とんでもない「同意」 | 長谷川たかこのパリのふつうの生活
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とんでもない「同意」

文学少女ヴァネッサが作家ガブリエル・マツネフに初めて会ったのは、母親が“文学友達”を夕食に招いたときだ。
リベルタンとして知られる彼の淫乱な話を、お客たちは面白がって聞いている。
でも50歳のマツネフの視線は、執拗に13歳のヴァネッサを追っていた。

間もなくヴァネッサはマツネフから手紙を受け取るようになる。
「あの晩から、あなたのことが頭から離れない」
「あなたのような人に出会ったのは初めてだ」
詩的な言葉で綴られた手紙を読むうち、ヴァネッサは「わたしは大作家に選ばれた」「わたしは特別なんだ」と思うようになる。
新しい獲物を見つけたマツネフの罠に、一直線に進んでいくヴァネッサ。
母親の忠告に耳も貸さず、マツネフの仕事場兼アパートに行く。
「わたしが初めての男で君は幸せだ」

映画『Le consentement /同意』

“類まれな愛”と彼が呼ぶのは、彼の小児性愛を満足させる服従なのだ。

ガブリエル・マツネフの犠牲者のひとり、ヴァネッサ・スプリンゴラがその体験を暴露した小説『同意』(2020年、体験から約30年後)を、映画化。タイトルも同じ『Le Consentement/同意』

映画『Le consentement /同意』

3枚目の役が多いジャン=ポール・ルーヴが大変身の名演技。

映画『Le consentement /同意』

こちらは本物のマツネフとヴァネッサ

GMatzneff-VSpringora.jpg
photo: revuedesdeuxmondes.fr

当然、観て楽しい映画ではないけど、驚くのは時代背景。
今ならすぐペドフィリア変態男として社会的に葬られるところを、文学、芸術という名目で何をしてもいい、という風潮があった。
それも中世の話じゃなくて、わずか35年~40年前のことだ。

元映画プロデューサー、ワインスタインにしろジャニー喜多川にしろ、権力があり、イヤと言ったら自分の将来はどうなるか、と被害者はイヤと言えない、それを加害者が利用しているのがあくどい。
このマツネフはそれほど権力はないので、手紙を何通も書いて褒め上げた。だから形の上では「合意」。それも非常にあくどい。
映画の途中、ヴァネッサに「目を覚ませ!」「言いなりになっちゃダメ!」と怒鳴りたくなった。

Le Consentement
ヴァネッサ・フィロ監督作品
主演:ジャン=ポール・ルーヴ、キム・ヒジュラン、レテシア・カスタ
1時間58分
フランスで公開中

インスタTakako_wakameもご覧ください。

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コメント
いつもブログを参考に映画を観ています。
ジャニーズペドの問題ですが、子供の親たちも知っていても「芸能界のスターになり巨万の富を得るためには多少のことは我慢しなさい」と言い聞かせていたようです。そして子供たちも成人してもそういうものだと思い込んでいたのですね。ある意味「同意」ですよね-_-
Re: べる様
子供(被害者)たちはずっとその傷を引きずっているのに・・・・ひどい親たちですね。

参考にしていただいて嬉しいです。が、この映画は重くて、ここまで見せる必要があるのか?と思う場面もあり、お薦めとは言えません。時代の変化や、ペド親父の手練手管がわかる作品ではありますが。
日本ではかからないのでは、と思います。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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