自殺③
自殺報道考 「ガイドライン作り必要」「メディア自身で議論を」
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110816/bdy11081607490000-n1.htm
『年間自殺者数が13年連続で3万人を超えている日本。この異常事態を改善させるための取り組みが政府や関係機関によって行われる中で、メディアの「自殺報道」自体が自殺者を増加させているという指摘がある。有名人の自殺報道、硫化水素自殺のような「手段」の報道…。自殺報道はどうあるべきかを考える。』
『7月4日、内閣府の自殺対策検討部会で、清水康之・内閣府参与(39)=NPO自殺対策支援センター・ライフリンク代表=は、今年5月の自殺者急増と、同月12日に自殺したタレント、上原美優(みゆ)さん=当時(24)=をめぐる報道が関連している可能性を指摘した。
内閣府は、今年に入って減少傾向にあった自殺者数が、5月に前年比17・4%増の3191人と跳ね上がったため調査を実施。その結果、同月13日以降に自殺者が急増し、1月以降1日平均82人だった自殺者数が、13日からの1週間では1・5倍の平均124人に達していた。
「増加分が13日からの10日間に集中しており、20、30代の若い女性が多い。報道によって自殺が誘発された可能性がある」と清水氏は指摘し、政府に対し、報道各社に自殺報道のガイドラインの作成を呼びかけるよう求めた。』
『ただ、報道と自殺との因果関係の立証は難しい。上原さんの自殺を報じた一般紙やスポーツ各紙などの報道を見ると、自殺の手段については書かれているものの、記事の扱いや量からは「過熱報道」とまでの印象は受けない。それでも清水氏は「自殺予防に携わるものとして、自殺者数を押し上げている可能性のあるものに対しては対応を求めていきたい」と話す。
『群発自殺』などの著書がある高橋祥友・防衛医科大教授(行動科学研究部門)は「メディアの自殺報道は以前より抑制気味で、5月の自殺者数増加と報道とを結びつけるのはやや疑問」としつつ、「一社一社の報道は抑制されていても、さざ波が集まって情報の洪水となってしまうこともある」と語り、平成20年に起きた硫化水素自殺の流行を例に挙げる。
海外では、メディアによる自殺の誘発は「ウェルテル効果」と呼ばれている。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』(1774年)を読み、主人公と同じ方法で自殺する若者が相次いだからだ。WHO(世界保健機関)は2000年、「センセーショナルに扱わない」「過剰に、繰り返し報道しない」「手段を詳しく伝えない」などの項目を挙げた通称「自殺報道のガイドライン」を発表した。
清水氏は「精神的に不安定で自殺を考えている人は、自殺報道を食い入るように見る。具体的な自殺方法をあまりに詳細に報じると、自殺の仕方を“指南”することになる」とし、「大事なのは『自殺予防』の観点。各社でWHOのようなガイドラインを作成し、毎回の報道内容を意識的に判断するよう求めたい」と主張している。』
『一方、ガイドライン作成には慎重論も根強い。
ある週刊誌のライターは「細かい事実を積み上げて検証するのが雑誌ジャーナリズムであり、ガイドラインは取材の足かせになる。自殺者の事情を詳しく報道することで、自殺志願者に『自分とは違う』と認識させ、安易な同一化を防ぐ効果もあるはず」と話す。
また、上智大の田島泰彦教授(情報メディア法)は2つの問題を指摘する。
「まず、ガイドライン作成は問題提起として意義があるが、政府が報道機関に作成を要請する図式は危険だ。もう一つは、ガイドラインがあるとメディアが“事なかれ主義”に流れ、思考停止状態を招きかねない。発生時だけでなく、長期にわたって自殺者や遺族の問題を取り上げ、自殺報道のあり方についてメディア自身が議論していく姿勢も大事なのではないか」』
「自殺を予防する自殺事例報道のあり方について」のWHO勧告
http://www.lifelink.or.jp/hp/Library/jisatsuhoudou_who.pdf
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110816/bdy11081607490000-n1.htm
『年間自殺者数が13年連続で3万人を超えている日本。この異常事態を改善させるための取り組みが政府や関係機関によって行われる中で、メディアの「自殺報道」自体が自殺者を増加させているという指摘がある。有名人の自殺報道、硫化水素自殺のような「手段」の報道…。自殺報道はどうあるべきかを考える。』
『7月4日、内閣府の自殺対策検討部会で、清水康之・内閣府参与(39)=NPO自殺対策支援センター・ライフリンク代表=は、今年5月の自殺者急増と、同月12日に自殺したタレント、上原美優(みゆ)さん=当時(24)=をめぐる報道が関連している可能性を指摘した。
内閣府は、今年に入って減少傾向にあった自殺者数が、5月に前年比17・4%増の3191人と跳ね上がったため調査を実施。その結果、同月13日以降に自殺者が急増し、1月以降1日平均82人だった自殺者数が、13日からの1週間では1・5倍の平均124人に達していた。
「増加分が13日からの10日間に集中しており、20、30代の若い女性が多い。報道によって自殺が誘発された可能性がある」と清水氏は指摘し、政府に対し、報道各社に自殺報道のガイドラインの作成を呼びかけるよう求めた。』
『ただ、報道と自殺との因果関係の立証は難しい。上原さんの自殺を報じた一般紙やスポーツ各紙などの報道を見ると、自殺の手段については書かれているものの、記事の扱いや量からは「過熱報道」とまでの印象は受けない。それでも清水氏は「自殺予防に携わるものとして、自殺者数を押し上げている可能性のあるものに対しては対応を求めていきたい」と話す。
『群発自殺』などの著書がある高橋祥友・防衛医科大教授(行動科学研究部門)は「メディアの自殺報道は以前より抑制気味で、5月の自殺者数増加と報道とを結びつけるのはやや疑問」としつつ、「一社一社の報道は抑制されていても、さざ波が集まって情報の洪水となってしまうこともある」と語り、平成20年に起きた硫化水素自殺の流行を例に挙げる。
海外では、メディアによる自殺の誘発は「ウェルテル効果」と呼ばれている。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』(1774年)を読み、主人公と同じ方法で自殺する若者が相次いだからだ。WHO(世界保健機関)は2000年、「センセーショナルに扱わない」「過剰に、繰り返し報道しない」「手段を詳しく伝えない」などの項目を挙げた通称「自殺報道のガイドライン」を発表した。
清水氏は「精神的に不安定で自殺を考えている人は、自殺報道を食い入るように見る。具体的な自殺方法をあまりに詳細に報じると、自殺の仕方を“指南”することになる」とし、「大事なのは『自殺予防』の観点。各社でWHOのようなガイドラインを作成し、毎回の報道内容を意識的に判断するよう求めたい」と主張している。』
『一方、ガイドライン作成には慎重論も根強い。
ある週刊誌のライターは「細かい事実を積み上げて検証するのが雑誌ジャーナリズムであり、ガイドラインは取材の足かせになる。自殺者の事情を詳しく報道することで、自殺志願者に『自分とは違う』と認識させ、安易な同一化を防ぐ効果もあるはず」と話す。
また、上智大の田島泰彦教授(情報メディア法)は2つの問題を指摘する。
「まず、ガイドライン作成は問題提起として意義があるが、政府が報道機関に作成を要請する図式は危険だ。もう一つは、ガイドラインがあるとメディアが“事なかれ主義”に流れ、思考停止状態を招きかねない。発生時だけでなく、長期にわたって自殺者や遺族の問題を取り上げ、自殺報道のあり方についてメディア自身が議論していく姿勢も大事なのではないか」』
「自殺を予防する自殺事例報道のあり方について」のWHO勧告
http://www.lifelink.or.jp/hp/Library/jisatsuhoudou_who.pdf