突然ですが、黒バスとテニプリはお好きですか?
私はどちらも好きです。
特に愛しい二人の総受け属性、黒バスの若松さんとテニプリの海堂くん。
この二人ばっかり書いてるな! って二次創作の目次(カテゴリ別)を見られたらツッコまれそうですが、大好きなので仕方ありません。
ある日、pixivでDMをいただきました。
「もしよければリクエストを受け付けてもらえませんでしょうか」とのこと。
私が支部でリクエストを募集していたのは結構前ですが(あまりにこないので消しました)消してから来るなんて皮肉な(笑)
その方がリクエストしてくださったのは、『「従兄弟の若松さんと海堂さんがお互いの彼氏について自慢する」というクロスオーバー物』です。
……クロスオーバーだと?
ということで書きました。尻が軽い。
支部にも同時UPしています。
黒バスの若松さんと、テニプリの海堂くんが従兄弟同士で、「年下と付き合ってるのに振り回されてる青若とリョ海」という、リクをくださった方の意向に私の好みを詰め込んだだけのお話ですが、よろしければ。
<青峰×若松>+<リョーマ×海堂>
年下彼氏は生意気。
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two of a kind
中学生の従弟が「相談があるんですが」と言う。
出来の良いこの年下の従弟は優秀なテニスプレイヤーでもあり、強豪と名の付く学校でレギュラーを張っている。
バスケとテニス、競技は違ってもそこは同じスポーツマン。
目つきが悪く愛想のない、不器用なところがコンプレックスでもあるこの従弟が、俺はとにかくかわいくて仕方がない。
時々、部活のことで相談に乗ることもあったから、今回もきっとそうなのだろう、と思っていた。
休みの日、薫の家に顔を出したら、薫の母親である穂積さんが盛大に迎えてくれた。
孝輔くんたらちっとも顔を出してくれないんだから、とふくれっ面をしている穂積さんはとても二人の子持ちに見えないほど若くてきれいだ。叔母さん、なんて呼ぶのがためらわれてしまう。
2階から薫が下りてきて、俺を見てぺこりと頭を下げた。相変わらずきれいな顔をしている。大きな目、ふっくらとした唇、サラサラの黒髪。
俺とはまるで正反対。似ているところと言えば、鋭い目つきくらい。
「孝輔くん、お昼は食べた? ケーキを焼いたんだけど、チーズケーキは平気だったわよね? 紅茶とコーヒーどっちがいいかしら」
穂積さんが俺の左腕を取り、リビングに連れて行こうとするのを、薫が止めた。
「母さん、孝輔兄さんは俺のために来てくれたんだから」
俺の右腕をつかみ、まるで大岡裁きよろしく母と子で引っ張り合いだ。
「孝輔くん、お腹空いてるわよね?」
「忙しい中来てくれて時間ないんだから、母さんは邪魔しないで」
二人のやり取りにらちが明かないと思い、俺は左側の穂積さんに言った。
「ケーキ、もらいます。穂積さんのめちゃくちゃうまいんで。薫と一緒に部屋で食います」
穂積さんは渋々俺の腕を放し、お茶の準備を始めた。
用意されたケーキとティーポットとカップをトレイに乗せて、薫が慎重に階段を上がる。部屋のドアは開いていて、俺も薫の後ろから部屋入る。
「すみません。母さん、孝輔兄さんのこと大好きだから」
冗談みたいに広い部屋の大きなテレビの前、テーブルとソファ。トレイを置いた薫が、俺にソファを勧める。
「まあ、久しぶりに顔出したしな」
「寮生って大変ですか?」
「門限あるしな。──まあ、普段は学校と寮の往復だから、あんまり出かけたりもしねーけど」
薫が高そうなカップに注いでくれたのはとてもいい香りのする紅茶だった。
アールグレイですよ、と言われて、さすがの俺もその名前は知っていた。
「キーマンに、ベルガモットで香りをつけた紅茶っす。ミルクを入れてもおいしいです」
と、ミルクジャグを指したので、カップに注いでみる。普段は紅茶を飲まない俺だから、ストレートよりも飲みやすくなった。
穂積さん手作りのベイクドチーズケーキも絶品だ。
「で、相談て何だ?」
俺の隣、薫がちょこんと腰かけている。中学生にしては背の高い薫だが、その細い身体は俺のような頑丈な人間と違って、どこかはかなげだ。長い手足がびっくりするくらい細くて、何度か見たことがある試合でのあの迫力がにわかには信じられない。
テニスをしていないときの薫は、とてもおとなしい。
年中、やかましい、暑苦しい、と文句を言われている俺とは本当に大違い。
「孝輔兄さんは、その──」
いつもまっすぐ、こちらが戸惑うくらいの目でこちらを見てくる薫らしくない。目をそらし、何か言い辛そうに口ごもる。
焦らせるようなことはしない。こいつはおっとりと思慮深く、物事を考えながら言葉を口にする。考えるより先に口に出てしまったり、身体が動く俺とは、同じ不器用同士でもやっぱり正反対だ。
「付き合ってる、人が、いるっすよ……ね?」
驚いた。
あの薫が、まさか恋愛に関する相談なのか?
まっすぐで、まっすぐすぎるがゆえに、テニスというスポーツでしか人と関わることができない薫が。
「──あー、えーと、まあ、なんだ。付き合ってるっていうか……うん、そうだな、一応な」
くそ生意気な後輩の顔を思い出して、思わず眉間にしわが寄った。
今日も、ここに来るまでにしつこくどこへ行くんだ、何をするんだ、誰と会うんだ、と問い詰められ、説明もそこそこに振り切ってきた。せっかくの休みなのによー、と、不機嫌そうな顔をしていた青峰は、最後まで一緒に行く、と言ってきかなかった。
お前は邪魔だ、と振り払ったら、浮気だな、などと険しい顔をする。
従弟と会うんだ、と言ったが、信じたかどうかは分からない。
──あいつは馬鹿だ。
浮気だと?
「年下、って言ってましたよね」
「……おう」
「部活の、後輩、ですよね」
薫にそこまで話したか?
「この前の練習試合、見に行ったとき、俺、見ちゃったんです」
「何を?」
「色黒の、でっかい人と、孝輔兄さんが──その、ええと」
確かに、少し前、何校かが集まって練習試合をするので、薫に気軽に見に来いよ、と声をかけたことがあった。薫の通う中学にほど近い体育館で、部活が終わってからでもちょっと顔をだせばいい、と。
あの日、青峰はめんどくせーから行かねー、と試合をさぼろうとしていた。桃井が説得しても駄目で、桜井はごめんなさいごめんなさいと謝ってばかりだし、主将になったばかりの俺はそんな青峰に手を焼いていた。
今吉さんと諏佐さんが引退した新制桐皇の試合を、青峰抜きで戦うわけにはいかない。
──行ってやってもいいけど──
何が何でも連れていくからな、と言った俺に、にやりと笑いながら、青峰が言った。
──ご褒美、くれ。
思い出して、べし、っと俺は自分の顔を叩いた。隣の薫がびくりと俺を見上げる。
あんの、ガングロ!
最初から、それが目的だったんだ、と気付いたのは、試合後、体育館を出たときだった。
俺の手を引き、死角になった大きな木の陰、青峰がキスをする。
とっさに引きはがし、殴ろうとしたら、素早くよけられた。
──ご褒美、もーらい。
誰にも見られてないよな、と思わず周りを見回したけど、その気配はなかった。
の、だが。よりによって。
「……見てたのか」
顔を押さえたまま問うたら、薫が申し訳なさそうにうなずいた。
「試合、ちょっとだけ見れたから、声かけようとしたら、孝輔兄さんが青い髪の人に連れていかれるの見て──」
「忘れろ」
「…………」
薫はもじもじしながらうなずけずにいる。
まあ、忘れろってのが無理な話だ。小さい頃から仲の良い従兄のお兄ちゃんが、こともあろうにあんなくそ野郎とキスしてるなんてな。
「恋人、なんすよね?」
「不可抗力だ」
「…………? 好きじゃないんすか?」
「──薫」
「はい」
「世の中には、摩訶不思議なことってのがあってな」
「はい」
「俺自身も信じられんが、あのガングロくそ野郎は、残念だが俺の恋人だ」
「……やっぱり」
薫が、どこかほっとしたような顔をしたのは、なぜだ。
「こんな兄ちゃんを、軽蔑するか」
かわいい従弟に嫌われるのは悲しい。実の弟と同じようにかわいがってきた薫だから、なおさらだ。
薫はびっくりしたように目を丸くし、ぶんぶんと首を振った。
「しない! するわけ、ない」
「そうか、優しいな」
「それで、その──相談、なんすけど」
ああ、そうだった。今日はそのためにここにきているんだった。
危なく当初の目的を忘れるところだった。
「──俺も、年下の……恋人、が」
薫の口からそんな言葉が出てきて、俺は驚く。そして、そのあとに続いた言葉で、さらに驚愕した。
「──俺の相手も、男、なんです」
薫、お前もか。
俺は頭を抱え込む。
「俺の……恋人は、その、越前っつーんすけど」
耳まで真っ赤になって、薫が語りだす。
「ちっこくて、クソガキなんだけど、テニスはものすげーうまいっつーか。──天才っていうか」
なるほど、テニスで語る薫らしい選択だ。自分よりもうまい人間に惹かれ、憧れるのはプレイヤーならば当然だ。
「本当、生意気で、強引っていうか。こっちの気持ちが追い付かねーのに、ぶんぶん振り回してくるっていうか」
「お前もか」
「え?」
「いや、何でもない」
「海外で育ってるからか、なんかこう、俺の知ってるガキって感じじゃなくて」
薫は必死で説明しようとしているが、どんな言葉を選んでいいのか悩んでいるようだった。
「気に入らないのか」
「っていうか、戸惑うっつーか。どうしても、慣れないっていうか」
薫はさらに真っ赤になっていく。
「ちっせーのに態度はでかくて、自信の塊みたいなやつで、自分が一番強いって思ってて」
──うん、小さいというところ以外はなんだか既視感を感じる。
「何ていうか、ものすごい、王子なんすよ!」
突然薫が顔を上げた。真っ赤になって俺を見ている。
「平気で、キキキキキキスとかしてくるし、二人になると妙に甘ったるいし──」
──薫はまだ中学生で、その薫の年下、ということはもちろん中学生。その13~14の子供が、王子で、キスだと?
俺のかわいい弟みたいな薫に?
まだ会ったこともないその越前某とやらを、俺は急に憎たらしく思う。
「──心臓、持たないっす!」
薫が両手で頭を抱え込んだ。
俺はうつむく薫の頭を撫でてやる。
「青峰も、気が遠くなるほど馬鹿だが、バスケだけは超一流でな」
──若松さん。
ここに来る前に、振り切ったときの青峰の顔を思い出して、俺は溜め息をついた。
何でお前、そんな寂しそうな顔すんだよ。
従弟に会いに行く、って言っただろ。ただそれだけのことなのに。
「くそ生意気で、俺様で、そのくせ死ぬほど寂しがりやだ」
「……寂しがりやなんすか」
「さっき、ここに来るときに置いてきたら、構ってもらえなくてすねてた」
薫が小さく笑った。
「越前も、すぐすねるんすよ。くっつくなって怒ったりすると」
俺も薫に笑ってみせる。
まあ、つまりは、似たような恋人を持った同士だということが発覚したわけだ。
俺は薫の頭を撫でながら、やれやれ、と思う。
とりあえず、すねたあの生意気な彼氏様を、帰ったらなだめてやらなきゃいけない。
「孝輔兄さん」
「ん?」
「あの人のこと、好きなんですよね?」
「──そうだな」
苦笑したら、薫も同じように苦笑いして、俺もっす、と言った。
二人で笑っていたら、部屋の扉がノックされ、穂積さんの声が聞こえてきた。
「薫ちゃん、お客様よ。──リョーマくん」
笑っていた薫の表情がわずかに固まり、頬に赤みが差す。
部屋のドアが開いて、俺たちは振り返る。妙にちっこいやつが入ってきて、
「かいどー先輩」
小さいくせに、態度はでかい。そして、妙に整ったかわいらしい顔をしている。
ソファから立ち上がった俺を見て、そいつは顔をしかめた。
「先輩、なにこの巨人」
「馬鹿。俺の従兄だ。兄さんみたいな人なんだ」
「ここ、巨人が集まる家なの?」
何? と薫が首を傾げたその時、誰かが部屋に入ってきた。今度は俺が固まる。
「あお、みね──何でお前、ここに」
「若松さんが、俺を置いてくからだろ」
「その人、玄関の前に座り込んでたんだよ。先輩が因縁でもつけられてるのかと思った」
「お前、ついてきたのか」
「だって、連れてってくれねーっつーし」
190センチを超える俺と青峰の会話を、薫と、どうやらその彼氏──これが越前某か──が見上げながら聞いている。
「だからって人んちの前に座り込むな! お前みたいなのがいたら、近所に迷惑だろ」
「あんたが悪りーんだろ」
「ねえちょっと」
越前が不愉快そうに顔をしかめて、俺たちをにらみ上げる。
「頭の上でやかましいんだけど。あんたたち、でかすぎ」
「越前!」
薫が慌てて黙らせようとする。
「お前がちっこすぎんだろ」
青峰がからかうように笑って、越前の頭を撫でた。
「──ねえ、あんたさ」
越前は青峰の手を振り払って、俺を見た。
「趣味悪すぎ」
「──反論できねーな」
「おい、若松さん!」
「まだまだだね。──男は中身で、身長じゃないよ。ね、海堂先輩」
ふっと笑った越前に、薫が言葉を失っている。小さいけど、態度はでかくて、やけにきらきらしている。
──ああ、確かにこれは、王子様、だ。
「ところで、用が済んだら二人とも出てってくんない? 俺、先輩と二人きりになりたいから」
「クソガキ」
青峰がイラついたようにつぶやいて、俺は溜め息をつく。
中学生とまともにやり合ってどうすんだ、馬鹿。
「分かった、退散する。行くぞ、青峰。──またな、薫」
「孝輔兄さん、あの、今日はありがとうございます」
「いいよ。今度、ゆっくり来るわ」
こくこくとうなずく薫に笑ってみせて、部屋を出ようとしたら──
「あら、孝輔くん帰っちゃうの? みんなでお夕飯食べていけばいいのに。もちろんリョーマくんと大輝くんも一緒に」
いつの間に青峰の名前を聞いたんですか、穂積さん。
お茶のおかわりとケーキの追加を運んできた穂積さんのふわふわとした笑顔に、俺たちはみんな毒気を抜かれて、やれやれ、と俺は再び溜め息をつくことになってしまったのだった。
了 2019/10
このお話の主人公は穂積さんではなくてですね……(しどろもどろ)
初めて書いたクロスオーバーものなので、うまく融合できているかは不安ですが、若松さんと海堂くんへの愛だけは込めさせていただきました。
二人とも大好きだから、私じゃ絶対に想像もしなかった設定をプレゼンしてくださったゆん楽さんに感謝(クロスオーバーという発想が皆無でした)
とっても楽しかったです。
本当はもう一つの案の「年上彼氏」も「同学年CP」も書きたかったんですけどね(゚∀゚)
うずうずしたらいつか書くかもです(笑)