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ミュージカル「エリザベート」の演出
ストーリーの展開は、基本的には日本での公演と同じ。日本版が本場と同じと言う方が正確。
舞台機構の動きが決定的に違うのと、日本ではトートはそれほどアクティブではないが(静かにエリザベートに近づく)、こちらのトートはブリッジに飛び乗ったり、すべり降りたりと極めてアクティブで、かつ何か明るい(声質も高いメリハリのある声で、全然暗くない)。
宝塚「花組」公演(2002年)で春野寿美礼トート役に書きおろされた「わたしが踊る時」(Wenn ich tanzen will) のナンバーも早速ウィーン版に取り入れられているという、おいしいところもある。

(休憩時間中のオーケストラピット)
役人や女官たちの動き(画一的動きを風刺)は、宝塚版と良く似ていた。
決定的に異なる演出は、時代を超越したところがあるのだが、ナチスと思わせる集団がユダヤ人排斥の狂信的な行進を見せるところ。この集団の歌は、唄うと言うより、ラップというか、掛け声というか大声で叫んでおり、象徴的な表現でナチスを批判しているわけである。
その紋章が「日の丸」の中に「鈎十時」の4辺を3辺にデフォルメしたマークが入っているというもの。ナチスだけではなく、その協力者であった日本帝国主義も批判しているように見える。 背景の時代は19世紀末、第一次世界大戦前であるからナチス台頭までにはまだ数十年あるのだが・・・。
パンフレットには「20世紀のファシズムが早くも暗影を投げかける」と説明している。
“Der Faschismus wirft seine Schatten voraus. ”
皇太后ゾフィーが、終盤で「こんなにも帝国や皇帝やエリザベートのためを思って尽くしてきたのに・・・」と淋しく嘆き悲しむ(ドイツ語はわからないので雰囲気で、ですね)シーンがあり、日本版では、ただ憎たらしい「姑」で一生を終えるのとは少し違う演出であった。
このシーンは、その後の東宝版「エリザベート」でも挿入されていたが、内容は上記の私の感じた説明と相違なかった。
楽曲では、フレーズの繰り返しが増えているところが多かった。せりふや状況を強調しているのであろう。
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ウィーン一人旅-第38回
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