『スケアリーストーリーズ』

ギレルモ・デル・トロが携わったと聞けば、並みの仕上がりではないと期待してたけど、意外に普通だった。
普通過ぎて落差が大きかった為、このモヤモヤ感をどうにかしてくれ!
原作は、1980年代にアルヴィン・シュワルツが発表したホラー児童文学「誰かが墓地からやってくる」シリーズ。
ギレルモ・デル・トロはこの本をたいそう気に入ったらしく、映画化したそうだ。
発禁騒動まであったトラウマ小説らしい気味悪さを、冗長な演出でダラダラと観るせられただけ。家族揃って観るにはいいが、ホラー映画ファンは物足りないかな。
1968年。
ハロウィンで賑わうミル・ヴァレーに住む、ホラー映画大好き少女のステラ。

仮装中、いじめっ子に追いかけられ、ラモンの車に匿ってもらう。
一目でステラを好きになったラモン。仮装してるステラのどこが気に入ったのだろう?
ステラと一緒に逃げた友達のオギーとチャックもちゃっかり乗車。仲良し3人組の姿にラモンは苦笑い。
いじめっ子の1人、トミーが「お前の母親はオヤジとお前を捨てたんだよ」と捨て台詞を吐いて立ち去る。

事実ではあるが、ステラにはキツイ・・・。
オギーとチャックは「だから俺たちは彼女を守ってるんだ」とドヤ顔。視聴者から見れば、3人はイケてない軍団だけど、団結力はピカイチ。そんな3人を羨ましげにラモンは見つめる。
「今日はハロウィンだからお化け屋敷に行きましょう!」←は?

助けてくれたラモンを誘い、町で有名なべロウズの屋敷へと向かった4人。
町で起業し、財を成したべロウズ家だが、家族の1人サラという女性が、町の子供を殺しているという噂がたつ。
家族はべロウズ家の汚点として、肖像画からもサラを消したらしいと、まことしやかに囁かれた。
既に住人はおらず、現在は近所のガキどもの格好の遊び場。
各々、探検と称して部屋をくまなく調べていると、隠し部屋を発見!

興奮を隠し切れないステラ。
一方、チャックは謎の老婆と犬を見る。

灯りもないこの屋敷で、煌々とした威厳を放つ老婆の圧倒的オーラに悲鳴をあげるチャック。
「ここは出た方がいい」
当たり前。
仲間が恐怖体験中だというのに、探検家ステラといえば、お目当てのモノを発見する。
サラが書いたとされる本だ。

「本当に・・・あったのね!」
サラが書いたとされるスケアリーストーリーズ(怖い本)は、読めば伝染し人を死に至らしめる。・・・らしい。
小説家を目指すステラにとって、とても貴重な本にちがいない。

メンバーにしてみれば、それはただの本。
そしてチャックに至っては早く帰りたい一心である。
ここで、いじめっ子のトミーが登場。
4人を屋敷に閉じ込めてしまう。
トミーの彼女、ルースが止めるのも聞かず、ルースまで屋敷内に取り残されるはめに。
「あ、姉ちゃん!!」
なんと、ルースの弟はチャックであった。
イケてる軍団の姉とイケてない軍団の弟の構図・・・。
なんとか屋敷を脱出できたけど、ステラは例の本を持ち帰っていた。勝手に持ち出してしまったのだ。

赤い文字で書かれた物語に一気に惹きこまれる。貪るように読んでいくも、突然白紙・・・。
「あら、これでおしまい?」
いいえ、ここから物語が紡ぎ出される・・・
では、順に物語を紹介していきましょう!
『案山子のハロルド』

ステラの目の前で、赤インクが急に浮かび上がる。
呆気にとられていると、文字がスラスラと流れるように描かれる・・・。
文字を擦ってみると・・・血?

その内容はトミーは案山子のハロルドが嫌いということ。そして卵を取りに行くと、二度と戻らなかったというものだった。
トミーって、あのいじめっ子の・・・!?
そうです、実際のトミーは全身の穴という穴から藁が出て・・・

トミーは行方不明となった。
翌朝。
ステラはチャック達に、昨晩のことを必死で説明する。が、相手にされない。

「トミーはベトナム行きたいって徴兵希望してたから、早く出発したんじゃね?」
ちと苦しいメンバーの見解に、もちろん納得などするはずがないステラ。
ラモンに相談すると、優しい彼は「その案山子を見に行ってみよう」と提案。
案山子はあった。

なんならトミーの上着を着ている。表題にあったハロルドとは、案山子に付けられた名前だった。
「本に書かれた事が現実になっているのかも」
ホラー映画大好き♡小説大好き♡な、ステラの鋭い推理。
が、気味悪さと後悔の念で、ステラは本を屋敷に戻した。持ち主にちゃんと返すというより、そばに置きたくないのが心情だろう。
「さあ、いつも通りの生活に戻ろう!」
いや、なんで本が戻ってんねん!!

自宅に遊びに来ていたラモンの手には例の本。
「なんで・・?」
「本?この部屋にあったよ?」
本が戻って来ている・・。どうして??
本は次の物語を紡ぎだした・・・
『大きな指』

今度はラモンも目撃者となった。
ページを破っても破っても・・・次のページに文字が浮かんでくる。
半狂乱のステラが目にした文章・・・
「母は庭で足指を見つけ、シチューを作ることに…」
オギーの名前が浮かび上がる。
オギーが危ない!

オギーはその頃、親指入りシチューを堪能中(笑)
親指を探す母親がオギーの元へ近づいてくる。

いじめっ子トミー同様、本に自分の名前を書かれたら最期。
まさしくデスノートとはこのことだ!
そしてオギーも行方不明となった。
「本を持ち帰った私に責任がある」

放心状態のステラは、チャック、姉のルース、そしてラモンに泣きながら謝る。
「じゃあさ、警察に行こう!」
「無駄よ・・」
確かにホラー映画に警察は無力の産物。犠牲者が増えるだけであろう。
なによりこの現状を理解してもらえるはずがない。
戻って来るなら燃やしてしまえ!

しかし、本は燃えなかった・・・。
チャックに至っては「だから俺は本が嫌いなんだ!」とわけのわからんことをほざいているが、とにかく物理攻撃をしても本は消滅しない。
「サラの事について調べましょう」

確かに、持ち主であるサラの怨念が成せる業に違いない。超常現象なんだから。
サラがこの本を書いた理由、そして呪いの発動原因を突き止めない限り、確実に犠牲者は増えていく。
しかも毎日である。ハイピッチ!
物語は紡ぎ出される・・・
『赤い点』

チャックの姉、ルースの顔に吹き出物が・・・いやそれは吹き出物ではなくて・・・
恐怖の現象を止める事ができないのか。
昔、べロウズ家に仕えていたシルビー。
今は盲目だが、当時サラに本を与えたのは自分だと言う。

「・・・黒魔術ですか?」←見た目で判断しただろ
「黒魔術ではない。あの子がとても可哀想だったから。独りぼっちで閉じ込められて」
閉じ込められて?
サラが家族から蔑ろにされていたのは真実だったのか!
サラは病院で自殺していた。
現存する病院で資料を探そうと、3人は資料室へと向かう。

ここにきてチャックが「俺は皆とは行けない」と駄々をこねだす!なんでじゃ!
しかたないので、ステラとラモンで資料室へ。
資料はアッサリ見つかる。
しかもサラの担当医は実兄であった。
サラは無色素性白皮症を患っていたとの記述が残されていた。アルビノだったのか。

サラの容姿を恥じたべロウズ家は、サラを監禁、表に出さないよう見張っていた。なんてこと!
さらに、町の子供たちが行方不明になった原因を、サラの精神疾患による行為だと実兄は拷問を加えて自白させようとする。
そんなムチャクチャな・・・
その音声が残っていた。

「私は・・・やってないわ」
「言え、お前がやったんだろう!」
「いいえ、お兄様。・・・工場から排水された水銀が・・・」
「黙れ!!」
町の子供たちが次々と死んでいたのはべロウズ家が管理している製紙工場から排水された水銀が原因だった。
べロウズ家はそれを黙っているだけに留まらず、サラに濡れ衣を着せたのだ。なんと無理のある話(笑)
ここで発動した物語。
『チャーリーは赤い部屋の夢を見た』
チャーリーとはもちろんチャックのことである。
「青白い顔をして、黒い目に長い黒髪の女が静かに入ってきた…」

怖すぎ(笑)子供は確実に泣く!!
チャックを1人にさせたのはマズかった・・・

サラの恨みはよ~くわかった。
けど、どうやってこの恨みを晴らせばよいのだ??
ステラとラモンだけでどうやって戦えと言うのだ?
常にバケモノが現れては襲ってくるので、考える時間が欲しいよ!

とにもかくにも・・・
べロウズ家に戻り、サラと対峙して話し合うしかない!

子供たちの死は決して貴女のせいではないと、必死に訴えるしか・・・情に訴えるしか手立てがなーい!
ステラはサラが存命していた頃へタイムワープする。
そう、サラは生まれた時から家族に忌み嫌われていた。

何も悪くないのに・・・
どうして家族は私に冷たく当たるの・・・?
どうして部屋に閉じ込めるの?
壁の向こうにいる子供たちとのお喋りも駄目なの?
すべて・・・駄目なの?
ステラはサラと同化し、在りし日のべロウズ家の家族に襲われる。

髪を引っ張られ、折檻され、暗闇の冷たい部屋に閉じ込められるステラ。
「私はサラじゃない!!」
涙で濡れた視線の先・・・

サラの登場である。
さて、、ステラとサラの対決はいかに・・・!?
★★★★★★★
ステラもサラも、物語を書くことが大好き。
だからこそ、サラはステラを操りやすかったのかもしれない。自分の思いが本となり、呪いが発動し事実を知ってもらえるかもと。
ステラが選んだ行動は・・・

皆が想像した通りだったでしょう。
ラモンに至っては終始バケモノに追いかけ回され、よく生き残ったなと感心するわ。

バケモノの強さが半端ないないのよ。
バイオハザード級のゾンビ。
1968年のアメリカを舞台にしている風刺も、なんだか胸にくるものがある。
ニクソンが大統領に当選し、ベトナム戦争が激化した時代でした。
ラモンは徴兵という道を選び、愛するステラに毎日手紙をくれと別れる・・・

ゾンビにも打ち勝ったラモンですが、果たして生きて帰ってこれたのでしょうか。
サラの呪いよりも・・・もしかしてベトナム戦争の方が悲惨だったかもしれません。