「いっしょにごはん。」というシリーズを書いています。
それに付け加え、サブタイトルに~三國無双編~とあるのは、他のジャンルでも同じテーマでシリーズものを書きたいからです。
基本的に、CPや世界観はバラバラで書くつもりでしたが、「後輩徐庶と先輩荀攸」を書いたら楽しくなってそちらがシリーズ化してしまったので、サブタイトル付きでさらにシリーズ分けをすることになってしまいました。もうすっちゃかめっちゃかだ(笑)
こちら、同じ三國無双ですが、現パロではなく三国時代の賈詡と徐庶のお話です。
「いっしょにごはん。三國無双編01 締め切り明けのご飯と先輩」をpixivにUPしたときに、アンケートを設置し、どの組み合わせがご飯を食べているのが読みたいかと問うたところ、100%がこの「賈詡と徐庶」だったので、書いてみました。
で、す、が。
三国時代のことなど何も知らない、勉強不足な私が書いているものなので、史実と違う(ていうかゲームだしな)ありえない、と読んでいて思われることがあるかもしれません。
そもそも、歴史苦手なのに、なぜ書いた。現パロにしておけばよかったのに……
後悔してももう遅いです。
書いてしまいました。
以上、上記を踏まえてお読みください。
あ、息を吸うように当然魏徐庶です。
賈詡+徐庶
竹林ディナー(?)
作品一覧はこちらをクリック→二次創作目次(tns/krbs/HQ/YWPD/三國無双/その他)
焚火~いっしょにごはん。三國無双編04~
日が落ちれば周りは暗闇になる。そうなる前にと急いだけれどしょせん無駄なあがきだった。
「徐庶殿、今日はこの辺で野宿にしよう」
だいぶ日が陰り、薄暗くなってきた。
先を歩いていた賈詡殿が振り返り、前方にある岩屋を指さした。ごつごつと高い岩山の連なる道なき道を歩いて、ようやく竹林に抜けた。ずっと、敵の目を避けるために険しい道を選んできた。まばらに生えたその竹の隙間を縫うように歩いていたけれど、右手には高く切り立った断崖がそびえている。
その一角、えぐられたような場所を、今夜の寝床にするらしい。
大人二人が収まるには少しだけ窮屈だが、幸い空は晴れている。雨の心配はないから、浅い岩屋でも充分だ。
「火を起こそう。徐庶殿、その辺で燃やせそうなものを拾ってきてくれるかい」
分かったとうなずいては見たものの、見渡す限りの竹林。枯れ落ちた葉と茶色に枯れた細い枝くらいは落ちているが、これでは一晩持たない。それでも両手に抱えて戻ってみると、賈詡殿はなんと小さな鉈で青竹を切っている。
「随分と集めてきたねえ」
「これだけじゃあ足りないでしょう。──それ、どうするんですか?」
「もちろん焚き木に」
「青竹を、ですか?」
青竹に火をつけたところで燃えるとは思えない。割って節のところで切って器くらいにはなるだろうが。
「竹は結構燃えるよ。焚きつけさえちゃんとすれば、生の方が蓄えてる油分でかなり強力に燃焼する」
いくつかの竹を適当に割ってから、賈詡殿は腰につけていた木燧で俺の集めてきた枯れた葉に火を起こす。それを枯れ枝に移し、火を大きくして青竹をくべていく。じっと見ていたら、始めはちろちろと小さな火が、ゆっくりと枯れ枝を燃やし尽くしていき、賈詡殿は様子を見ながら枝葉を足していく。そうこうしているうちに、突然ぼわっと勢いを増した。
「燃えましたね……」
「燃えるんだよ」
何だか賈詡殿の奇術にまんまとやられたような気分。
青竹に直接火をつけようとしても無駄だが、火種があればちゃんと燃える。しかもものすごい勢いで。
「燃えてますね……」
「燃えてるねえ」
しばらく二人でごうごうと燃える火を眺めていた。口にはしないが、お互い疲れていたらしい。
「本隊は無事に到着したでしょうか」
「問題がなければね」
「明日には合流出来ますね」
「──問題がなければね」
軍師二人、斥候要員として本隊より早く敵陣に向かった。見張りを始末しながら視察し、小さな陣をひとつ、ついでに落としてきた。
ついでに。
片手間にやってきたような言い方をしてしまったが、実際苦労したという感じはしない。
夕闇に紛れた賈詡殿が鮮やかに敵兵を始末していく様を、魅入られるような気持ちで眺めていた。その手並みの良さに感心し、思わず言葉を失うくらいに。
音もなく仕事をやってのける彼の腕も、度胸も大したものだといつも思う。
俺も暗殺まがいの汚い仕事は慣れているが、賈詡殿のそれは年季と経験が段違いだ。
板についている、と言っても過言ではない。
きっと、今までもそういう仕事ばかりを任され、それこそ率先してやってきたのだろう。
悪逆非道と彼を表する人間もいるが、本人はそれを否定もしない。
──これは軍師の仕事ではない。
正直そんな風に思わなくもないが、魏軍の軍師は戦闘にも秀でている。策を練るだけが仕事ではない。賈詡殿や荀攸殿は特に。
俺自身も机上でああだこうだと策を練っているだけではなく、実際戦場で先陣を切っている方が性に合っている。
陣が落ちたことは夜明けとともに気付かれただろう。なるべく先に進み、早めに本隊と同流すべく速やかにその場を離れ、夜通し歩き、少しの休憩のあと再び歩きだし、結局丸一日以上歩きっぱなしで眠っていない。
さすがに疲れた。
「腹、減ってるかい?」
「もちろんです」
「食い物はあとどのくらい残ってる?」
「餅(ビン)が少し」
「俺もそんなもんだねえ」
腰にくくり付けてきた兵糧は、半分以上減っている。
「どこかに水はあるでしょうか」
「水音は聞こえんね。川はおそらく崖の向こう側だ」
「このままでは食べられませんよ。固すぎて」
「竹に詰めて蒸し焼きにしてみたらどうだろう。青竹の水分で少しはましになるかもしれない」
賈詡殿が立ち上がり、青竹を切りに行った。節を残して切り取ったそれを真っ二つに割り、中に餅を入れて再びくっつけ合わせ、焚火の周りに並べる。
「タケネズミでもいれば、一匹捕まえて丸焼きにしてしまうんだがねえ」
「この暗がりでは、いたとしても仕留められませんよ」
「徐庶殿、俺の腕を甘く見ないようにね」
確かに、賈詡殿ならばどんな闇の中でも自由に動き、まるで猫の目のようにすべてを見渡せるかもしれない。
人間離れしている。
俺は小さく笑った。
「何か変なことを言ったかい?」
「いいえ。賈詡殿ならやってのけそうだな、と」
しかし周りには生き物の気配は感じられない。
夜の竹林に、俺と徐庶殿二人きり。
風がさらさらと竹の葉を揺らし、すっと止む。
──静かだ。
ぱちぱち、もうもう、焚火が立てる音は、静けさに溶けていく。
「酒が欲しいところだね」
「帰還するまでお預けですね」
「少しくすねてくりゃ良かった」
酒好きのこの人らしい言葉に、また、笑みがこぼれてしまった。
餅を閉じ込めた青竹の表面にじわりと水分が滲んできた。焚火の勢いが強いので、火の側が煤けている。
「笑ってるようなら安心だ」
そんな言葉にきょとんとして首を傾げたら、
「徐庶殿は、空腹になるとこの世の終わりみたいな顔をしてうなだれているからねえ。昨日の夜からほとんど何も食べていないし、そろそろ限界かと思っていたよ」
「──この世の終わり、ですか」
俺は苦笑する。
お腹が空くと悲しい気持ちになるのは確かだが、まさかそんな風に見えていたとは。
昨日の夕方、落とした陣にわずかながら食料があった。それを奪い、腹に詰めたが、それから丸一日経っている。休憩がてら川の水を飲んだり、麹玉を舐めたりはしていたが、胃の中はとっくに空っぽだ。
「淀んだ空気を背負って、精気のない目をしてるよ」
「そんなにひどいんですか」
うう、と思わずうなったら、賈詡殿が笑う。
「うん、まあ、だから笑えてるようで安心したよ。あんな顔されちゃ、何とかしなくちゃなと思うしねえ」
賈詡殿は腰に付けた携帯用の小さな鞄から、布に包まれたものを取り出した。手のひらでそれを開き、俺に向ける。
「乾燥させたブドウとナツメだよ。それに松の実」
「──隠し持ってたんですか」
「最悪の事態を想定してね」
「もしかして、俺のためですか」
「あんたが悲しそうにしてるのは、見てるこっちも辛いからねえ」
本気なのか冗談なのか分からないが、賈詡殿はそんなことを言いながら肩をすくめてみせる。
乾燥したブドウを一粒、つまんで噛みしめてみた。小さなそれは、口の中で甘い香りを放ち、舌の上で濃厚な甘みに変わった。甘酸っぱいそれはとてもおいしかった。生のブドウよりもずっと凝縮された甘みと風味。
「おいしいです」
赤いナツメは、ブドウほどの甘みはないものの、さわやかな酸味とほのかな甘み、わずかに残るしゃりっという歯触りがとても心地よい。
「疲れてる時は、甘いものを食べると楽になるような気がしないかい?」
「そうですね。──確かに、元気になります」
「全部食べていいよ」
布に包まれたそれを、俺の手に渡してくれる。
「賈詡殿は」
「俺は大丈夫」
そろりと青竹の上の部分を持ち上げてみたら、中の餅は多少柔らかくなっていた。
「あちち」
餅をつまんだ賈詡殿が慌てて俺にそれを投げる。うわわ、と焦って受け取ったら、手のひらに熱々のそれがぺたりとくっついて、思わず悲鳴を上げてしまった。
「火傷しないようにね」
「もう遅いです!」
熱い熱い、と指先でつまみながらかじりついたら、あんなにカチコチだった餅になんとか歯が通るようになっていた。口にしたら青竹の香りが広がり、これはこれで悪くない。
賈詡殿は麹玉を割って餅に乗せてかじっている。俺はたった今もらったブドウを乗せて食べる。
味付けしていない餅に、甘い干しブドウ。まるで甘味のようなそれが、やけにおいしく感じる。
「あんたと一緒に食事をするのは初めてだね、徐庶殿」
「そうですね」
うなずいて、確かにそうだったと気付いた。
俺と賈詡殿は、同じ軍師だがあまり親しい付き合いがあるわけじゃない。軍議で言葉を交わす以外、普段は話す機会すらなかった。もちろん、食事も別々。俺は一人で食べることも多いし、軍師の中では荀攸殿と一緒になることが多い。たまに夏侯惇殿や夏侯淵殿に捕まって一緒になることもあるが、賈詡殿はどこで食事をしているのか、あまり皆と一緒に食卓を囲んでいるのを見たことがなかった。
悪逆非道。
この人についたそんな不名誉な肩書は、そのまま兵卒たちに伝わり、その印象が独り歩きして広がっていく。
彼の人となりを知らない者たちは、きっと、賈詡殿を裏切り者などとののしることもあるだろう。
──俺だって似たようなものだ。
けれど彼のように強くはなれない。
その不名誉を受け入れて、一人生きていくことなど。
「この戦いを終えて許昌に帰ったら、一緒に食事をしませんか」
「俺とかい?」
賈詡殿が驚いたように俺を見た。
「はい」
「物好きだねえ」
彼の人となりを、などと言ったけれど、俺だって彼のことはまだよく分からない。
彼自身が、知ろうとする人間をけむに巻いて行くからだ。
──深入りされたくないのかもしれない。
けれど、こうして二人きりで向き合っている賈詡殿は、周りの言う悪い人間には全く見えない。
元々、何を考えているのか分からない人だけど、その働きを見ていれば、忠誠心には疑いはない。少なくとも俺にはそう見える。
「おいしいお店に連れて行ってください」
「おっと、俺がごちそうするのかい?」
「もちろんです」
「図々しいねえ、徐庶殿」
「お腹が空いて、悲しそうな俺を放っておけないんでしょう?」
俺の言葉に、賈詡殿が目を丸くする。
「だから、いっぱいごちそうしてください」
「あははあ、そうきたか」
「鶏料理がいいです」
「──分かった、考えておくよ」
残っていた餅は全部食べてしまった。
干したブドウとナツメは、再び布に包んでしまい込んだ。
本隊と合流するまではもう少しかかるだろう。行軍の最中に少しずつかじって大事に食べるつもりだ。
賈詡殿との初めての食事は、青竹の香りのする餅が二つと干したブドウとナツメ、それに松の実。
タケネズミは結局、その姿を見せず、捕まえることができなかった。
岩屋に寄りかかり、目を閉じる。その眠りは風音にすら反応するほどに浅く、疲れを取るまでには至らない。
けれど、少しでも体力の回復を図るために、身体を休める。
「おやすみ、徐庶殿」
賈詡殿の声を聞きながら、俺もおやすみなさいとつぶやいた。
焚火は燃え続けている。ごうごうと、勢いよく。
青竹の香りのするその煙の中で、俺たちは静かに夜を明かしたのだった。
了
干しブドウとか干しナツメってあったんですかね。
ていうか、どのくらい歩き続けられるんでしょうね。
餅(ビン)ってどうやって食べるんですかね。
携帯用の「鞄」とか言ってますけど、鞄って。何だろうな、あれ。あの時代は何ていうんだろう。
そんでタケネズミって何すか(笑)
竹林に生き物っているんでしょうか。何か獲物とって食べた方が早そうだけど。
と、いうように全く適当に書かれております。
「これはフィクションです」
はい、万事オーケー!!
そしてしれっと徐庶が魏にいます。これは私の好みなので仕方ないんです。ええ。
青竹はうまくすれば燃えますが、おっかないくらい火が立つので注意してください。ただ火をつけただけじゃそうそう燃えませんけど。
ちなみに、その時アンケートに並べた回答はこんな感じ↓
・賈詡と徐庶
・賈詡と荀攸
・曹丕と甄姫
・孫権と周泰
・夏侯家
賈詡と徐庶以外に票が入りません。
まあ、徐庶好きさんしか読んでないってことなんだろうなと判断しました。
賈詡と荀攸でお酒飲みながらうだうだ。
曹丕と甄姫でいちゃこきながらブドウ食べる(甄姫ちゃんがとにかく大好き)
孫権と周泰で絡む孫権に困る周泰。
仲良し夏侯淵と夏侯覇親子+夏侯惇。
どれも書きたい。
そのうち書こうっと。