アゼルバイジャン航空の悲劇についてのアリエフの説を分析する(抄訳)
2024/12/30のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。アゼルバイジャンのアリエフ大統領はアゼル航空墜落事件についてロシア側が隠蔽工作を行ったと主張したが、仮にその主張に真実が含まれているとすれば、それは個人的な要因によるものであって、国家レヴェルでの陰謀ではないだろう。
Analyzing Aliyev’s Theory About The Azerbaijan Airlines Tragedy
アリエフの発言
2024/12/24に起きたアゼルバイジャン航空の悲劇について、アゼルのイルハム・アリエフ大統領はインタビューで自説を語った。
彼はロシア外務省が運営するモスクワ国立国際関係大学の卒業生で、最近ではロシアとの同盟関係を再確認し、ロシアにとって信頼の置けるパートナーであり続ける為に、西洋からの多大な圧力に耐えて来た。従って彼が誰かに命じられてロシアを中傷するとは考えられない。
彼の見解では、捜査が進行中なので何が起こったのか最終的な結論は出ていないのだが、飛行機はロシアによって誤って撃墜され、その後ロシアの電子戦によって更に制御不能になり、ロシア当局はそれを隠そうとした。
残念ながら、インタビューの中で彼は、ロシアの防空軍と電子戦の引き金になったウクライナのドローン攻撃について一切触れなかった。
その理由は不明だが、ここは憶測を逞しくするより、彼自身から説明が出て来るのを待つ方が賢明だろう。下手にロシアの著名人等が彼を非難すれば、二国間関係が悪化するかも知れない。ロシアの国益はアゼルバイジャンとの戦略的同盟を維持することであって、部外者が「いいね!」欲しさにこれを危うくすべきではない。
またアリエフは、国家間航空委員会が主導してこの問題を調査することを「断固として拒否した」とも述べた。と云うのも、
「この組織が主にロシア当局者によって構成され、ロシア市民が率いていることは秘密ではありません。ここでは客観的要因を十分に確保出来ないでしょう。」
断っておくと、国家間航空委員会はモスクワに拠点を置き、独立国家共同体と繋がっている。捜査には参加するが、主導することは無い。
アリエフはまたこうも述べている:
「飛行機は既に制御不能で海に落ちる可能性が高かった為、グロズヌイの地上支援サーヴィスが飛行機を故意にコース外に誘導したと考える人も居ます。若しそうであれば、隠蔽工作は成功し、所謂鳥(の衝突)説が最も可能性の高いヴァージョンとして提示されていたでしょう。」
彼は、何が起こったかについて早まったことは言いたくないが、「明らかな問題」について意見を述べているだけだと明言した。
この点について彼が行っていることは明らかに推測に過ぎないが、多くの自国民がこの問題について議論している為、コメントせざるを得ないと感じたのだろう。
アリエフはその後、謝罪、罪を認めること、責任者に対する刑事罰、アゼルバイジャン国家とこの悲劇の犠牲者達への補償を要求してインタビューを締め括った。
アリエフの発言の分析
彼の説は興味をそそるもので、国内外で多くの支持者を得ることは間違い無いだろう。だが彼自身が、何が起こったのかについての説明の最終的なヴァージョンはまだ分かっていないと警告していることを忘れるべきではない。
若し隠蔽工作について彼が主張したこと(現時点では単なる推測だが)に真実が含まれているとするならば、それは国家の陰謀ではなく個人的な要因によって説明出来る。
危機の時にはパニックに陥り、冷静に考えていればやらないであろう様な非常に恥ずべき行動を取る人も居る。これは言い訳ではなく、人間の振る舞いについての説明だ。これはロシア人だけに限ったことではなく、世界中のあらゆる民族グループについても言えることだ。
事件当時の展開の早さを考えれば、プーチン自身が関与した国家的陰謀の可能性は完全に排除される。地元当局がプーチンに状況を伝えている暇など無かった筈だ。
ドローン攻撃を受けた際に防空システムを使用すること、電子線によって地域一帯をジャミングすること、民間機を方向転換させることは、標準的な対応だ。これらの何れについてもスキャンダラスな点は無い。
悲劇の直後にロシア側の一部が鳥の衝突説やガスボンベの爆発説を唱えたが、これはどうもありそうにない説明だった為、アリエフは激怒した。
と言ってもこの混乱の責任者は恐らくクレムリンではなく、パニックに陥った当局者達だろう。アリエフも、これにプーチンが関与していたことを仄めかしたりはしていない。
アリエフはアゼルバイジャンとロシアの戦略的同盟を維持することの重要性を理解し、責任有る行動を取ろうとしている。他の人々も自制心を発揮すべきだろう。
Analyzing Aliyev’s Theory About The Azerbaijan Airlines Tragedy
アリエフの発言
2024/12/24に起きたアゼルバイジャン航空の悲劇について、アゼルのイルハム・アリエフ大統領はインタビューで自説を語った。
彼はロシア外務省が運営するモスクワ国立国際関係大学の卒業生で、最近ではロシアとの同盟関係を再確認し、ロシアにとって信頼の置けるパートナーであり続ける為に、西洋からの多大な圧力に耐えて来た。従って彼が誰かに命じられてロシアを中傷するとは考えられない。
彼の見解では、捜査が進行中なので何が起こったのか最終的な結論は出ていないのだが、飛行機はロシアによって誤って撃墜され、その後ロシアの電子戦によって更に制御不能になり、ロシア当局はそれを隠そうとした。
残念ながら、インタビューの中で彼は、ロシアの防空軍と電子戦の引き金になったウクライナのドローン攻撃について一切触れなかった。
その理由は不明だが、ここは憶測を逞しくするより、彼自身から説明が出て来るのを待つ方が賢明だろう。下手にロシアの著名人等が彼を非難すれば、二国間関係が悪化するかも知れない。ロシアの国益はアゼルバイジャンとの戦略的同盟を維持することであって、部外者が「いいね!」欲しさにこれを危うくすべきではない。
またアリエフは、国家間航空委員会が主導してこの問題を調査することを「断固として拒否した」とも述べた。と云うのも、
「この組織が主にロシア当局者によって構成され、ロシア市民が率いていることは秘密ではありません。ここでは客観的要因を十分に確保出来ないでしょう。」
断っておくと、国家間航空委員会はモスクワに拠点を置き、独立国家共同体と繋がっている。捜査には参加するが、主導することは無い。
アリエフはまたこうも述べている:
「飛行機は既に制御不能で海に落ちる可能性が高かった為、グロズヌイの地上支援サーヴィスが飛行機を故意にコース外に誘導したと考える人も居ます。若しそうであれば、隠蔽工作は成功し、所謂鳥(の衝突)説が最も可能性の高いヴァージョンとして提示されていたでしょう。」
彼は、何が起こったかについて早まったことは言いたくないが、「明らかな問題」について意見を述べているだけだと明言した。
この点について彼が行っていることは明らかに推測に過ぎないが、多くの自国民がこの問題について議論している為、コメントせざるを得ないと感じたのだろう。
アリエフはその後、謝罪、罪を認めること、責任者に対する刑事罰、アゼルバイジャン国家とこの悲劇の犠牲者達への補償を要求してインタビューを締め括った。
アリエフの発言の分析
彼の説は興味をそそるもので、国内外で多くの支持者を得ることは間違い無いだろう。だが彼自身が、何が起こったのかについての説明の最終的なヴァージョンはまだ分かっていないと警告していることを忘れるべきではない。
若し隠蔽工作について彼が主張したこと(現時点では単なる推測だが)に真実が含まれているとするならば、それは国家の陰謀ではなく個人的な要因によって説明出来る。
危機の時にはパニックに陥り、冷静に考えていればやらないであろう様な非常に恥ずべき行動を取る人も居る。これは言い訳ではなく、人間の振る舞いについての説明だ。これはロシア人だけに限ったことではなく、世界中のあらゆる民族グループについても言えることだ。
事件当時の展開の早さを考えれば、プーチン自身が関与した国家的陰謀の可能性は完全に排除される。地元当局がプーチンに状況を伝えている暇など無かった筈だ。
ドローン攻撃を受けた際に防空システムを使用すること、電子線によって地域一帯をジャミングすること、民間機を方向転換させることは、標準的な対応だ。これらの何れについてもスキャンダラスな点は無い。
悲劇の直後にロシア側の一部が鳥の衝突説やガスボンベの爆発説を唱えたが、これはどうもありそうにない説明だった為、アリエフは激怒した。
と言ってもこの混乱の責任者は恐らくクレムリンではなく、パニックに陥った当局者達だろう。アリエフも、これにプーチンが関与していたことを仄めかしたりはしていない。
アリエフはアゼルバイジャンとロシアの戦略的同盟を維持することの重要性を理解し、責任有る行動を取ろうとしている。他の人々も自制心を発揮すべきだろう。
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