三匹の悪党 | 源氏川苦心の銀幕愉悦境
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三匹の悪党

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#1650「三匹の悪党」
片目の一本松、再登場

製作年:1968年
製作国:日本
製作会社:日活
監督:松尾昭典
出演:小林旭高橋英樹/田中邦衛/松尾嘉代/町田祥子/浪花千栄子
公開:1968年10月19日


 1968年公開の「三匹の悪党」であります。三匹ばやりには辟易しますが、まあそれはどうでもいい。監督は松尾昭典、脚本は星川清司、音楽は池田正義

 時代は大正らしい。冒頭では渡世人の半次郎(高橋英樹)と弟分の三郎(田中邦衛)が逃げ廻つてゐます。イカサマ博奕がバレて追はれてゐるやうです。何とか辿り着いた漁師町では、舟留屋文吉(河野弘)と云ふ土地のヤクザがブイブイ言はせてをり、高利貸しまで副業して貧民を苦しめ、借金のカタに娘たちを売り飛ばす阿漕なマネをしてゐました。

 半次郎は芸人の民子(松尾嘉代)を助けた事から、舟留屋から狙はれる羽目に。しかも民子の父は、かつて半次郎を襲ひ逆に殺された人物である事が判明、半次郎は民子からも仇と狙はれます。姿を隠す半次郎と三郎。
 二人は、折よく開催される舟留屋の三代目襲名披露花会会場に潜入、そこで動く大金を強奪します。そのドサクサに何と文吉が何者かに殺されてゐました。

 犯人と疑はれた二人は逃亡途中、半次郎は舟留屋と結託する鳥羽田組に捕まり、三郎は彼を見捨ててカネを持つて逃げました。半次郎が拷問で酷い目にあつてゐる間に、三郎は故郷の芦田村にゐる母・まさ(浪花千栄子)の元へ帰ります。狂喜するまさ。
 監禁されてゐた半次郎を助けのが、我らが片目の一本松(小林旭)。その上で一本松は鳥羽田組の姐御・菊(町田祥子)に、逃げた二人をバラしてやる、報酬は持ち逃げされたカネ全額だと持ち掛けます。
 傷だらけの半次郎は三郎の家まで辿り着き、自分を売つた三郎を殺さうとします。其処へ現れたのが、一本松と民子。更に菊も近くの温泉宿に来てゐて、舟留屋と鳥羽田組も迫つてゐました......

 同じ松尾昭典監督による「遊侠三国志 鉄火の花道」の片目の一本松が、再び登場しました。女好きでカネに目が無い、飄々としながらも腕は滅法強いと云ふ設定。松尾監督はこのキャラが気に入つたやうで、後の「代紋 地獄の盃」(主演は高橋英樹)でもゲスト出演させてゐます。往年よりも少しふつくらしたアキラが、年齢相応にふてぶてしく好演しました。

 三匹の残る二人は高橋英樹と田中邦衛。前半はこの二人が主演かと見紛う程出番が多い。三人が組んで何かでつかい事をしでかす話ではないので、それを期待すると裏切られます。ただ、クライマックスでは三人でワル共を斬りまくるシーンで見せてゐます。

 純情枠ヒロインは松尾嘉代さん。もうこの人の顔も見ないですね。正当防衛ながら仇の高橋を恨みに思つてゐますが、いつの間にか終盤では惹かれ合ふ仲になつてゐるのが良く分かりません。何かきつかけとなる象徴的な出来事でもあればいいんですけどね。
 一方悪女ヒロインが町田祥子と云ふのが珍しい。姐御だから鉄火肌なのは当然ですが、その野心も半端なく、すべてを裏で牛耳つてゐました。でもアキラに看破されたらもうお終ひです。

 無国籍アクションで鳴らした松尾監督だけあつて、娯楽作の見せ方を熟知した演出は買ひますが、残念なのはワル側が駒不足であります。近藤宏木浦佑三河野弘黒田剛柳瀬志郎らは飽くまでもボスの手下として情けなく動くのが似合つてゐます。そしてラストで対決するのが深江章喜。この人も第二、第三の男として光る人。

 もうこの時代になると、日活特有のワル(金子信雄、安部徹、芦田伸介、大坂志郎、二本柳寛、内田良平ら)が出ないのが寂しいのであります。全盛期には毎回同じ顔触れで「マンネリ」だと云ひながら、出ないと文句を云ふのは眞に勝手なんですけどね。

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