bittersweet | イチゴは甘い(赤葦×月島) HQ!!
bittersweet
自作BL・GL/二次創作BL 日常ゆるゆる雑記 好きなものを、好きなように、好きなだけ。

はじめに
 個人的な趣味で小説を書いています。
 二次創作を扱っていますが、出版社、原作者等、いかなる団体とも一切無関係です。
 オリジナル・二次創作ともにBL・GL要素を含みますのでご注意ください。
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Author:hiyu
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本と猫とコーヒーとチョコがあれば生きていける。ような気がする。
野球と映画があれば、なお良し。
玉ねぎとお豆腐とチーズが無いと落ち込みます。

画像はPicrew「とーとつにエジプト神っぽいメーカー」さんから。


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(2018/12/15更新)

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イチゴは甘い(赤葦×月島) HQ!!
 最近は、赤葦ヒイキです。
 なんですかね、あの無表情なとことかがいいのかな。
 東京組は、いっつも遠距離で電話とかメールばっかりだから、会ってる話も書きたいなー、と思って。会ってても、合宿絡みばかりになっちゃってますし。
 春休み、って設定ですけど……原作の方がどこまで進んでいるのか分からない状態で書いているので、春高のお話はなかったことになっています(笑)
 フィクションなので。
 創作なので!

 赤葦×月島





   イチゴは甘い

 確かに、つかみどころのない人だというのは分かっていたつもりだった。
 いつもしれっと無表情で、何を考えているのか分からない。クールで、したたかに、淡々と物事をこなしていくけれど、実際は負けず嫌いで、熱い人だということも知っていた。
 からかうような物言いはしない。けれどたまに、真面目な顔で冗談か本気か分からないようなことをさらりと言う。
 そして、時々、優しく笑う。
 そのたびにこちらの感情をかき乱していることも、もしかしたら気付いているのかもしれない。
 とにかく、赤葦京冶という人は、そういう人だ。
 洞察力に優れた頭脳派のセッター。その考えを読むことなど、できるはずがない。
 けれど──
「どうして赤葦さんがここにいるんですか」
 僕は左手で額を押さえて、なるべく冷静な声を出したつもりだったが、そうまくいかなかった。明らかに驚きと、動揺と、少しの怒りをはらんでしまう。
「春休みだから」
 さらりとそう答えた赤葦さんは、なぜか、僕の家のリビングで、湯呑を持ち上げた。ずず、とお茶をすすり、それをテーブルに戻した。
「そういうことじゃ──」
 僕の言葉をさえぎって、赤葦さんがにっこりと笑った。
「おかえり、月島」
「──た、ただ、いま」
 学校での練習を終え、帰宅した僕は、思わず返事をした。多分、その声は震えていたのだと思う。赤葦さんは横を向いて小さく吹き出した。
「うわー、本当に赤葦さんだ」
 僕の後ろから、山口がひょっこりと顔を出した。
「お久しぶりです」
「ああ、山口」
 赤葦さんはまた笑顔を作り、山口にもおかえり、と言った。
「本当に仲がいいんだな」
「──幼馴染なので」
「俺とツッキーは、小学校から一緒なんですよ」
「そうか」
 赤葦さんの前には湯呑と小包装された一口サイズのおかきが置かれていた。傍らには空になった透明のプラスチックの包み。僕を待っている間に、うちのリビングで赤葦さんがお茶を飲みながらおかきを食べていたことに、驚愕だ。
 想像もしていなかった光景に、思考がついていかない。
「──ツッキー、俺、帰ろうか」
 山口がこそっと耳打ちするように言った。
「どうして」
「だって、せっかく赤葦さん来たんだし、俺、邪魔でしょ?」
「なにそれ」
「わざわざツッキーの家に来るってことは、ツッキーに用事があるんでしょ?」
 そう言われてみればそうだ。
 僕たちがこそこそと話すのを、何を考えているのか分からない表情のまま見ていた赤葦さんが、声をかけてきた。
「2人で何か用事だった?」
「あ、用事って言うか、春休みの宿題で分からないところを一緒にやろうと思って」
 山口が正直に答えている。
「──教えようか?」
 サラダおかきをかじりながら、赤葦さんが言った。
「これでも、勉強は結構得意だ」
「でしょうね」
 この人に苦手なものがあるとは思えない。
「でしょうね、って。月島はずいぶん俺を評価してるな」
「まあ、それなりに」
「喜んでおくべきか?」
「──ご自由に」
 山口が僕と赤葦さんのやり取りを見て、おかしそうに笑った。
 結局、リビングで勉強会になった。僕らは苦手な教科を赤葦さんに教わりながら、つまずいていた問題をすべて解くことができた。宿題を終えて、山口が何度もお礼を言って帰って行った。
 僕は山口を外まで見送り、その姿が見えなくなると、玄関先でゆらゆらと手を振る赤葦さんを振り返った。
「ところで」
「うん?」
「どうしてあなたがここにいるのか、まだ聞いてないんですが」
「春休みだから。──練習が3日も休みになるなんて珍しいしな」
「そういう意味じゃないです」
 僕が不機嫌な声を出すと、赤葦さんは楽しそうに笑った。
「うん、そんな顔をすると思った」
「こんな顔を見に来たなんて言いませんよね?」
「──まあ、遠からず」
 赤葦さんはくるりと背を向け家に入る。僕もあとを追うように玄関をくぐった。
「夕飯には菜の花の辛子和えが出るらしいよ」
「──赤葦さん」
「ついでに客間じゃなくて、月島の部屋に布団を敷いてもらうことにしたから」
「──泊まっていくつもりですか?」
 呆れながら訊ねると、平気な顔でああ、と答える。
「明日は、烏野で練習を見学させてもらうことにもなってる」
「はあ?」
「縁下には了解をもらってる」
 引退した澤村さん代わって、縁下さんが新主将になった。春休みになった今は、新生チームが始動している。いつの間に縁下さんと連絡をとっていたのか、今日の部活では何も言っていなかった。
 と、言うか。
「どうして縁下さんに連絡してるのに、僕には何も言ってこないんですか」
「驚かそうと思って」
「そんなサプライズはいりません。第一、僕の家に泊まるなら、真っ先に連絡をするべきは僕にでしょう?!」
「月島のお母さんには許可を得たが」
「──いつですか」
「3日前」
 いつの間に。
 僕はがっくりと肩を落とす。縁下さんだけでなく、母親にまでこんな大事なことを知らされないって、どういうことなのだろう。
 頭を抱え込まんばかりになっていた僕を、ダイニングから母親が呼んだ。夕飯らしい。赤葦さんが返事をして、月島、と僕を呼んだ。僕は溜め息をついて、渋々ダイニングへ向かった。父親が遅いので、先に2人で食べてね、と母親が僕らにご飯をよそってくれる。
 赤葦さんは礼儀正しくすみません、などと言いながらそれを受け取り、両手を合わせていただきます、と言った。食卓は和食が並んでいて、赤葦さんの言う通り、菜の花の辛子和えもあった。小鉢に入ったそれを食べ、赤葦さんの表情が穏やかになった。
 僕も箸を伸ばして食べてみたが、何の変哲もない辛子和えである。
 時々母親が話しかけ、赤葦さんがそれに答える。その会話で、辛子和えは、赤葦さんの好物なのだと初めて知った。
 食後のほうじ茶まできちんと胃に収め、僕らは食事を終えた。
「月島の部屋には、恐竜がいるのか」
 部屋に入った赤葦さんが、飾られた恐竜の模型を見てつぶやいた。
「どうせ、子供っぽいとか思ってるんでしょ」
「いや、月島らしい」
 そう言いながら手にしていた荷物を下す。部屋の隅には来客用の布団がすでに運び込まれていた。
「生き物が好きなんだな」
 本棚に並んだ恐竜や、海洋生物の図鑑を見ながら言った。
「あんまり見ないでください。──部屋に、他人を泊めるとか、本当は嫌なんですけど」
「そうか、それは悪かった」
「悪いと思ってるなら──」
 文句の一つも言ってやろうと思った僕をさえぎるように、赤葦さんが月島、と言った。
「お土産を持ってきた。冷蔵庫に入れてもらってるから、あとで一緒に食べよう」
 赤葦さんが買ってきたというお土産は、東京にしか支店のない有名パティスリーのショートケーキで、1日に限定20個というレア物だった。思わずごくりと喉が鳴った。
「──東京から、わざわざ持ってきたんですか?」
「ああ。在来線にも乗った」
「……赤葦さんて、変ですね」
「月島が喜ぶかと思って」
 この人と話していると、なぜか調子が狂う。
 合宿のときにも思ったが、周りにいた人たちがあまりにも強烈なキャラクターだったせいか、赤葦さんはやたらとまともな人に見えていた。顕著なのは黒尾さんと木兎さんで、初めから僕をターゲットにとにかくなれなれしく、しつこいくらいに絡んできてはその反応を面白がっていた。それにうんざりした僕が、常識人に見えた赤葦さんに助けを求めるのは当然の成り行きで、赤葦さんもそれをよく分かっていたのか、2人の先輩を臆することなくなだめてくれていた。
 つまり、頼ったのは僕の方である。
 けれど、実際、知れば知るほど赤葦さんは不思議な人だ。
 その表情にも。行動にも、意図が読めない。つかみどころのないこの人の言動に悩まされることも多い。
「──お風呂のあとに食べます」
「そうだな。そうしよう」
 母親に呼ばれて、順番に入浴した。最初に赤葦さん。そのあとに、僕。
 僕は風呂を出てから、キッチンでコーヒーを入れた。冷蔵庫を開けると、思っていたよりも大きい箱が入っていた。開くと、ショートケーキが2つ、チーズケーキが2つ、それをぐるりと囲むように保冷剤がたくさん入っている。母親がお皿とフォークを用意しながら、私たちの分も買ってきてくれたのよ、と教えてくれた。
 トレイにケーキとコーヒーを乗せて部屋に戻る。片手でそれを持ってドアを開けると、スマホを覗き込んでいた赤葦さんが顔を上げた。床に座ってベッドに寄りかかっている。
「よかった。崩れてないみたいだ」
 ケーキを見下ろして、言った。
「4つとも無事でしたよ。──家族の分まで、ありがとうございます」
「いや」
 赤葦さんはスマホを置いて、コーヒーを受け取った。
「いただきます」
 僕は赤葦さんの隣に座り、同じようにベッドに寄りかかる。見た目もかわいいケーキにフォークを入れると、柔らかなスポンジと、みっちりと詰まったイチゴの断面が傾いだ。
 ──おいしい。
 多分、それが顔に出ていたのだろう。視線を感じて目をやると、赤葦さんが満足そうに微笑んでいた。
「俺の分も食べるといい」
 自分の皿を僕の方へ押し、砂糖もミルクも入れないコーヒーを飲んだ。
「さっきから、木兎さんたちがしつこい」
 赤葦さんは振動したスマホを見やる。
「木兎さんと黒尾さんは、もう大学の練習に参加してるんだ」
「ああ、2人とも推薦でしたっけ」
「俺が月島のところに行くって言ったら、悔しがっていたよ」
 くすりと笑って、何かを短く打ち込んで送信した。
「2人とも月島に会いたがってる」
「そう、ですか」
「練習が詰まってて、休みはもらえないみたいなんだ」
 その笑顔が少し愉快そうに見える。
「仙台に行くって言ったときの2人の反応、見せてやりたかったよ」
「──意地が悪いんですね」
 僕は呆れたように言った。
「そりゃ、ね。せっかく月島を独り占めできるんだし。ちょっとしたけん制」
「は?」
 ケーキのてっぺんに乗っていたつやつやのイチゴにフォークを刺して口に運ぼうとしていた僕は、きょとんとして今の言葉の意味を考えた。
「いつも出し抜かれてばかりじゃ、面白くないからね」
 右手にイチゴを突き刺したフォークを握りしめたまま、僕は混乱する。
「出し抜くって……」
「黒尾さんは策士だしね。優しそうなフリして付け入ってくるに違いないし、木兎さんはストレートで考えなしだから逆に性質が悪い」
 いつものように淡々と話す赤葦さんは、ちらりと僕を見て、フォークを指さす。
「それ、食べないの?」
「あ、食べます」
 慌ててイチゴを口に運び、かじろうとしたとき、赤葦さんが僕を呼んだ。
「月島」
 思わずはい、と返事をして顔を向けたら、赤葦さんが僕の肩を抱き寄せるように自分に近づけ、スマホを掲げた。驚いてそちらを見たら、ぱしゃりと写真が撮られた。画面には、いつものクールな表情をした赤葦さんと、少し驚いたように目を丸くし、イチゴをかじる僕がいた。
「──送信、と」
 その写真の行き先は、今話に出ていた二人なのだろう、と気付いた。
「あ、赤葦さん?」
 僕はますます混乱し、口の中のイチゴを飲み込むことができなかった。
 数秒後、スマホが震えた。それを確認した赤葦さんがまた、愉快そうに笑っている。スマホはそのあとも何度か振動し、そのたびに赤葦さんが楽しそうに返事を打ち込む。
「焦ってるな」
 含み笑うようにつぶやいて、スマホを伏せるようにして床に置いた。
「赤葦さん──あの2人に嫌がらせするためにわざわざ来たんですか?」
 さすがに腹が立った。そんなことに利用されるのはごめんだ。
 赤葦さんは少し、意外そうな顔をして、それから突然右手を伸ばして僕の唇に触れた。
「な」
「違うよ」
 指先が唇をなぞり、すっと離れた。その指先にうっすらとクリームがついていて、それをぬぐったのだと気付いた。赤葦さんは僕を見て、にやりと笑う。
「月島に会いたかったから来たんだよ」
 ぺろりと、クリームのついた指先を舐めた。その舌先が赤く、僕はその瞬間、赤面する。
「甘い」
「そ、りゃ……クリーム、ですから」
 僕は手の甲で自分の口元を隠すようにして目をそらす。
「うん、そうだな」
 赤葦さんがうなずく。
「なあ、月島。ショートケーキのイチゴは、先に食べる方が正しいんだってさ」
 僕は恐る恐る、赤葦さんを見た。
「あとで食べると、ケーキの甘さで、イチゴの酸味を強く感じるんだって。──だから、先にイチゴを食べると、甘くておいしいイチゴの味を堪能できる」
「そ、それが?」
「月島は、ケーキを食べてからイチゴを食べるんだな」
 確かに僕は今、ケーキを食べたあとに、上に乗っていたイチゴを食べた。甘かった口の中がイチゴの酸味でさっぱりとするので、こういう順番になることが多い。
 しかも、このケーキのイチゴは、表面が甘いゼリーコーティングされている。そして元々、とても甘くていいイチゴなのだろう。酸っぱさはほとんど感じなかった。
 赤葦さんはフォークを手に取り、ケーキをすくった。さっき、僕にくれるといったケーキだ。
 それを口に運び、ゆっくりと飲み込んだ。
「俺は、甘いなら、最後まで甘い方がいい」
 口元から覗いた舌が、唇を舐めた。
「俺はね、月島」
 まるで魅入られたように、僕は動けなくなる。口の中はさっきのイチゴのさわやかな甘みが広がっていた。
「月島に、会いたかったから、来たんだよ」
 さっきと同じ台詞なのに、一言ずつ、言い聞かせるように、口にした。
 スマホが振動し、僕はびくりと反応した。
「イチゴ──」
 赤葦さんはスマホを見ようともしなかった。伏せられたままのそれは、再び沈黙した。
「そのイチゴは、甘い?」
 ケーキの乗った皿は、僕と赤葦さんのちょうど真ん中にあった。一口分だけ欠けたケーキ。きらきらのイチゴは、甘い。
 けれど──
「わ、分かりません」
 赤葦さんが舐めたクリームほどは、きっと甘くない。
「ケーキは甘い」
 赤葦さんがつぶやいて、僕との距離をわずかに縮めた。
「イチゴより、ずっと」
 それはこのケーキのように甘く、僕を惑わせた。
 至近距離でささやかれた僕が、赤葦さんのにやりとした笑みにふらふらとめまいを起こしそうになったとき、伏せられたままのスマホが再び、ヴー、っと音を立てて振動した。
 僕ははっとして、急いでケーキの皿を持ち上げ、自らその甘みを取り込んだ。それを見て、赤葦さんはひょいと肩をすくめ、おかしそうに笑ったのだった。

 了


 おしい!
 そして、おいしいですな。
 私の中の赤葦って、こんな感じ。
 頑張れ、ツッキー。

 しかし、東京の2人はめちゃくちゃやきもきしながらスマホ握りしめてるんでしょうね。
 邪魔する気満々だな、きっと。
 ああ、もう、全員好きだよ。




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