さいころ無宿 | 源氏川苦心の銀幕愉悦境
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さいころ無宿

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#1760「さいころ無宿」
若山富三郎が儲け役

製作年:1960年
製作国:日本
製作会社:東映(京都撮影所)
監督:内出好吉
出演:里見浩太郎若山富三郎/水木淳子/藤田佳子/花房錦一/山形勲
公開:1960年5月10日


 里見浩太郎特集、今回は1960年の「さいころ無宿」であります。原作は『伝七捕物帖』の陣出達朗、監督は内出好吉、脚本は大和久守正、音楽は小沢秀夫。主題歌「さいころ無宿」を歌ふのも里見浩太郎。美声を披露します。

 上州国定村、さいころの浅(里見浩太郎)と名乗る旅鴉が、国定忠治親分(山形勲)の子分になりたくて親分に直談判します。しかし忠治は、浅がヤクザに向かず堅気になるべきだと感じ、断るのです。諦められぬ浅は、忠治の身内・日光の円蔵(若山富三郎)を頼らうとします。しかし円蔵は旅に出てゐました。

 旅の目的は、仲間の勝五郎の死因を探る事。地元の有力親分・釈迦の十造(香川良介)によると、賭場でイカサマをした為嬲り殺しにされたと云ひますが、勝五郎はイカサマをするやうな奴ではない。妹のお雪(水木淳子)が残されました。

 浅は道中、ある浪人と出会ひますが、これが実は円蔵である事に気付かず、サイコロ勝負や居合抜きを挑んで悉く負けてしまふ。そのまま高崎へ入ると、兄を亡くしたお雪が、十造の子分共に絡まれてゐる現場に出喰はします。これを撃退しお雪を助ける浅。しかし十造は仕返しにお雪を拉致するのです。

 怒つた浅は十造一家に乗り込みますが、お雪はそこにゐませんでした。この落し前のため、浅は袋叩きにされ、用心棒に止めを刺されやうとしますが、この用心棒が何と円蔵。円蔵は秘かに浅を逃がし、お雪の居所を教へるのです。
 十造を裏切つた円蔵は、一家の女壷振り・銀のお滝(藤田佳子)の元へ。彼女は亡父の借金を返す為に、十造にイカサマをさせられてゐました。勝五郎は彼女のイカサマを見抜いた為に殺されたのが真相でした。お滝は本来ワルではないのです。

 サテ村祭の日、十造一家の花会が開催されてゐます。いつの間にか忠治一家のチンピラ・空っ風の半次(花房錦一)がやつて来て騒いでゐます。賭場では相変らずお銀がイカサマで捲き上げてゐます。すると盆ゴザの下から、浅と半次が出てきて、一転乱闘となるのでした......

 里見浩太郎がサイコロを操る渡世人を演じます。少し自信過剰で向う見ずのお兄いさん。お雪を探して十造一家に乗り込む辺り、思慮に欠ける面があり、欠点も多い人物として描かれるのが却つて人間らしいのです。若山富三郎には敵はず、上には上がある事を痛感します。この若山、里見を喰ふ程の存在感で儲け役。

 忠治親分は山形勲、この役ならワルになりやうがない。ラストは里見と若山のピンチに駆け付けます。半次の花房錦一はどんな役を演じても同じ演技です。ワルのカシラは香川良介、裏切つた若山に対してペナルティは課さないのでせうか。
 女優陣は水木淳子藤田佳子、この二人が意外に良いです。意外といつては失礼ですが。一件落着後、引き上げる忠治一家の後に、里見=水木、若山=藤田のカップルが続くのが微笑ましい。花房錦一だけがミソッカス。上映時間55分の小品ながら、活劇、推理、恋愛など娯楽の要素を詰め込んだ明朗娯楽作品と申せませう。

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