2016年03月 : 22インチのフットボール

22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年03月

日本は前半17分、6本目のCKからラッキーな形で先制点を奪います。宇佐美貴史がショートコーナーを選択すると、パスを受けた香川真司がクロスを上げます。それをイブラヒム・アルメがパンチしますが、ボールはハムディ・アルマッスリの顔面に当たってゴールに吸い込まれていきました。

その後は26分の岡崎慎司、本田圭佑が絡んで酒井高徳が抜け出しシュートを打つシーンなど、追加点を挙げるチャンスが多々ありながら決められず、逆にミスから逆襲を食らう場面がしばしば見られました。

この流れはエンドが変わっても続き、後半16分にCKの流れから森重真人のクロスを本田が頭で合わせてポストを直撃した1分後、森重のパスをオマル・ハルビンにカットされてキープされると、最後はマハムード・アルマワスがミドルシュートを放ち、こちらもポストをヒットするというピンチがありました。

また20分には長谷部誠が自陣深い位置でアブドゥルラザク・アルフセインにボールを奪われ、ハルビンのシュートが西川周作を襲う場面がありました。

こうした嫌なムードを払拭したのは背番号10でした。21分、カウンターを仕掛けると、長谷部の浮き球のパスをアルマッスリがクリアミス。それを本田が生かして香川に繋ぐと、香川はトラップしてから反転しボレーシュートを決めました。

2点ビハインドとなったシリアですが、最終予選進出の可能性を残していることから、戦意を喪失することなく、チャンスと見るや果敢にシュートを打ってきました。それらを吉田麻也、長谷部、西川らが体を張って、懸命に阻止して失点を許しません。

すると41分、相手CKを阻止すると長友佑都がエリア内からロングパスを出します。ハーフウェイラインまで飛んだボールを香川がモハメド・ザヒル・アルグナミ・アルメダニと競って勝ち、一気にカウンターの形になります。落としたボールを清武弘嗣がダイレクトで香川に戻すと、香川は落ち着いてクロスを上げ、最後は本田が頭で合わせてとどめを刺しました。

その後は45分に再び香川が、48分にはボランチの位置から猛然と上がった原口元気が得点を重ねて、スコアでは5対0の大勝に終わりました。ただ、失点こそなかったとはいえ、何度もヒヤリとするようなピンチを招いてしまったことは、最終予選に向けての大きな課題となりました。


前半1分、近賀ゆかりのクロスに大野忍が頭で合わせてシュートを放つなど、序盤はINACが右サイドを圧倒的に支配しました。

先制点は反対のサイドを使った最初の崩しから生まれました。11分、中盤でチョ・ソヒョンがルーズボールを拾ったところから攻撃がスタート。そこから左サイドに展開し、鮫島彩から中島依美にボールが渡り、中島は北川和香菜を抜き切らずにクロスを上げます。これをファーサイドにいた川澄奈穂美がダイレクトで合わせると、ポストを直撃。こぼれ球が高瀬愛実のもとに落ち、高瀬が頭で押し込みました。

さらに1分後、クイックリスタートから大野が高瀬にスルーパスを通し、高瀬がファーサイドにパスを送ると、詰めていた川澄が決めてリードを広げます。コノミヤは壷井綾子と佐藤楓が体を投げ出しましたが及びません。

19分には鮫島のクロスを大野がスルーし、高瀬がシュートを放ってポストをヒット。22分には鮫島が大野とのパス交換で崩してシュートを打ち、村岡愛美がセーブします。流れは完全にINACが握っていました。

すると23分、川澄のCKをニアサイドで田中明日菜が競り、ファーサイドでフリーの状態だった大野がヘディングシュートを決めます。虎尾直美が田中の動きに引きつけられ、大野のマークを外してしまっていました。

これで楽勝ムードが漂うかに思われましたが、コノミヤは最終ラインの枚数を増やして守備意識を強めます。それによって、INACが攻撃の場面で手こずるようになりました。またボランチのところでときどきミスが見られだし、中盤で引っかかるようにもなりだしました。

そんな中で迎えた37分、成宮唯のシュートを川澄がブロックしてこぼれたボールを北川が豪快に振り抜き、コノミヤが1点を返しました。

後半になってもコノミヤの守備は安定しており、加えて高い位置から体を寄せてホームチームに自由を与えないプレーを見せました。ディフェンスがはまりだすと、相手のミスに乗じてカウンターを仕掛ける場面も増えてきました。

対するINACは5枚のディフェンスが待ち構えているためにサイドを崩せず、また選手の動きも少なく、打開することができません。途中出場の京川舞が左サイドハーフの位置にとどまらず、広範囲に動いてかき回す姿が見られましたが、終盤に入るにつれて全体的に立ってパスを待っている選手が多くなっていきました。

結果、後半34分の京川の個人技からのシュート以外に決定機をつくれず、後半はスコアが動きませんでした。立ち上がりの連動したプレーがすばらしかっただけに、前半半ば以降の失速は今後の課題となりそうです。


守備的に来たアフガニスタンに対して、日本は中盤をダイヤモンド型にした4-3-1-2の布陣を敷きました。これが奏功し、大勝を収めます。とりわけダイヤの頂点、トップ下に入った清武弘嗣の活躍が光りました。

前半10分の金崎夢生、12分のクロスバーをヒットした原口元気のシュートをきっかけに相手の陣形が崩れていきましたが、しきりにサイドからクロスを上げてもチャンスにならず、中央もアタッキングサードを攻略しきれない時間が続きました。

じりじりと時間が流れていく中、43分に長谷部誠からボールを受けた清武が、フリーの状態で前を向いてパスを縦に出します。これを受けた岡崎慎司がターンして、さらにモジエブ・ジャマリの股を抜いて、最後は冷静にフィニッシュ。待望の先制点を奪います。

後半13分の2点目も同じように中央を崩していきました。吉田麻也がフリーになった長谷部にボールを出すと、キャプテンはすかさず斜め前の金崎にパス。金崎は浮き球のボールを相手DFの背後に通し、最後は清武が懸命に合わせてゴールネットを揺さぶりました。

この試合では、最終ラインからはしきりに大きなサイドチェンジをするものの、中央では無闇に散らしたり、強く蹴ったりせずにこうした縦に転がすボールを多用し、ゴールを生み出すことに成功しました。

サイド攻撃が実ったのは18分。酒井宏樹がハッサン・アミンをかわしてボックス内に進入して低いクロスを入れると、これがシャリフ・モハンマドに当たってコースが変わり、オウンゴールとなりました。

一方、香川真司がトップ下に入って左MFに回った清武の輝きはまだ衰えません。29分にはCKで吉田のゴールをアシスト。33分には再三見せてきたクイックリスタートからの流れでクロスを上げます。これをハーフナー・マイクが頭で落とすと、最後は貪欲にゴールを狙い続けていた金崎が押し込みました。

終盤にはハーフナーをおとりにして、中盤の選手がファーサイドめがけてクロスを上げ、シュートまで結び付ける形を二度披露しました。一度目は39分の原口から香川、二度目は47分の香川から小林悠へのパスでした。

無失点に抑えた守備面は、全体的な切り替えの速さもさることながら、吉田、森重真人のCBが安定感を見せ、原口も序盤から積極的に貢献していました。

この勝利でグループE首位をキープした日本は、勝ち点1差で追いかけてきているシリアとの直接対決に挑むこととなります。最悪、引き分けでも順位が変わらない優位な状況です。


前半、雨水を含んでボールが止まりやすいピッチの上で、日本は浮き球のパスを相手最終ラインの背後めがけて入れてチャンスをつくりました。

前半13分には宮間あやが、31分には有吉佐織がそれぞれ前線に抜け出る阪口夢穂、大儀見優季を狙いましたが、惜しくもゴールにはなりませんでした。

守備では山根恵里奈の好判断が光ります。17分、有吉が足を滑らせたためキム・ウンジュの縦パスが通ってしまい、ラ・ウンシムにクロスを入れられますが、山根が右足を伸ばして防ぎました。また、27分には岩清水梓がイ・チョンシムにボールを奪われ、スルーパスを入れられるも、飛び出した山根はボールを弾いてラ・ウンシムに当ててゴールキックにしました。

こうして前半はスコアレスのまま終了しました。

ハーフタイムが明けると佐々木則夫監督は、左MFを務めていた鮫島彩に代えて岩渕真奈を右MFに送り込み、その位置にいた中島依美をボランチに、そして宮間をボランチから左MFにそれぞれ配置換えしました。

すると日本は少しずつゴールに近づいていきます。まず後半11分、近賀ゆかりの縦パスを受けた岩渕がキム・ウンジュをかわし、宮間との大きなワンツーでゴールに襲い掛かりました。ここは宮間のリターンが高く、岩渕は体を伸ばしましたが届きませんでした。

26分には近賀のクロスに大儀見がヘッド。これはキム・ナムフィが体をつけていたため、ヒットしきれず、ホン・ミョンフィに難なくキャッチされます。 さらに31分、有吉のクロスに中島が飛び出して頭で合わせるも、惜しくも枠をとらえきれませんでした。

そして35分、なでしこらしい見事な展開から先制点を奪います。パスを繋いで一旦は阻まれますが、ルーズボールを中島が拾って、やや中央に絞っていた有吉に預けます。有吉は前方の横山久美にパスを送り、横山は体を張ってボールを落とします。最後は宮間がクロスを入れた先にいた岩渕が頭を合わせてゴールネットを揺さぶりました。

一方、ディフェンスではキム・ウンヒャンのCKからピンチを招きますが、懸命の守備で失点を免れます。15分、大儀見のマークを外したキム・ウナのボレーシュートが近賀に当たってコースが変わるも、山根が頭で防ぎました。

37分にもキム・ウナ、ラ・ウンシムと頭で繋いでシュートを打たれましたが、宮間がゴールライン手前でクリアして同点弾を許しませんでした。

試合はこのままタイムアップを迎え、1対0で勝利を収めました。ディフェンスではどんなにピンチになろうとも粘り強く、ひたむきに守って凌ぎ、攻めではボールを繋いで崩して勝つ。これぞなでしこジャパン、という90分でした。

そして、リオ五輪出場こそ逃してしまいましたが、予選を3位で終え、世間に吹き荒れる敗因分析という名のなでしこバッシングに対抗し、選手達はピッチの上で結果を出してみせました。このようなサッカーを続けることで、再び彼女達の道は開かれるはずです。


残念ながら予選敗退が決まった日本は、宮間あや、大儀見優季をスタメンから外し、比較的フレッシュな編成でベトナムとの一戦に臨みました。

なでしこはここまで未勝利、無得点のベトナム相手に攻め立てますが、なかなかゴールを割れない苦しい展開に陥ります。特にブロックの固い中央からの崩しに固執するあまり、スムーズにボールが回りません。

そんな中でチャンスになったのはセットプレーでした。前半12分、CKのセカンドボールを拾った上尾野辺めぐみがクロスを入れ、田中明日菜が冷静に落とし、最後は岩渕真奈がシュート。これは惜しくもポストに当たります。

21分にはショートコーナーで中島依美がゴール前にボールを入れ、田中がヘッド。ここはダン・ティ・キュウ・チンに阻まれ、こぼれ球を高瀬愛実が狙うも枠を外れてしまいました。

直後、日本は選手の配置換えを行います。上尾野辺をボランチから左SBに、有吉佐織を左SBから右SBに、そして中島を右SBからボランチにコンバートします。

この変更が先制点という形で実ります。39分、上尾野辺がボールを奪ってすばやく縦に展開。中島が前線に抜け出してフリーの状態になります。そして少し体をひねりながらグラウンダーのクロスを入れると、岩渕がそれに合わせて得点を奪いました。

ところが2分後、岩清水梓がグエン・ティ・ホアを倒したとしてPKの判定が下ります。かなり厳しいジャッジでしたが、些細な接触をことごとくファウルにしていたリタ・ガニ主審だっただけに、もう少し注意深い対応が必要だったかもしれません。このPKをフィン・ヌに決められ、ベトナムに大会初得点を与えてしまいます。

それでも45分に大野忍がゴールを決め、辛くもリードした状態で前半を終えることができました。

後半も貪欲に攻めるなでしこジャパンでしたが、決定機を生かしきれません。後半8分、中島が右サイドを突破してクロスを上げ、フリーの岩渕が頭で合わせますが、クロスバーを越えていきます。10分の中島のミドルシュートはクロスバーを直撃しました。

そこで佐々木則夫監督は、高瀬、岩渕に代えて、大儀見と横山久美を22分に同時投入します。

13分後、大儀見のクロスをフリーの川澄奈穂美がヘディングで決めてリードを広げるのに成功すると、38分にはボランチの位置から広範囲に動いていた中島のシュートが、チュオン・ティ・キュウに当たって4点目が決まります。

41分、中島に代わって宮間が入り、とどめを刺しに行きます。45分、大儀見からのマイナスのボールを宮間がシュート。GKがファンブルしたところを横山が詰めて、5対1。さらに48分、宮間と川澄で中盤を崩して、最後は大儀見のボレーシュートが決まって6対1にまで点差を広げました。

終わってみれば大量得点での圧勝となりましたが、前半15分に上尾野辺のボールコントロールミスからカウンターを食らう場面もあり、申し分のない勝利とは言いきれない、ややもどかしさの残る内容ではありました。

ただ、リオへの道が閉ざされた中でも気持ちを切らさず、積極的な姿勢を見せたことは今後に繋がるものだったと言えるでしょう。


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