私は赤也は超攻なんですけど。
205号室なんて、海堂以外の三人、超絶攻っすよ。205号室、おいしすぎる……(//∇//)
ただ、18禁的描写のないド健全なものしか書かない私の作品では、赤海というより、一見、海赤に見えてしまうのです。でも、赤海。これ絶対。
ひたすら赤也になつかれてしまった海堂の苦悩……?
攻赤也ですが、かわいくてたまらんです。撫でたいし抱きしめたいです。
弟か、猫か、もうどっちでもいいくらい、かわいくてたまらんです。
ぐはあ、と血を吐きながら、このCPを書き続けたいと思います(需要がなくても、勝手に書くぜ!)
赤也×海堂
ゲーセンデート(笑)
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猫とゲームとグリップテープ
グリップテープを買いに行く、とは言った。
確か部活中、顔を出してくれた乾先輩との雑談の中でだ。
先輩はオススメのメーカーを教えてくれて、ついでに新作のシューズの情報までくれた。だから、次の休みに買いに行くことにする、と言ったのは覚えている。
部活が午前中で終わる日曜は、久しぶりだったから。
けれど俺がそれを漏らしたのは先輩にだけだった。
なのにどうしてこんなことになっているんだ?
乾先輩の薦めてくれたグリップテープを多めに購入して、新しいシューズを眺めてきた。一応試し履きなんてのもしてみたが、いまいち俺にはしっくりこなかった。
だからそのまま店を出た。
午後の日差しは柔らかく、その陽気に思わず伸びをした。
いつもなら用事が終わればまっすぐに家に帰る.。けれど今日は少しその辺をぶらぶらしてみてもいいかもしれない、なんて思ったのが運の尽きだったのかもしれない。
たった今出てきたばかりのスポーツショップの前、あっと声が上がった。
嫌な予感がした。伸ばしていた両手を、思わず下げた。
そこには見慣れた顔がいた。
「海堂」
クセのあるふわふわの髪を揺らして俺のところに走り寄ってきたのは、切原だった。
なんでだ。
「よかったー、会えて。すれ違いになったらどうしようかと思ってた」
切原がにこにこと笑っている。その屈託のない笑顔に、毒気を抜かれる。
「どうしてここにいる?」
「海堂に会いにだよ」
「いや、そうじゃない。どうしてここにいるって──」
問おうとして、やめた。少し考えれば分かることだった。切原は立海の生徒である。立海にはあの人がいる。そして、切原はあの人によく懐いていることを、俺は知っていた。
「柳さん──か」
「うん、柳さんに聞いた。あ、柳さんは海堂んとこの眼鏡の人から聞いたみたいだよ」
乾先輩から柳さん、柳さんから切原へと伝わったことが、はっきりした。乾先輩が故意に俺の予定を話したりはずがないから、多分、二人の会話の中で何かヒントになるようなことがあり、そこから柳さんが予測したのだろう。
「なーなー、海堂ー」
切原が俺の服の袖をつかんで、ちょんと引いた。
「用事終わったなら、一緒にどっか行こうぜ」
俺よりも低い目線を上目遣いにする切原は、どことなく弟の葉末を思い出させる。弟もこうしてよく俺にひっついてきては、まるで甘えるようにお願いするのだ。その仕草に絆されて、俺はいつも言うことを聞く羽目になる。
「あのなぁ、切原」
「ん?」
切原はきょとんとして俺を見る。
「…………」
俺は溜め息をつき、そのふわふわの頭にぽんと手を置いた。思わず撫でる。切原はくすぐったそうに笑っている。
──悪魔化してるときとのギャップが大きすぎるぞ、お前。
俺は小さいものが好きだ。小動物なんて、周りには内緒だがもうめろめろになるくらい大好きだ。特に猫。猫はかわいい。ふわふわの毛は柔らかく、抱き締めると幸せな気分になる。
俺は切原を見下ろす。
──こいつが猫に見えるのは、俺の気のせいなのだろうか?
このふわふわの頭が悪いのか? ちょっとつりあがった大きな目が悪いのか? それとも、甘えたで、時々気紛れにへそを曲げるところが悪いのか?
「なー、海堂ー」
なー、と大きく口を開けて俺を呼ぶ顔が、にゃーにゃー鳴いている猫にしか見えない。
「──どこ行くんだよ?」
そう訊ねると、切原はぱああっと表情を明るくし、
「行く? マジ? やった。ありがと、海堂」
どのみち、この天気のよさに流されてぶらりとあてもなく時間をつぶすつもりだったのだ。
「海堂は? 海堂はどっか行きたいとこある?」
「いや、別に──」
「じゃ、ゲーセン」
お決まりの切原のお気に入りコースだった。
今までも何度か、こうして切原と出かける羽目になったことがある。そのどれもが多分柳さんのもたらす情報のせいだろうと俺は疑っている。柳さんは一体どういうつもりで切原に俺の情報を流しているのか、そしてどうして切原はいちいちそれを鵜呑みにして俺に会いに来るのか、まったく理解ができない。
とにかく、切原はゲームセンターが好きだ。多分、ゲームが好きなのだろう。
ほとんど寄り道などしない俺には慣れないその場所は、いつもやかましく様々な音楽や効果音が流れ、はっきりって落ち着かないし、あまり長居したい場所ではない。けれど、切原はいつもこの場所に来たがる。
ざらざらと、千円札を両替した100円玉をポケットに突っ込んで、切原はゲームセンターの中を歩き出す。俺はその後ろをついていきながら、ものすごい種類のゲーム機に圧倒される。
切原は対戦型のビデオゲームの前に座った。格闘もののゲームだった。
ゲームセンターのやかましさは好きになれないが、実は、俺はこれを見ているのが結構好きだ。切原の選んだキャラクターが、様々な技を繰り出して、次々と敵を倒していく。そのコントローラーであるスティックやボタン捌きが、びっくりするほど素早く無駄がない。立て続けに決まる決め技にあっという間にKOされる相手キャラクター。切原がよっしゃ、とガッツポーズを作る。
そんな姿を見ているのがとても楽しいのだ。
今日も切原は負け知らずで、次々に敵を撃退していく。俺は切原の後ろから覗き込みながら、飽きずにそれを見ていた。
切原の長かった連勝記録が止まって、席を立つ。たった数枚の百円玉でこれだけ遊べるのなら、人の何倍も楽しめるんだろうな、と思う。
沢山あるクレーンゲームや、動く棚に色んなものをすくって詰まれた景品を崩すゲームには、様々な商品がある。お菓子を取れるそれで山ほどのスナック菓子やチョコレートを、ゲームセンターの店員がそれを入れる袋を渡してくれるくらいにいっぱい取った。
素直に感心してしまうくらい、切原はゲームが上手い。
しばらく、二人並んでベンチに座って、景品のお菓子を食べた。駄菓子の類は、今まであまり食べたことがなかったが、切原と会うようになってから初めて口にした。油っぽいスナック菓子、甘ったるいチョコレート菓子、カラフルなキャンディ。俺はその中からチョコレートコーティングされたビスケットをさくさくとかじっていた。隣に座った切原は、棒状のスナック菓子をさっきからいくつも食べている。沢山あるフレーバーを、まるで全種類制覇しかねない勢いだ。
「あ」
切原が声を上げた。視線を辿ると、前方のクレーンゲームの前で、高校生くらいのカップルがきゃっきゃとはしゃいでいた。彼氏らしい男が操るクレーンが、景品であるぬいぐるみを持ち上げた。けれど結局落下させてしまっていた。
「あれはさ」
新しいスナック菓子を開けながら、切原が言った。
「真ん中つかむんじゃなくて、頭の方にひっかけて全体にひっくり返すみたいにするといいんだ」
俺はしばらくそのカップルがぬいぐるみと格闘するのを見ていた。ちゃりんちゃりんと次々に100円玉が投入されていく。彼女を待たせて両替にも行った。それでもなかなかぬいぐるみはゲットできない。
多分2000円を越したところで、結局二人は諦めてクレーンゲームの前を離れて行った。彼女が彼氏の背中をぽかぽかと叩きながら、何か文句を言っていた。
しばらくすると店員がやってきて、ケースの鍵を開け、無造作に転がっていたぬいぐるみを定位置らしい場所に戻して行った。
「海堂」
切原はいつの間にかベンチを立ち上がっていた。さっきクレーンゲームを指差している。
「やんのか?」
「うん」
俺もベンチを立ち、切原についていく。お菓子の入った袋を渡され、俺はガラスケースの前に立って中を覗き込んだ。両手で抱えるくらいの大きさの猫のぬいぐるみだった。ふわふわとしたそれは、何かのキャラクターなんだろう。ちょっと間の抜けた顔をしている。
切原はポケットから100円玉を取り出した。投入口にそれを入れると、音楽が鳴り出した。ガラスケースの中を、サイドから一度、正面から首を傾げるようにして一度、覗き込む。そしてボタンを押した。
クレーンが動き出す。横に。そして縦に。クレーンは、ぬいぐるみのだいぶ横で止まった。照準ミスか、と俺が思ったのは一瞬だった。下りてきたクレーンがぬいぐるみの端っこを掠める。どういうわけか、半分だけ引っかかったクレーンが上がったとき、ぬいぐるみがころんと回転した。そのまま土台に開いた穴に転がっていく。
「やった」
切原が言って、景品の取り出し口からぬいぐるみを取り出した。
さっきのカップルがあんなに大金をつぎ込んでも取れなったぬいぐるみが、たった一度で簡単に取れた。
「すごいな」
「へへ」
切原は照れたように笑った。
「あ、すげー気持ちいいな、これ」
どうやらぬいぐるみは枕らしい。といっても、実用的なものではない。利便上そういう名前になっているだけなのだろう。切原がそれを俺にむぎゅっと押し付けた。確かにそれはとてもふわふわして気持ちが良かった。マシュマロみたいに柔らかい。
「本当だ」
「海堂、猫、好き?」
「──ああ」
「じゃ、それ、あげる」
にこーっと、効果音がつきそうな笑顔で、切原が言った。
俺はふわふわのぬいぐるみを胸に抱きながら、
「いいのか?」
「うん。海堂のために取ったんだよー」
やたら嬉しそうににこにこしている切原に、なぜか少し照れた。さっきのカップルのことを思い出したというわけではないが、クレーンゲームでぬいぐるみを取ってもらう、という行為はまるで恋人同士のそれみたいに思えたからだ。
俺は自分のそんな想像に恥ずかしくなり、切原から目をそらしながら、ありがとう、と言った。
女でも、子供でもないんだから、ぬいぐるみ一つに喜ぶようなことはない。けれど、なぜか今の切原の笑顔を見てしまったら、素直に喜ぶことしかできなかった。
猫、好き?
切原に訊ねられたとき、首をかしげてそのふわふわした髪を揺らす切原が、一瞬、また猫に見えてしまった。だからほんの少し、返事が遅れたことを、切原は気付かなかったらしいので、ほっとした。
切原はにっこり笑って、そろそろ帰ろっか、と言った。
俺の所要帰宅時間は電車で30分ほどだが、隣の県に住む切原は、これから電車を乗り継いで、下手したら2時間近くもかかってしまう。
俺と会うだけのために、その距離を、その時間をかけて来たんだな、と思ったら、急に心が騒いだ。
「切原」
新しい袋を店員からもらって俺のぬいぐるみを入れてくれた切原が、ん? と俺を見上げた。
「お礼、だ」
俺は、さっき買ったグリップテープを、切原に向かって突き出した。
「その、これの」
受け取った、袋に入ったぬいぐるみを軽く持ち上げると、切原はぱあっと表情を明るくした。
「いいの?」
「ああ。──先輩のオススメだから、間違いないと思う」
多めに買ったグリップテープは、よくなじみ、滑りにくく、そして手に優しいのだと言う。切原のテニスはめちゃくちゃだ。道具に気を使っているようにも見えない。
けれど、切原は強い。
それだけは、間違いない。
「ありがとー、海堂」
「いや、俺の方が」
俺の渡したグリップテープを、切原は大事そうに受け取った。
「使う。ホント、ありがとう」
無邪気に浮かべる満面の笑みに、俺は完全にやられていた。
クセっ毛の、黒猫。
危なく手を伸ばしそうになって、俺は慌ててその手を引っ込めた。
「じゃ、またな、海堂」
駅で別れた俺は、ぶんぶんと手を振って去って行く切原の後ろ姿を見送る。
その存在感は圧倒的で、手を伸ばすと威嚇され、鋭い爪で引っかかれる。けれど気を許した瞬間、その柔らかい毛を撫でればごろごろと喉を鳴らしてすり寄ってくる。
機嫌が悪ければそっけなく、そして気紛れに、ふらりと近付く。
お前が猫以外の、何に見えるっていうんだ?
猫、好き?
俺は帰りの電車で、もらったぬいぐるみをポリエチレンの袋の上からぎゅっと抱き締めてみた。
懐いた猫は、いっそう俺にすりより、甘える。
俺は袋の中のぬいぐるみをひと撫でして、今度切原に会ったら、真っ先にあのふわふわの毛を撫でてしまうだろうな、と思い、苦笑した。
了
かわいくて撫でる。ほわわわわーと、幸せになる。そして、返り討ち(笑)そいつは悪魔化したら、止まりませんよ、薫さん。
ベンチで、うまい棒ばくばく食べる赤也と、ブラックサンダーさくさくかじる海堂(お話の中ではブラックサンダーじゃなくてチョコビスケットですけど)を想像したらたまらなくて、こんな話になってしまいました(なんでそんなシーンをピンポイントで想像するんですかね、私も)
海堂と赤也の身長差も萌える。赤也の上目遣いに撃ち抜かれます。かわいい。かわいい。かわいいー!
でも攻。譲らん。
柳さんのデータは怖いので、次からは乾も警戒するべきだぜ、海堂!(どうしたって伝わっちゃうからね)