きょう7月13日は、劇団四季創設者・浅利慶太さんの御命日でした。
3年前の2018年7月13日御逝去
この機会に浅利慶太さんの語られたことの一部を御紹介します。
稽古そのものが人生だ――
劇団四季のDNAを創った男・浅利慶太の生き方
https://www.chichi.co.jp/web/20180718gekidanshiki-1/
到知出版社-2018年7月18日
(引用・前略)
日本にある「芸道精進」という言葉、この概念は英語にはありません。常に精進し続けるというのが日本の芸人の姿勢なんですね。
まだ足らぬ
踊り踊りて
あの世まで
これは六代目尾上菊五郎の辞世の句で、四季の掲示板にはこの言葉が張ってあるんですが、菊五郎ほどの踊りの名人にして「まだ足らぬ」と言ってあの世に行かれた。
それに世阿弥も、
稽古することは生きることと見つけたり
と言っている。舞台に上がって見せるだけでなく、稽古そのものが人生なんだと。このように15世紀の世阿弥から現代の菊五郎に至るまで、芸の道は一貫している。だから、われわれもその伝統に基づけばいい。
四季のDNAはそこにあるといってよいでしょう。
時分(じぶん)の花が枯れてから、真(まこと)の花が咲く
http://goodstory.biz/happy/1660/
Good Story - 2019年11月26日
(一部引用)
劇団四季の創設者のひとりで演出家の浅利慶太さんは演出について「装う」ことではなく、その人が本来持っている魅力を発揮させることだと言っている。
「中身のない人間に輝きはない。
それと世阿弥がいいことを言っています。
それは、花めくという言葉を使っているのですが、『時分の花』というのがある。
若い時は、持っている肉体的なものだけでも、非常に魅力的なものです。
しかし、その“時分の花”が枯れてから“真の花が咲く”と言っています。
そこから芸術が始まるわけです。
舞台と人生(9)演出家 浅利慶太
宿命の先に見いだした自由 編集委員 内田洋一
https://www.nikkei.com/.../DGXZQOFG109B30Q1A210C2000000/...
日本経済新聞-アートレビュー:2021年2月11日

(長い論考のWEB公開分の一部を引用)
劇団四季を率いた浅利慶太さんは、宿命という言葉が好きだった。こう考えていた。
この世界は人間の手が及ばない大きな力に支配されている。人間は本来、孤独な存在だ。けれど宿命を引き受け、そのなかで懸命に行為すること、そこにこそ尊い自由はあるだろう。この人生は生きるに値する――。
(中略)
さて、これも驚くべきことながら、浅利さんは父との間でも宿命のくびきをつくった。新劇の子なのに、新劇を全否定して出発したのである。
新劇運動は西欧近代演劇のようなせりふ劇を確立するため、明治末に起こった。その最初の担い手、二代目市川左団次は大叔父。父の鶴雄は新劇の拠点、築地小劇場の創立メンバーだ。浅利さんはまさに新劇の嫡子といえる存在だった。
にもかかわらず浅利さんは、新劇への絶縁状といえる激烈な評論「演劇の回復のために」で世に出た。それは実に「父」の否定であった。
鶴雄は三味線を嫌い、ピアノを聞きたがる人だったらしい。西欧の文物にあこがれ、新しきについた世代だった。息子が高校で芝居を始めると、さんづけで呼ぶようになった。
「慶太さん、歌舞伎をみたくありませんか」。あるとき、父は焼け跡に再建された歌舞伎座へ息子をつれていった。松竹の幹部だったこともある父は、劇場の元部下に頼んで入る。すさまじい不入りで、2階正面には誰もいない。なのにパイプの補助椅子にふたりしてすわる。前に息子、後ろに父。
「なぜ、あいている席にすわらないの?」。息子に問われた父はこう答えた。
客席はお客様のすわるところだ。芝居者にとってすわる席がないのが一番幸せなのだから、不入りでも立ってみなければいけない。今日は君が初めて歌舞伎をみる日だから、特別に片隅にすわらせていただいたんだ。
浅利さんが日本経済新聞のコラム「あすへの話題」で明かした逸話だ。西欧を崇拝した父だったが、古くから受け継がれてきた芝居者の心を息子へと確かに伝えていたのである。
四季が食えない劇団だったころ、よく面倒をみたのもこの父だった。宿命の人、浅利慶太を支えたのは心から心へと伝えられた演劇の花だろう。
[日本経済新聞朝刊2021年1月9日付]
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