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- 2024/09/25 : 日本仁侠伝 花の渡世人 [日本映画 に]
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#1737「日本仁侠伝 花の渡世人」
ヒデキ最盛期の一本
製作年:1966年
製作国:日本
製作会社:日活
監督:野口晴康
出演:高橋英樹/和泉雅子/川地民夫/山内賢/佐々木孝丸
公開:1966年6月15日
日本仁侠伝シリーズの第二弾、「日本仁侠伝 花の渡世人」であります。監督は野口晴康、脚本は甲斐久尊、音楽は鏑木創。主題歌「花の渡世人」と挿入歌「おとめ流し」を歌ふのは、姫之宮ゆり。流しの歌手として出演もしてゐます。タイトルバックは燃えさかる炎。
明治末期。火消「め組」の頭・文二郎(佐々木孝丸)は、一番纏の直吉(川地民夫)を娘のお初(和泉雅子)と所帯を持たせて跡目を継がせやうとしてゐます。しかしお初は若い纏の清二(高橋英樹)に惚れてゐます。清二もお初を愛してゐますが、その思ひは封印して直吉を立てます。
め組が請負つてゐる建築工事を、悪徳ヤクザの松木組(組長は内田朝雄)が何かと邪魔をします。その妨害はエスカレートし、怪我人も出る始末。皆の反対を押して、文二郎が自ら松木組に申し入れに行くことに。頭に万一のことがあつてはいけないと、清二は先回りして松木組に殴り込み、強引に話をつけてしまふ。この行動が問題となり、清二は破門、旅に出る事になりました。
三年の間、清二は渡世人として修行の日々、しかし再びお初に会ひたい思ひから、め組に帰つてきました。お初は喜び、文二郎も破門がなかつたかのやうに歓迎します。しかしめ組は猖獗を極める松木組の煽りで、すつかり零落し文二郎も病床にあります。更に肝心の直吉が裏切り、松木の盃を受け幹部に収つてゐたのです......
シリーズの第二作ですが、前作とはストオリイの関連はなく、主人公の名前も違ひます。ヒデキは父が流行り病で死に、孤児となつたところを佐々木孝丸に引き取られ一人前になりました。ここでは佐々木は立派な人格者。英樹は男も惚れる男振り、腕も経つ仁義にも厚い、少しカッコ良すぎるんぢやないかと思ふくらゐです。
一方川地民夫は父親が佐々木の身代りとなつて死んだらしいので、佐々木が自分の後継ぎとして育てました。佐々木は和泉と一緒にさせたいが、川地自身は和泉の本心(高橋に惚れてゐる)に気付いてゐるので、あまり積極的な態度を見せません。裏切者として佐々木からは恨まれますが、高橋が信じたやうに、これには事情がありました。内田朝雄が借金のカタとして和泉雅子を要求したため、彼女を救ふ為に、心ならずも内田側に付いたのでした。
和泉雅子は相変らず可憐ですが、あからさまな「清二💛」の態度は少し困りますね。これでは川地の立場がありません。川地が戻つてから、佐々木は矢張り二人を一緒にさせたいやうだが、和泉は去る高橋に「待つてます」と告げるので、うまくいかないでせう。尚キネ旬の「あらすじ」によると「(清二は)お初にそっくりな遊女に会ったことから、お初恋しさに清二は再びめ組に帰ってきた。」と云ふくだりがありますが、実際の映像にはそのやうなシーンはないみたいです。
その他、山内賢は出番は少ないが、孤児の高橋が改めて家族愛に憧れる存在として登場。妹が西尾三枝子さん。ワルのカシラは内田朝雄、用心棒が木浦佑三、子分も藤岡重慶なので頼りない。別口のワルに弘松三郎、河野弘、無気味な刺客に田村保などが出ますが、我らが英樹の敵ではありませんでした。
クライマックスの大立ち回りも含め、兎に角ヒデキをカッコよく描く為の映画と申せませう。ロウソクを活かした撮影が印象的で、まるで怪談を語るかのやうなアングルもあります。いろは四十八組が一斉に大挙して助つ人として現れる場面は中中の高揚感。
東映任侠のやうに、主人公が耐へに耐へた挙句に(その間に仲間が次々と死ぬ)、最後に漸く怒りを爆発させる、といふものではなく、本作のヒデキはその度一々行動を起こし大暴れしてくれるので、観客もストレスが溜まらないので良いです。
前作以上の出来だと思ふのですが、不入りだつたのかシリーズはこれで打ち切り。まあ、似たやうな単独作品が多いので別に好いんですけどね。
2024/09/25 (水) [日本映画 に]
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