bittersweet | 片想いキーマン~rise39~(東峰+月島)HQ!!
bittersweet
自作BL・GL/二次創作BL 日常ゆるゆる雑記 好きなものを、好きなように、好きなだけ。

はじめに
 個人的な趣味で小説を書いています。
 二次創作を扱っていますが、出版社、原作者等、いかなる団体とも一切無関係です。
 オリジナル・二次創作ともにBL・GL要素を含みますのでご注意ください。
 無断転載などはご遠慮ください。
 まずは、下記カテゴリ、「目次(題名、CP表示一覧)」を開いてください。
★★★
 pixiv(雑多垢)→hiyu
 pixiv(金カム垢)→secca
 (雑多垢)
★★★
 twitter(カオス垢)→@hiyu_choco
 twitter(金カム垢)→@secca_GK
★★★
 note→bitter_snow
★★★
 にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL短編小説へ
 bittersweet - にほんブログ村

プロフィール

hiyu

Author:hiyu
冬生まれ。
本と猫とコーヒーとチョコがあれば生きていける。ような気がする。
野球と映画があれば、なお良し。
玉ねぎとお豆腐とチーズが無いと落ち込みます。

画像はPicrew「とーとつにエジプト神っぽいメーカー」さんから。


ブログにぱちぱち
楽しんでいただけたら、ぽちっと拍手をお願いします。
とっても元気が出ます。
web拍手 by FC2
短いお話がお礼に読めます(≧∇≦)b
●現在は、HQ!!04(黒尾×月島)のSS1本です。
(2018/12/15更新)

カテゴリ

最新記事

月別アーカイブ


最新コメント

リンク

本日のeagles
プロ野球データFreak
パリーグ順位表
セリーグ順位表

検索フォーム

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

片想いキーマン~rise39~(東峰+月島)HQ!!
 本格的な紅茶を飲みに行くと、結構高い。
 軽くランチが食べられてしまう。
 だから、なかなか専門店には行けません。
 アフタヌーンティーセットなんて頼んだら、ディナーと変わらない金額だったりします。ひー。
 それでも何件か紅茶の専門店に行ったことがあって、ちゃんとしたポットサービスを受けてみたりもするのですが、結構茶葉がポットに入ってないところが多くて「そんなもんなのかー」と思います。
 ホットウォータジャグが出てくる店って、いい店だなあ……と思います。
 スコーン食べるのも作るのも好きなんだけど、クロテッドクリームが高くて買えません……(泣)

 東峰+月島
 紅茶を飲みながら、気持ちの整理。

            作品一覧はこちらをクリック→二次創作目次(tns/krbs/HQ/YWPD/その他)




     片想いキーマン~rise39~(東峰+月島)

 地下鉄の広瀬通り駅から少し歩いて、ある紅茶専門店に入った。
 窓際の席に案内されて、僕は窓を背に、東峰さんは僕と向き合うような格好で正面の椅子に座った。
 メニューを開いて、東峰さんが困ったような顔をしている。
「どうしたんですか?」
「……渋くない紅茶、ってどれかな」
 思わず口元が緩み、僕はそれをこらえるようにそうですね……と言った。東峰さんがそれに気付いて、すねたように月島、と つぶやく。
「すみません。渋いのが苦手な東峰さんが、かわいくて」
 僕はメニューをテーブルの真ん中に広げ、指をさす。
「僕がよく飲むのはダージリンのストレートか、アッサムのミルクです。どちらも割と渋めのお茶です」
「そういえば、月島はショートケーキを食べるときに、よくダージリンを入れてくれって言うね」
 最初の頃は、どっしりしたクリーム系のケーキを食べるとき、東峰さんにダージリンをお願いしていた。焼き菓子系や、チーズケーキにはアッサム。お願いしているうちに東峰さんがそれを覚えてくれて、ケーキの種類を見てどちらかをきちんと出してくれるようになった。
「ダージリンは重みはあまりありませんが、フルーティで飲みやすいんです。アッサムが逆に、しっかりとした紅茶の味がして、紅茶の香りも重めです」
「だから、ミルクが合うんだね?」
「はい」
 僕はメニューの文字をたどる。
「東峰さんのように渋みが苦手なら、キーマンかニルギリをお勧めします。ニルギリは、全くと言っていいほど癖がなくて、ストレートで飲んでも、渋みはほとんど感じられません。その代わり香りもないので物足りないですけど、これなら多分、ストレートで飲んでも平気だと思います。──キーマンの方が、紅茶の存在感があって、香りはスモーキーですが、こちらも渋みは控えめです」
「全く癖がないのと、香りがいいの、ってことかな? ……じゃあ、キーマンにしてみるよ」
 僕はうなずいて、軽く右手を上げた。店員がやってきて、オーダーを取る。
「キーマンをポットでひとつと、それから、クリームティーセットをアッサムで」
 店員が一礼して去っていく。
 お店は、ゆるやかなクラシックが流れ、窓から日差しが差し込んでいる。店内は女性客が多いが、僕ら男性の二人連れがいても違和感のない落ち着いた装飾で、客層も少し年齢層が高めのせいか、きゃらきゃらと賑やかな若い子は少なく、低いトーンでお喋りをしているグループや一人で来ている人ばかりでうるさくない。
「これ、すごいね、アフタヌーンティーセット」
 東峰さんがまだメニューを見ている。
「一般的には、サンドイッチと、スコーンと、ケーキがセットです。そこにサラダなんかもついてたりします」
「もう食事だね」
「そういうことでしょうね。イギリスの夕食は、21時以降になるので、ランチとディナーの間にお腹が空かないように食べていたんでしょうし」
「ああ、そうか。貴族は夜は観劇なんかで──」
「みたいですね。夕飯が遅いんです」
「へえ。おいしそうだね。きゅうりのサンドイッチって、シンプルでいいね」
「前に英国についてのエッセイで読みましたけど、中のきゅうりは薄く切って軽く塩をして、刻んだミントでさわやかさを出すみたいですよ」
「そうなんだ。──塩をしたきゅうりなんて、浅漬けみたいだ」
 前に、東峰さんが浅漬けの素を使って茄子漬を作ってきたことがあった。それを思い出して、思わず吹き出してしまった。
「え、俺、変なこと言ったかな?」
「いえ、東峰さんが浅漬けを作っているところを想像していました」
「はは。実は得意だよ」
「浅漬けの素をかけて、軽くもむだけでしょう?」
「そう。切ってビニール袋に入れて──」
 失礼します、と東峰さんの左側から声をがかかり、トレイを持った店員がテーブルに紅茶を置いた。一人分のティーポットと、ソーサー付きのカップ。僕の前には、二つのスコーンとクロテッドクリーム、ジャムも置かれた。テーブルの中央にはミルクと砂糖。カップはきちんと温められている。
 僕はポットを持ち上げて、カップに注いだ。東峰さんも同じようにそっと注ぐ。
「──うん、確かに、少しスモーキーな香りだね」
「ここはポットに茶葉が入っているので、時間が経つごとに味が変わります。──時々、茶葉が入ってなくて、淹れた紅茶だけがポットに入ってるお店もあるんですよ」
「知らなかった」
「キーマンは、時間が経ってもそんなに渋くなりすぎないと思います」
 東峰さんがカップに口をつける。一口飲んで、少し驚いたような顔をした。
「本当だ。全然渋さが気にならない」
「ニルギリは、もっとあっさりとして癖もありません」
「俺、この香りは結構好きだな」
 キーマンは東峰さんのお気に召したらしい。
 rizeが休みの今日、僕らは二人で仙台市の中心部までやってきた。
 先日、東峰さんに、紅茶には砂糖を入れないと飲めない、と告白された。あんなにおいしいコーヒーを入れる東峰さんが、紅茶を入れるのだけはなかなか上手にならないのは、そのせいかもしれない、と思った。おいしい紅茶の味を知らなければ、おいしい紅茶を入れることだって、難しい。
 だから、勉強を兼ねて僕のおすすめの紅茶専門店にやってきた。
 一杯目の紅茶を飲んでから、僕は再びカップに紅茶を注いだ。そこにミルクをたっぷり。アッサムは、ミルクティがよく合う。しっかりとした渋みと紅茶の味が、まろやかにミルクと混じり合い、お互いに主張しつつも溶け合っている。
 大きめのスコーンを、真ん中から二つに割る。ジャムはいちごだった。断面にジャムを乗せ、さらにクロテッドクリームを乗せて、さくりとかじる。しゅわりとクリームが口の中で溶け、ジャムの甘味が広がり、スコーンと融合。おいしい。
 カップを持ち上げて紅茶を一口。口の中に残っていたスコーンがさらわれ、紅茶の香りが残る。
「……おいしそうだね、月島」
 何だか楽しそうに、東峰さんが僕を見ている。僕は、どうやら、とても幸せそうな顔でスコーンを食べていたらしい。そう言われて、少し恥ずかしくなった。
「東峰さんも、ひとつどうぞ」
「半分でいいよ。──ええと、どっちも乗せるの?」
「はい。ジャムが先の方がいいです」
 同じようにジャムとクロテッドクリームを乗せ、東峰さんがそれをかじる。
「──うん、おいしい」
「欲を言えば、クロテッドクリームはもっと沢山欲しいんですけどね。クリームティー、って言うくらいですから、クリームまみれなのが本当なんです」
「クリームティーのクリームって、これのことなの?」
 てっきりミルクティーのことだと思ってた、と東峰さんは感心したようにスコーンを食べている。
「これ、うちのお店でも出したいですね。スコーンが無理でも、何か簡単な焼き菓子とか。……前に、鎌先さんがドーナツを作ったことがありましたけど、コーヒーや紅茶には、ケーキだけじゃなく、もっとシンプルなお菓子もいいんですよね」
「月島、焼けるの?」
「……無理ですね」
 僕はがくんと肩を落とす。残念なことに、僕には料理の才能がない。スコーンは単純なレシピだが、逆に簡単なものほど技術を要する。
「東峰さん、キーマンはミルクもおいしいですよ」
 東峰さんがポットから紅茶を注いでいるのに気付いて、僕は言った。時間が経って少し濃くなった紅茶は、ミルクに合う。東峰さんはうなずいて、カップにミルクを加えた。一口飲んで、うんうんとうなずく。
「おいしい」
「紅茶のおいしさ、分かってもらえました?」
「そうだね。少なくとも、渋くて飲めない、ってことはないかな」
「ダージリンやアッサムは、その渋みがおいしいんですよ」
「それはまだ理解できなそうだよ、月島」
「お子様ですね」
 からかうように言ってやると、東峰さんは眉を下げてひどいなあ、とつぶやく。
 残りのスコーンを食べて、僕は一息ついた。残った紅茶を飲みながらソファに身体を預けている僕の正面で、東峰さんがメニューを眺めながら何かメモを取っている。
 真面目な人なんだな、と思う。
 今時、情報は簡単にネットで仕入れることができる。それを適当に読んで、知ったかぶりすることだってできるのに、この人はそれをしない。苦手だという紅茶をおいしく入れるために勉強を、と無理を言った僕にきちんと付き合って、こうして真剣に向き合ってくれる。
 ──知っていた。本当は。
 昔から、ずっと。
 だからこそ、迷い、自分を責め、立ち止まってしまった。けれど諦めきれなくて、また、コートに戻ってきた。エースとして。
 ──エース。
 西谷さんが、彼のことを、何度も何度も繰り返しそう呼んでいた。
 高校時代、二人は、僕らには理解できないくらいの絆で結ばれていた。西谷さんは東峰さんを信じ、ひたすらボールを拾った。そして──
 コートの中、その存在感を見せつけて、力強いスパイクを打つ。
 その背中を、誰よりも頼もしく、そして当然だと言わんばかりの目で見ていたのは、西谷さんだった。
 ──俺はね、ずっと、西谷に憧れてた。
 そんな風に言われたのは、去年の秋だった。突然訪ねてきた西谷さんが店を去ったあと、まるで懺悔するように。
 ──俺は、西谷が欲しかった。
 自分にない物ばかり持っていたから、と東峰さんは言う。自分が欲しいと思うものばかりを持っていたから、と。自分より男らしく、小さい身体に不釣り合いなほど大きな心を持っている、と。
 ──俺は、ね。
 東峰さんがグラスを洗いながら、言った。
 ──西谷が好きだったよ。
 懺悔のように聞こえていたその言葉は、東峰さんと目が合ったときに、間違いだと気付いた。穏やかに笑うその顔を見て、この人はそれを悔いていないのだと分かった。
 そして、もう未練などどこにもないのだということも。
 エース。
 その背中を見つめていた西谷さんの姿は、今も、僕の記憶に残る。
 絶対の信頼と、羨望。
 あんな目を向けられていたのに、東峰さんは「自分にはない物ばかり持っていた」などと言うのか。
 試合中、いつも、僕の隣で相手のコートを見つめていた東峰さん。僕にとっては、時に励まし、力づけ、安心させてくれた、優しい人だった。
 ──ねえ、月島。
 黒尾さんと会ったあと、泣き出す僕を抱きしめて慰めてくれたのは、東峰さんだった。
 ──俺を頼って。──俺を選んで。
 伸ばした手。指先が、僕の頬に触れる。それを、僕は振り払わなった。
 この手が、好きだ。
 優しく触れる、その指が。
 ──ただ、好きなんだ。
 抱きしめられたとき、小さく震えた。怖かったからじゃない。心のどこかで、安心し、頼ってしまう自分がいたことに驚いたからだ。
 抵抗することなどできない。
 分かっていた。
 この人は、優しい。
 西谷さんを好きだった、と、言った。
 けれど、今は──
「月島」
 テーブルの向こう側、東峰さんが顔を上げた。
「はい」
「この、OPって何かな」
「それは──オレンジ・ペコーですね。茶葉の等級とか、大きさです。オレンジ・ペコーはフル・リーフです。他にも、ブロークン、ファニングス、ダスト──茶葉の大きさで抽出時間が変わります。それに、茶葉大きいと渋みも少なめになります」
「じゃあ、月島の飲んでるダージリンも、茶葉が大きければ、俺も飲めるのかな」
「うちで使ってるダージリンは、オレンジ・ペコーですよ」
「あ、そうなんだ」
 がっかりと肩を落とす東峰さんが、ぱたんとメニューを閉じた。
「でもまあ、渋くない紅茶もあるっていうのが収穫かな。──キーマン、だっけ? この香りは結構好きだし」
「東峰さんは香りに敏感ですよね。青根さんの作るケーキに入っているお酒の香りもよく当ててますし」
「そういえば、そうだね。コーヒーも香りの違いで味が変わるし」
「じゃあ、好きそうな香りの紅茶から試していきましょう。いつか好みの茶葉に出会えるかもしれません」
「うん、そうだね」
 店を出て、東峰さんが一番初めにしたことは、新しいティーポットを買うことだった。
 家でも練習してみるよ、と言って、シンプルな真っ白いティーポットをひとつ。
 終点まで乗っていく僕より先に、2つ前の駅で、東峰さんが先に地下鉄を降りた。ホームで、発車するのを待って、僕に手を振る。
 大きな手。硬い指先と、節くれだった関節と。
 僕の頬に触れた、その指先。
 僕は小さく手を振り返した。
 ──俺を選んで。
 比べる相手など、もういない。
 僕は、多分──
 頬を滑るその指先。
 それすら、優しい。
 胸が少し、痛かった

 了 2018/03


 揺れ動く気持ちを受け入れる。
 多分それだけ。
 けれど、そこに至るまでが、大変なんだろうなと思います。
 傍から見れば、もう答えは出ているのにね。




この記事へのコメント
名前
タイトル
メール
URL

password
管理者にだけ表示を許可