映画の話。
映画『グランド・ブタペスト・ホテル』を見たよ。
文学関係のお知り合いがおススメしてらしたので見た。
コメディ・ミステリーといえばいいのかな。
トムとジェリーだって何度も死体になったり全身焼け焦げたりするけど、深刻にならないじゃない。
そういう、深刻な話をからっと陽気に描く感じが良かった。
お話が何重にも入れ子状になっている。
主人公のベルボーイ見習いは、移民で、学歴も実績も家族も(多分戸籍も)なくて、
だから「ゼロ」と呼ばれて山奥のホテルの下働きをしているんだけれど、
上司がなかなかの食わせ者でいい。
知的で、職業人として優秀で、女に手が早く、時代に翻弄されながらも抜け目ない。
会話のテンポの良さが驚異的で、背景の豪華さも相まってさらっと見せてしまうけれど、
あれ、今怖いこと言ってなかった?って時折ぎょっとする。
グランド・ブタペスト・ホテルもそうだけれど、出てくる土地や国や建物の名前はすべて、
ヨーロッパのどこかにありそうで、何かを意味し、示唆しているけれど、実在しない。
そういう所も凄く紳士だと思った。
観終わって、スタッフロールが流れ始めて、冒頭に「S・ツヴァイクの作品にモチーフを得た」
とあって、膝を打つよな思いだった。
…観て貰わないと分かりづらいが、つまり。
制作者の意図を汲んで分かり易く云うならば、ちょいちょい、
赤い旗を掲げた極右政党国家が後ろにいる臭わせが有り、
貧富の格差激しく戦争のきな臭さがただよい、
国から追われた東南の民族が登場する。
そして、ツヴァイクは、そこから逃れきれなくて自害した作家なのだ。
「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」している作品だと思った。
ツヴァイクの元ネタになった作品を探してみたのだけれど、
ツヴァイクの人生以上に思い至らなくて、この人の他の本、手軽に読めたらいいな、と思ったりしたのでした。
息子が好きな『イップマン・完結編』を見た。
イップマンは、ブルース・リーの拳法の師匠になった人で、ドニー・イェン主演で過去に3作が出ている。
まあ、分かり易い勧善懲悪もののアクション映画なので、
イップマンの前に立つ人は拳法を馬鹿にする人だったり、
制圧下の日本軍だったり、人種差別期のアメリカ海軍だったりする。
時代劇の『水戸黄門』や『桃太郎侍』を見て、あんな旗本や代官や庄屋はいない、と怒る人がいないのと同じで、
あんな分かり易い軍人や拳法家はいない、というのを頭に入れてから見れば
そんなに問題ではないのだろうが。
まあ、ちょいちょい気持ちは引っかかるよね。
自分の国が出てくるから、というだけでなく、描かれ方の片方観が
娯楽として切り捨てていいのかな、と中途半端さに見えてしまう。
実在する名前を出して描く、というのはそういうことなんだと思う。
それはそれとして、アクション映画として見るならば、
今回、拳法家としての「品」が感じられなくてとても残念だった。
五輪の柔道の試合でも、始めと終わりの「礼」を切って放映するな、と再三言っているが、
今回、イップマンが相手に対して「礼」をする場面がホントにない。
軍隊の空手練習が後ろで行われている時に、のちに敵として登場する先生は
礼をして稽古を終わらせているのだけれど、急に参戦することになった試合で
イップ先生、礼をしないで終わるのだ。
そこは、どうなんよ。
私的には詠春拳を誰よりも強く、かっこよく、美しく見せてくれる為には必須に思うとこなので、
なんかこう、すっぽ抜けた感じに思ってしまうのだ。
実在したイップ先生70代の頃の話で、もっと年老いたメイクで出てもよかったんじゃないかなあ、
そしたらもっと、「戦うイップマン」でなくて、人生酸いも甘いも嚙み分けて
「目の前の人間を見るイップマン」が描けたのではないかなあ、と思って、もやっと、が残って残念だった。
ブルース・リーも、正直私は名前くらいしか知らない人で、
そのパート、要ったかなあ?という気がした。
サブタイトルの「継承」した息子をもっと描いて欲しかった。
折角最終章だというから見たけど、他の3作に比べて、
戦う相手の体術も明確な違いが打ち出せていない感じでちょっと残念だったかな。
まあ、云うのは簡単で、作る側というのはそういうの全部踏まえた上で、
目の前にあるこれ、になったのでしょうけれども。
…なんて話をしていたら、違うバージョン(役者、制作陣が違う)の『イップマン』映画を
また借りて来たそうで、どれだけ好きなんだ、『イップマン』。
最近の緊迫したロシア・ウクライナ情勢のことを漁っていたら、
スターリン治世下で行われた「ホロドモール」なる単語を知った。
『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』という映画にもなっているそうで、
これも見ておかんとな、と思ったのだけれど、この辺のソ連モノはホントに怖いのが多い。
でもこういうのちゃんと作れるところは凄いと思っている。
また一人で見ることになりそうだな。
文学関係のお知り合いがおススメしてらしたので見た。
コメディ・ミステリーといえばいいのかな。
トムとジェリーだって何度も死体になったり全身焼け焦げたりするけど、深刻にならないじゃない。
そういう、深刻な話をからっと陽気に描く感じが良かった。
お話が何重にも入れ子状になっている。
主人公のベルボーイ見習いは、移民で、学歴も実績も家族も(多分戸籍も)なくて、
だから「ゼロ」と呼ばれて山奥のホテルの下働きをしているんだけれど、
上司がなかなかの食わせ者でいい。
知的で、職業人として優秀で、女に手が早く、時代に翻弄されながらも抜け目ない。
会話のテンポの良さが驚異的で、背景の豪華さも相まってさらっと見せてしまうけれど、
あれ、今怖いこと言ってなかった?って時折ぎょっとする。
グランド・ブタペスト・ホテルもそうだけれど、出てくる土地や国や建物の名前はすべて、
ヨーロッパのどこかにありそうで、何かを意味し、示唆しているけれど、実在しない。
そういう所も凄く紳士だと思った。
観終わって、スタッフロールが流れ始めて、冒頭に「S・ツヴァイクの作品にモチーフを得た」
とあって、膝を打つよな思いだった。
…観て貰わないと分かりづらいが、つまり。
制作者の意図を汲んで分かり易く云うならば、ちょいちょい、
赤い旗を掲げた極右政党国家が後ろにいる臭わせが有り、
貧富の格差激しく戦争のきな臭さがただよい、
国から追われた東南の民族が登場する。
そして、ツヴァイクは、そこから逃れきれなくて自害した作家なのだ。
「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」している作品だと思った。
ツヴァイクの元ネタになった作品を探してみたのだけれど、
ツヴァイクの人生以上に思い至らなくて、この人の他の本、手軽に読めたらいいな、と思ったりしたのでした。
息子が好きな『イップマン・完結編』を見た。
イップマンは、ブルース・リーの拳法の師匠になった人で、ドニー・イェン主演で過去に3作が出ている。
まあ、分かり易い勧善懲悪もののアクション映画なので、
イップマンの前に立つ人は拳法を馬鹿にする人だったり、
制圧下の日本軍だったり、人種差別期のアメリカ海軍だったりする。
時代劇の『水戸黄門』や『桃太郎侍』を見て、あんな旗本や代官や庄屋はいない、と怒る人がいないのと同じで、
あんな分かり易い軍人や拳法家はいない、というのを頭に入れてから見れば
そんなに問題ではないのだろうが。
まあ、ちょいちょい気持ちは引っかかるよね。
自分の国が出てくるから、というだけでなく、描かれ方の片方観が
娯楽として切り捨てていいのかな、と中途半端さに見えてしまう。
実在する名前を出して描く、というのはそういうことなんだと思う。
それはそれとして、アクション映画として見るならば、
今回、拳法家としての「品」が感じられなくてとても残念だった。
五輪の柔道の試合でも、始めと終わりの「礼」を切って放映するな、と再三言っているが、
今回、イップマンが相手に対して「礼」をする場面がホントにない。
軍隊の空手練習が後ろで行われている時に、のちに敵として登場する先生は
礼をして稽古を終わらせているのだけれど、急に参戦することになった試合で
イップ先生、礼をしないで終わるのだ。
そこは、どうなんよ。
私的には詠春拳を誰よりも強く、かっこよく、美しく見せてくれる為には必須に思うとこなので、
なんかこう、すっぽ抜けた感じに思ってしまうのだ。
実在したイップ先生70代の頃の話で、もっと年老いたメイクで出てもよかったんじゃないかなあ、
そしたらもっと、「戦うイップマン」でなくて、人生酸いも甘いも嚙み分けて
「目の前の人間を見るイップマン」が描けたのではないかなあ、と思って、もやっと、が残って残念だった。
ブルース・リーも、正直私は名前くらいしか知らない人で、
そのパート、要ったかなあ?という気がした。
サブタイトルの「継承」した息子をもっと描いて欲しかった。
折角最終章だというから見たけど、他の3作に比べて、
戦う相手の体術も明確な違いが打ち出せていない感じでちょっと残念だったかな。
まあ、云うのは簡単で、作る側というのはそういうの全部踏まえた上で、
目の前にあるこれ、になったのでしょうけれども。
…なんて話をしていたら、違うバージョン(役者、制作陣が違う)の『イップマン』映画を
また借りて来たそうで、どれだけ好きなんだ、『イップマン』。
最近の緊迫したロシア・ウクライナ情勢のことを漁っていたら、
スターリン治世下で行われた「ホロドモール」なる単語を知った。
『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』という映画にもなっているそうで、
これも見ておかんとな、と思ったのだけれど、この辺のソ連モノはホントに怖いのが多い。
でもこういうのちゃんと作れるところは凄いと思っている。
また一人で見ることになりそうだな。
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