Neumann WV-II リビルド完了 納品しました
もう3年ほど前になるでしょうか
Tさんがひとつの段ボール箱と細長い鉄板を何枚か持ち込まれました
中身は完膚なきまでにバラバラにされたNeumannのEQアンプ WV-IIの見るも無残な解体後の姿でした
「プレートCHが一つ断線して使用不能になったので解体されて部品毎に売られようとして居たのを、kaorin27君に頼めば何とかなるかもしれない」と思って散逸寸前で買ってきた。とのことでした
もちろん目の前は真っ暗になりましたが、逆に考えてもし自分が受けなければ世界中を探しても再生は難しいだろう(まあ、勝手な思い込みではありますが)そうなればバラバラになってしまう
この機会を与えられたのも何かの’天命’だと思えばお受けするしか無いだろう
ただし、時間無制限、費用無制限・・・とは言え上限は伝えたけれど国産高級プリアンプ1台分くらいは覚悟してください。とお願いしました
障害 その1
私が過去にメンテナンスした個体はみんなシリアル#70番以上で構造や回路は大筋で同じものでした
しかし、この個体はシリアル#20番以下の最初期型でシャーシから回路から切り替え方法から全くの別物でした
スタートから手元の回路図と実際の部品の値や個数が異なるので少々困った事になりました
障害 その2
まあ、違うと分かればそれ用に頭を切り替えてアプローチすれば良いのだから、改めて資料や昔の書籍を当たりましたが
何分、相手はあのノイマンのWV-IIです。そう簡単には資料が存在しません
もちろん、根性で探しましたよ。今の若い人には理解されないでしょうがやっぱり人間の最後の力は「気合」「根性」しかありません
電源のユニットと音声回路は30cmほど離れて設置します
これには困りましたね、ケーブルの長さを決めるのが難しいのと、最終的にまとめてハーネスで縛るのですがその為にごく初期の段階からケーブル類の走る道筋やコーナーで曲げる時の「インコース」を行くか「アウトコース」にするかを決めておかなければいけません
当然、何回もやり直しになりました
これを製造した当時はすべての青写真が出来てから「せーの」で組み立てたのでしょうね
結局自分も全体の実体配線図に近い物を書き上げてからの制作になりました・・・急がば回れは金言です
まずはヒーターから貼り始めます、もう何年も前の写真ですが
障害 その3
写真の通り部品を付けるシャーシは深い船底の形状です
真空管のソケットにリードをハンダ付けするスペースが取れません
Neumannはどうやって組み込んだのだろう?
陶芸教室で古の名器を習って作る時に、当時の人はどんな手順で、どんな道具で作ったのだろう?と言うアナリーゼがとても大切でした
アンプでも同じことですが、こいつは想像もつきません。
外で配線を済ませてからユニットごと組み込んだのか?・・・ソケットが上付けの為不可能
こんな失敗を繰り返しました
この内壁にCRの付いたボードを貼り付けますが、そうしたら「当然」ソケットが隠れてリードのハンダ付けができません
ハテ、どうしたものか
完成
3年が経ちました
電解コンデンサーは全数交換しましたが、抵抗やフィルムコンデンサーなどは全て元の部品を活かしました
恐らく1957年頃の製造ですから65年前の部品ですがNeumannの社運をかけて製造したアンプですからピクリともしない精度と寿命を与えられております
感動以外の言葉はありません
調整
NeumannのAM32カッティング・システムに付属のアンプラックVG-Iの中に検聴用プレイバックEQとしてWV-IIはセットされて居ます
EQカーヴの切り替えは 「RIAA」「DIN」の2種類です
勝手にステレオ・レコードのEQの種類を増やす不届き者が見えますがAM32システムで切ったレコードはこの2つだけです
このEQカーブは可変式(極々微量な変化幅、基本設計がすごい)で校正可能になっており、慎重に調整した結果は低域で0.3dB、高域で0.2dBの誤差に収めることができました
家庭用としてはふざけた程のオーヴァースペックですが、その様に作られているので特に面倒くさい事もなくここまでの収差を達成できます
また、S/N比は冗談抜きで最新のトランジスタアンプに近いだけのものがあります
カッティング・システムの備品ともなれば「そうなのかなあ」とも思いますが、65年前に当時の真空管と部品で達成したのですから、製造の者はアンプの建て付けの本当の深淵部まで理解して居たのでしょうね。現代の最新の技術を持ってしても手も足も出ない完成度と申せましょう
いつもの通り我が家では測定の結果を持って完成といたしました、一音たりとも音を出して居ません
プレーヤーもパワーアンプもスピーカーも部屋も違う環境で音を出して何になるのか?
それが分かるまでには耳から血が出るまで聴き込まなければいけないのかもしれませんが、私は到底そこまでは・・・
ただの面倒くさがりですwww
音を聴きました
Tさんのお宅にはシリアル#150番台のWV-IIが既にありますので、図らずも2台の音の差を見せつけられる事になります
EMT 930 TSD-15
WV-II
Western 118
Lansing 415
Lansing 287
Westrex LondonのC/O
英Colombia SAX-2236-7 アッカーマン 「こうもり」がかかりました
・・・・・・・・・・
はあ・・・・
レコード再生の、遠くの何処かにある、何らかのハードルとか閾値を乗り越えた様な印象を持ちました
Tさんと顔を見合わせて最初は言葉が出ませんでしたね
その後、お昼にしようと美味しいステーキをご馳走になりました
食後にTさんが最近購入した素晴らしいオリジナルLPをたっぷり聞かせて戴きましたが、その凄さに、WV-IIがいい音して舞い上がっていた私のご陽気な気分はすっかりすっ飛びました
あの様なコレクションはお金があるから手に入る様なものではなく、ビックリはするけど羨ましいとか欲しいとかの感情を超越するものです
以前にKさんのライカ・コレクションを拝見した時も同じ気持ちになりました
・・・そうですねえ
渋谷の元の東急の裏から大好きな鍋島焼を拝見しに戸栗美術館を目指して松濤(江戸時代は鍋島藩の下屋敷だったそう)の街へ上がって行くと、どちらの会社の建物だろうと見上げたら個人さんの表札が出て居たときの様な気分と申せばお分かり頂けるでしょうか?
世界が違い過ぎて、自然と微笑みが出ます・・・
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Tさんがひとつの段ボール箱と細長い鉄板を何枚か持ち込まれました
中身は完膚なきまでにバラバラにされたNeumannのEQアンプ WV-IIの見るも無残な解体後の姿でした
「プレートCHが一つ断線して使用不能になったので解体されて部品毎に売られようとして居たのを、kaorin27君に頼めば何とかなるかもしれない」と思って散逸寸前で買ってきた。とのことでした
もちろん目の前は真っ暗になりましたが、逆に考えてもし自分が受けなければ世界中を探しても再生は難しいだろう(まあ、勝手な思い込みではありますが)そうなればバラバラになってしまう
この機会を与えられたのも何かの’天命’だと思えばお受けするしか無いだろう
ただし、時間無制限、費用無制限・・・とは言え上限は伝えたけれど国産高級プリアンプ1台分くらいは覚悟してください。とお願いしました
障害 その1
私が過去にメンテナンスした個体はみんなシリアル#70番以上で構造や回路は大筋で同じものでした
しかし、この個体はシリアル#20番以下の最初期型でシャーシから回路から切り替え方法から全くの別物でした
スタートから手元の回路図と実際の部品の値や個数が異なるので少々困った事になりました
障害 その2
まあ、違うと分かればそれ用に頭を切り替えてアプローチすれば良いのだから、改めて資料や昔の書籍を当たりましたが
何分、相手はあのノイマンのWV-IIです。そう簡単には資料が存在しません
もちろん、根性で探しましたよ。今の若い人には理解されないでしょうがやっぱり人間の最後の力は「気合」「根性」しかありません
電源のユニットと音声回路は30cmほど離れて設置します
これには困りましたね、ケーブルの長さを決めるのが難しいのと、最終的にまとめてハーネスで縛るのですがその為にごく初期の段階からケーブル類の走る道筋やコーナーで曲げる時の「インコース」を行くか「アウトコース」にするかを決めておかなければいけません
当然、何回もやり直しになりました
これを製造した当時はすべての青写真が出来てから「せーの」で組み立てたのでしょうね
結局自分も全体の実体配線図に近い物を書き上げてからの制作になりました・・・急がば回れは金言です
まずはヒーターから貼り始めます、もう何年も前の写真ですが
障害 その3
写真の通り部品を付けるシャーシは深い船底の形状です
真空管のソケットにリードをハンダ付けするスペースが取れません
Neumannはどうやって組み込んだのだろう?
陶芸教室で古の名器を習って作る時に、当時の人はどんな手順で、どんな道具で作ったのだろう?と言うアナリーゼがとても大切でした
アンプでも同じことですが、こいつは想像もつきません。
外で配線を済ませてからユニットごと組み込んだのか?・・・ソケットが上付けの為不可能
こんな失敗を繰り返しました
この内壁にCRの付いたボードを貼り付けますが、そうしたら「当然」ソケットが隠れてリードのハンダ付けができません
ハテ、どうしたものか
完成
3年が経ちました
電解コンデンサーは全数交換しましたが、抵抗やフィルムコンデンサーなどは全て元の部品を活かしました
恐らく1957年頃の製造ですから65年前の部品ですがNeumannの社運をかけて製造したアンプですからピクリともしない精度と寿命を与えられております
感動以外の言葉はありません
調整
NeumannのAM32カッティング・システムに付属のアンプラックVG-Iの中に検聴用プレイバックEQとしてWV-IIはセットされて居ます
EQカーヴの切り替えは 「RIAA」「DIN」の2種類です
勝手にステレオ・レコードのEQの種類を増やす不届き者が見えますがAM32システムで切ったレコードはこの2つだけです
このEQカーブは可変式(極々微量な変化幅、基本設計がすごい)で校正可能になっており、慎重に調整した結果は低域で0.3dB、高域で0.2dBの誤差に収めることができました
家庭用としてはふざけた程のオーヴァースペックですが、その様に作られているので特に面倒くさい事もなくここまでの収差を達成できます
また、S/N比は冗談抜きで最新のトランジスタアンプに近いだけのものがあります
カッティング・システムの備品ともなれば「そうなのかなあ」とも思いますが、65年前に当時の真空管と部品で達成したのですから、製造の者はアンプの建て付けの本当の深淵部まで理解して居たのでしょうね。現代の最新の技術を持ってしても手も足も出ない完成度と申せましょう
いつもの通り我が家では測定の結果を持って完成といたしました、一音たりとも音を出して居ません
プレーヤーもパワーアンプもスピーカーも部屋も違う環境で音を出して何になるのか?
それが分かるまでには耳から血が出るまで聴き込まなければいけないのかもしれませんが、私は到底そこまでは・・・
ただの面倒くさがりですwww
音を聴きました
Tさんのお宅にはシリアル#150番台のWV-IIが既にありますので、図らずも2台の音の差を見せつけられる事になります
EMT 930 TSD-15
WV-II
Western 118
Lansing 415
Lansing 287
Westrex LondonのC/O
英Colombia SAX-2236-7 アッカーマン 「こうもり」がかかりました
・・・・・・・・・・
はあ・・・・
レコード再生の、遠くの何処かにある、何らかのハードルとか閾値を乗り越えた様な印象を持ちました
Tさんと顔を見合わせて最初は言葉が出ませんでしたね
その後、お昼にしようと美味しいステーキをご馳走になりました
食後にTさんが最近購入した素晴らしいオリジナルLPをたっぷり聞かせて戴きましたが、その凄さに、WV-IIがいい音して舞い上がっていた私のご陽気な気分はすっかりすっ飛びました
あの様なコレクションはお金があるから手に入る様なものではなく、ビックリはするけど羨ましいとか欲しいとかの感情を超越するものです
以前にKさんのライカ・コレクションを拝見した時も同じ気持ちになりました
・・・そうですねえ
渋谷の元の東急の裏から大好きな鍋島焼を拝見しに戸栗美術館を目指して松濤(江戸時代は鍋島藩の下屋敷だったそう)の街へ上がって行くと、どちらの会社の建物だろうと見上げたら個人さんの表札が出て居たときの様な気分と申せばお分かり頂けるでしょうか?
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