実質GDPは増税後で初のプラス成長、消費回復「なお課題」
[東京 16日 ロイター] - 内閣府が16日発表した2014年10─12月期の国内総生産(GDP)は、実質成長率が3四半期ぶりにプラスに転じた。14年4月の消費税率8%への引き上げ後では初めて。もっともロイターの事前予測(年率プラス3.7%)に届いておらず、回復の足取りは鈍い。増税後に大幅に落ち込んだ消費をいかに本格回復させるかが今後の焦点となる。
<消費・設備投資とも予測下回る>
内閣府が同日発表した14年10─12月期国民所得統計1次速報によると、実質GDPは前期比プラス0.6%、 年率換算プラス2.2%となった。3四半期ぶりのプラス成長ながらも、ロイターの事前予測中央値の年率プラス3.7%を下回り、勢いに欠ける結果となった。
消費、設備投資など内需の足取りが弱い一方、輸出の伸びは前期を上回った。GDPデフレーターは前期からさらにプラス幅が拡大し、名目GDPは年率プラス4.5%と実質に比べ高い伸びとなった。
民間最終消費支出は前期比プラス0.3%。事前予測の同0.7%を下回り、弱めの伸びとなった。2四半期連続でプラスとなったが、伸び率は、天候不順で不調だった7─9月期と同じだった。品目では、携帯電話・パソコン・飲料などが増加する一方、ゲームやその他身の回り品が減少した。
雇用の改善、消費増税後の反動減が薄らいできたこともあり、持ち直しが期待されていたが、その割には反発力に欠けており、消費の回復は鈍いことがうかがえる。物価上昇に所得の伸びが追いついていないことや、消費マインドの回復が鈍いことなどが要因の1つとみられる。
内需のもう1つの柱である民間設備投資は前期比プラス0.1%。3四半期ぶりのプラスとなったが、こちらも勢いには欠け、ほぼ横ばい圏。製造業で円安により大企業の収益が拡大し、生産の国内回帰の動きが広がったこと、非製造業では人手不足対応の投資が活発化していることの寄与が期待されたが、大きな効果は見られなかった。パソコンなどの電子通信機器などは増加した。
一方、マイナスが大きかったのが民間住宅投資。前期比マイナス1.2%減と3四半期連続のマイナスとなった。マイナス幅は縮小したが、駆け込み需要の反動はまだ続いている。
個人消費と設備投資の内需に支えられ、内需寄与度は3四半期ぶりにプラス寄与となった。
<外需寄与度は3期連続プラス>
一方、外需が3四半期連続のプラス寄与となったのは、輸出が前期比プラス2.7%としっかりとした伸びとなり、輸入の同1.3%を上回ったため。米国経済の回復などが寄与したほか、円安による数量効果もようやく表れ始めたとの見方もある。品目では電子通信機器などが増加した。
<デフレーター上昇、円安による外需デフレーター上昇が影響>
GDPデフレータは前年比でプラス2.3%。増税の影響もあり4四半期連続のプラスとなったが、前期比でもプラス0.5%と、7─9月期のマイナスからプラス転換した。輸出デフレーターが輸入デフレーターを上回り、外需デフレーターの上昇が寄与した。円安の影響で輸出・輸入価格ともに上昇したが、輸入には原油安の影響が出た。
この結果、名目GDPは前期比プラス1.1%、年率4.5%となり、高い伸びとなった。
<2014年GDPデフレーター、97年以来のプラス>
2014年暦年の実質GDPは前年比横ばい、名目でプラス1.7%となった。名目成長率は3年連続のプラス成長で、プラス幅も2012年以降徐々に拡大している。
GDPデフレーターは消費税引き上げの影響などで前年比プラス1.6%と、1997年以来のプラスとなった。
また、名目の雇用者報酬は前年比プラス1.8%。伸び率は1997年(2.1%)以来、17年ぶりの高い伸びとなった。
2014年度の政府の経済成長見通し(マイナス0.5%程度)を実現するには1─3月期に前期比プラス2.0%程度の成長が必要となる。
同日午前、記者会見した甘利明経済再生担当相は、10─12月期GDPの実質成長率が3四半期ぶりにプラスとなった背景に、雇用、所得環境の改善傾向を受けた個人消費や、米中向けの輸出がプラスに寄与したことがあると指摘した。
先行きについては「雇用、所得環境が引き続き改善し、好循環がさらに進展するとともに、原油価格の下落で交易条件も改善する中、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる」と言及。「過去最高水準の企業収益を賃金上昇につなげることが重要で、昨年の政労使会議の合意に沿って、今年も賃上げがしっかり実現することを期待している」と述べた。
また、デフレーターが前年比で2.3%上昇し、前期よりプラス幅が拡大していることは「デフレ脱却に向けて好ましい状況」との認識を示した。
*内容を追加します。
中川泉 吉川裕子 山口貴也 編集:山川薫
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