準決勝進出を賭けた一戦は、ガンバにとって不運な判定から動きました。前半12分、左サイドからのレオナルドのFKがゴール前で混戦を生むと、こぼれ球をパク・ウォンジェがシュート。このボールが丹羽大輝の腕に当たったとして全北のPKとなったのです。丹羽の腕は体から離れておらず、露骨なファウルには見えませんでした。

このPKをレオナルドに確実に決められ、痛恨のアウェイゴールを許します。これでガンバは90分で勝たなければならない状況に追い込まれるも、すぐさま同点に追い付きました。

14分、ゴールから遠い位置から遠藤保仁がFKでクロスを上げると、全北の選手がGKクォン・スンテ一人をペナルティエリアに残す豪快なオフサイドトラップを仕掛けます。それをかいくぐった阿部浩之がフリーでボールを収め、パトリックにラストパスを送ります。パトリックは押し込むだけでOKでした。

ガンバはピッチにいる全員が常にパトリックを見ながら攻撃を仕掛け、得点には至らなかったものの37分には相手CKからのカウンターアタックで、パトリックがシュートを放つビッグチャンスをつくるなどしました。ペースとしては決して悪くありません。

それでも何が何でも2点目が必要なガンバは、攻撃にさらなる勢いをもたらすために長谷川健太監督が後半20分に動きます。オ・ジェソク、そして大一番で起用された二川孝広に代えて、米倉恒貴とリンスを送り出しました。

すると31分、バイタルエリアがぽっかり空いていたのを見逃さず、倉田秋が左足を振り抜きます。ボールはチェ・チョルスンの体に当たりコースが変わって、貴重な勝ち越し点となりました。クォン・スンテが一歩も動けないシュートでした。

逆に後がなくなった全北はCBを2枚削って、長身のウルコ・ベラとキム・ドンチャンを入れるというなりふり構わぬ作戦に出ました。この無謀とも思われる交代が43分に実を結びます。

右サイドからイ・グノがふわりとしたクロスを上げると、ベラが頭で合わせました。このボールの軌道上にキム・ドンチャンが飛んできたことによって東口順昭にはブラインドとなり、ボールはファーサイドのネットを揺らします。ベラが入った後で金正也を入れ、守備固めをしたガンバにとってはあまりに痛い失点でした。

絶体絶命のガンバは前線に人数をかけます。全北はCB不在の中、ベラも守備的なポジションをとって守ります。そんな中で47分にはパトリックの落としを受けた倉田が抜け出してシュートを打つも、枠をとらえられません。時計の針は進み、敗色濃厚となる中、最後に笑ったのはホームチームでした。

48分、遠藤のセンターサークルからのパスを受けた金正也が巧みなコントロールで前にボールを送ると、急造CBの間を抜けた米倉が、バランスを崩しながらも左足でボールに触れてゴールネットを揺らしました。アディショナルタイム残り1分という時間帯での決勝点となりました。

あまりにも劇的すぎて、喜びすぎたという長谷川監督が退席処分を食らいはしたものの、最後の最後でゴールを奪ったガンバが準決勝に駒を進めました。シーソーゲームを制したこの勢いで、柏レイソルを下したアジアの巨人、広州恒大との準決勝を乗り越えてほしいものです。