ぽんこちゃん
午後３時。
課長のお客さんから会社に一本の電話が入りました。
『うちのワンちゃんが行方不明で・・・
おたくの会社の近くを歩いていたという目撃情報があったので、
どこか近くでみかけませんでしたか？』
今日は暴風雪警報が出るほどの悪天候。
車も歩いてる人の姿もまったく見えないような白い世界でした。
そのワンちゃん、車の往来の激しい中を迷子になっているそうで
時には車道を横断したり、かなり危険な動きをしていたらしく・・・
『けっこう年老いてる犬なんです。
名前はぽんこ。柴犬の雑種なんです。
もしどこかで見かけたら連絡いただけないでしょうか』
あたしも実家で犬を飼っているので、飼い主さんの心配する気持ちが
とても伝わってきて・・・
こんな寒い中ずっと迷子になってる。
車がたくさん通るバイパス、しかも歩道ではなく車道を歩く危険。
ちょうど居合わせた営業マンに聞いてみると
『俺、朝の９時頃にこの近辺で見たよ』って。
でもそれからかなりの時間が過ぎているし、もうここら周辺にはいないかもしれない。
心配だったけど、どうすることも出来ず。
警察にも保護をお願いしてるとのことだったので、
もし見つけたらお客さんに連絡するつもりで仕事を続けました。
６時半。仕事帰り。
今日は大事な用事があったので、急いでその場所へ向かう。
あれ？車道を歩くワンちゃんがいる！！！
吹雪の中、ひたすらまっすぐ歩くワンちゃん。
きっとぽんこちゃんだ。
そう思ったけれど、車が激しく往来するバイパスのため停車することが
出来ませんでした。
少しいったお店の駐車場に車を停め、会社に電話をしてお客さんの家の
電話番号を確認して、電話をしてみました。
『○○社の事務の者ですが。
多分ぽんこちゃんと思われるワンちゃんを見かけました』
見かけた場所を電話で説明。
あたしがしっかりとぽんこちゃんを保護できればよかったんだけど。
お客さんに『ごめんなさい』とは伝えたものの、
ちゃんと自分のおウチに無事に戻るまで、やっぱり心配です。
朝からずっとひとりぼっちで彷徨っていて
寒いだろうし、怖いだろうし、お腹も空いてるだろうし。
今頃ちゃんと保護されて暖かいおウチに戻っているだろうか。
あの時、なんとか車を停めて保護するべきだったんじゃないか。
気になるあたしは、今夜の用事の間もずっとこのことが頭から離れなかったし、
帰ってきて、こんな時間になろうとしても眠ることができません。
どうか『無事にみつかった』という報告がありますように。。。
