ブードゥー教の呪いについては、多少なりともご存知でしょう。
カラフルで奇妙な衣装を身にまとい、獣の骨を振りかざし、狂信的な舞を繰り広げるブードゥーの呪術師が、「お前は明日、死ぬだろう」と言ったところで、文明社会に住む私たちは笑い飛ばすだけでしょう。
しかし、奇妙な衣装の代りに清潔な白衣を着て、動物の骨の代りに聴診器を静かにあてる、その威厳さえ感じさせる人から同じことを言われたらどうでしょう。
また、絢爛豪華な精舎に静かに座する人に、「あなたには先祖の祟りが障っている」と言われたら、その場の厳かな雰囲気も手伝って、あなたは、急にソワソワし出すでしょう。
呪術は、現代にも、しっかり息づいていて、弱った人の心の間隙を狙っているのです。
こうした特殊な世界では、言葉の偽薬(プラシーボ、ノセボ)が意図するしないに関わらず、人の心の中に恐怖の残影を作り出しているのです。そのとき、人はきっと、文明社会の呪術師の姿を見るのです。
ここに人の思いが、どのようにして病気を悪化させたり、快方に向かわせたりするのか、興味深い研究者たちの報告があります。以下、アメリカの医学・健康情報誌の記事を2本。
研究者の警告:
「テレビの病院ドラマを観ると、病気になるかもしれない」
Researcher warns: watching medical TV shows can make you feel sick(-Natural News com)
ネットの健康情報誌「Natural News」2010年10月14日の記事から。
ここから全文翻訳。
ロードアイランド大学(URI)の新しい研究によると、「テレビを長時間見ることは健康に良くない」とのこと。
もちろん、一般に、こう言われていますが、これは、くだらないテレビ番組を観ている間、カウチポテトやジャンクフードを、むしゃむしゃ食べるから健康に良くない、という意味ではありません。
まるで毎晩のように放送されている「ドクター・ハウス(House)」や、「グレイス・アナトミー(Grey's Anatomy)」、「ER緊急救命室(E.R.)」のような医師の仕事を中心にしたテレビドラマを、たくさん観ることは、どうも健康に悪影響があるのではないか、という研究です。
ドクター・ハウス(House)
グレイス・アナトミー(Grey's Anatomy)
ER緊急救命室(ER)
URIのコミュニケーション研究の助教授、Yinjiao Ye氏の研究によると、医師の活躍を描いたこれらの“病院ドラマ”のいろいろなシーンに、密かに埋め込まれている健康リスクや病気に関する情報を、そのまま本当のことだと受け入れてしまうと、視聴者は、自分たちの体について、余計な心配をしてしまう恐れがある、と警告しています。
これは、その病院ドラマの中の情報が、自分たちの健康を守ることに役立つとか、そうでないとかには関係のないことなのです。
Yinjiao Ye助教授は、アラバマ大学のコミュニケーション・カレッジの学生274人に、「彼らのテレビ鑑賞の状況と生活満足度」に関して調査しました。この学生たちは、健康的でエネルギーにあふれている18歳から31歳までの学生たちです。当然、この研究調査の目的は彼らには知らされていません。
調査の結果は、病気や医療問題をドラマ仕立てにした、こうした病院ドラマをよく観ている学生は、人生の満足度が落ちている、というものでした。
雑誌「マスコミと社会」に発表された研究によれば、病院テレビドラマを多く観ている人たちは、頻繁に病気になりやすく、重大な病気に関しては、「成すスベがない」とすぐにあきらめてしまう傾向があると指摘しています。
このことは、こうした視聴者が、病院ドラマで観た健康に関することや病気に関することが、自分にも起こりうることだと、深く信じ込ませてしまうことを示しています。さらには、自分が病気になるかもしれないリスク、医療に関する問題が、とても厳しいように強く信じ込ませてしまうのです。
Yinjiao Ye助教授は、メディアに対してはこのように話しています。
「マスメディアは健康や病気に関する情報を広めることには熱心ですが、同時に、視聴者が病気に罹ってしまった場合、かなりの苦痛を被るのだろう、と恐れさせてしまうのです。
もし、みなさんが健康長寿で人生の満足を得たいのであれば、社交的で適度な運動を伴うようなレジャー活動をするほうが、医学をテーマにした病院ドラマを観ているより、ずっと良い選択になるはずです」。
病気と医師を中心に扱った(テレビ他の)プログラムに注意すべき他の理由:
「ドクター・ハウス(House)」や、「グレイス・アナトミー(Grey's Anatomy)のような医療に関する情報が盛り込まれている(特に救命テクニックについて)人気テレビドラマを分析した研究では、ドラマの中で描かれている医療情報が正しいものではないことが分かりました。
たとえば、今年早々、カナダのトロントで開かれた「神経学のアメリカ年次総会」で発表された研究では、これらの病院ドラマの327シーンの中で、59の間違いがあったことが明らかにされました。
ドラマの中では、それらの間違った医療行為のほとんどすべてが病院で行われており、(ドラマの中の)ナースやドクターが行っている救命措置は、単なるパフォーマンスに過ぎない、というものです。病人を押さえつけたり、動くのを無理やり制止したり、口の中にものを入れたり、まったく不適切な救急ケアを施しているのです。
デューク大学の研究者たちが、ER緊急救命室(E.R.)を含むバラエティー病院ドラマの100の場面について調べたときに、CPR(心臓蘇生法)を、5回施すうちの2回も成功していることを発見したのです。これは、現実の状況より、ずっと高い確率で、救命技術を施すことによるリスクとメリットについて、誤った印象を視聴者に持たせてしまうという心配があります。
病院ドラマの世界では、(主人公の医師たちによって)患者たちは病気から完全に回復するか、心臓蘇生をしても、残念なことに死んでしまうか、どちらかです。こうしたテレビショーは、実際は、救命処置や心臓蘇生自体によって、患者が長い期間、ベッドに釘付けにされてしまうか、あるいは、永遠に植物人間にされてしまう現実を無視して描かれているのです。
翻訳、ここまで。
アメリカでは、医師の2割がユダヤ系だと言われています。
製薬会社もユダヤ資本の企業が多いことが知られています。
まず、はっきり分かることは、こうした病院ドラマは、実は製薬会社のインフォマーシャルのようなものだ、ということです。
※インフォマーシャル
つまり【流行とカリスマ洗脳法】の記事で「料理番組の大半が実は広告である」ことをご紹介したように、アメリカの病院ドラマは、ドラマの体裁をとってはいるものの、実は大衆の啓蒙・教育番組なのです。手法は、インフォマーシャル。本質は広告なのです。彼らは、がっちり手を結んでいるのです。アメリカの視聴者は薬・医療の広告を観て、医療知識を得ている、といっているわけですね。
この記事を違った角度から読み解いてみましょう。
おそらく、アメリカのこれらの人気病院ドラマにスポットCMを流していたり、メインのスポンサーになっていたりするのは、製薬メーカー、健康食品メーカー、それに生命保険会社でしょう。
これらの企業の商品に視聴者が関心を持ってもらうためには、分かりやすくて適度な医療情報を視聴者に与えなければなりません。ドラマに感情移入させるためには、視聴者たちを、病院という非日常的なシチュエーションに誘い込む必要があるからです。
もし、私が、これらのドラマにスポンサードしている製薬メーカー、健康食品メーカー、生命保険会社の側の人間であれば、この調査を行ったYinjiao Ye助教授や、デューク大学の研究者たちのように、これらのドラマの虚構性を暴き、現実と虚構のギャップについて、視聴者に注意を喚起するでしょう。その行為は、テレビ局にも感謝されることでしょうから。
なぜ?
テレビ局は、視聴率が落ちるかもしれないのに…。
まったく逆です。
「奇跡的な救命劇などない」ことを視聴者に知らせることによって、彼らを現実に立ち返らせ、それなりの「備え」をしてもらうよう誘導するでしょうから。
「ドラマの世界は確かに夢があるが、実際は長期入院だの、ヘタすると医療ミスで殺されちまうからなぁ」と。
それで、日頃の食生活のあり方を振り返ってみたり、生命保険の増額を考えたり、現実に立ち返るのです。
視聴者たちを、一度夢から覚まさなければ、これらのスポンサーの購買者になることはなく、視聴者たちは、永遠に潜在購買層として、データベースの中で眠り続けることでしょう。
だから、視聴者を現実に引き戻す、こうした「暴露調査」が必要なのです。それによって、視聴者が真剣に生命保険の加入を検討すれば、スポンサーの目的は、すでに達成されたことになるのです。
「スポンサーは神様」のメディアですから、当然、テレビ局も、これを受け入れるはずです。
この「誰でもわかりきった他愛もない調査」を行った理由は、そこにあるのではないのでしょうか。
これらの研究費の原資がどこから出ているのかを知れば、その真の狙いがどこにあるのか一目瞭然でしょう。
んっ? 研究費など出ていない。ひも付きではない?
それなら、アメリカの大学に未来はないでしょう。こんなにまでレベルが下がってしまった…。
「まあ、何でもかんでも、世の中で起こることには裏があると考えると、人間性がゆがんでしまうので、もっと素直に受け入れたほうがいいかも知れない」と心の中で自分に言い聞かせたりします。
しかし、仕掛け人たちは、その上を行く人たちです。視聴者の、その優しさをも上手に利用してしまうのです。
ブードゥー教の科学:
「人は、どのようにして自分を病気にするのか」
The Science of Voodoo: How Your Mind Can Make You Sick
もうひとつ、面白い記事があります。
呪術が、どのようにして人を病気にするか。
New Scientist という医療・健康専門誌の出版社の情報サイトからです。全文を読むには会員登録する必要があるので、ここでは全文をコピーしたMind Power Newsから。
ここから全文翻訳。
ある夜遅く、小さなアラバマ墓地で、バンス・バンダーという男が地元の呪い師とともにある儀式の仕上げにかかっていました。その呪い師は、バンスの顔の前に不快な臭いのするビンを揺ら揺らさせながら、「今、お前は死のうとしている。誰もお前を救うことはできない」と言ったのです。
呪術をかけられて憔悴し切ったバンダーは、家に帰ると同時にベッドに倒れこんでしまい、彼の健康状態はどんどん悪化していくのです。
何週間か経つと、いよいよ衰弱し、ほとんど死んだような状態になってしまったのです。
それでバンダーは地元の病院に入院したのですが、医師は彼が衰弱した原因を見つけることができず、症状の進行を遅くすることもできませんでした。それで、彼の妻は医師のドレイトン・ドハティに、「ひょっとしたら魔術ではないか」と話したのです。
ドハティは深く推理を加えました。
次の朝、ドハティは、バンダーの家族を彼のベッドに呼んで、前夜のことを話しました。
ドハティは、前夜、その呪い師を墓地に呼び出して、どんな方法でバンダーに呪いをかけたのか白状するまで、その呪い師を木に押し付け、首を絞めたのです。
その呪医は、バンダーの胃の中にトカゲの卵を滑り込ませるよう飲ませたことを白状したのです。そして、バンダーの胃の中で孵化したトカゲはバンダーの内臓を食べていたのです。
ドハティは嘔吐剤の入った大きな注射器を看護婦に持たせてよこし、儀式を行うように念入りに注射器をチェックし、バンダーの腕に注射したのです。
2~3分経つと、バンダーはゲーゲー胃の中のものを吐き出したのです。誰にも知られないようにドハティはバンダーに、彼が食べた“主菜”について説明したのです。それは、黒い袋の中に隠してあった緑色のトカゲでした。
「バンス、あなたから出てきたものはこれさ」と大きな声で言いました。この瞬間、バンダーにかけられた呪いは解き放たれたのです。
バンダーは、そのままベッドに倒れこみ、深い眠りに落ちていったのです。
翌朝、バンダーは目覚めると旺盛な食欲を見せ、その後1週間で退院となったのです。
80年前のこの出来事が事実であるかどうかについては、4人の医学の専門家によって確証されました。それは事実だったのです。
この事件でもっとも顕著なことは、死の呪いをかけられたバンダーが生きていたということでしょう。
呪いをかけられた後、死にいたったという事例は世界中で、それも本当に多く見られます。ただ、カルテがない上に検視報告書もないので、これらの人たちが、どうのように最期を遂げたのか知ることはできません。
※ブードゥー(Voodoo)とは、ゾンビとか、呪術、魔術で知られている、アレです。
新しいタイプのブードゥーの呪術
あなたは、現代では、こうした死の呪いなどありえないことで、もしあったとしても、遠い辺鄙な場所の部族社会でのみ行われていることだ考えているでしょう。
しかし、テネシー州ナッシュビル、バンダービルト医科大学のドクター、クリフトン・ミーダーは、現代でも呪いが新しい形で人にかけられている、というバンダーのようなケースについて報告しています。
「1970年代、末期の肝臓ガンと診断され、その後、何ヶ月間か生存したサム・ショーマンの例を見てください。
ショーマンの医師の診断どおり、一定の期間の後、死に至ったのですが、検視結果は、医師の診断が間違いであったことを証明しましたのです。彼の腫瘍は、ごく小さなもので、転移していなかったのです。
つまり、彼はガンで死んだのではないのですが、ガンが原因で死んだと信じられているのです。皆がガンで死んだと、その死者を扱うなら、そのようになってしまうかもしれません。すべてのことが、死につながっていくのです」。
ショーマンのようなケースは、ごく稀なことかもしれません。しかし、「そうなるだろう(ガンで死ぬだろう)」と思われている患者は、こうした“予期せぬ”副作用に苦しむことになるのです。
その上、同じ病気でも、確かに病気の高いリスクを抱えていると考えられている患者は、より低いリスクしかないと考えられている患者より、「そうなる」可能性が高いのです。
このような場合、医師は白衣を着て聴診器を持った「現代の呪術師」かもしれません。
※クリフトン・ミーダー
自著の中で「あなたが(医師が)診ようが診まいが、ほとんどの外来患者の病気は治るものである」と医師に進言している。
ノセボ効果(nocebo effect)
「自分が病気であるかもしれないと信じていると、本当に病気になってしまう」という考え方は、一見すると、こじつけに聞こえるかもしれません。
「そんなこと、あるはずがない」という疑いの向こうには、逆説的ですが、(プラス志向の)連想の力が、実際に病気を改善することがあるということが確証となって裏付けられているのです。これは、すでにみなさん周知の「プラシーボ効果」です。
※プラシーボ:偽薬、本当は薬ではないのに「これは良く効く薬」ですと偽って飲ませること。
プラシーボが奇跡を起こすことはないにしても、プラシーボが身体的に大きな効果を及ぼすことは間違いのないことです、
それはさておき、プラシーボは良いプラスの効果なのですが、一方で不吉な双子の片割れがいます。
それが「ノセボ効果」です。
ノセボ効果は、「悪いことも同時に起こるかもしれない」ダミーの錠剤を患者に与えると、実際に有害な影響を生み出すことになる、という考え方です。
※ノセボ:副作用などの毒性がないのに、「これは効果がある反面に強い副作用がある」などと偽って飲ませる偽薬。
「ノセボ」という言葉は、「きっと私は悪い目に遭うはずだ」というような意味の言葉で、1960年代に生まれた造語なのですが、この現象については、プラシーボ効果ほど研究されていません。「人々をもっと悪い気分にしてやろう」などという研究が、社会的、道義的に世間の賛同を得るのは難しいでしょうから。
私たちがノセボ効果の威力を知ることが、さらに、その悪しきインパクトを広めることになるかも知れないからです。
ジョージア州アトランタの米・疾病対策センターで、ノセボ効果を研究していた人類学者、ロバート・ハーンは、「もし、ブードゥー(の呪いによる)死が実在しているのであれば、それはノセボ現象の極端な形を表しているのかも知れない」と言っています。
生命への脅迫観念(Life threatening)
臨床試験において、被験者の対象群の4分の1(おそらく、ほとんど効果の期待できない治療を受けている人たち)の人が、ネガティブな副作用を経験しています。
※副作用:ここでは、「このままいけば、ますます私は悪くなるのではないか」というマイナスの思いのこと。ノセボ効果。
この(ノセボ効果)副作用の厳しさは、実際の薬剤によって起こる副作用と同じようにキツイものです。
βブロッカーか、コントロールのどちらかを療法指示された何千人もの患者を含む15の試験の遡及的な研究においては、その両方のグループに同レベルの副作用が見られました。
※15の試験の遡及的な研究:療法を受ける前に、何かしらの「胸騒ぎのようなもの」を感じて、気分がネガティブになったことはないか、というような調査研究。
その副作用は、疲労感、鬱的な兆候、および性機能不全などの症状も含まれています。それで、類似の他の試験は、取りやめざるを得なくなりました。
ときとして、ノセボ効果は生命に危険を及ぼすことさえあります。
「信念と期待は、意識的、論理的知覚であるばかりでなく、体にも影響を及ぼすものである」とハーンは語っています。
ノセボ効果は、通常の医療行為の中にも見られます。
化学療法を受ければ、たいていは気分が悪くなるものですが、化学療法を受けている患者の、およそ60%が、その療法を受ける前から、すでに気分が悪くなっているのです。
これを、ニューヨークのマウントシナイ医科大学の臨床心理士、ガイ・モンゴメリーは、「それは旅行に出かける数日前に、すでに起こるようなものだ」と言っています。
ときには、「これから医療処置をしますよ」という単なることでも、あるいは医師の言葉でさえ、患者の気分を悪くするに十分なのです。
この予期的に気分が悪くなるような吐き気は、患者が以前感じた「予期的な吐き気」の経験につながっているものと考えられています。
ノセボ・ウィルス
ノセボ効果は、驚くほどの伝染力を持っていることがあります。
とりたてて原因を特定できないまま、人々の間に広まってしまうケースが、何世紀もの間、見られるのです。気持ちの持ちよう次第で病気のようになってしまう場合がそうです。
以前、ノセボ効果が大発生したことがあったのですが、このことがイギリスのハル大学のアービング・カーシュとジウリアナ・マゾー二を研究に突き動かしました。
彼らは、学生のグループの中の何人かに、普通の空気を思い切り吸い込むように頼みました。学生たち、および関係者たちには、前もって彼らが吸い込む空気には、頭痛、吐き気、敏感肌、眠気につながる環境有害物質が含まれていると、嘘の話をしておいたのです。
関係者の半分人たちには、このサンプルの空気(普通の空気)を吸い込んで、こうした症状を発症した女性の様子を見せたのです。なんと、それらの学生たちは、ただ普通の空気を吸い込んだだけなのに、同じような症状を示したのです。
(この実験のために仕込んでいた)女性は、さらに具合が悪いと学生たちの前で訴え、それを見た他の人たちも具合が悪くなってしまったのです。
このように、ただの安全な空気を吸ったに過ぎないのに、具合が悪くなった人の様子を見せられることによってバイアスがかかり、大規模で集団的な心因性の病気を引き起こすことがあるのです。
この研究結果は、気分が悪くなったことを聞くか、あるいは気分が悪くなる状況を傍らで見るかすると、自分も同じように気分が悪くなってしまうことを示しています。このことは医師を微妙な立場に追い込みます。
「患者は医師から、治る見込みについて説明を受ける権利がありますが、一方で、それを聞くことによって、患者は自分の中に固定的な考えを持ってしまう」とマゾー二は言います。
催眠は助けになるかもしれない
前出のニューヨークのマウントシナイ医科大学の臨床心理士、ガイ・モンゴメリーは、「医師は、患者が快方に向かう可能性が少なくても、慎重に言葉を選んで患者に伝えることが大切。要は、医師や、周りで看病する人々が、どのように言うかにかかっている」と言っています。
こんなとき、「催眠」は助けになるかもしれません。
「催眠は、最初の見込みを変え、不安とストレスを減らすことによって、良い結果につながることがある。広い範囲で、催眠が当初の見込みより良い成果を上げることがわかった」とモンゴメリーは言います。
「ノセボ効果の尺度は、そのような対策を正当化することにつながっていないのだろうか?」…
ノセボ効果については、まだ多くの問題が残されたままになっているので、我々にはまだよく分からないことがあります。
どんな事情でノセボ効果は起こるのか…。
そして、この効果は、どれくらい長く続くのか…。
ノセボ効果がプラシーボ反応をともなって、ばらつきが大きくなる場合、それは文脈に大いに影響を受けるように見えます。
「本当の薬が使用された場合にプラシーボ効果が発揮されると、実験室で引き起こされた場合より、もっと素晴らしい結果となるだろう」と、ドイツのTübingen大学病院の心理学者、ポール・エンクは言います。
この大学は、同時にノセボ効果が、現実の世界で甚大な影響を持っているかもしれないことを示唆しています。
はっきりしていることは、実験室でノセボ効果を引き起こすテストなどを行う場合は、現実の世界でノセボ現象が起こる場合より、もっとずっと穏やかで一時的な現象になるように設計されているのです。現実の世界でノセボ効果が起こることは、恐ろしい結果につながる可能性がある、ということです。
本当の結果
ノセボ効果は、どんなタイプ、どんな状況に置かれた人が影響を受けやすいのかも明らかになっていません。その人が楽観主義か、悲観主義かによっても、ノセボ効果の影響度は違ってくるかもしれません。
一般に、こうした効果は、男性より女性のほうが大きく表れますが、男性、女性ともに心因性の病気で死に至るという点では同じです。
ポール・エンクは、男性においては、そのときの体のコンディションより、彼の将来の見込みがどうなのかで、ノセボ効果に大きな影響を与えると指摘しています。
女性の場合は、これとは正反対です。「女性は、過去の経験がノセボ効果の出方に影響するようだが、男性の場合は、今の自分の状況に過去に経験したことを照らし合わせるのは、どうも気乗りがしない傾向があるようだ」とエンクは言います。
明確になっていることは、これらの心理的な現象が脳に重大な影響を与えている、ということです。
昨年、ミシガン大学アナーバー校のジョン-Kar Zubietaが、プラシーボ(実際は効かない偽薬)、あるいはノセボ(マイナス志向にさせること偽薬)を与えられた人々の脳にPETスキャンをかけて影響を調べたところ、ノセボ効果がドーパミンとオピオイド活動の減少につながっていることが確認できました。このことよって、ノセボ(マイナス効果の偽薬)が痛みをどのように増幅させているのか説明できます。プラシーボ(プラス効果の偽薬)は、当然ながら反対の結果を示したのです。
イタリアのトリノ医科大学のFabrizio Benedettiは、ノセボ偽薬が痛みを引き出す作用を、プログルミドという薬によって抑えることができること、そして、胆嚢収縮物質(CCK)と呼ばれるホルモンの受容体をブロックすることを発見しました。通常、痛むのではないかという考えは、痛みを促進するCCK受容体を活性化させることによるものであることが知られています。
根本の原因は「信念」にある
しかしながら、ノセボ効果の究極の原因は、神経化学にあるのではなく「信念」にあります。
ハーンによると、外科医は、自分が手術で死ぬかもしれないと考えている患者に施術する場合、非常に慎重になります。
ちょっとしたことでも心臓発作につながるのではないかという信念は、それ自体が危険因子です。
ある研究によると、自分たちは特に心臓発作を起こす危険性が高いと信じているご婦人たちは、同じ心臓のリスクを抱えているご婦人方より、4倍もの死の危険があることが分かりました。
ノセボ効果が、確かに現実に起こるものであるというこれだけの証拠がありながら、人が固定した信念を持つことによって、自分を死なせてしまうかもしれない可能性さえある、ということは、この合理的な時代では、どうにも受け入れがたいことなのです。
結局は、大方の人たちは、奇妙な衣装を身にまとい、動物の骨を振り回しながら踊り狂っている男が、「お前は死にかけている」と言ったところで、笑うしかないのです。
ブードゥーの祭り
しかし、同じことを、医学の学位を持ち、いかにも賢そうな身だしなみをした人が、あなたのコンピュータ・スキャンの結果報告を手に携えて言ったらどうでしょう。ポール・エンクは、社会的、文化的なバックグラウンドが重要であると指摘しています。
ミーダーは、ショーマンが末期の肝臓ガンと誤診されたこと、そして、その後の彼の不可解な死は、魔術をかけられて呪い殺される、というような死に方に見られるものと同じ要素が多く見つけられる、と主張しています。
自信に満ちた力強い医師は、“死刑宣告”をすることがあります。犠牲者本人と彼の家族は、その死刑宣告を疑うことなく受け入れるのです。そのとき、本人、その家族の心の中に「もう助からない」という信念が働き始めるのです。
ジョーマン自身、彼の家族、そして死刑宣告した医師自身も、ショーマンがガンで死ぬだろうと信じて疑わなかったのです。それは、結局、「自己実現の予言」になったのです。
神秘的なものなど、どこにもない
「悪い知らせは、悪い生理機能を促す。人は、その人間が死に直面していて、そして実際に死ぬだろうことを人々に説得して信じ込ませることができる」とミーダーは言います。
「私は、そのことに関して神秘的なことは何もないと思っている。私たちは、世界の生体分子モデルに挑戦しているので、言葉や、死を象徴するように行動が死を引き起こすという考えには、とても不愉快なものを感じている」とミーダーは結んだのです。
おそらく、ブードゥー教の「死の呪い」の詳細が明らかになると、「それは本当に実在するものである」とすんなり受け入れることができるでしょう。それは誰にでも影響を与えうるものであると。
翻訳、ここまで。
ブードゥーの呪いのメカニズムは、いずれ解明されることでしょう。そのとき、悪しき因習的な迷信は吹き払われるでしょうけれど、同時に、ブードゥーの呪術師と、彼の依頼者は殺人罪で起訴されることでしょう。ただ、ブードゥーの呪いによる殺人が、法治国家で行われた場合に限りますが。
いわゆる「病は気から」ということなのですが、この人間の不可思議を良い方向に引き出すにはプラシーボは医療の現場でも、活用されるべきではないでしょうか。
ただし、そこには医師と患者の家族との連携による「プラスの信念」がなければならないでしょう。そして、プラスの信念は、患者に対する本当の愛情からのみ生まれるものなのでしょう。
「医は仁術」という言葉を医師の方は思い出してください。
応用されるプラシーボとノセボ
ご存知のように、プラシーボ効果を上手に応用しているのは、なんといっても風邪薬でしょう。
大阪の道修町(日本の名だたる製薬メーカーの本社が密集している地区)に本社のある有名製薬会社のマーケ担当と話したことがあります。
その人は、「風邪薬は、どのメーカーも大差ありません。入っているのは解熱成分と睡眠成分、ビタミン、最近は漢方なども入っていますね」と言っていました。つまり、風邪のウィルスを撃退する成分は入っていないのです。そんなものが開発されればノーベル賞は確実でしょう。(ノーベル賞は年々、権威がなくなってきていますね)
風邪は、自分の体温(発熱作用)を上げて体内のウィルスを殺すことによって撃退できるわけですから、無理に解熱してしまうことは感心しません。といっても、39度以上も発熱した場合は、脳がやられますから、そんなときは解熱剤が必要になります。ケース・バイ・ケースです。一般には、風邪をひいたら、栄養を摂って、ひたすら寝ているのがいちばんです。
すべてではありませんが、いくつかの新興宗教の教祖も、ノセボ効果そのものとはいえませんが、そのエッセンスを上手に利用しているようです。
「先祖の祟り」とか、「成仏していない霊があなたを頼っている」とか、ノセボ効果を使ってうまく信者を増やしている例もあります。そして、ズタズタになった信者を幹部たちはご本尊の御力で「救う」のです。見かけ上は。
また、反対のケースは、「今まで歩けなかった人が、大勢の信者の前で人のサポートなしで歩き始めた」などという場合です。これこそプラシーボ効果のエッセンスを使っているのでしょう。もっとも。サクラなどは最初から、お話になりません。
商売にもっとも巧妙にプロシーボ、ノセボを活用しているのは化粧品業界・健康食品業界です。
「お肌の曲がり角、ちゃんケアしていますか?」。
化粧品会社の脅し文句です。特段、年齢による劣化が見られなくても、女性はそわそわ心配しだすのです。
「最近、太りすぎていませんか?」
「なんとなく体がだるいということはありませんか?」
「最近、良く眠れていますか?」
そうです!このままいけば、あなたは病気になる可能性があります。当社のサプリメントで、毎日、快適元気!
これらの会社の広告手法では、最初はノセボ効果を使うようです。いったん落としておいて、次に「救いがある」と自慢の商品を登場させるのです。ダイエット・サプリなどの場合は、他人から見てちっとも太っていないのに自分では太っていると思い込んでしまう。このままいけば大変だ。そして、サプリメント漬けの毎日が始まるのです。
上にご紹介した2本の翻訳記事ですが、偽薬効果、特にプラシーボ効果が単なるテクニックになってしまった場合は、効果半減でしょう。逆に、かえって患者の状態を悪化させてしまうかもしれません。患者は敏感です。
なんら愛情の伴わない行為であれば、ほとんどの場合、最後になって裏目に出てしまうことを私たちは経験的に知っています。プラシーボであれ、それは同じです。
しょせん、プラシーボは偽薬。
プラシーボは、結局は、人の深い思いやりに勝る良薬は存在しないことを私たちに教えてくれるでしょう。
そして、人の思いやりの上にこそ、プラシーボは初めて効果を上げることができるのでしょう。
私たちにとっては、ほろ苦い偽薬かもしれません。
プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬 [単行本]
ハワード・ブローディー 著 伊藤はるみ 翻訳 新品 2,300円 配送無料
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