カテゴリ:  暴れん坊シリーズ (1/1) | 源氏川苦心の銀幕愉悦境
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  暴れん坊シリーズの記事 (1/1)

銀座の次郎長 天下の一大事

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#00432「銀座の次郎長 天下の一大事」
銀座が富士山麓に移転?

製作国:日本
製作会社:日活
監督:井田探
出演:小林旭/松原智恵子/市川好郎/井上昭文/畠山みどり
公開:1963年9月29日


 アキラの暴れん坊シリーズ(銀座の次郎長シリーズ)、第五作目にして最終作。天下の一大事です。完全に一心太助と彦左ですな。前作に引き続き井田探が演出担当、松浦健郎の原作を中西隆三、雪室俊一、銀座三十五の三名が脚色してゐます。ところで銀座三十五つて誰ですかね。

 映画は銀座の夏祭りのシーンから始まります。天下の銀座は大賑はひ、流石に日本一の商店街であります。ところがこの銀座に富士山麓移転の計画があるらしい......つてどういふ事ですかね。移転したら銀座ではないと存じますが。
 或る日次郎(小林旭)のカレー店に、良夫(市川好郎)といふ少年が無銭飲食で捕まります。良夫は父を探してゐるさうで、所持してゐた写真から、質屋の渋七(坊屋三郎)が父親であることが判明し、実父の元へ引き取られます。

 続いて今度は次郎の兄と名乗る太郎(井上昭文)が登場します。如何にも胡散臭い感じで、次郎は信用してゐませんが、とりあへず家に置くことに。実は彼はワルの手先で、例の富士山麓へ移転する話を吹き込みます。これに騙される次郎の父・長五郎(中村是好)と寿司屋の鉄夫(杉山俊夫)の父・金作(桂小金治)。変らずこの二人はロクでもない事ばかりしてゐまして、クロヒーモ(ジョージ・ルイカー)なる怪しげな外国人と富士山麓の土地を契約します。しかしその土地は質屋の渋七のものでした......

 益益喜劇的な面が強くなつた第五作。全国にある「〇〇銀座」が丸ごと富士山麓に移転するといふ、まるで出鱈目な話を皆が大真面目に考へてをります。ワルどもは高品格、藤村有弘、井上昭文、ジョージ・ルイカーら。藤村有弘は役立たずといふ事で解任されてしまひます。井上昭文はアキラを騙す役目を担つて来たのですが、善側に寝返ります。

 秀子役は松原智恵子に交代。笹森礼子のままで良かつたのに。出番も少なかつた。歌手枠?ゲストには畠山みどり。前作の五月みどりに比べてあまり物語に絡まないのが残念と申せませう。
 一本鎗の先生は小川虎之助が続投。アキラ達の絶体絶命のピンチに、ヘリコプターで登場する派手さであります。但しその戦法は胡椒を振りまき嚔をさせるといふ漫画的なものです。この権力者が味方にゐるお陰で、アキラの反骨精神が中途半端になつてゐると存じます。
 クライマックスのアクションシーンもふざけまくつてゐます。流石のアキラも巻込まれた感じで、いつものキレが感じられません。脚本も演出も末期的症状になつてきましたなあ。


銀座の次郎長

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#00431「銀座の次郎長」
一週間に十日来い

製作国:日本
製作会社:日活
監督:井田探
出演:小林旭/笹森礼子/杉山俊夫/五月みどり/小川虎之助
公開:1963年6月2日


 アキラの暴れん坊シリーズ四作目。タイトルが「銀座の次郎長」。端からこのタイトルで統一すれば良かつたのに、次郎長なのか、暴れん坊なのか、イメエヂが固定しないシリーズとなつてしまひました。
 監督は三人目の井田探。脚本は原作の松浦健郎の他、中西隆三雪室俊一の三名が担当してゐます。雪室俊一さんはアニメ作品の印象が強いけれど、マイトガイ映画にも名を連ねてゐたのですねえ。
 
 銀座の商店街では好景気を背景に、空前の人手不足であります。そこで集団就職の少年少女をスカウトする活動を始めます。しかし担当するのが次郎(小林旭)の父・長五郎(中村是好)と、鉄夫(杉山俊夫)の父・金作(桂小金治)。この二人のおつさんは人は好いのですが、有体に言へば役立たず、出来れば何もしない方が息子たちも安心なのです。

 案の定、せつかく優秀な金の卵を集めたのに、田舎の駅で汽車の時間待ちの間に、少年少女をほつぽりだしにして温泉宿で遊んでしまふ。お陰で優秀な人材をヤクザ連合に攫はれてしまふのです。駅に戻つた長五郎と金作は、このままぢや銀座に帰れないと、怪しげな男の紹介する別口の男女を引率して凱旋します。

 ところが此奴ら、とんでもない不良揃ひ、仕事はロクにせずサボつてばかり、客扱ひは全くなつてゐません。何しろ野呂圭介若水ヤエ子らなのだからしようがないよね。
 ある日次郎のカレーハウス「ジロー」に就職した筈の少年の姉(進千賀子)が訪ねてきて問題が発覚、ニセの就職集団は放り出されました。しかし本物の金の卵たちは何処にゐるのでせうか......?

 といふ訳で、のつけからドタバタ劇で、まるでヴァラエティ番組のコントみたいなノリであります。監督の交代の所為か、作品の雰囲気が少し変つてゐます。ちよつと悪ノリが過ぎるといふか。

 ヒロインの秀子が浅丘ルリ子から笹森礼子に交代。わたくしの好きな女優さんなのだが、ニセの契約書にまんまと騙されるなど、頼りない面も露呈してしまひます。
 バアのマダム・リラ子(小園蓉子)の妹として、五月みどりがゲスト出演。「一週間に十日来い」「おひまなら来てね」を披露。秀子の恋のライヴァルとして登場しました。由利徹が彼女に迫つてゐるところをアキラが撃退、殴られて壁をぶち抜き、女湯まで飛ばされてしまふ。漫画であります。

 ワルも高品格藤村有弘なので、真剣味は無く喜劇そのもの。藤村のニセ外国人は相変らず愉快。トルコ人のケマル・パシャなどと名乗りますが、偶々アキラがトルコ語を知つてゐたといふ都合の良い設定で、あつさりと見破られてしまふのです。従つて盛り上がる筈の乱闘シーンも、ドリフの芝居のやうでした。それでも一人キザを決め込むマイトガイ、流石です。
 
 ところで、銀座のネズミの群れが人間どもに復讐しやうなどと計画してゐましたが、結局何も出来ず、受難の最後を迎へてしまふ。大映の幻の企画「大群獣ネズラ」はこれにインスパイアされたのではあるまいな、と変な事を考へました。まさかね。


夢がいっぱい暴れん坊

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#00430「夢がいっぱい暴れん坊」
ツイストでゴキゲン

製作国:日本
製作会社:日活
監督:松尾昭典
出演:小林旭/浅丘ルリ子/郷鍈治/杉山俊夫/小川虎之助/内田良平
公開:1962年4月1日


 暴れん坊シリーズの第三作目。「夢がいっぱい暴れん坊」。タイトルが内容をそのまま表現してゐます。ポスタアのアキラ・杉山・ルリ子を見るだけで幸せな気分になります。監督は斎藤武市から松尾昭典に交代しました。原作の松浦健郎が脚本も担当してゐます。

 銀座の洋食屋「ジロー」の若旦那・次郎(小林旭)は、「銀座貴族」といふふざけた名前の高級レストランが出店するのに対抗して、何と100円均一のカレーライス専門店に業態変更してしまひます。看板によると「エスビーカレーショップ」らしい。これが大成功で、銀座貴族に大打撃を与へます。銀座貴族の出資者であるアラフラ国のバンコ(井上昭文)なる男は、社長の飛田(内田良平)を詰ります。そこで飛田はヤクザ組織「突風クラブ」の銭村(近藤宏)を頼るが......

 一方突風クラブの若旦那・忠次(郷鍈治)は、銀座の若旦那会への入会を希望しますが、ヤクザはお断りだと次郎に言はれます。忠次は我々ふたりはケネディとフルシチョフ、柏戸と大鵬みたいなものだと意味不明な事を言ふ男。しかし意外と筋を通す立派な男です。父親の万造(若宮忠三郎)ともども、あまりヤクザに向いてゐないと思はれます。この親父は「あなたは大実業家になれるか」なんてビジネス書を読んでゐます。

 サテ次郎の親父は中村是好に交代、寿司屋の若旦那・鉄夫(杉山俊夫)の父親・桂小金治とコンビでろくでもない事をします。銭村の仕組んだ美人局に引掛かり、店の権利書を奪はれる大失態を演じてしまふ。それを知つた次郎・鉄夫そして忠次の若旦那トリオは一計を案じ、銀座貴族で予定されてゐるツイスト大会を利用する事に。一本鎗(小川虎之助)の先生も担ぎ出し、先生にもツイストの練習をさせる次郎でした......

 当時ツイストが流行してゐたのですかね。主題歌も「アキラでツイスト」。ノリノリです。三作目にしてレギュラー陣に変化があります。前述の杉山俊夫、中村是好、桂小金治が新参加。中村と桂は典型的な助兵衛親爺で、息子たちに迷惑ばかりかけてゐます。リラ子は小園蓉子に交代。弟分だつた近藤宏は本来のワルに戻つてしまつた。

 ワルの親玉は内田良平ですが、やはり喜劇的な演技が目立ちます。井上昭文には大笑ひですな。彼の正体は実は〇〇でした。ところで、若旦那会のメムバアの一人に中尾彬を発見しました。セリフも一言あります。
 最後はツイスト大会に紛れて大暴れ。アキラの親不孝声を聞けば、もうどうでも良くなつてきます。ここまで馬鹿馬鹿しい内容ですと、もう突込む気力さへ削がれるのでした。何も考へずに観ませう。考へると腹が立つだけですよ。


でかんしょ風来坊

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#00429「でかんしょ風来坊」
アキラは何をやつても許される

製作国:日本
製作会社:日活
監督:斎藤武市
出演:小林旭/浅丘ルリ子/殿山泰司/近藤宏/北林谷栄/中原早苗
公開:1961年3月19日


 アキラの暴れん坊シリーズ、第二作目であります。でかんしょ風来坊。銀座に深く根を下ろしたアキラがどうして風来坊なのか。流れ者のイメエヂでタイトルを付けたか。いい加減であります。監督は引き続き斎藤武市。原作・脚本は松浦武郎。音楽は小杉太一郎で、渡り鳥も担当した人です。

 サテ冒頭では若いチンピラ風の男が婆さんを誘拐したといふので、ずべ公四人組に吊し上げに遭つてゐます。はふはふの態で逃げ出す男。これが待田京介で、この時代はまだ大物ぢやないのですかね。ずべ公四人組の名前が夫々春子・夏子・秋子・冬子となつてゐて、源氏鶏太以上の好い加減さなのです。
 リーダー格の春子は前回リラ子だつた中原早苗(今回のリラ子は宮城千賀子)。冬子役の女優が「金井克予」となつてゐますが、金井克子さんですかね。映像では似てゐるやうに見えますが。

 ところで銀座の土地や建物を片端から買収せんとする奴らが出現、土方弘(出羽亀三といふこれまたフザケタ名前)や藤村有弘といつた面面が活動してゐますが、更に上の黒幕的存在がゐるらしい。それが実は誘拐されかかつた婆さんのタマ子(北林谷栄)で、しかも政界の実力者・一本鎗(殿山泰司)の昔の恋人だつたらしい。どうして彼女は次々と銀座の土地を買ひ占めるのか......

 アキラにはかつて銀座を舞台にした「銀座旋風児」シリーズがありましたが、此方はよりコメディ色が強く、真面目に観てゐると怒り出す人がゐるのではないかと心配になる程です。昭和30年代の銀座はあんなだつたのかと興味深い。
 次郎長の小林旭を始め、恋人の浅丘ルリ子、弟分の近藤宏、父親の森川信など、前作同様のキャストが活躍します。但し一本鎗の先生は小川虎之助ではなく、この第二作だけ殿山泰司。小川よりも若干上品な感じです。各種資料やポスタアには小川虎之助の名があるので、直前で急遽変更があつたのでせうか。
 この予定調和の世界で心地良く展開される物語。もう一々突込む事はせずに、ニヤニヤしながら見るのが正しい鑑賞法ですかな。見る者をふにやふにやの骨抜きにさせる、幸福な一篇と申せませう。


東京の暴れん坊

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#00428「東京の暴れん坊」
アキラの明朗活劇登場

製作国:日本
製作会社:日活
監督:斎藤武市
出演:小林旭/浅丘ルリ子/小川虎之助/近藤宏/中原早苗
公開:1960年7月29日


 これは小林旭の「暴れん坊」シリーズの第一作。完全にコメディシリーズですね。アキラは銀座のキッチン「ジロウ」の若旦那。おフランスはパリ―仕込みのコックなのです。「銀座の次郎長」と呼ばれ、フルネームは清水次郎。これらの設定だけでもうふざけてゐます。歌もうまく、銭湯で歌ふと、あの「親不孝声」に女性たちはメロメロなのです。

 ヒロインはここでも浅丘ルリ子。しかし「渡り鳥」「流れ者」のやうに、画面の片隅で控へ目にヒーローを慕ふキャラではなくて、「松の湯」といふ銭湯のおきやんな看板娘。当然アキラとは恋仲ですが、お互ひそれを認めません。会へば口喧嘩ばかりで、マシンガンのやうに早口で応酬します。このシリーズのルリ子が一番好いですな。

 そしてアキラの後見人的存在として、政界の大物・一本槍鬼左衛門(小川虎之助)が登場。かつての総理大臣らしい。アキラが問題を解決する際に頼りにします。何かと「天下の一大事だ!」と言つては一本鎗の屋敷に駆け込んできます。かうなると次郎長よりも一心太助と申せませう。

 やくざ(愚連隊?)の近藤宏が、アキラに伸された後、足を洗ひ何とアキラの弟分になります。男も惚れる次郎君。ワルのイメエヂが強い近藤宏ですが、「銀座旋風児」の情報屋とか、「男の紋章」シリーズで高橋英樹を補佐する代貸とか、印象的な役も多いのです。要するに演技の上手い役者であります。そしてアキラの父に森川信、母に田中筆子。森川は「おいちゃん」の原形みたいなキャラクタアです。 
 
 ストオリイは特段記す程の事はない他愛無い騒動もので、前述の濃ゆいキャラクタアで魅せるシャシンと申せませう。監督は渡り鳥の斎藤武市。タイトルバックからコメディである事を宣言してゐます。松浦武郎の原作を「見上げてごらん夜の星を」の石郷岡豪が脚色、底抜けに明るい作品世界を構成してゐます。

 多分玄人からバカにされることを承知で、大衆を喜ばせる事を最優先した制作陣のプロ根性を感じたのであります。もう60年代も後半になると、暴力シーンも鮮血が吹き出し、女優は脱衣するのが当り前になつて、とても家族で愉しめる作品ではなくなつてしまふ事を考へますと、この時代のかかる作品を再評価しても良いのではないでせうか。