bittersweet | 体温~from 205~(日吉×海堂)
bittersweet
自作BL・GL/二次創作BL 日常ゆるゆる雑記 好きなものを、好きなように、好きなだけ。

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 個人的な趣味で小説を書いています。
 二次創作を扱っていますが、出版社、原作者等、いかなる団体とも一切無関係です。
 オリジナル・二次創作ともにBL・GL要素を含みますのでご注意ください。
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Author:hiyu
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野球と映画があれば、なお良し。
玉ねぎとお豆腐とチーズが無いと落ち込みます。

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(2018/12/15更新)

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体温~from 205~(日吉×海堂)
 日吉と海堂って、いいですね。
 似たような価値観ではないかな、と。
 二人でいたら、さぞかし迫力あるでしょうね。凛としてて、鋭くて。
 でもタイプは結構違うのかな。
 海堂は先輩をがっつり立てていそうだし。間違っても下剋上なんて言わないだろうしね。

 205、二人目。
 日吉×海堂





   体温 ~from 205~

 なんだか知らないが、腹が立つ。
 俺は目の前の光景を見下ろしながら、眉間にしわを寄せた。俺を見上げた海堂が、引きつったようにほんの少し、口元を持ち上げた。笑おうとしているのかもしれない、と思ったが、それを待つ余裕はなかった。
 第一、海堂がそう簡単に俺に向かって笑うはずがないのは分かっていた。
「何をしている?」
 俺の冷ややかな声に、海堂の表情が固まった。
 部屋の真ん中、海堂が胡坐をかいて座っていた。その背中に財前が寄りかかるように自分の背中をぺたりとくっつけてスマホをいじっていた。そして、海堂の組んだ足、ハーフパンツから伸びた膝の上に、切原が頭を乗せて仰向けに寝転がり、ぱかっと口を開けてくーかくーかと寝息を立てていた。
 当の海堂はトレーニングルームから拝借してきたらしい鉄アレイを持ち上げ、上下に動かしていた。
 俺は跡部さんに呼ばれて少し席を外していた。ほんの15分ほどである。俺が部屋を出るときには財前も切原もそれぞれ離れて座っていたはずだった。それが、この15分の間に一体何があったというのか。
 ドアを開けた俺は、海堂とばっちり目が合った。そして、この状態である。
「何って」
 そっけない調子で財前が言った。
「見ての通りやな。海堂にくっついとる」
「だから、なぜ」
「──言わなならん理由は?」
 財前はスマホに目を落としたままだ。俺を見ようともしない。大体、こいつは年中スマホをいじっているが、一体何をしているんだ?
「ないな」
「なら、ええやん」
 俺と財前のやり取りに、海堂が鉄アレイを握り締めたまま焦っている。
「くっつきたかったら、日吉もくっつき」
 その言い方に、俺はむっとする。
「別にそういうわけじゃない」
 むにゃむにゃ言いながら、切原がごろんと寝返りを打った。頭が海堂の膝から落ちて、ごち、と床に頭を打ち付ける音がした。海堂が鉄アレイを放って慌てて切原の頭に触れた。痛くないかと心配しているのだろう。しかし切原は何事もなかったかのように眠り続ける。
 海堂はその頭を何度か撫でて微笑んだ。
 ──なんでか、腹が立つ。
「日吉」
 海堂が俺の名を呼ぶ。
「悪い、切原のベッドから毛布取ってくれないか」
 そんなやつは放っておけばいい、と言おうとしたが、海堂の純粋な目に抗うことができなかった。仕方なく切原のベッドからそれを引っ張り出し、ばさりと切原にかけてやる。海堂はありがとう、と言って毛布を引き上げ、切原の肩までしっかりと覆ってやる。
「よく寝んねんな、切原は」
 背後から聞こえてきた声に、海堂はああ、とうなずく。
「寝顔は子供やな」
 確かに切原はすやすやと安らかな寝顔を見せている。テニスコートでの悪魔のような姿からは想像できない。
 俺は自分のベッドに腰掛け、まだ切原の髪を楽しそうに撫でている海堂を見る。それからおもむろに枕元に置いていた持参の本を手に取った。お前らには興味はない、というポーズで俺は読書を始めた。
 絶えず指先を動かしている財前が、時々海堂に話しかけ、海堂が短く答える。切原がごろんごろんと寝返りを打つ。その度に海堂が毛布をかけ直してやる。
 本の内容はまったく頭に入ってこない。それどころか、俺の意識はさっきから前方の海堂に向けられたままだ。
 どうかしてるな、と思った。
「あ」
 海堂の声がして、顔を上げると、ごろごろ、と切原が転がってきた。そして俺のベッドのところまで来て、止まった。毛布は身体に巻きつき、蓑虫みたいになっている。
 どれだけ寝相が悪いんだ、こいつは。
 海堂はぽかんと口を開けて、こちらに手を伸ばしていた。もしかしたら転がる切原を止めようと思っていたのかもしれない。
「海堂」
 俺がベッドから下りて、切原を踏んだ。もちろん体重はかけていない。
「あまり甘やかすな」
「え、甘やかして……るか?」
 自覚がないらしい。俺は溜め息をつく。
 思えば、合宿が始まってこの部屋割りが発表されたとき、俺は少し不満だった。海堂に、切原に、財前。一体どんな話し合いの末にこんな部屋割りになったのだろう、と思う。
 一緒に過ごしてみたら、3人とも俺の思っていた印象をひっくり返してくれた。切原はいつもやかましいくらいにうるさく、明るく、やたらとはしゃぎまくるただのお子様だし、クールな天才というイメージだった財前はただのスマホ依存のオタク気質で口の悪いやつだし、海堂に至ってはプレーしているときの印象はどこへやら、おとなしいけれどよく気が利き、面倒見のいいやつだった。
 海堂は切原に対しては、完全に保護者のような立ち位置だ。自由奔放な切原を諌め、丁寧に言い聞かせる。切原も最初は面倒そうにしていたが、最近では海堂になついてべったりである。
 財前はよく分からないが、海堂にはやけに馴れ馴れしく接している。普段はしれっとしているのに、海堂には時々笑顔なども見せている。
「あまり甘やかすと、こいつのためにならない」
「あ、ああ、そう、だな」
 本当に分かっているのか。俺は額に手を当てて小さく溜め息をついた。
「そろそろ消灯だ。こいつをベッドに放り込む。手伝え」
 海堂はうなずき、立つぞ、と財前に声をかけて立ち上がる。財前がずる、と背中から滑って床にごろりと転がった。もちろんスマホは離さない。
 俺と海堂は切原の身体を持ち上げ、ベッドに移動させた。蓑虫状態の切原はちっとも目を覚まさず、そのままぐるぐるとベッドの上で転がった。
「俺、これ返してくるから」
 海堂は鉄アレイを持って部屋を出て行った。俺は息をついて、自分のベッドに戻ろうとした。
「なんや──」
 床に仰向けになっていた財前がつぶやく。
「妬いてるみたいやな」
 俺が財前をにらむと、財前はようやくスマホから目を離し、俺を見てにやっと笑った。それから勢いをつけて身体を起こす。
「海堂は日吉のとちゃうで」
「だから、別にそんなつもりはない」
「とてもそうは見えへんわ」
 スマホをジャージのポケットに突っ込み、その場で胡坐をかく。
「海堂なぁ、かわいいもん好きやねん」
「──それが?」
「切原って、かわいいなぁ」
「──だから?」
 くっくっく、と財前が笑った。
「別に。──ああ、そうや、さっきのはな、お前が部屋出てったあと、筋トレしてる海堂に切原がちょっかい出し始めてな、したら、切原がいきなり海堂の傍は暖かい、とか言い出してん」
 俺は怪訝な表情を崩さずにそれを聞いていた。
「そんで、切原が海堂に抱きついて、邪魔だって言われても離れへんかってん。で、財前、こいつあったかいーって言われて、ほな試しにって、背中にくっついたら、マジで暖かいねん」
 なんだ、それは。つまりこいつらは、海堂で暖を取っていたということか?
「あんだけトレーニングしてるから、燃焼してんやろな。ほんで、べったりくっついてた切原がそのままいつもどおり寝落ちしただけやで」
「──別に、説明してくれとは言ってないが」
「せやな。勝手に言っただけや」
 財前はベッドで眠る切原の頭をひと撫でして、その上の段に階段を使って上がった。
「切原は猫みたいやもんなー」
 自分のベッドに横になった財前が、ばふっと布団をかぶりながら、言った。
「ほな、オヤスミ」
 消灯時間にはまだ30分近くあった。けれど二人ともベッドの中だ。
 俺は自分のベッドと、それからしれっと寝たフリをしている財前を交互に見て、くそっ、と短くつぶやき、部屋を出た。財前にどう思われたのか想像して少しいらついたが、考えるのをやめた。
 俺はトレーニングルームへ向かう。途中で、鉄アレイを返してきたらしい海堂と行き会った。
「日吉?」
 少し驚いたような顔をして、海堂が俺を呼んだ。
「どうしたんだ?」
「────」
 向き合ってはみたものの、何を話していいかが分からなかった。元々俺も、海堂も、口数が多い方ではない。
 不思議そうな顔をして首をひねっている海堂の身体に、俺はぺたりと手のひらを当てた。それはTシャツ越しだったが、手のひらはじわりと温かくなった。
「ひ、日吉?」
 海堂は途端に焦り出す。
「──確かに、暖かいな」
 それは心臓の近く、あばらの当たりだったが、手のひらを通じて海堂の鼓動が伝わった。
「あ、暖かい?」
「代謝がいいんだな、海堂」
「た、代謝?」
「ああ、代謝」
 海堂が訳が分からない、という顔をする。
 海堂の体温は、俺の手のひらを伝って、俺に移る。低めの体温の俺には、それはとても熱く感じた。
 なるほど。
 切原や財前がくっつきたくなる気持ちも分かる。
「日吉──」
「なんだ?」
「そろそろ、その手を──」
 俺は海堂を見て、それから手のひらを当てた身体を見て、また海堂を見た。無表情の俺が二度目に海堂の顔を見たとき、海堂の顔が赤くなっているのに気付いた。そして、触れている手のひらから伝わる鼓動が、早くなっているのにも。
「海堂」
「な、なんだよ」
「財前によると、俺は妬いているらしい」
「な──え?」
「お前にべたべたしているあいつらに、俺が嫉妬しているように見えるらしい」
「そ、そう、なの、か?」
 俺はうむ、と悩む。
 海堂の鼓動はどんどん早くなる。
「もしそうなら──」
 俺は手を引いた。海堂の体温が急に離れ、手のひらがひやりと外気をまとう。
「俺はお前に好意を持っているのか?」
 わずかに近付いてそう訊ねると、海堂は突然真っ赤になって、両手で俺を押し返す。
「し、知るか!」
 そしてそのまま走って行ってしまう。俺は追わなかった。もうすぐ消灯だ、どちらにしても同じ部屋に帰るしかないことは分かっていたからだ。
 俺はさっきまで海堂に触れていた手のひらを見つめる。確かにそこには普通よりも少し高い体温をさっきまで感じていた。
 海堂が赤くなった理由は分からなかった。
 妬いてる──?
 財前がにやりと笑っていたのを思い出して、俺は首をひねった。
 なんだか知らないが、腹が立つ。
 さっき、部屋に戻った俺が真っ先に思ったことは、それだった。
 背中に財前、膝に切原。
 そこに俺がいないことに?
 そう思って、俺が海堂にくっついている姿を想像しようとして、挫折した。とてもじゃないが考えられそうになかった。3人仲良く海堂にひっついている画など、想像するに不愉快だった。
 俺は手を下ろして、部屋に戻ることにした。
 多分、部屋に戻ったら海堂も他の二人と同様にベッドにもぐりこんでいるだろう。逃げるように走り去った海堂の様子から、俺はそう思った。
 溜め息をついて、廊下を歩く。
 海堂の背中にくっついていた財前が、ぽつりぽつりと何か話しかけているのを、確かに少し、うらやましく感じていたのかもしれない自分がいた。切原のように無邪気に甘えることはできそうにないが、人にはあまり関心がないように見えた財前までがあんな風に海堂に触れている。それが多分、俺には気に入らなかったのだろう。
 部屋の前まで来て、俺はドアの前に人影があることに気付いた。海堂だった。
 ベッドにもぐりこんではいなかったらしい。予想が外れたことに、俺は苦笑した。
「入らないのか?」
「──日吉」
 俺がドアに手をかけようとすると、海堂が呼びかけた。
「なんだ?」
「お前が俺をどう思っているかは知らないが──」
 海堂は視線をすっと下に向けた。
「俺は、お前のことは嫌いじゃない」
 ああ、目を見て話すのが恥ずかしかったんだな、と思った。海堂の頬は赤く染まっている。そんな一言を言うために、部屋に入らずに俺を待っていたのか。
 俺は、そのとき、突然理解した。
 3人で仲良く海堂に引っ付いている姿など想像できない。したくもない。当たり前だ。3人で、なんて、ごめんだ。
 俺は右手を伸ばして、海堂の身体に、再び触れた。
「──日吉?」
 ぎくりとしてから、海堂はわずかに身を引こうとした。けれど留まった。
「腹が立っていたのは──そのせいか」
 俺はくくっと笑う。
 海堂は困ったように俺の顔を覗きこむ。俺は手のひらから伝わる体温と鼓動に、ようやく自分の中に答えを見つけた。
「海堂」
 顔を上げた俺を、海堂が戸惑うように見た。
「どうやら、当たりだ」
 それはまさしく嫉妬で、俺は海堂に好意を持っている。
 つまり、3人でこいつをシェアしたいわけじゃないのだ。
「な、何がだ」
「いや──」
 俺は海堂の胸を拳で軽く、とんと叩いて、その手を引いた。
「明日からは忙しくなるな」
 海堂にべたべたとくっつく切原をちぎっては投げ、しれっと海堂に擦り寄る財前をけん制する。
 ベッドの中で気持ちよく眠りについているであろう切原と、寝たフリをしているか相変わらずスマホをいじっているであろう財前の待つ部屋のドアを、俺は開けた。
 海堂は意味が分からない、という顔をして、まだ廊下に突っ立っていた。
 消灯を告げる放送が響き、俺は満足してベッドにもぐりこみ、明日のために鋭気を満ち溢れさせるのだった。

 了


 日吉……こんな感じになりました。
 ちょっとあたふたしてる海堂がかわいいかなって思って。
 あくまで日吉は冷静に、そして無自覚に嫉妬してます。
 この二人、仲良しだったら本当にツボだなー。
 実際どうなんだろう。

 205号室二人目終了ー。




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