「阿寒湖と言えば」と聞かれたとき、多くの人が「マリモ!」と答えるのではないでしょうか。実際に、阿寒湖温泉の街を歩くとマリモにちなんだお土産品がたくさん並んでいます。阿寒湖の自然の象徴であるマリモ、一体どのような生き物なのでしょうか。ここでは、マリモの形態や分布、そして阿寒湖温泉でマリモが観察できる場所について紹介します。
そもそも『マリモ』とは
マリモは水中に生育する藻の仲間で、陸上の植物と同様に光合成をして育つ生き物です。マリモの体は本来、糸のような形をしていますが、これが他の藻と同じように岩石や貝殻などに付着して生活していたり、岩石などから剥がれたマリモが綿くずのような塊となって水底に堆積・浮遊していたりと多様な形状を持つことが特徴です。皆さんがイメージする球状のマリモも、たくさんの糸状のマリモが集まって塊をつくり、風や波の力によって水底で回転しながら丸くなったもので、数あるマリモの形状の一つです。『阿寒湖のマリモ』は、1921年に国の天然記念物(1952年から特別天然記念物)に指定されて以降、地域に住む人たちの手によって手厚く保護されています。
直径15㎝以上の丸いマリモが群生する湖は世界でも稀!
マリモが生育している湖沼は阿寒湖だけではありません。2002年時点で日本では17ヶ所、世界では北半球の比較的寒冷な地域の湖沼や河川を中心に50ヶ所以上でマリモの生育が確認されています。マリモは世界中の多くの湖沼にいるはずなのに、丸いマリモが身近に感じられないのはなぜでしょう?
世界に分布するほとんどのマリモは、岩に付着しているものや、綿くずのような塊となっているもので、直径15㎝以上の球状のマリモが群生している湖は阿寒湖とアイスランドにあるミーヴァトン湖の2ヶ所だけです。このうち、ミーヴァトン湖の球状マリモは自然環境破壊等の影響を受け、絶滅の危機に瀕してしまいました。(保護活動により、2016年頃から数は上昇傾向)このように環境の変化等で簡単に絶滅してしまう植物であり、環境を保持することが何より大切なことだといえます。
マリモが丸く育つためには、いくつもの自然の条件が揃っていなければなりません。例えば、光合成に必要な日光がマリモに十分当たるような広く遠浅な地形や、マリモがその場にとどまって回転できる程度の波を作りだす風、また、マリモの生長を促進するミネラルを豊富に含んだ温泉や冷泉の湧き出る場所などが必要です。このような多くの条件が揃った奇跡的な場所こそが阿寒湖なのです。
阿寒湖の『巨大』マリモ
『マリモが野球ボール大にまで生長するには100年必要』などという話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際はそこまでの年月は必要ありません。これまでの調査により、阿寒湖のマリモは条件が良いと1年で3~4㎝ほど生長することが分かっています。単純に計算すると、10年ほどで直径30cm以上に達することになります。阿寒湖では実際に直径30㎝以上の球状マリモが見つかっています。
『阿寒湖のマリモ』を見るためには?
阿寒湖にある球状マリモの群生地は環境省の特別保護区に指定されており、保護の観点から立ち入りが制限されています。このため、例年10月8日まりも祭りの一環として開催される「生育地観測会」の日を除き、実際に湖底を覗いてマリモをご覧になることはできません。
しかしご安心ください。阿寒湖温泉にはマリモを展示している施設が2ヶ所あります。
1つは観光遊覧船に乗って行くことのできるチュウルイ島のマリモ展示観察センターです。マリモの群生地を再現した大水槽は必見です。
もう1つは阿寒湖畔エコミュージアムセンターです。阿寒湖温泉街にある自然系施設で、阿寒湖地域の自然環境の解説と共にマリモを展示しています。
阿寒湖の自然の奇跡が作り出した球状マリモをぜひご覧ください。