川流桃桜の日々の呟き 国連データで見る黒海穀物協定の嘘
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国連データで見る黒海穀物協定の嘘

 2022/07/22にトルコと国連の仲介による黒海穀物イニシアチブは、世界有数の穀物輸出国であるロシアとウクライナが戦争に妨げられずに世界市場へ穀物を輸出することを促進する為の、人道的意味合いの強い協定だった。

 ところがまぁいざ蓋を開けてみると、約束を守ったのはロシアだけで、西洋は約束した制裁解除は実行しないし、キエフは人道回廊を悪用してドローン攻撃を仕掛けて来るし(それどころかロシア軍が攻撃して来たと主張するし)、国連も協力しないしで、ロシアは3回も延長して辛抱強く約束が果たされるのを待ったものの、結局仏の顔も三度までと言うことだろうか、2023/07/17にこれ以上は無駄と判断して更新を打ち切った


 この決定が穀物の市場価格に及ぼした影響は比較的軽微だった訳だが、これにはそもそも協定が世界の食糧安全保障役の確保には殆ど役に立っていなかったと云う事情が有る。

 国連のデータに拠れば、ウクライナからこのプロジェクトを通じて輸出された合計3,280万tの穀物は、3大陸45カ国に出荷されていた。地域別の内訳は、
 ・46%-アジア
 ・40%-西欧
 ・12%-アフリカ
 ・1%-東欧

 所得別に見ると、トウモロコシの90%と小麦の60%は高所得国と上位中所得国に、トウモロコシの10%と小麦の40%が低所得国と下位中所得国に輸出されている。2021年までと比べると、2022年以降は高所得国が小麦を買い占めている動きが顕著だ。最も支援を必要としている筈の低所得国は小麦を9%しか受け取っておらず(6%から微増はしているが)、トウモロコシに至ってはゼロ。人道目的で飢餓のリスクに曝されている国々を優先すると謳ってはいるが、実際にはこのイニシアチブは食糧危機の軽減には殆ど役に立っていなかったことが見て取れる。


 同じく国連の報告書に拠れば、「2022年7月、国連世界食糧計画はアフガニスタン、ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、スーダン、イエメンの飢餓を救う為に。合計725,167tの小麦を出荷した」ことになっている。つまり最貧諸国は全体の2%強ぽっちしか受け取っていないと云うことだ。

 因みに国別に見ると、ウクライナの穀物の最大の輸出先は、驚くなかれ、何と中国だ。中国がウクライナの最大貿易相手国であると云う記事は以前にも紹介したが、「中国はロシアの味方をしている」と思い込んでいる人は意外に思うのではなかろうか(実際には中立原則を貫いている)。因みに世界銀行に拠ると、中国は上位中所得国に分類されるので、小麦を買い占めているのは中国ではなく、西洋諸国だと云うことになる。
Volume of agricultural exports from Ukraine

 この偽善的な協定から撤退した後、プーチン大統領はロシア・アフリカ・サミットで、今後3~4ヵ月以内にアフリカの最貧諸国の一部に無料で穀物を輸送する用意が有ると発表し、同時にロシアは西洋の制裁にも関わらず、アフリカへの食料供給を増やしていることも明らかにした。そしてロシアとアフリカ諸国は共同声明を出し、EUに対し、ロシアの肥料輸送の阻止を解除するよう要求した。更にロシアはアフリカの230億ドルの債務も免除した。ロシアは穀物外交によってグローバル・サウスの誠実な恩人として多極化を推進している。
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