
独占から競争への転換を目指す電力制度改革が前進しそうだ。経済産業省の有識者会議「電力システム改革専門委員会」(委員長・伊藤元重東大教授)がまとめた報告書で、電力小売りの全面自由化や大手電力会社の発電部門と送配電部門を分社化する「発送電分離」の実施時期が明示された。大手電力の反対は根強いが、後戻りすることなく、利用者へのサービス向上につなげる具体的な制度設計が、今後の課題になる。
改革は3段階で進める。まず2015年をめどに、大手電力の営業エリアを超えて電力需給を調整する機能を持つ「広域系統運用機関」を設立する。電力が余っている地域から不足している地域に送配電するよう電力会社間の調整を図るほか、全国的な送配電網の整備計画を作る。自由化の進展に伴い電力不足などが生じないようにするためだ。
16年には、これまで大手が独占してきた一般家庭やコンビニなどへの電力小売りを自由化する。一般家庭でも、他地域の大手電力や、既に法人向けに参入している「新電力」などから、自由に電力会社を選べるようになる。
これによって新規参入が進み、大手間での競争も本格化すれば、利用者への多様なサービスの提供や合理化努力による電気料金の抑制などが期待できる。
ただし、家庭向け料金に関しては当面、発電に必要なコストを積み上げる「総括原価方式」を維持する。新規参入が進まない段階で料金規制をなくすと、「売り手市場」になり、かえって料金値上げを招きかねないからだ。値下げに向けた競争環境が整ったと判断した時点で、料金規制も撤廃する。