カテゴリ:日本映画 さ (1/4) | 源氏川苦心の銀幕愉悦境
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日本映画 さの記事 (1/4)

さいころ無宿

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#1760「さいころ無宿」
若山富三郎が儲け役

製作年:1960年
製作国:日本
製作会社:東映(京都撮影所)
監督:内出好吉
出演:里見浩太郎若山富三郎/水木淳子/藤田佳子/花房錦一/山形勲
公開:1960年5月10日


 里見浩太郎特集、今回は1960年の「さいころ無宿」であります。原作は『伝七捕物帖』の陣出達朗、監督は内出好吉、脚本は大和久守正、音楽は小沢秀夫。主題歌「さいころ無宿」を歌ふのも里見浩太郎。美声を披露します。

 上州国定村、さいころの浅(里見浩太郎)と名乗る旅鴉が、国定忠治親分(山形勲)の子分になりたくて親分に直談判します。しかし忠治は、浅がヤクザに向かず堅気になるべきだと感じ、断るのです。諦められぬ浅は、忠治の身内・日光の円蔵(若山富三郎)を頼らうとします。しかし円蔵は旅に出てゐました。

 旅の目的は、仲間の勝五郎の死因を探る事。地元の有力親分・釈迦の十造(香川良介)によると、賭場でイカサマをした為嬲り殺しにされたと云ひますが、勝五郎はイカサマをするやうな奴ではない。妹のお雪(水木淳子)が残されました。

 浅は道中、ある浪人と出会ひますが、これが実は円蔵である事に気付かず、サイコロ勝負や居合抜きを挑んで悉く負けてしまふ。そのまま高崎へ入ると、兄を亡くしたお雪が、十造の子分共に絡まれてゐる現場に出喰はします。これを撃退しお雪を助ける浅。しかし十造は仕返しにお雪を拉致するのです。

 怒つた浅は十造一家に乗り込みますが、お雪はそこにゐませんでした。この落し前のため、浅は袋叩きにされ、用心棒に止めを刺されやうとしますが、この用心棒が何と円蔵。円蔵は秘かに浅を逃がし、お雪の居所を教へるのです。
 十造を裏切つた円蔵は、一家の女壷振り・銀のお滝(藤田佳子)の元へ。彼女は亡父の借金を返す為に、十造にイカサマをさせられてゐました。勝五郎は彼女のイカサマを見抜いた為に殺されたのが真相でした。お滝は本来ワルではないのです。

 サテ村祭の日、十造一家の花会が開催されてゐます。いつの間にか忠治一家のチンピラ・空っ風の半次(花房錦一)がやつて来て騒いでゐます。賭場では相変らずお銀がイカサマで捲き上げてゐます。すると盆ゴザの下から、浅と半次が出てきて、一転乱闘となるのでした......

 里見浩太郎がサイコロを操る渡世人を演じます。少し自信過剰で向う見ずのお兄いさん。お雪を探して十造一家に乗り込む辺り、思慮に欠ける面があり、欠点も多い人物として描かれるのが却つて人間らしいのです。若山富三郎には敵はず、上には上がある事を痛感します。この若山、里見を喰ふ程の存在感で儲け役。

 忠治親分は山形勲、この役ならワルになりやうがない。ラストは里見と若山のピンチに駆け付けます。半次の花房錦一はどんな役を演じても同じ演技です。ワルのカシラは香川良介、裏切つた若山に対してペナルティは課さないのでせうか。
 女優陣は水木淳子藤田佳子、この二人が意外に良いです。意外といつては失礼ですが。一件落着後、引き上げる忠治一家の後に、里見=水木、若山=藤田のカップルが続くのが微笑ましい。花房錦一だけがミソッカス。上映時間55分の小品ながら、活劇、推理、恋愛など娯楽の要素を詰め込んだ明朗娯楽作品と申せませう。

三匹の悪党

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#1650「三匹の悪党」
片目の一本松、再登場

製作年:1968年
製作国:日本
製作会社:日活
監督:松尾昭典
出演:小林旭高橋英樹/田中邦衛/松尾嘉代/町田祥子/浪花千栄子
公開:1968年10月19日


 1968年公開の「三匹の悪党」であります。三匹ばやりには辟易しますが、まあそれはどうでもいい。監督は松尾昭典、脚本は星川清司、音楽は池田正義

 時代は大正らしい。冒頭では渡世人の半次郎(高橋英樹)と弟分の三郎(田中邦衛)が逃げ廻つてゐます。イカサマ博奕がバレて追はれてゐるやうです。何とか辿り着いた漁師町では、舟留屋文吉(河野弘)と云ふ土地のヤクザがブイブイ言はせてをり、高利貸しまで副業して貧民を苦しめ、借金のカタに娘たちを売り飛ばす阿漕なマネをしてゐました。

 半次郎は芸人の民子(松尾嘉代)を助けた事から、舟留屋から狙はれる羽目に。しかも民子の父は、かつて半次郎を襲ひ逆に殺された人物である事が判明、半次郎は民子からも仇と狙はれます。姿を隠す半次郎と三郎。
 二人は、折よく開催される舟留屋の三代目襲名披露花会会場に潜入、そこで動く大金を強奪します。そのドサクサに何と文吉が何者かに殺されてゐました。

 犯人と疑はれた二人は逃亡途中、半次郎は舟留屋と結託する鳥羽田組に捕まり、三郎は彼を見捨ててカネを持つて逃げました。半次郎が拷問で酷い目にあつてゐる間に、三郎は故郷の芦田村にゐる母・まさ(浪花千栄子)の元へ帰ります。狂喜するまさ。
 監禁されてゐた半次郎を助けのが、我らが片目の一本松(小林旭)。その上で一本松は鳥羽田組の姐御・菊(町田祥子)に、逃げた二人をバラしてやる、報酬は持ち逃げされたカネ全額だと持ち掛けます。
 傷だらけの半次郎は三郎の家まで辿り着き、自分を売つた三郎を殺さうとします。其処へ現れたのが、一本松と民子。更に菊も近くの温泉宿に来てゐて、舟留屋と鳥羽田組も迫つてゐました......

 同じ松尾昭典監督による「遊侠三国志 鉄火の花道」の片目の一本松が、再び登場しました。女好きでカネに目が無い、飄々としながらも腕は滅法強いと云ふ設定。松尾監督はこのキャラが気に入つたやうで、後の「代紋 地獄の盃」(主演は高橋英樹)でもゲスト出演させてゐます。往年よりも少しふつくらしたアキラが、年齢相応にふてぶてしく好演しました。

 三匹の残る二人は高橋英樹と田中邦衛。前半はこの二人が主演かと見紛う程出番が多い。三人が組んで何かでつかい事をしでかす話ではないので、それを期待すると裏切られます。ただ、クライマックスでは三人でワル共を斬りまくるシーンで見せてゐます。

 純情枠ヒロインは松尾嘉代さん。もうこの人の顔も見ないですね。正当防衛ながら仇の高橋を恨みに思つてゐますが、いつの間にか終盤では惹かれ合ふ仲になつてゐるのが良く分かりません。何かきつかけとなる象徴的な出来事でもあればいいんですけどね。
 一方悪女ヒロインが町田祥子と云ふのが珍しい。姐御だから鉄火肌なのは当然ですが、その野心も半端なく、すべてを裏で牛耳つてゐました。でもアキラに看破されたらもうお終ひです。

 無国籍アクションで鳴らした松尾監督だけあつて、娯楽作の見せ方を熟知した演出は買ひますが、残念なのはワル側が駒不足であります。近藤宏木浦佑三河野弘黒田剛柳瀬志郎らは飽くまでもボスの手下として情けなく動くのが似合つてゐます。そしてラストで対決するのが深江章喜。この人も第二、第三の男として光る人。

 もうこの時代になると、日活特有のワル(金子信雄、安部徹、芦田伸介、大坂志郎、二本柳寛、内田良平ら)が出ないのが寂しいのであります。全盛期には毎回同じ顔触れで「マンネリ」だと云ひながら、出ないと文句を云ふのは眞に勝手なんですけどね。

侍(1965)

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#1575「侍(1965)」
雪の桜田門を血で染める

製作年:1964年
製作国:日本
製作会社:東宝=三船プロダクション
監督:岡本喜八
出演:三船敏郎/新珠三千代/小林桂樹/伊藤雄之助/東野英治郎/松本幸四郎
公開:1965年1月3日


 サテ次なる岡本喜八作品は、1965年公開の「侍」。原作は郡司次郎正侍ニッポン」で、過去に様様なタイトルで映画化されてゐますが、今のところ本作が「最新作」であります。脚本は橋本忍、音楽は佐藤勝と盤石です。

 安政七年二月、星野監物(伊藤雄之助)を首領とする水戸藩士三十二名は、大老井伊直弼(松本幸四郎)の暗殺を計画してゐます。しかし連日桜田門で待ち受けるも、井伊は姿を現しません。コレは水戸藩士の中に井伊側と通じるスパイがゐると睨んだ監物と右腕の増位惣兵衛(平田昭彦=卑しさ満開)は、尾州浪人の新納鶴千代(三船敏郎)と上州浪人の栗原栄之助(小林桂樹)が怪しいと秘かに調査します。

 鶴千代は父親が誰かもはつきりしない素性の怪しい浪人で、剣術の腕は抜群ながら、生活は困窮を極めて荒れてゐます。名を上げて仕官を目指します。一方、栗原は経済的にも恵まれ、学問・武芸に優れて妻子もある一廉の人物。井伊の圧政に義憤を感じ、暗殺隊に参加してゐます。この好対照の二人は、友情で結ばれてゐます。

 或る日、水戸藩士のメムバアが、栗原の妻・みつ(八千草薫)が井伊側の重臣・松平左兵督(市川中車)と通じてゐる事を知り、これを受けて監物はスパイは栗原と断定します。剣術に優れる栗原を討てる唯一の人物と云ふ事で、鶴千代に栗原を斬るやうに命じます。悩む鶴千代でしたが、仕官への道が閉ざされる事を恐れ、遂に栗原を斬る!

 ところが直後、真の裏切者は増位惣兵衛である事が判明、増位は監物に直ちに処刑されます。栗原は無実でした。ここまで来たら後戻りは出来ぬと、鶴千代は井伊直弼暗殺に集中します。そして決行日は、万延元年三月三日、桃の節句と決りました。しかし、その井伊直弼その人こそ、鶴千代の実父であつたのです......

 桜田門外の変を題材にした、岡本喜八監督初の時代劇であります。新納鶴千代の苦悩の半生を描き、余すところなし。井伊直弼を父に持ちながら、妾腹の子故その出自は隠され、母の杉村春子と養父の東野英治郎もひた隠しにしてきました。そのせいで鶴千代は恋仲となつた菊姫(新珠三千代)と引き裂かれます。菊姫の父・志村喬もここでは俗物として描かれてゐます。

 自暴自棄となつた鶴千代の前に現れたのが、菊姫と瓜二つのお菊。勿論新珠三千代の二役。新珠のお菊としての想ひがイマイチ伝はらないのは何故でせう。余りに菊姫と似てゐるので、東野英治郎も吃驚。彼女に鶴千代の秘密を明かしてしまふのです。鶴千代が実の父と知らず、井伊を討たんとする事を悟つた東野の苦悩。名優が名演を魅せます。

 名優といへば、ここでは伊藤雄之助に止めを刺すでせうな。目的の為には小林桂樹の死も「まあ、しやあない」程度の反応で、狡猾さと胡散臭さを兼ね備へてゐます。肝心の三船ですけど、松本幸四郎(初代白鸚)の息子としては可也トウが立つてゐるのでは。本人の所為ではないけれど、あの風貌ではどうしても桑畑三十郎と被つてしまひます。ここは仲代達矢さんが適役だと存じます。
 わたくしの好きな田村奈巳さんが、出番は少ないながら良い役です。相模屋の従業員でせうか。記録係兼ナレーションの江原達怡とだけ絡みます。討入時に江原が殺された瞬間、悲鳴を上げるのが印象的。

 演技陣の充実に加へ、クライマックスの討入場面が良い。桜田門外の巨大なセットが秀逸であります。雪の中、入り乱れての惨劇は、決して三船をヒーローにはせず、不格好で血みどろになつて争ふ集団を描きます。これも東映集団時代劇の影響でせうか。「馬鹿者め、これで日本から侍がゐなくなる」と叫ぶ松本幸四郎の台詞が本作を象徴してゐます。岡本喜八監督としては、ユウモワを封印し諧謔調も皆無の、骨太の本格時代劇となりました。

放浪のうた

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#1541「放浪のうた」
重厚なるムードアクション

製作年:1966年
製作国:日本
製作会社:日活
監督:野村孝
出演:小林旭/広瀬みさ/御木本伸介/細川ちか子
公開:1966年6月15日


 拙ブログで間歇的にやつてくる、マイトガイこと小林旭の特集であります。1966年、野村孝監督作品「放浪のうた」。「放浪」は「さすらい」と読ませるやうです。脚本は山崎巌中野顕彰野村孝、撮影は姫田真佐久、音楽は伊部晴美

 冒頭では、ヤクザの仁義を果す為に男を刺しに行く速見志郎(小林旭)の姿。恋人の杉子(広瀬みさ)が必死に止めるも、速見は雨の中、ドスを持つて相手に突進する......

 それで三年間のムショ勤めを終へた速見ですが、杉子は行方不明となつてゐました。彼女はピアニストなので、ピアノの生演奏をする店を次から次へと探しますが手掛かりはありません。

 速見はなりゆきで、バアの女社長兵頭(細川ちか子)と賭博の勝負する事になり、速見は負けて彼女の配下となります。最初の仕事は、大島の柏木牧場の乗取り。借金で苦しんでゐる柏木(御木本伸介)に、カネが返せなければ牧場を明け渡すやうに通告しますが、牧場には杉子が働いてをり、近々柏木と結婚すると云ふ。何とか牧場を助けたいと考へる速見でした。

 柏木は借金返済の為、ミハラホープと云ふ馬を売却する心算でしたが、ミハラホープは破傷風にかかつてしまふ。早速血清を島に空輸する手配をするのですが、兵頭の秘書で右腕の郷田(深江章喜)が妨害をします。これを機に兵頭一味と対峙する事になる速見、血清を守りミハラホープは復調しました。

 兵頭が柏木を恨む理由は、彼女の一人娘が嘗て自殺をしたのですが、その理由は柏木と交際があり捨てられたと云ふのです。しかしこれは郷田が兵頭に吹き込んだデマで、実際は野心家郷田自身が原因だつたのです......

 1966年なのに白黒映画です。しかし本作のムードには合致してゐます。アキラはスーパーヒーローではなく、再会した元恋人・広瀬みさとの関係に懊悩する心の弱さを隠しません。

 ストオリイそのものは従来の日活無国籍アクションと大差ないかも知れませんが、繰り返される主題歌「放浪のうた」の哀愁メロディや、姫田真佐久による、常に淡い霧がかかつてゐるやうな映像などが引き締めてゐると存じます。

 さらに細川ちか子の人物造形が完全なワルではなく、実は悲哀に満ちた過去を持つところが特徴かと。その分深江章喜の極悪ぶりが際立ちます。細川を車椅子ごと階段から突き落とすと云ふ殺害方法もショッキングであります。

 ヒロイン広瀬みさも好演。御木本伸介の人間性に好意を抱きながらも、アキラを忘れられない揺れる心を表現してゐます。御木本も二人の関係を知つてしまつたので、今後二人は蟠りなく夫婦生活を送れるでせうか。余計なお世話ですが。
 何故かマイトガイ映画としては余り語られぬ作品ではありますが、個人的な意見としては、野村孝監督の代表作の一つに勘定して良いかと存じます。
 

三匹の野良犬

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#1466「三匹の野良犬」
アキラ&ジョー&ヒデ坊

製作年:1965年
製作国:日本
製作会社:日活
監督:牛原陽一
出演:小林旭宍戸錠和田浩治/浜川智子/弓恵子/郷鍈治
公開:1965年9月4日


 濡れ衣により死刑判決を受けた岡本隆(小林旭)は、護送中の列車から飛び降りて逃走します。護衛の刑事(多々良純長弘)は間抜け面を晒してしまふ。岡本はアプレ青年・英次(和田浩治)のクルマに忍び込み、非常線を突破しながら東京へ戻りました。

 岡本は嘗て岡本組に属するヤクザで、権藤(高品格)、白坂(小高雄二)、三上(深江章喜)らと計四人で金庫破りをし、時価一億円のダイヤを強奪しました。しかし警備員に気付かれて、権藤は警備員を射殺してしまふ。権藤は白坂と三上を抱き込み、岡本に殺人の罪をなすりつけたのです。

 復讐の為、岡本は片桐組を訪ねます。しかし既に組長片桐は殺されてゐて、そこには「分別の秀」こと神山秀夫(宍戸錠)なる金庫破りが潜んでゐました。コイツが片桐を殺したのかと思はれましたが、どうやら単に金庫を狙つて侵入しただけのやうです。さらに英次も現場に飛び込んできて、三人は一触即発となりましたが、一億円のダイヤを取り戻す方が先決だと意見が一致し、協力し合ふ事になりました......

 と云ふ訳で、1965年の「三匹の野良犬」であります。河野典生の原作はもつとバイオレンスです。監督は牛原陽一、脚本は山崎巌、音楽は小杉太一郎、 アキラ本人が歌ふ主題歌は「行こうぜここが別れ道」とクレジットされてゐますが、実際は「男の旅路」のやうです。永井江利子山下洋治とムーディ・スターズによる挿入歌「アリューシャン小唄」も登場。わたくしは三沢あけみさんの歌唱しか知りませんでしたが、他にもこまどり姉妹や久美悦子さんなどがレコード化してゐるみたいです。どうでもいいが。

 1965年にもなると、ダイヤモンドラインも崩れてきて、アキラとジョーが平気で共演してゐます。バディものにしないで、ヒデ坊こと和田浩治を加へてトリオとしました。ただこの三人、余り息が合つてゐるやうには見えず、結局マイトガイを引き立てる為に顔を揃へた感じ。全盛期よりふつくらしたアキラですが、軽い身のこなしは健在です。冒頭の走行中の列車から脱出するシーンは結構危険な撮影と存じます。

 女優陣が弱く、ヒロイン格が浜川智子で、悪女枠が弓恵子。浜川は後に「プレイガール」のレギュラーとなる「浜かおる」ですね。本作では印象が薄い。弓恵子はアキラの元恋人で、今はワルに走つた設定。小高雄二の情婦となつてゐます。再会したアキラに「しかたがなかつたのよ!」と言ひ訳しますが、余り同情できるキャラではありません。

 ワルは高品格を中心に、小高雄二、深江章喜、富田仲次郎らが表で活動し、裏で存在感を示したのが郷鍈治でした。「頬に傷のある男」として、その登場シーンは勿体ぶつてゐます。何分荒唐無稽な物語なのでシアリアスにはなりにくいが、かと言つてユウモワも少なく、映画のトーンが掴みにくいのでした。折角の宍戸錠も渡り鳥シリーズみたいな諧謔調は影を潜めてゐて残念。
 それでも、アキラはどんな映画でも一人超然とマイトガイを演じ続けるのだから、大したスタアでありますね。