オリジナル楽器による時代考証された「最新の演奏」ってどゆこと? Der Klang vom Theater (ドイツ~劇場の音と音楽)
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オリジナル楽器による時代考証された「最新の演奏」ってどゆこと?

オーディオやレコードよりも生演奏に軸足を置いている友人は言った

「現在の東京(日本)では、時代のカッティングエッジである最新の解釈によるクラシック演奏が頻繁に行われている
これを聴かずして、古の手垢にまみれた演奏ばかり聞いているとは何事ぞ」

ヘェ〜そうなんだ
あたしゃあ最新のAMGよりも55年のガルウィングの方が好きなんだよね、買えないけどねどっちも。としか答えようがありませんでしたが、
クラシックの演奏に対して「現代的」「先鋭的」という言葉は果たして肯定的に用いられる物なのでしょうか?
「感動的」とか「理想的」なら分かるんですけれどね

「先鋭的だけど凡庸」な演奏を「現代的」だからと言うだけで評価するのはいかがなものか?と思っておるのです




ピリオド楽器を用いて、ピッチやテンポの課題を学究的に見直しノンヴィブラート奏法などを駆使し、作曲された当時の演奏スタイルに迫ったとされる古楽演奏家たちの活動は1950年代には世に出ていた様ですが、オーディオ界が1957年にステレオに移行すると共に古楽演奏はクラシック界の大きな潮流の一つになりました


1940年代の前半にAEG-Telefunkeはマグネットフォンの2トラック化に成功しており大戦下で既にステレオ録音が存在して幾つかはCDで聞くことが出来ます
しかし、戦争は激化してドイツは押し込まれ、ステレオの実験どころでは無くなりました

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AEG-Telefunken  1945年の資料によると
AEG のエンジニアは急速にシステムを完成させ、1943 年までに実用的なステレオ レコーダーを完成させました。1945 年まで、リヒャルト シュトラウスとフルトヴェングラーを含む約 250 のステレオ テープ録音が存在することが知られていました。生き残ったのは3巻だけ

フルトヴェングラー のも当然あったんですね(第一人者だもんね)戦争で行方不明か燃えたか・・・戦争のバカ



戦後になるとTelefunken傘下のNeumannはステレオの録音、編集、カッティング設備を完成させていましたが早期の普及に一抹の不安がありました

そんな折、同じくTeklefunken傘下のDGGは中部ヨーロッパのルネサンス期や前バロック期の無名曲を音楽鑑賞用というよりは、資料として録音したいと考えていましたがその様なマイナー楽曲では経営的には実現不可能に思えたのです

そこに目を付けたのが商魂たくましい(失礼)Neumannでした

普及段階の家庭用ステレオ装置では大編成の交響曲では音を持て余します。そこで・・・

そうだ! 
トリオソナタや宮廷の室内楽ならステレオ効果が分かり易いし、チェンバロやリュートの澄んだひっかき音は高音特性の優秀な最新レコードにピッタリじゃないか、と
よしよし、DGGの古楽レーベルに投資して録音させればステレオのデモレコードとして売上に貢献できるぞ  ウッシッシ

かくして、DGGは古楽専門レーベル「Arciv」(=アルヒーフ=英語で「Archives」アーカイブス=記録・保管所の意)を誕生させるのです  (初期にはモノラル録音も僅か存在する)


このレーベルはDGGの予想(きっと売れないよな)とNeumannの思惑(ステレオのデモになると良いな)も見事に裏切りビックビジネスになりました

その成功はレコード一枚一枚に、曲や録音の詳細なカルテを添付するなど学究的な姿勢を貫いたのも立派ですが、バロック以前の音楽の素晴らしさやリヒター を始めとする演奏家陣による格調高い演奏、そしてNeumannの録音機材の優秀さまで三拍子、五拍子揃った名盤揃いだったからに他なりません



さて、Arcivの成功はあまり世に出ていなかった古楽奏者達のその後にも大きな影響を与えました

G・レオンハルト クイケン兄弟 N・アーノンクール F ・ブリュッヘンなどなどスターが出て、ハルモニア・ムンディ  セオン アストレーなどなど古楽専門レーベルも雨後の筍の様に生まれました

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おかげで、それまでの日本では名前すら聞いたこともなかった作曲家も含む数多くの素晴らしい曲が紹介されました


さて、ここまでは良いんです、問題なしです


ところがある時   「え?」   ということが起こりました

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左 1987年 録音 R ノリントンによるベートーベンの交響曲
右 1994年 録音 E ガーディナーによるもの


ノリントン盤は国内プレスでライナーノーツは平野昭さんと言う方が執筆されています
モダン・オーケストラの対比としてオリジナル・オーケストラが出たときの衝撃・・・
新たな解釈、別の意味を持たせた解釈、衝撃的な解釈・・・と解釈の連打
モダン・オーケストラの様な粘着質な感情的表現で無く、即物主義的姿勢

とあるが
残念ながら一曲を通して聴いたときの充実感という意味では自分の心の琴線には響かなかった

というだけで無く
セル シューリヒト クライバーらの演奏は令和の今聴いてもより先鋭的で際立った解釈を見せる箇所も多々ある様に感じるし、曲の全体像をガッツリ掌握して提示する力が往年の名手たちに遠く及ばないのではないかと言う印象だけが残ってしまった

しかも、ライナーによると「一世代前の1983年録音のホグウッドも大層な衝撃だったが、4年違いのノリントンはさらに大きな衝撃だ!」とあるが7年後のガーディナーから見るとノリントンの演奏も随分とのんびりに聞こえる

僕がいつも言っている「今日の最先端は明日には当たり前の普通」であって、3周くらい回ってまた先頭に立たされたのか?往年の巨匠の中によりエッジーな演奏を見つけるが、時代とはそんなものだろう


その後
BBC制作の映像作品「エロイカ」の劇中で使われていたガーディナーの指揮とされる演奏には非常に感銘と言うか衝撃を受けた

けれど、けれど
その演奏が素晴らしいと思ったのでDVDと別に同じガーディナーのCD全集も買ってみた(写真 右)
これが劇中の演奏とは別テイクとの事で、DVDほどの感銘は受けなかった



・・・結局 その演奏の個別の優劣の問題なんじゃね? と、悪魔はしごく当たり前のことを耳元で囁くのだった


続く








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コメント
初めまして、チラコと言います。
去年のコロナ巣ごもりからオーディオ熱が再燃し色々試してます。ミニコンポで楽しんでたんですが、だんだんハマってしまい、先日ついにKENWOOD KP-1100を導入してしまいました。
以前はホームシアターにかなり凝っていたんですが、7年位前に止めてしまいブログもずっとお休みしてましたが、最近復活しました。少しづつアップしていこうと思っておりますので良かったら覗いてみて下さい。よろしくお願いします。
2021/06/02(水) 15:19 | URL | チラコ #-[ 編集]
はじめまして

益々オーディオに燃えてくださいね
コロナ渦のニュースで「家にいてストレスが・・・」なんてのをよく見ますが
私は外に出るより家に居られるだけで、こんな幸せなことはありません

部屋の中には未整備のアンプや裸のスピーカーが順番を待っています
世の中が移り変わっても我が家には青山あり。ですね
2021/06/02(水) 15:45 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします😊
2021/06/03(木) 20:30 | URL | チラコ #-[ 編集]
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