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■ プロジェクト背景
「未来のT&Iコンテスト」(以下「コンテスト」という)は、当初、「みらいの土木技術コンテスト」として企画がスタートした。さらに遡れば、90周年記念事業でも開催した「論文・論説コンテスト」を同時開催する案があったが、100周年記念事業としての特色を出す観点等から「技術」コンテストに絞り込むことにした。
企画スタート時点でのコンテスト開催の“おもい”は、「土木系大学生に未来の土木に対する夢をもってもらう」「一般の方に土木界に興味を持ってもらう」ことであり、大学生に”夢(?)の100万円”を最優秀の賞金として与えるというものであった。「一般の方に土木界に興味を持ってもらう」ためには、日本経済新聞等一般紙でコンテスト募集と結果公表を行うことを想定していたが、これは、日本経済新聞社が主催している理工系学生を対象とした「未来の夢アイデア・コンテスト」(http://nikkei-techno.jp/about.html)を見ての発想であった。 -
■ プロジェクト略歴
2013.4.18 第1回準備委員会開催 2014.1.6 I部門募集開始 2014.2.1 T部門募集開始 2014.7.26 技術検討会 2014.10.11 最終選考会 2014.11.21 コンテスト表彰式 :T部門 :I部門 :共通
最終的には、コンテスト準備委員会(以下「準備委員会」という)で議論した結果、コンテスト対象を小学生・一般にも広げ、“夢”の土木技術に加えて、未来を創造する企画力・実行力・総合力のすべてを兼ね備えた土木の迫力を社会に発信することをコンテストの目的とした。
募集用配布物
準備委員会での宮川委員長の一言が成功への第一歩
2013年4月18日(木)
土木学会
準備委員会は、2013年4月18日に第1回を開催し、2014年12月までの20か月の間に委員会、幹事会等で約20回に及ぶ精力的かつ白熱した議論を重ねた。準備委員会は、京都大学大学院教授の宮川豊章氏を委員長とする14人の委員・幹事に支部代表8人、日本科学未来館、(一社)日本建設業連合会(以下「日建連」という)等のプロジェクトメンバーを加えた総勢27人で編成した。コンテストが滞りなく開催できたのは準備委員会メンバーの総力を結集した結果に他ならないが、それは第1回委員会で宮川委員長が「準備委員会メンバーが楽しめることが第一」といった趣旨の一言があったからだと思う。実際、小学生や土木技術者からの応募作品はワクワクするものが多く、準備委員会メンバーは皆、楽しく選考作業等を進めた。
コンテストの概要―アイデアに技術検討を加えたことが最大の特徴―
- コンテストは、夢のアイデアだけではなく土木の企画力・実行力・総合力を社会に発信すること、小学生を含めた一般の方も対象とすることとしたため、これを組み合わせ、テクノロジー(T)部門とアイデア(I)部門の2つの部門で開催することとし、準備委員会において、コンテスト名称を「未来のT&Iコンテスト」と決定した。さらに、アイデア部門でも実現化に向けた技術検討を加えることとし、右記に示すコンテスト内容が確定した。結果的に、I部門において夢のアイデアにとどまらず、専門家による技術検討を加えたことがこのコンテストの最大の特徴となった。技術検討を担当した日建連土木工事技術委員会メンバーには大いに力を発揮していただいた。
未来のT&Iコンテスト概要
募集から選考まで―アイデア部門の応募を増やす工夫と選考基準の特徴―
2014年1月6日(月)
- 2014年1月6日からI部門の募集を開始したが、小学生からの応募を促すため、小学校547校にコンテスト選考委員長である日本科学未来館館長の毛利衛氏のメッセージ付募集パンフと応募台紙約8.9万枚を配布するとともに、朝日小学生新聞に募集広告を掲載した。さらに、地元小学校と交流がある支部にも協力をお願いした。どのくらい小学生から応募があるか不安があったが、最終的には小学生からの応募162件の他、一般を含めI部門では209件の応募があった。T部門は、建設会社から29件、大学生から8件を含め47件の応募があった。
未来のT&Iコンテスト選考方法
当初のコンテスト企画段階では、大学生を対象としていたこともあり、8件ではあるが大学生から応募があったことは一安心といったところであった。
選考方法・基準は右記とした。T部門の一次選考は、「①アイデア自体の面白さ・ワクワク感」「②技術面・計画面等での新規性」「③社会への貢献度」「④アイデアの実現可能性」を選考基準としたが、①と②の配点を高くしているのが特徴である。一方、I部門の一次選考は、①のみを選考基準とした。最終選考では、選考基準にプレゼンテーションの内容も加え、I部門では「アイデアを形に変えるプロセス」を追加しその配点を①と同じとすることにより、夢のアイデアのみならず実現化するための技術検討を重視した。
選考方法・基準は右記とした。T部門の一次選考は、「①アイデア自体の面白さ・ワクワク感」「②技術面・計画面等での新規性」「③社会への貢献度」「④アイデアの実現可能性」を選考基準としたが、①と②の配点を高くしているのが特徴である。一方、I部門の一次選考は、①のみを選考基準とした。最終選考では、選考基準にプレゼンテーションの内容も加え、I部門では「アイデアを形に変えるプロセス」を追加しその配点を①と同じとすることにより、夢のアイデアのみならず実現化するための技術検討を重視した。
I部門の技術検討―コンテストの最大の特徴―
2014年7月26日(土)
日本科学未来館
![](images/photo04.jpg)
「技術検討会」では、アイデア提案者を「未来プランナー」、技術検討メンバーを「土木エンジニア」と呼ぶこととし、アイデアを形にする(実現化)ため、発案者(発注者)である未来プランナーの意向(仕様)を土木エンジニア(受注者)が確認する場とした。未来プランナーには土木学会で名刺(右図)を作成し、土木エンジニアと名刺交換する演出もした。小学生4人の未来プランナーにとっては、初めての名刺交換であり、緊張と微笑ましさに包まれた瞬間であった。
小学生4人の未来プランナーは、小学2年生、3年生、6年生2人であり、皆しっかりと自分のことばで土木エンジニアにアイデアを説明していた。柔軟な発想と見事な説明ぶりに土木エンジニアがたじたじとなる場面も見受けられ、未来プランナーの頼もしさに関係者一同感服した。
最終選考結果からみる未来の土木への期待
2014年10月11日(土)
日本科学未来館
- 10月11日、日本科学未来館で開催された市民普請大賞と合同の最終選考会の結果は表2のとおりである。T部門の最優秀賞は、優秀5件のうち唯一の学生チームである横浜国立大学チームが獲得した。災害に強い街づくりについて、柔軟な発想とハード・ソフトの総合的な視点に基づいたアイデアが高く評価された。「建設会社の提案は20世紀型であったのに対して学生チームの提案は21世紀型であった」との毛利委員長の選考コメントが印象的であった。I部門の最優秀賞は、都内江東区在住の小学3年生の「へび好き」な藤井雄也君が受賞した。
未来のT&Iコンテスト最終選考対象・結果
環境を大切にした街づくりのアイデアとそれを実現するための技術検討が高く評価された。選考委員6人のうち3人が女性、また土木学会外の方が4人となっており、その方々からみた未来の土木技術には、環境と調和したソフトな技術への期待が高いのではないか、と感じられた。
コンテストの新たなスタイルを創出! この成果を継続させよう!
関係各位のご協力により、「未来のT&Iコンテスト」は成功裏に終えることができた。特にアイデア部門は、単に募集したアイデアを審査するのではなく、アイデアに対して土木の専門技術者が技術的検討を加えるプロセスをも審査するという新しいスタイルを生み出すことができた。子供達を中心とする市民と土木技術者が未来の社会を協働して考える場ができたと考える。
100周年記念事業はお祭り的な行事ではなく永続性のある行事とすることを重視して選ばれており、「未来のT&Iコンテスト」については、社会コミュニケーション委員会にて2015年度以降の開催について検討していただく予定である。継続開催に向けて、今回多大なるご協力をいただいた日建連、日本科学未来館等関係団体に引き続きご協力をお願いする次第である。
100周年記念事業はお祭り的な行事ではなく永続性のある行事とすることを重視して選ばれており、「未来のT&Iコンテスト」については、社会コミュニケーション委員会にて2015年度以降の開催について検討していただく予定である。継続開催に向けて、今回多大なるご協力をいただいた日建連、日本科学未来館等関係団体に引き続きご協力をお願いする次第である。
表彰式
2014年11月21日(土)
100周年記念式典会場
未来のT&Iコンテストの表彰式は、11月21日の100周年記念式典において16時30分から開催された。表彰式では、コンテスト選考委員長である毛利衛氏の3分間のビデオメッセージの後、市民普請大賞、未来のT&IコンテストI部門、T部門の順で、選考委員から選考状況を説明し、14件(市民普請大賞優秀賞1件欠席)の受賞者に磯部会長から表彰状が授与された。未来のT&Iコンテストの各最優秀賞者が受賞に際して挨拶を行った。
表彰式当日は平日しかも3連休前の金曜日にもかかわらず、学校・職場を休んで参加していただいた受賞者およびご家族の皆様に御礼を申し上げたい。受賞者・同伴のご家族には記念祝賀会にも参加していただいた。楽しんでいただき帰路につかれるのを見て、コンテスト関係者として感無量であった。
表彰式当日は平日しかも3連休前の金曜日にもかかわらず、学校・職場を休んで参加していただいた受賞者およびご家族の皆様に御礼を申し上げたい。受賞者・同伴のご家族には記念祝賀会にも参加していただいた。楽しんでいただき帰路につかれるのを見て、コンテスト関係者として感無量であった。
毛利衛委員長のビデオメッセージ内容
選考委員長 毛利衛氏(日本科学未来館館長)- 皆さんこんにちは。日本科学未来館館長の毛利衛です。
土木学会創立100周年。誠におめでとうございます。
私たちは過去から「土木」という科学技術を発展させて文明を興し、社会を築いてきました。今では宇宙にまで広がり、6人の宇宙飛行士が90分で地球を一周する国際宇宙ステーションの中でいつも仕事ができるようになりました。しかし、この小さくなった地球で、私たち人類は未来に向けて「土木」を使ってどのように進んでいけばよいのでしょうか。
土木が描く未来について考えるのは専門家だけの仕事ではありません。今や多くの人々が描く夢をもとに、専門家とともに明日の地球環境を作っていくことが必要な新しい時代になりました。
今回、土木学会では創立100周年を記念して、一般の方々と専門家が一緒になって土木の未来を考えるコンテストを企画してくれました。この先進的な取り組みに敬意を表するとともに、選考委員長として関われたことを大変光栄に思っています。
このコンテストは、三つの部門からなっています。一つ目は市民普請大賞。市民自らが地域づくりに直接貢献している、とても興味深い最先端の取り組みを見ることができました。二つ目はアイデア部門です。これは幼児から大人まで若い世代を中心とした未来プランナーたちが自分たちの住みたい未来社会の夢を専門家と協力して描いてくれました。そして、三つ目のテクノロジー部門。これは将来土木技術者になろうと勉強している学生の皆さん、そして今現場で活躍している技術者の皆さんが実現したい未来の社会について、その実現を可能にする技術的な検討も含めた本格的なアイデアを示してくれました。
選考の結果、最終的には15チームを選ばせていただきましたが、今回のコンテストにご参加いただいたすべての皆さんの努力と熱意に、敬意と感謝を表したいと思います。
少しでも多くの人々の知恵で、私たち人類が今後もこの地球上で豊かに暮らしていくための重要な文化の一つとして、「土木」が今後も発展していくことを期待しています。
選考の結果、最終的には15チームを選ばせていただきましたが、今回のコンテストにご参加いただいたすべての皆さんの努力と熱意に、敬意と感謝を表したいと思います。
少しでも多くの人々の知恵で、私たち人類が今後もこの地球上で豊かに暮らしていくための重要な文化の一つとして、「土木」が今後も発展していくことを期待しています。
未来のT&Iコンテスト アイデア部門 記録映像
土木学会創立100周年コンテスト選考委員会
氏 名 | 勤務先名称 |
---|---|
宮川豊章 | 京都大学 教授 |
福田和代 | NHK報道局社会番組部 チーフプロデューサー |
毛利 衛 | 日本科学未来館 館長 |
森山奈美 | (株)御祓川 代表取締役 |
田中理沙 | (株)宣伝会議 取締役副社長 |
桑子敏雄 | 東京工業大学 教授 |
未来のT&Iコンテスト準備委員会委員構成
役 職 | 氏 名 | 勤務先名称 |
---|---|---|
委員長 | 宮川 豊章 | 京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 教授 |
幹事長 | 見波 潔 | (一社)日本建設機械施工協会 業務執行理事 兼 施工技術総合研究所長 |
副幹事長 | 長井 宣子 | (株)大林組 土木本部 工務部工務 第三課 副課長 |
委員 | 時政 宏 | (社)セメント協会 常務理事 |
委員 | 知花 武佳 | 東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 准教授 |
委員 | 福田 大輔 | 東京工業大学 大学院理工学研究科 土木工学専攻 准教授 |
委員 | 宮田 喜壽 | 防衛大学校システム工学群 建設環境工学科 教授 |
委員兼幹事 | 大槻 崇 | 環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課 |
委員兼幹事 | 坂井 勝哉 | 東京工業大学 大学院 理工学研究科 土木工学専攻 朝倉研究室 |
委員兼幹事 | 髙野 昇 | (株)日本能率協会総合研究所 顧問 |
委員兼幹事 | 高橋 薫 | 大成建設(株) 営業推進部 情報戦略室 主任 |
委員兼幹事 | 高橋 良和 | 京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 構造ダイナミクス分野 准教授 |
委員兼幹事 | 田中 伸治 | 横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授 |
委員兼幹事 | 長谷 卓 | 横浜国立大学 工学部建設学科 交通と都市研究室 |
北海道支部委員 | 菅原 登志也 | (株)ドーコン 構造部 部長 |
東北支部委員 | 加納 実 | 鹿島建設 東北支店 専任役 |
関東支部委員 | 松尾 元 | 鹿島建設(株) 横浜支店 土木部技術設計グループ |
中部支部委員 | 戸田 祐嗣 | 名古屋大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 准教授 |
関西支部委員 | 河﨑 和文 | 国土交通省(近畿地方整備局) 港湾空港部海洋環境・技術課 課長 |
中国支部委員 | 河合 研至 | 広島大学 大学院工学研究院 社会環境空間部門 教授 |
四国支部委員 | 岡田 将治 | 高知工業高等専門学校 環境都市デザイン工学科 准教授 |
西部支部委員 | 御代川 亨 | パシフィックコンサルタンツ(株) 九州支社 支社長 |
プロジェクトメンバ | 内田 まほろ | 日本科学未来館 事業部展示企画開発課 課長 |
プロジェクトメンバ | 岩崎 茜 | 日本科学未来館 事業部 対話プログラム開発課 |
プロジェクトメンバ | 谷田海 孝男 | 一般社団法人 日本建設業連合会 常務執行役 |
オブザーバー | 山崎 史郎 | 一般社団法人 日本建設業連合会 土木第二部 |
プロジェクトメンバ | 林 広昭 | (株)インテリジェントターミナル総合研究所 クリエイティブ事業部 |
I部門技術検討チーム
チーム | 氏 名 | 勤務先名称 |
---|---|---|
チーム藤井 | 吉川 正 | 鹿島建設(株)技術研究所 副所長 |
渋沢 重彦 | 東急建設(株)土木本部 土木技術設計部長 | |
福本 正 | 西松建設(株)技術研究所 技術戦略グループグループ長 | |
梅原 治子 | 鹿島建設(株)技術研究所 研究管理グルー当主任 | |
チーム髙橋 | 今石 尚 | 大成建設(株)国際支店 土木部 部長 |
杉浦 伸哉 | (株)大林組 土木本部 本部長室 情報企画 課長 | |
佐藤 郁 | 戸田建設(株)価値創造推進室 開発センターエネルギーユニット次長 | |
太田 綾子 | 大成建設(株)技術センター土木技術研究所 水域・環境研究室 主任 | |
チーム山田 | 津川 優司 | 飛島建設(株)建設事業本部 土木事業統括部技師長 |
前田 敏也 | 清水建設(株)土木事業本部 土木技術本部基盤技術部グループ長 | |
佐藤 文則 | 前田建設工業(株)土木事業本部 土木設計・技術部技術開発グループチーム長 | |
酒井 貴洋 | 五洋建設(株) 技術研究所 土木技術開発部 係長 | |
チーム上地 | 春日 昭夫 | 三井住友建設(株)常務執行役員 土木本部 副本部長 |
関本 恒浩 | 五洋建設(株) 技術研究所長 | |
佐久間 誠也 | (株)安藤・間土木事業本部 副本部長 | |
高岡 怜 | 三井住友建設(株)土木本部 土木設計部 | |
チーム近藤 | 岩永 克也 | 西松建設(株)執行役員 土木事業 本部副本部長 兼 技術研究所長 |
大原 英史 | (株)熊谷組 土木事業本部 土木設計部 副部長 | |
山根 信幸 | 東亜建設工業(株)技術研究開発センター 研究開発企画グループリーダー | |
永山 智之 | 西松建設(株)経営企画部 企画課副課長 |