![]() パンデミックのおかげで、この半年間、風邪をひいていません。正確には、まともに風邪をひくこともできない、と言ったところでしょうか。
ナーシングホームやクリニックなどではすっかり定着した、入出時チェック。体温を測り、COVID感染の可能性の有無を確認する質問事項に答え、携帯電話番号などの連絡先を渡します。そして、この質問事項には、「2週間以内に海外に渡航したか? (したくてもできない)」「2週間以内にクルーズシップに乗船したか? (したくてもあり得ない)」「2週間以内にCOVID19感染者にPPE(防護具)なしで接触したか? (したのかもしれないけど分からない)」など以外に、咳、のどの痛み、呼吸苦、倦怠感、頭痛、鼻水など、ごく普通の風邪でも起こりうる症状が含まれています。ですから、ちょっとのどが痛いな、だるいな、というだけでも、「もしや...」という疑念が頭をよぎり、「いやいや、違うでしょ」という思いと「えー、でももしそうだったらマズいぞ...」という焦りが交錯し、とにかくCOVIDではないことを祈りつつ、自分自身に証明するためにも、24時間以内に症状をたたいてしまわねば、という闘志が湧いてくるわけです。もちろん、具合が悪ければ仕事には行きませんが、それでも、「ただの風邪でした」と言えるように、早期撲滅作戦を始動しなければなりません。 多分、どんな人でも自分なりの、風邪をひいたときの対処法を持っていると思いますが、私の場合は、「睡眠」、これに限ります。もともと6時間睡眠がベストで、しかも、いつでもどこでも眠れるという特技を持つ私は、病棟勤務で3交代をしていた頃も、「眠れない」という悩みを持ったことはありませんでした。満員電車だろうが、飛行機のエンジン脇のエコノミー席だろうが、山のテントだろうが、お茶を飲もうがコーヒー飲もうが、おかまいなし。しかも、寝すぎるとかえって体がだるく、調子が狂ってしまうほど。ですから、私が8時間以上眠っているときは、よっぽど深酒したか、どこか具合が悪いという意味なのです。(そして最近は、深酒する機会も、めっきりなくなってしまいました。) とにかく、かかったかな、と思ったら、○○タック600、ではなく、まず寝る。ひたすら寝る。そして、ぬるめの塩水でうがいをしてから、ドクダミ茶もしくはハトムギ茶をガンガン飲む。情けないことに、6時間以上寝ていると腰が痛くなってくるのですが、そんな時は患者さんたちの辛さを思い、トイレ休憩がてらベッドからはい出し、ついでにお茶を飲んでから、再び布団に潜り込むのです。すると、たいていの場合、睡眠療法によって活性化された自然免疫が、まるで一の谷を駆け降りる義経のごとく、風邪ウイルスを蹴散らしてくれるのです。 日本では特に、コロナそのものよりも、風評被害の方が怖い、と聞きます。アメリカではマスク論争はありますが、COVID19に感染した人を差別したり、感染者が出た施設を批判したりということは、ほとんどありません。それでも、医療者は特に、「自分が感染源になってはならぬ」という強い意識と、自分が感染していた場合の影響、つまり、接触した患者さんや家族、同僚、もちろん、自分自身の家族も含め、どこまでさかのぼり、どこまでを範疇とするのか、といったことを考えなければならない、という事実の方が、感染そのものよりも、苦痛になっているような気がします。少なくとも、私が「もしCOVIDだったら、マズいな...」と思うのは、圧倒的にそちらの理由であって、特に真っ先に頭をよぎるのは、小児ホスピスのケースです。もちろん、感染対策は万全を期してはいますが、それでも、「万が一」は起こりうるのです。もしかしたら、自分が重症化して死ぬかもしれない、という恐怖ではなく、現実に、死に面している人たちに対して、自分がその引き金になってしまうかもしれない、という不安のほうが、ずっと強く、それはきっと、患者さんの家族や、高齢者と同居している人たちにも共通したものなのだと思います。 そうした、ハイリスクの人たちと接している限り、コロナに限らず、普段から、常に感染症に関しては細心の注意をはらっています。それでもやはり、世界中で人々の生活をひっくり返し、社会をひっくり返し、人間関係をひっくり返し、多くの人が人生そのものをひっくり返されてしまった今回の新型コロナ禍が及ぼした心理的ストレスは、平時の感染症対策とは比べものになりません。つい最近、COVIDに感染した同僚は、咳、発熱、倦怠感などの症状があるものの、軽症で、彼女の感染が発覚して2日後に検査をしたご主人は、陽性ながら無症状でした。二人の子どもたちは陰性でしたが、なにより家族にとって辛いのは、隔離生活だと言っていました。そして、それ以上に、ナースとして、「これだけしっかり感染対策していたのに...」「いったいいつどこで...」という思いをぬぐうことができず、仕方ないことだと頭でわかってはいても、やはり心のどこかに罪悪感に近い忸怩たる思いが、彼女を苦しめているようでした。 コロナ以前だったら、風邪やインフルエンザに罹っても、社会的な罪悪感を感じる必要はありませんでした。人間、生きている限り、風邪をひくのは当たり前だし、時々風邪をひくことで風邪を引き起こすウィルスへの免疫をつけていっています。そして、風邪の原因になるウィルスのほとんどが、今回の新型コロナウィルスの親戚というか、仲間というか、同じ種類であるコロナウィルスなのだそうです。人生の半分以上をナースとして生きているのに、そんなことも知らなかったのですが(というか、多分、むかーし昔に勉強したきり、忘れていたというか、むしろ覚えていなかったのでしょう)、人々がCOVIDを恐れるのも、メディアから流される玉石混交の情報が、その不安をあおっていることは否めないと思います。そして、その社会不安が、風評被害のような2次災害を引き起こしているのです。 そうした、不必要な社会不安を少しでも減らして、一日も早く元の生活に戻れるよう、正しく恐れながら自分や家族を守り、ドアを開けてどんどん外に出ていこう、という活動が、日本でもすでに始まっています。そんな、コロナと共存、いわゆるウィズコロナのための教育、啓蒙活動に、知り合いの医師で免疫学者の方が賛同し、協力されているのですが、その一環として、最近面白いものを作ったと教えてくれました。若者向けのコロナ対策ビデオコロナ対策ラップで、おばさんには、日本語でありながら字幕を見ないとわからなったのですが、とてもよくできているのでご紹介したいと思います。(「コロナ対策ラップ」をクリックしてみてください。) 最近、ヨーロッパをはじめとして、新たな感染の波がせりあがってきていますが、この半年間で学んだことを生かし、ロックダウンの生活に戻さず、何とか乗り切ることもできるのではないでしょうか。すでに第二次ロックダウンに戻ってしまった国や地域はありますが、そうせずに凌いでいる国もあるのです。生活習慣、文化、国民性、人種としての生理学的違い、そして政治的理由などなど、原因はいろいろあるのでしょうが、ロックダウンによって失ったものの影響を無視することはできません。 アメリカはこれからホリデーシーズンに入ります。本来なら、家族が集まり、食事をし、会話をし、ハグをして、つながりを確かめ合う大切な時間です。もちろん、どうやって過ごすかは、それぞれの家族ごと、また、家族の中でも様々な意見があることでしょう。COVID19、全国各地での暴動、大統領選挙と、対立と混迷を続けるアメリカは、心身ともに疲れています。第一次世界大戦中のクリスマス休戦のように、ウィルスも、一日くらい休んでくれないものでしょうか。 とりあえず、一日も早く、気兼ねなく風邪をひくことができる、平和な日々が戻ることを、心の底から祈る今日この頃なのです。 ![]() |
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