2024年05月 Der Klang vom Theater (ドイツ~劇場の音と音楽)
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ハンダとハンダ鏝の話 〜 ハンダ編 〜

知り合いの技術屋さんから聞いた話がずっと頭に残っている

「異種配合のハンダを同じ場所に使ったら、完全に融合できないので接合面が離れることあるでえ」

・・・という事で、扱った機械が増えると共に増殖したハンダの歴史となっております


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18歳の頃だったか、初めてキチンとしたハンダを買ったのがキースター #44 (写真右)
もちろんアメリカ製の老舗メーカー、もうどれほど使ったか分からない、写真のリールで7、8本は使った

若い頃はALTEC LANGEVIN Mclntoshなどのアンプと交わることが多かったのでキースター一択だった


写真左は初めてQUADのアンプを購入した頃に入手した英国製ERSIN マルチコア・ソルダー
確かこの会社がマルチコアの元祖じゃなかったかな?商品名のようになっている


ちなみに、糸ハンダの太さも重要なファクターで
真空管アンプのようにラグを使う箇所には太めのハンダを素早く流す事で綺麗なフェザーエッジを実現すれば低い抵抗で長持ちするし、基盤に用いるには細い物でないと隣のパターンに接触したりと要らぬトラブルの元になるので気を付けたい

もちろん、それぞれにマッチした鏝先の選択も重要だ


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見えにくいが、写真中央の「バッジ」にTELEFUNKENのマークがあるハンダ


ドイツのアンプ修理にはこちらのともう一つ「SIEMENS」銘として買ったハンダもあるが中身は多分同じ物だろう

安直な業者のブランド戦略に踊らされてはいけない
星の数ほどもあるハンダの種類・用途の中でオーディオ用途は極々わずかであるということ

ハンダは成分と割合の違いによって様々な用途に応じて用意されており
「TELEFUNKEN」とか「SIEMENS」「Western Electric」 「Nassau」 「Alpha」等々のシールが貼ってあってもそれが音響用製品に使われていたかは確認が難しい

産業用の太い銅管の接合に使われるハンダは最高性能だが音響用とは随分中身が異なるのはどなたもお分かりになるだろう

だからこそ、成分と配合が明記してある物の方がブランドのシールよりもずっとありがたい

老婆心で付け加えれば、ネットオークションで「切り売り」しているハンダの何を持ってして・・・この先は個々人でお考え下さい

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左様な実態のハンダ業界だから、自分の一番大切な戦前のKlangfilm製アンプの修理にはこれを用いる


「Radio-Kartchen(ラジオカード)」「より使いやすくなりました=ヤニ入りのことと思う」印字のある古いSIEMENS製のハンダ

これはもう用途が指定してあるので安心して使える



最後に重要な件

1)例によって「ハンダに拘っている」という人もいるといけないので蛇足だが

英国製品に英国のはんだ、米国製品に米国のハンダは私個人に何のこだわりがない故の当たり前の選択だと断言する

古いアンプのハンダを溶かした時の匂いが、国やメーカーによってビックリする程違う。ペーストも含めハンダの中身が異なる事の査証に他ならない。全てを合わせる事はもちろん出来ないが

兎にも角にも、冒頭申し上げた通りメンテナンス後長年にわたってハンダが原因のトラブルを起こさないために可能な限りの方策として各種ハンダを使うのが主眼である


2)ハンダで音が良くなる(変わる)という主張には賛同できない

落雷の例を取るまでもなく電気はより通り易い道を通る

ラグとリードがきちんと接触していればハンダが無くとも導通する
「ハンダで音が良くなる」と思うならば「絡げ方」をまず見直すべきだろう


部品やワイヤーとラグが全く接触せずに「接着剤」としてハンダを使っている場合は
全ての接点で  「リード」→「ハンダ」→「ラグ」という随分と乱暴な信号経路になっている

わかり易い例がプリント基板に付いている部品で、パターン(導線)に抵抗やコンデンサの足が接触せずにハンダを経由して導通している・・・その数は膨大でプリント基盤を使えば当然ハンダの音が乗る・・・


なるほど、ハンダの音にこだわりたくもなろうと納得する次第






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ハンダとハンダ鏝のお話し

先日、ある自作アンプマニアの方と話していたら

「今作っているアンプがノイズが取れなくて困っているんだ、どうしてだと思う?」
まあ、思いつく事をあれこれと話し合ったんだけど、後日こんな報告があった

「原因は芋ハンダだったんよ。ハンダ鏝が具合悪くてさ思い切ってホームセンターに新しいのを買いに行ったら交換用のこて先があったので買って付け直したら良くなった」

なるほど


普通にアンプのお話はするけれども私の方は自作マニアなんて恐れ多くて、必要に応じて=市場で手に入らないから80年も昔のアンプのコピーを作るような「贋作師」に過ぎないが、彼は軽く10倍以上の数のそれも自分で企画立案からアンプを作っている筋金入りのクリエイター・マニアだ

そんな大ベテランでもハンダの事で失敗をするのならと、折角だからハンダとハンダ鏝について記事を書いてみたいと思う


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写真では汚く見えるが、熱を加えるとチップは青銅色に焼けており「良い材料使ってはるなあ」と思う
上は新品の湾曲したチップ。材料もさることながら先端には保護用のコーティング材が塗布されており本物の風格があります
大英帝国謹製の証

学生時代から使っていたハンダ鏝は英国ANTEX社 XS級25W 小柄で黄色のコケティッシュなイギリス娘

25Wなのでパワーは少々心許ない感もあるが、どうしてどうして、電源周りの大きな端子に16ゲージのワイヤーを付ける時でもグイグイと流してくれて見かけによらず働き者だ

この斜めカットされたチップも真空管アンプ製作には絶妙の形状をしている

・・・イギリスの食事が不評なのは世界で初めて産業革命を成功させ主婦層が遅くまで仕事をするようになり家庭の食事が簡略した事に端を発する。とロンドンの民俗学の先生の談・・・そう、イギリス娘は元々働き者なのだ



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ペンシルの形状が絶妙で手に馴染んだことこの上なし


2002年頃に横浜の「電気街」と言っても古びたビルのワンフロアに3軒だけあるうちの1軒に行った時、Wellerの可変式ソルダリング・アイロンが在庫限りの処分セールをしていた
よほど欲しそうな顔をしていたのだろう、同行者に買ってもらえたので以来20年以上ありがたくも愛用した我が相棒だ

ペンシルのヒーター本体は5回以上交換したし、チップ(小手先)は軽く20本以上は替えたろう
少し前に個人輸入した純正チップは中国製になっていて熱伝導が悪くハンダの流れに納得できない為ついに買い替えた


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見え難いが、金属が溶けて火山の様にすり鉢状に凹んだコテ先
ハンダ鏝ってのは自分の寿命を削ってアンプを組みててくれているんだ、そのありがたみを感じれない者に良いアンプを作れるはずがないと思う

現行品に比べ立ち上がりは遅いけれど、ハンダの溶け始めが速いし流れもスムーズで大変に気に入っていた

交換用パーツが流石に入手難となり下記の現行品にバトンタッチとなったが、コントローラーは至って元気なのでできる事ならば消耗品を手配してもう少し使いたかった。今でも諦めずに探しているので公称は「休眠中」


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同じく、Wellerのに買い替えた
見た目も価格も消費電力も立派な現行品 メキシコ製
チップの金属は先行品とは明らかに違う

電源投入後マッハで立ち上がるし、温度設定も高く出来るので良いはずなのだがハンダを流す能力に限って見ると先行機に及ばない

異なる形状のチップをいくつか用意してあるのでもう少しあれこれと悩んでみたいが、ハンダ鏝の使い勝手はアンプの仕上がりに直結するので、ストレスの無い相性の良い鏝は必須の条件だと思う



あまりハンダ鏝に興味のある人はいないと思うので、今日はこの辺で
次回はハンダについて書きましょう






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遠慮なしの旧友来る・・・ミスった自分がいる

GWに30年来の知人でアンプの修理やら製作を以来して頂いているAさんが遠路お見えになった
コロナの時期を除いて30年ほぼ毎年この時期に=多分に春野菜と蕎麦を目指して来ます
オーディオとの関わり方は随分と異るが個性を分かり合っているので絶妙に大人の関係を築いてる二人

Aさんはオーディオ大好きの典型的な「昭和のマニア」で、自宅と隣接する仕事場に2部屋のオーディオルームがありそれぞれ足の踏み場も無いくらいの機材で溢れている。音や音楽を聞くよりオーディオ談義をしている時間が好きと言うタイプかな
今回、珍しく音を聴かせてくれ。と言うのでハタと考えてしまった



初対面や少ない機会の来客がある時には「この人はどんな音楽が好みだろう?」と最初の30分くらいは顔色やら仕草で反応を見ながらこの会に相応しい音源を探す作業をする
モンスター井上尚弥が1Rは相手に打たせて、パンチの軌道やパワーの測定を行う感じで・・よく言い過ぎだけれど実際そうした「無言の対話」をしながら一期一会を気持ち良いものにする努力はしたい



ところが単純なミスを犯してしまった

前日聞いていたので出しっぱなしになっていた「サティのピアノ曲」をかけてしまったのだ
「あれ?反応薄く無い?」慌てて隣を見たら鳩が豆鉄砲食らった様な顔で固まっていた
火曜サスペンスのBGMでかかる安っぽい環境音楽と思ったのかも。我が家に来たらベートーベンやワグナーがバーンと鳴るのを期待しただろうか

少々考えればAさんにサティは無いよなって直ぐに分かるのに魔が刺したと言うか、何とか取り返そうとGinossiennesの神曲5番どころか2番に行く前に止めて真っ白な頭で次にかけるディスクを探った


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心の恋人 ケフレックのピアノはノーブルで透明でパリの空に消えていきそう
音の恋人でもあるERATO録音は曲想にマッチして非の打ち所がない!事をLowtherが教えてくれた
EuropaやDecolaではより立派な音にはなるんだけど「儚さ」や「あの世感」が出ない。贅沢な話だ



Aさん宅で音を聴いた事はあるけれど、聞いた曲の記憶が薄く特定の音楽の話をした記憶もない
昔「なんでも聞くよ」と言われた事があるが「あれは名演だね」とか「あのアルバムが好き」は無かった


隣で一緒に聞いていて「この人は今満足しているのかどうか?」分かりにくい人は確実にいます
以降、急ハンドルを切って「ちあきなおみ」「ビートルズ」「ホルストの惑星」と矢継ぎ早に繰り出して凍り付いた空気の溶解になんとか成功した




いつもの通り曲の世界観を最も表現出来ると踏んだスピーカーシステムを選んでいたのだが

「自分は全てのジャンルを聞けるように調整している」と、宣うた。だから
「10も20もスピーカー置いて、どの口が言っとんねん」と、突っ込んだ
「すべてのスピーカーをその心積りで使っている!」らしい
「音楽はなんでも聞くってのは、実は何も聞きたくない!ってのと同意語ぞ」まあ、こんな事を面と向かって言い合える間柄っちゅう事ですわ

でも流石に
「何でも鳴るスピーカーってのは、何も鳴らないってのと同意語ぞ」は喉につかえて出なかった



もう少し丁寧に書くと
「素晴らしく良い感じにスピーカーが鳴れば鳴るほど、そのスピーカーの持つ個性が際立ち特定の音源で夢の様な音響を発揮する。そう成ればそれ以外のレコードもビックリするくらい良く鳴るが、一方で高度な判断では合わなくなるレコードが出てくるのもまた当然。そこそこの段階のスピーカーの方が特段に良くも悪くもなく広い音源に適応できる」

最初から1枚のレコードに合わせるのは本末転倒と同時に全ジャンルに合わせて調整と言うのも本末転倒。全ては1台のスピーカーと死ぬ気で取り組んだ何年も後の話



私の知る限りに於いてだが  

「1枚のレコードを毎晩抱いて寝る」人で
「1セットのオーディオを全ジャンル鳴るように調整している、あるいはしたい」と言う人を一人も知らない

100枚のレコードあれど99枚は諦めているがこの1枚さえ感動できれば・・・と言う覚悟でオーディオする人の家だけでその感動を受け取る事ができる。感動や情熱はパワーとなって溢れ出して部屋に満ち、訪問者にそれは伝染する
(しかしまあ、同じ傾向=レーベルや演奏家のレコードを多く買うから99枚ダメってことはない)

詰まるところアクセサリーやコンポーネントを取り替えて音の変化に情熱を燃やすお宅では訪問者はその情熱を受け取る事になる。もちろんどちらかが優劣であると言う話ではない。趣味の世界だからご亭主のやりたい事をすれば良い、それが個性で有り多様性だからだ


残念ながらこんな事を言う人も賛同する人も余りいないが
ここにオーディオの究極奥義が存在すると確信する










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GWは家に居る・・・と、こんな物ができました

我が?長野県はまあ観光地が多いのです。その中に住んでいるので連休になると周りは混みます
道路も混むし、食事処や各施設も混みますので連休前に食材を買い込んで篭城する準備をしておきます

さて、今年もお二組のお客様が見えた他は全く外出しておらず、ご依頼のあった伊藤プリアンプの全面メンテナンスを連休前半になんとかカタチにして後半は自分の事を少しできたのが嬉しかった


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Garrard Model-T(B)

SP時代のモーターはガバナー(分銅を回して速度調整する機構)の付いた低速回転型でしたが
これはより高速で安定して廻るシンクロナスモーターの創成期のものです

この新型モーターはS/N比の大いなる向上に寄与し、以て来たるステレオ時代に”名器301”へと繋がります

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暇だったので徹底的にクリーニングと注油をして、必要以上に磨き上げました

モーター自体は301の物とほぼ変わりなく、つまりは1970年頃に製造完了となる401まで根本的仕様変更が無いまま40年程作り続けられた基本設計の優秀さに頭が下がる優れものです

また、Thorens TDシリーズに先んじて「アイドラー・ベルト併用」方式で駆動されており構造が複雑な上に消耗部品の入手は困難を極めるので初期性能を担保するまでのメンテナンスは相当難しい

兎にも角にもこのタイプは製造後80年ほど経つので程度の良い個体が少ないのが悩ましいけれど、あまり使われていない物を入手して適切なメンテを施すとビックリするくらいの静寂さと音の芯の強さを楽しめる素晴らしいプレーヤーだと思う


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型名の T(B)が示す通り(A)もあって、そちらはGarrard型のシェル交換式のアームで主にセラミック・カートリッジの使用を前提としている

対して本機(B)はかの有名な「Decca ゲンコツ」XMSカートリッジ専用アームが搭載されている
その為に生産数も少ないので比較的入手難であり、程度の良い物は更に少ない

我が家では先に1台整備したが、直後にKさんに見初められ現在そちらではSP専用機として活躍している


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Model-Tのターンテーブルは10インチ=25cmなので、12インチのLPレコードを乗せると大きなオーバーハングが出る

偶にModel-Tをネット上で見かけるがこんなオーバーハングを出さない大きなキャビネットに納めていた

個人のセンスの問題なので特段の感想は無いけれど、自分で使う時にはプレートギリギリの大きさでキャビネットを作ろうと決めていた

改めてDecca LXTの金文字・内溝盤を乗せるとカッコいいなあ
いい音がしない訳ないじゃん


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まあ、こうなるでしょうね
QUAD QC-IIと組み合わせた「ミニマム・フロント」は長い間の夢でした

高校の合格祝いで父から贈られたパイオニアのプリメインアンプが私のオーディオのスタートだった
19歳の頃、バイトしてLUXMANNのセパレート・アンプを買って初めての「グレードアップ」を経験して以来
スピーカーは巨大化を進め遂には劇場用の2m近いプレーンバッフルと小型犬の犬小屋ほどもある直熱三極管のプッシュプル・アンプにまでたどり着きました

それは自分の歴史であり、何一つ後悔はありません
そして現在の年齢になって、馬鹿でかいシステムの電源スイッチを入れる為にあちこち歩き回ってやっと聴くことができるスタイルだけがオーディオのあり様・カッコ良さでない事にも気付きました

もちろんKlangfilmのラインも使いますよ、聴きたいレコードの内容に寄ってはね・・・

しかし、夜中の3時に小さな音でブラームスを聴く為の装置としては到底似つかわしくありません

求める感動が変われば引き出す為の道具立てが変わるのは自明の理です
500年も前に利休居士がそう教えてくれています






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