ピーク後の金融システム持続性を考える(5)
2024-12-03
ピーク後の金融システム持続性を考える(1)
ピーク後の金融システム持続性を考える(2)
ピーク後の金融システム持続性を考える(3)
ピーク後の金融システム持続性を考える(4)
米銀の含み損が5,150億ドル(77.2兆円)となったようです。
そして米国の中央銀行であるFRBが、事実上1,560億ドルの債務超過。FRBの資本が439億ドルなので、1,999億ドル(30兆円)の含み損を抱えていることになります。
FRBと米銀は資本関係のある親子会社のようなものだから、合計すると107兆円の含み損となります。何故これほど巨額の含み損を抱えることになったのかというと、言うまでもなくインフレを鎮めるために始めた利上げと金融引締めが原因です。
※米国の10年債利回り-FF金利の推移
長短金利差が拡がっている期間は景気が良く、資金需要が十分あって貸付が増えているときです。そして長短金利差こそが通貨発行益であり、銀行家の所得となります。この長短金利差の逆転がいつもの景気サイクルの一つであれば問題はないのですが、世界経済が長期的な縮小の始まりにいるとすれば話は別です。
金利は経済成長率と密接な関係にありますから、成長過程では通常、短期金利<長期金利ですけど、縮小過程ではそれが逆転して、短期金利>長期金利がデフォルトになると考えられます。例えるなら預金金利が5%なのに貸付金利が3%という逆ザヤの状態。これでは通貨発行益ではなく通貨発行”損”です。こうなると銀行は融資の出し渋りは勿論、貸し剥がしさえ考えるようになってきます。
現在の銀行とFRBの含み損は会計ルールによって満期保有目的だから時価評価しませんとか、評価損に相当する金額は別の科目に振り替えて資本に影響を与えないようにして良いとかなっているのですが、損は損であってそういう問題ではありません。含み損や債務超過が、直ちにFRBの運営に影響を与えないというのは確かにそうです。ただFRBは民間の株式会社なのですから、資金が尽きても運営出来るというのは違うと思っています。
金融システムを守ろうとするなら、金利を引き下げ量的緩和を再開しなければならないでしょう。それでも尚、FRBの債務超過が解消しないなら国が資金支援する必要も出てくるでしょう(ただし国もお金がないのでFRBが引き受けてその対価にマネーを創造し…というインチキのような話になると思います)。とどのつまり経済の成長がない限り、先程示した米銀とFRBの107兆の含み損(しかもこれから増えていく)を国民負担へ転嫁していくということです。
3年後:548%
6年後:737%
9年後:1,105%
20年後:3,635%
29年後:9,093%
40年後:32,501%
80年後:1,185,525%
GDP比債務がこれだけ拡がって、世の中にお金だけが増えていったら、しわ寄せは全て暴力的なインフレという形で噴出することになるはずです。「以前と較べて値段が高くなったね」ではなく、「一生懸命働いても必要なモノが買えなくなった」に変わっていきます。それで民衆が黙っていられると思う方がどうかしています。民衆の怒りの矛先は国や中央銀行へ向かうでしょう。その一方でFRBや銀行を救済しなければ金融恐慌です。資源ピークからくる衰退局面では長期的にはモノ不足になっていくのに違いありませんが、金融恐慌となればモノの不足以上に急速にマネーが消滅していくため、短期的にはモノ不足下のハイパーデフレといった一見矛盾したことが起こり得るのです(※なので借金をして不動産を買う、株を買うといった100%インフレにベットしたトレードは危険だと私は見ています)。
いずれにしても、今の仕組みがこの先もずっと続くと私にはどうしても思えないのです。持続可能性を少しも感じません。何かドラスティックな、仕組みを丸ごと入れ替えてしまうような出来事が、そう遠くない将来起こるのではないか?という気がしてなりません。その中心に来るのが、いま世界中の中央銀行で急ピッチに開発が進められている中央銀行デジタル通貨(CBDC)ではないでしょうか。
ピーク後の金融システム持続性を考える(2)
ピーク後の金融システム持続性を考える(3)
ピーク後の金融システム持続性を考える(4)
米銀の含み損が5,150億ドル(77.2兆円)となったようです。
BREAKING 🚨: U.S. Banks
— Barchart (@Barchart) November 25, 2024
U.S. Banks are now facing $515 billion in unrealized losses - Probably Fine pic.twitter.com/wzWG3SL7KE
そして米国の中央銀行であるFRBが、事実上1,560億ドルの債務超過。FRBの資本が439億ドルなので、1,999億ドル(30兆円)の含み損を抱えていることになります。
FRBと米銀は資本関係のある親子会社のようなものだから、合計すると107兆円の含み損となります。何故これほど巨額の含み損を抱えることになったのかというと、言うまでもなくインフレを鎮めるために始めた利上げと金融引締めが原因です。
※米国の10年債利回り-FF金利の推移
長短金利差が拡がっている期間は景気が良く、資金需要が十分あって貸付が増えているときです。そして長短金利差こそが通貨発行益であり、銀行家の所得となります。この長短金利差の逆転がいつもの景気サイクルの一つであれば問題はないのですが、世界経済が長期的な縮小の始まりにいるとすれば話は別です。
金利は経済成長率と密接な関係にありますから、成長過程では通常、短期金利<長期金利ですけど、縮小過程ではそれが逆転して、短期金利>長期金利がデフォルトになると考えられます。例えるなら預金金利が5%なのに貸付金利が3%という逆ザヤの状態。これでは通貨発行益ではなく通貨発行”損”です。こうなると銀行は融資の出し渋りは勿論、貸し剥がしさえ考えるようになってきます。
現在の銀行とFRBの含み損は会計ルールによって満期保有目的だから時価評価しませんとか、評価損に相当する金額は別の科目に振り替えて資本に影響を与えないようにして良いとかなっているのですが、損は損であってそういう問題ではありません。含み損や債務超過が、直ちにFRBの運営に影響を与えないというのは確かにそうです。ただFRBは民間の株式会社なのですから、資金が尽きても運営出来るというのは違うと思っています。
金融システムを守ろうとするなら、金利を引き下げ量的緩和を再開しなければならないでしょう。それでも尚、FRBの債務超過が解消しないなら国が資金支援する必要も出てくるでしょう(ただし国もお金がないのでFRBが引き受けてその対価にマネーを創造し…というインチキのような話になると思います)。とどのつまり経済の成長がない限り、先程示した米銀とFRBの107兆の含み損(しかもこれから増えていく)を国民負担へ転嫁していくということです。
3年後:548%
6年後:737%
9年後:1,105%
20年後:3,635%
29年後:9,093%
40年後:32,501%
80年後:1,185,525%
GDP比債務がこれだけ拡がって、世の中にお金だけが増えていったら、しわ寄せは全て暴力的なインフレという形で噴出することになるはずです。「以前と較べて値段が高くなったね」ではなく、「一生懸命働いても必要なモノが買えなくなった」に変わっていきます。それで民衆が黙っていられると思う方がどうかしています。民衆の怒りの矛先は国や中央銀行へ向かうでしょう。その一方でFRBや銀行を救済しなければ金融恐慌です。資源ピークからくる衰退局面では長期的にはモノ不足になっていくのに違いありませんが、金融恐慌となればモノの不足以上に急速にマネーが消滅していくため、短期的にはモノ不足下のハイパーデフレといった一見矛盾したことが起こり得るのです(※なので借金をして不動産を買う、株を買うといった100%インフレにベットしたトレードは危険だと私は見ています)。
いずれにしても、今の仕組みがこの先もずっと続くと私にはどうしても思えないのです。持続可能性を少しも感じません。何かドラスティックな、仕組みを丸ごと入れ替えてしまうような出来事が、そう遠くない将来起こるのではないか?という気がしてなりません。その中心に来るのが、いま世界中の中央銀行で急ピッチに開発が進められている中央銀行デジタル通貨(CBDC)ではないでしょうか。
コメント
モノ不足下のハイパーデフレ
Re: モノ不足下のハイパーデフレ
>>伊達邦彦 さん
コメントありがとうございます。私は起こる可能性が高いのでは?と考えている「モノ不足下のハイパーデフレ」について記事をまとめるのも面白いですね。記事が冗長になりがちなので、コンパクトにまとめられたらいいなと思います。
コメントありがとうございます。私は起こる可能性が高いのでは?と考えている「モノ不足下のハイパーデフレ」について記事をまとめるのも面白いですね。記事が冗長になりがちなので、コンパクトにまとめられたらいいなと思います。
未来のお金
確かに中央銀行デジタル通貨(CBDC)は未来のお金なる可能性があると感じます。また、仕組の丸ごと入れ替えの際に利用される様にも思います。
明治期まで通貨を遡り、その延長にある未来のお金について思考実験しました。
①金貨:GOLDそのものに価値がある。
②兌換旧国立銀行券:第〇〇銀行(私立銀行)が発行するGOLDと交換してくれる兌換紙幣。
③兌換日本銀行券:中央銀行が発行する兌換紙幣。
④不換日本銀行券:中央銀行が発行する不換紙幣。
⑤CBDC:中央銀行が発行するデジタル通貨。
⑥全世界CBDC:中央銀行の元締が発行する全世界デジタル通貨。
価値の源泉:GOLD→国債の預かり証
通貨の素材:GOLD→紙→無(電子)
通貨発行体:民間銀行→中央銀行→国際的な決済銀行?
未来のお金の価値の源泉を負債とするか、GOLDや石油、食料等との交換を一定程度担保させるのか現時点では予測できません。
未来のお金は物質ではなくなり重さがないかもしれません。
仕組の丸ごと入れ替えの際、多くの人々は金融資産に関して大きな損をさせられると感じます。
明治期まで通貨を遡り、その延長にある未来のお金について思考実験しました。
①金貨:GOLDそのものに価値がある。
②兌換旧国立銀行券:第〇〇銀行(私立銀行)が発行するGOLDと交換してくれる兌換紙幣。
③兌換日本銀行券:中央銀行が発行する兌換紙幣。
④不換日本銀行券:中央銀行が発行する不換紙幣。
⑤CBDC:中央銀行が発行するデジタル通貨。
⑥全世界CBDC:中央銀行の元締が発行する全世界デジタル通貨。
価値の源泉:GOLD→国債の預かり証
通貨の素材:GOLD→紙→無(電子)
通貨発行体:民間銀行→中央銀行→国際的な決済銀行?
未来のお金の価値の源泉を負債とするか、GOLDや石油、食料等との交換を一定程度担保させるのか現時点では予測できません。
未来のお金は物質ではなくなり重さがないかもしれません。
仕組の丸ごと入れ替えの際、多くの人々は金融資産に関して大きな損をさせられると感じます。
Re: 未来のお金
>>中年会社員 さん
金融資産に関して大きな損をさせられるのは間違いないと私も思っています。先進国は2019年時点でもGDPの6倍超ですから、そもそも裏付けがないんですよね。皆が価値があるという共同幻想に陥ってるに過ぎません。
CBDCがどうなるか、断片的な情報しか出てないので推測の域を出ないのですが、どうやら今までの仕組みの延長ではなさそうです。システムの総入れ替え、それだけの大仕事を成し遂げるには何らかの理由(戦争や恐慌)をこじつけてくるのでは?という気がしています。
金融資産に関して大きな損をさせられるのは間違いないと私も思っています。先進国は2019年時点でもGDPの6倍超ですから、そもそも裏付けがないんですよね。皆が価値があるという共同幻想に陥ってるに過ぎません。
CBDCがどうなるか、断片的な情報しか出てないので推測の域を出ないのですが、どうやら今までの仕組みの延長ではなさそうです。システムの総入れ替え、それだけの大仕事を成し遂げるには何らかの理由(戦争や恐慌)をこじつけてくるのでは?という気がしています。
趣味で世界恐慌を研究していますが、モノ不足下のハイパーデフレに興味がありますが資料があまり収集できていません。一度テーマにしていただけると幸いです。
私も2014年より株からゴールドにシフトしてしています。