2016年11月 : 22インチのフットボール

22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年11月

後半11分、柏木陽介のクロスがペナルティエリアへ飛んだ際、西大伍がボールのないところで興梠慎三を倒してPKの判定になると、1分後に阿部勇樹がペナルティスポットからインサイドキックでゴールの真ん中に蹴り込み、浦和が先制しました。

その後は柴崎岳を投入した鹿島がエンジンをかけ直し、猛攻を仕掛けるも浦和ディフェンスを破ることはできません。西や山本脩斗、ファン・ソッコがクロスを上げるも奏功せず、44分に永木亮太が、50分に柴崎がミドルシュートを試みるも、いずれもDFに阻まれ、西川周作のところには届きませんでした。

こうして浦和は貴重なアウェイゴールを奪っただけでなく、無失点に抑えることに成功し、年間勝ち点が多い方が有利というレギュレーションの関係で、リーグ制覇を大きく手繰り寄せる勝利となりました。

ただ、試合としてはどことなく物足りなさが残りました。たしかに決勝というステージゆえの硬さは開始からまったくなかったので、両チームの選手達の激しいプレーは見られました。しかし、リーグ戦34試合を戦い終えた後で、しばしのインターバルがあって再び優勝をかけて最後の戦いをすることの難しさなのか、約4万人のキャパシティに対しておよそ2万3千席しか埋まらなかったことによる熱量の不足なのか、はたまた勝った浦和のシュート数が、前半44分のテンポのいいパス回しから武藤雄樹が放った1本を含む5本どまりだったからなのか、理由ははっきりしないのですが、晴れの舞台にしては淡白な印象を抱いた試合でした。

あとがなくなった鹿島が、浦和に簡単に逃げ切らせないために、埼玉スタジアムでどのように逆襲をするのか。土曜日の第2戦はよりスリリングな攻防を期待したいところです。 


激闘を制した天皇杯の浦和レッズ戦と同じスタメンで挑んだものの、金崎夢生の一撃に沈み、大事な戦いでの強さ、試合巧者ぶりを90分間通じて鹿島に見せつけられた一戦でした。積み上げてきた歴史の差がピッチの上で表れた格好です。

鹿島は直近の対戦と同様に川崎が狙いたい中央の守備を固めるだけでなく、サイドハーフのファブリシオ、遠藤康も持ち場で激しく潰しにいきました。真ん中での崩しがうまくいかない上にサイドの戦いでも優位に立たれ、必然的に川崎は手詰まりとなります。

決勝進出のために1点が欲しい川崎は、残り5分を切ったところからエドゥアルドを上げ、パワープレーを仕掛けました。しかし、待ってましたとばかりに構える鹿島の守備は安定していました。アディショナルタイムに入ると植田直通を投入し、最終ラインの人数を増やします。その一方で手薄な川崎ディフェンスを狙って、試合を決定付ける2点目を奪おうとする姿勢を見せました。ただそこはチョン・ソンリョンと谷口彰悟がかろうじて凌ぎました。

そんな流れで結局、川崎は枠をとらえたきわどいシュートがなく、無得点に終わりました。

惜しい場面がなかったわけではありません。後半14分と22分には中村憲剛の、24分には登里享平のシュートがサイドネットをかすめました。44分には谷口のパスが大久保嘉人に合わずにゴールラインを割り、51分にはエウシーニョの冷静な切り返しからのクロスに谷口が合わせるも、ボールは枠の上に飛んでいきました。

それでもあと一歩が足らず、川崎は年間3位に転落。タイトル獲得の夢はまたしても破れてしまいました。失意のチームは、1ヵ月後に再開する天皇杯に今シーズン最後の望みをかけることとなります。


ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、オマーンとのトレーニングマッチを経て、コンディションがよく、デュエルを厭わない選手を数多く起用。ピッチに立った選手達がその期待に応えて勝った。そうまとめるほかない90分でした。

大迫勇也は得点こそなかったものの、前への意識を持ちながらボールをキープしようと奮闘。中盤では山口蛍が機敏にかつ執拗に相手を潰しにかかり、後半から出た本田圭佑や先発復帰した長友佑都も持ち味の体を張ったプレーを見せました。

出色の出来だったのは、またしても左サイドの原口元気でした。試合前の選手紹介でもっとも大きな声援を浴びた背番号8は、サイドバックの選手かと思うほどに上下動を最後まで繰り返し、それでいて攻撃への、ゴールへの意欲は決して失わず、後半35分には中央にポジションを移して決勝点をマークしました。

そして彼らがバトルをする中で清武弘嗣は絶妙なポジショニングをとり、相手の嫌がるエリアで攻撃のタクトを巧みに振りました。前半45分にはPKを沈めてみせましたし、トップ下として確固たる存在になったと言えます。

そんな中で心配の度合いが強まったのは、負傷もあって下がった清武に代わりプレーした香川真司です。本田と長友の崩しがあって、その後の長友のパスをフリックして原口の追加点をアシストしましたが、それ以外の場面では好守両面において目立った働きができていませんでした。復調への道はまだまだ険しいようです。

とはいえ全体としてはおおむね大胆、ではなく妥当な選手起用で大一番を乗り切りました。しかもオーストラリアがタイ相手に勝ち点2を取りこぼしたため、グループ2位に浮上しました。

次のUAEとのリベンジマッチは4ヵ月後の来年3月なので、国内組はオフ明けで見極めが難しいところですが、一方の海外組は所属クラブでトップフォームを維持ないしは向上できるかが重要になってきます。序列はその時あらためて変わるかもしれません。そういう健全かつ喜ばしい競争状態になっています。


4回戦屈指の好カードは互いに仕掛け合い、ゴール前近辺でのギリギリの攻防が続いた120分でした。一瞬たりとも目が離せない見応え十分のぶつかり合いで、真剣勝負の醍醐味を味わうことができました。

川崎はチャンピオンシップに照準を合わせてメンバーを落としたのかと誤解されそうなほど苦しすぎる台所事情でした。それでも三度リードを許しながら心折れることなく、そのたびに追い付いてPK戦の末に浦和を下しました。これで痛恨の逆転負けを喫したガンバ大阪戦の嫌な流れを払拭できました。

この試合もガンバ戦に続いて若手が躍動します。ボランチを任された板倉滉は中盤に安定感をもたらし、時には前線に意欲的に顔を出していきました。その奮闘が影響して、延長に入ると足をつらせてしまいましたが、最後まで戦い抜きました。また、前線の三好康児は無尽蔵のスタミナで走り回り、積極果敢な姿勢を貫き、後半50分には際どいミドルシュートを放ちました。

その2人が延長後半12分、PK戦に繋がる貴重な同点弾を演出します。三好が左サイドからクロスを上げると、板倉が競り合いに勝って落とし、最後は前線に上がっていたエドゥアルドが頭で押し込みました。

一方、守備では正守護神のチョン・ソンリョンの復活が大きく、PK戦ではズラタン・リュビヤンキッチのシュートをストップ。浦和に先制された場面では森脇良太のロングパスへの対応で一瞬の躊躇が仇となり、興梠慎三にゴールを許しましたが、大事な局面で大仕事をやってのけました。

しぶとく食らいついて激闘を制した勢いでチャンピオンシップに臨むことができる意義は大きく、鹿島アントラーズとの準決勝に向けて弾みがついたはずです。あとは負傷した選手達がどれだけトップコンディションで戻ってこられるかにかかっています。


清武弘嗣は試合勘が鈍っていなかったことを1得点2アシストで示し、大迫勇也がその清武のパスを受けて2ゴールを奪い、ケルンでの好調さを代表でも発揮。ワールドカップ出場に向けて落とせないサウジアラビア戦を前に明るい材料の見られたオマーン戦でした。

またセットプレーでは工夫を凝らしたものをいくつか試し、たとえば清武が左サイドからのフリーキックでやや下がり目にいた本田圭佑にグラウンダーのパスを送り、本田がシュートを狙う形をやってみるなど、決戦に向けてあまり出し惜しみはしていない様子でした。

ただ、個人ではJ1の10・11月度MVPに輝いた齋藤学が、積極的に攻撃に絡もうとしたものの、明確な結果を出すにはあと一歩というところに終わり、逆に守備面ではカウンターを受けた際に危なっかしいクリアを見せるなど、期待された力を出せずに終わった印象です。

中長期的な強化という点では、代表キャップの少ない選手を積極的に起用。それゆえに本田と清武が下がった後に中央での組み立てが見られなくなったのですが、後半49分に小林祐希が右足でゴールを決めて、唯一アピールに成功しました。

とはいえ、これはワールドカップ2次予選で敗退したオマーンとの親善試合です。最終予選とは雰囲気や緊張感がまったく違うぬるさで、相手も時間稼ぎをしない非常にフェアなチームでした。4日後の真剣勝負に弾みがついたかと言えば、清武と大迫の出来を除くといささか疑問が残ります。この試合はあくまでテストということで、来たるべき一戦のためにセットプレー以外は力を温存したのだと好意的に解釈したいところです。


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