なのか?インタビュー形式なのか、同時進行アンサンブル系なのか。原作が最高に面白いだけに、映画化には多少不安も感じる。面白いの、作ってくれ!
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劔岳 点の記 【何の為 この険しさを 登るのか】

tag ヒューマン 青春 スポーツ 政治

『劔岳 点の記』
2009年・日本
新田次郎の同名小説をカメラマン木村大作の監督で映画化。

 原作小説を読んでないまま観に行きました。平板で退屈な映画だ、との噂を聞いていまして、どんだけかしら?と悪い意味で期待してました。日本の映画は製作者の自己満足や子供だましなものが多くていかん!などと言えるかなぁ、なんて。

 したっけ、のめりこんで観ちゃったよ!やや長いなぁとは思ったものの、登場人物の心のドラマが盛りだくさんに描かれていて全然退屈しなかった。アクションものとか派手な映画が好きな人には向かないだろうけど。上映時間は本編139分。あと20~30分削ったらもうちょっと万人受けすると思うのだがな。あとアリエナイ表現が数箇所あったのには驚いたので、もうちょっとリアルさを身につけて欲しかった。

 予想に反してとても良い映画でしたので、やり場の無い毒気を抜くため、代わりに『アマルフィ 女神の報酬』とかいうやつの悪口を言っちゃうよ。ドコモ動画でしか観れないアマルフィ・ビギンズってなんじゃそりゃ!そういうマーケティングが大嫌いさ。ドコモに乗り換えたりしないよ!加えて、テレビで織田裕二主演映画を一気に放送して盛り上げようとしちゃって。昨今のメディア・ミックス商法がどうにもクダラナくて!観る気が起きないね。
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消されたヘッドライン 【真実を 伝える使命 それが記者】

tag サスペンス 犯罪 政治 ミステリ 動画付き

『消されたヘッドライン』 STATE OF PLAY
2009年・アメリカ=イギリス
英国BBC製作のTVシリーズ『ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図~』(2003年)の映画化。

 こいつは役者が豪華だぜ!主人公新聞記者のキャルにラッセル・クロウ、相棒の新米記者デラにレイチェル・マクアダムス『きみに読む物語』)、編集長にヘレン・ミレン(『クイーン』、『ホワイトナイツ 白夜』など)、キャルの親友でもあるコリンズ議員にベン・アフレック、議員の妻アンにロビン・ライト・ペン(ショーン・ペンの奥様)、殺害されたソニアの友人ドミニクにジェイソン・ベイトマン『ハンコック』)、検死官にヴィオラ・デイヴィス『ダウト ~あるカトリック学校で~』)。

すげー!ついダラダラと並べてしまった。

 この映画の元となったTV版も観たくなりました。だってビル・ナイ様と、ジェームズ・マカヴォイ&マーク・ウォーレンの『ウォンテッド』コンビが出てんの。NHKで放送してたらしいけど、観たかったなぁ!1時間枠×6話だから長すぎなくて良いやね。DVDはまだ日本版が出てない様子で残念です。(´・ω・`)ダシテヨ

 原題は進行状況、現況といった意味の政治用語。まさに、事実関係がはっきりするごとに刻々と変化する“現在の状況”はスリリング。
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ラッセル・クロウ
ベン・アフレック

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『華氏451』って何だ?

tag SF ヒューマン ファンタジー サスペンス 政治

久方ぶりの木曜コネタ劇場です。毎週って言っておきながら月一になってますね。

華氏451 [DVD] レイ・ブラッドベリの小説を映画化したフランソワ・トリュフォー監督の『華氏451』 "FAHRENHEIT 451"(1966年)のタイトルは、紙が燃え始める温度(燃焼点)のこと。華氏451度は、私達日本人が普段使う摂氏に直すと233度になる。

 フランス人であるトリュフォー監督が英語ベースの映画を撮ったのは本作のみ。本人としては英語の台詞がどうも巧く書けておらず、フランス語バージョンの方が気に入ったようですよ。

 この映画は本好きには堪らんですよね。『高慢と偏見』とか『カイエ・ドゥ・シネマ』とかあらゆる本や雑誌がちらちら出てきたり引用されたり。積まれた本の中に知っているタイトルがあると嬉しくなって悲しくなったりして。ほとんど英語表記だけど。

 この世界を受け継ぐのが『Vフォー・ヴェンデッタ』『リベリオン -反逆者-』なんだろうな。でも『華氏451』はそこまで暴力的ではなく、ラストシーンの詩的さが余韻の残る名作だと思う。原作、読もう読もうと思って今日まできてしまった。本当に読もう。
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ブッシュ 【不惑とは よく言ったもの 彼もまた】

tag ヒューマン コメディ 歴史 政治

『ブッシュ』 W.
2008年・アメリカ=香港=ドイツ=イギリス=オーストラリア
オリバー・ストーン監督の43代大統領ブッシュの伝記映画。

 オリバー・ストーンといえば『JFK』『ニクソン』と大統領映画を撮ってますね。淡々としたイメージがあるんですけど、どうですか?ちなみに『ウォール街』のリメイク企画(続編の位置づけ?)が順調に進んでいるようですよ。監督据え置き、出演者はマイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、ハビエル・バルデム。2011年公開予定なり。

 おっと本題に戻って、原題はシンプルにW.であり、ブッシュのミドル・ネームであるウォーカーWalkerから取られている。父親にWと呼ばれていたらしいよ。そんなWの生き様をコメディタッチに描いた映画。人物伝としては面白かったよ。

ブッシュといえば私、これが好き。
こども「ホワイトハウスってどんなところ?」
ブッシュ「うん。白いよ。
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ジョシュ・ブローリン

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ミルク 【このうねり 弱者に希望を 灯しつけ】

tag ヒューマン 政治 動画付き

『ミルク』 MILK
2008年・アメリカ
サンフランシスコ市政執行委員に立候補し、ついには当選したゲイ活動家ハーヴィ-・ミルクの伝記映画。

 ゲイとして堂々と生きるために恋人と共にサンフランシスコに移住しカメラ屋を構えたミルク氏の、人生最後の8年間(1970年~'78年)が描かれている。

 どうにもゲイ映画としての側面ばかりが注目されそうだけど、それだけじゃない。自分のプライベートは丸っきり犠牲にして、虐げられている人々に希望を与えるのに命を捧げた。その1人の人間の生き様に、心を打たれる。そしてどこか悲哀を感じるのだ。

 しかし、一昔前の同性愛映画は美少年だ美青年だでファンタジーっぽかったけど。昨今はよりリアルになってきたね。普通のオッサンだもんね。良いことだ。
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ショーン・ペン

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