3月16日の午後、牧場に衝撃が走りました。
リーダーの携帯電話に、スタッフから電話。
「パドックで、死んでます!」
「ええっ?」
それは、10日に生まれた、ロードカナロア牡馬のことでした。
午前中に私が見回った時は、寝てばかりいて・・・。
母馬は、横で静かに草を食べていたので、気にも留めていませんでした。
午後2時半、スタッフが厩舎に入れようと近付くと、寝たまま、死んでいたとのこと。
急いで駆け付けると、パドックの乾草の上に、まるで眠ったままのカナロアくんがいました。
母は先に厩舎へ戻され、大騒ぎ。
触ると、まだ温かいカナロアに、私は動揺しました。
「え?まだ、死んでないんじゃない?仮死状態ってことはないの?」
リーダーに食い付きましたが、獣医さんに電話し、状況を話すと、やはり、現実と認めざるを得ませんでした。
すぐに、診療センターへ。
剖検の結果を待つ間、色々なことがわかりました。
14日に、あんなに元気に駆け回っていたカナロアでしたが、15日には、呼吸が少し荒くなっていたということ。
私は、長女の卒業式等への出席で、一日まったく見ておらず、知りませんでした。
16日正午にも、長女がパドックで見た時は、辛そうに立っていたとのこと。
「なんで、言ってくれなかったのぉ!」と、周りをせめても、もうどうしようもありませんでした。
こちらの気配りで助けられた命だったら・・・、そんな思いがぐるぐる。
けれども、リーダーが診療センターから戻ってきた時、その説明を聞き、少しだけ、気が楽になりました。
剖検の結果、カナロアは、生まれながらの肺の未熟が原因で、亡くなったということ。
母馬とへその緒でつながっている間は、母から酸素をもらって生きていられたのですが、誕生後数時間で、その酸素を使い果たし、様子がおかしくなりました。
それを、私たちが必死で酸素吸入を行ったため、再び全身の血液に酸素が十分満たされ、いったんは、普通の仔馬と同じように元気になった・・・・けれども、結局その酸素を使い果たした結果、息絶えてしまった・・・ということ。
もともと、自分の力では生きられない仔馬だったと、考えるしかありませんでした。
そうなると、知りたいのは原因。
獣医さんたちに聞いても、色々調べても、はっきりしたことはわかりません。
いつも、もどかしさを感じます。
たった1週間の命でした。
一生懸命、関わったつもりだっただけに、余計に悲しく、精神的なショックは、大き過ぎました。
日が経つにつれ、この現実を受け止め、前を向こうと気持ちが切り替わり・・・。
今はただ、次につなげていくことこそが、自分の役目だと考えています。
リーダーの携帯電話に、スタッフから電話。
「パドックで、死んでます!」
「ええっ?」
それは、10日に生まれた、ロードカナロア牡馬のことでした。
午前中に私が見回った時は、寝てばかりいて・・・。
母馬は、横で静かに草を食べていたので、気にも留めていませんでした。
午後2時半、スタッフが厩舎に入れようと近付くと、寝たまま、死んでいたとのこと。
急いで駆け付けると、パドックの乾草の上に、まるで眠ったままのカナロアくんがいました。
母は先に厩舎へ戻され、大騒ぎ。
触ると、まだ温かいカナロアに、私は動揺しました。
「え?まだ、死んでないんじゃない?仮死状態ってことはないの?」
リーダーに食い付きましたが、獣医さんに電話し、状況を話すと、やはり、現実と認めざるを得ませんでした。
すぐに、診療センターへ。
剖検の結果を待つ間、色々なことがわかりました。
14日に、あんなに元気に駆け回っていたカナロアでしたが、15日には、呼吸が少し荒くなっていたということ。
私は、長女の卒業式等への出席で、一日まったく見ておらず、知りませんでした。
16日正午にも、長女がパドックで見た時は、辛そうに立っていたとのこと。
「なんで、言ってくれなかったのぉ!」と、周りをせめても、もうどうしようもありませんでした。
こちらの気配りで助けられた命だったら・・・、そんな思いがぐるぐる。
けれども、リーダーが診療センターから戻ってきた時、その説明を聞き、少しだけ、気が楽になりました。
剖検の結果、カナロアは、生まれながらの肺の未熟が原因で、亡くなったということ。
母馬とへその緒でつながっている間は、母から酸素をもらって生きていられたのですが、誕生後数時間で、その酸素を使い果たし、様子がおかしくなりました。
それを、私たちが必死で酸素吸入を行ったため、再び全身の血液に酸素が十分満たされ、いったんは、普通の仔馬と同じように元気になった・・・・けれども、結局その酸素を使い果たした結果、息絶えてしまった・・・ということ。
もともと、自分の力では生きられない仔馬だったと、考えるしかありませんでした。
そうなると、知りたいのは原因。
獣医さんたちに聞いても、色々調べても、はっきりしたことはわかりません。
いつも、もどかしさを感じます。
たった1週間の命でした。
一生懸命、関わったつもりだっただけに、余計に悲しく、精神的なショックは、大き過ぎました。
日が経つにつれ、この現実を受け止め、前を向こうと気持ちが切り替わり・・・。
今はただ、次につなげていくことこそが、自分の役目だと考えています。
関連タグ : ロードカナロア,
14日の朝、放牧地をひとりで使っていた繁殖牝馬が無事出産。
その空いたスペースに、パドックにいたロードカナロア牝馬を放しました。
親子でその場所に放れるのは初めてなので、緊張気味の母セレーネ。
外敵はいないかとピリピリして、そこらじゅう、走り回っていました。
初仔なので、仕方ありません。
こちらは、別の放牧地のゴールドアリュール牡馬とその母。
3産目の今年は、実に穏やかに子育てをしています。
出産間近のシルエットは、隣の様子をじっと観察。
そして、カナロアちゃんが使っていたパドックに、今度はロードカナロア牡馬が放れました。
早速、冒険を始めるカナロアくん。
出産から3日間、厩舎暮らしだった母は、「やっと出られた!」という顔で、ゴロンゴロン。
ゴロを打ち、とても気持ち良さそうでした。
その後も、ハッスル気味の母馬。
パドック中を駆け回り、仔馬を蹴飛ばさんばかりの勢いでしたが・・・・。
落ち着くと、ちゃんと我が仔を気遣っていました。
放牧地では、少し落ち着いたセレーネの姿。
と思ったら、「待ってー!!」
シルエットを発見し、「私の仔に近付かないで!」と、柵越しに、興奮気味。
まるで、昨年のシルエットを見ているようで、苦笑いしてしまいました。
やんちゃなダンカークくん。
休憩する時は、乾草の上で、犬のように寝そべって、「いい気持ち!」
そして、カナロアくんも、だんだんと外の世界に慣れてきた様子。
看護中、みんなで触ったので、穏やかな顔で、近付いてきます。
次第に、元気よく跳ね出し、
積極的に、
ひょいひょい。
母にも、負けじとついていきます。
青空をバックに、ピンと立った耳が勇ましく、「元気になって良かった!」と、改めて感じた、生後4日目の昼でした。
その空いたスペースに、パドックにいたロードカナロア牝馬を放しました。
親子でその場所に放れるのは初めてなので、緊張気味の母セレーネ。
外敵はいないかとピリピリして、そこらじゅう、走り回っていました。
初仔なので、仕方ありません。
こちらは、別の放牧地のゴールドアリュール牡馬とその母。
3産目の今年は、実に穏やかに子育てをしています。
出産間近のシルエットは、隣の様子をじっと観察。
そして、カナロアちゃんが使っていたパドックに、今度はロードカナロア牡馬が放れました。
早速、冒険を始めるカナロアくん。
出産から3日間、厩舎暮らしだった母は、「やっと出られた!」という顔で、ゴロンゴロン。
ゴロを打ち、とても気持ち良さそうでした。
その後も、ハッスル気味の母馬。
パドック中を駆け回り、仔馬を蹴飛ばさんばかりの勢いでしたが・・・・。
落ち着くと、ちゃんと我が仔を気遣っていました。
放牧地では、少し落ち着いたセレーネの姿。
と思ったら、「待ってー!!」
シルエットを発見し、「私の仔に近付かないで!」と、柵越しに、興奮気味。
まるで、昨年のシルエットを見ているようで、苦笑いしてしまいました。
やんちゃなダンカークくん。
休憩する時は、乾草の上で、犬のように寝そべって、「いい気持ち!」
そして、カナロアくんも、だんだんと外の世界に慣れてきた様子。
看護中、みんなで触ったので、穏やかな顔で、近付いてきます。
次第に、元気よく跳ね出し、
積極的に、
ひょいひょい。
母にも、負けじとついていきます。
青空をバックに、ピンと立った耳が勇ましく、「元気になって良かった!」と、改めて感じた、生後4日目の昼でした。
3月10日、午後8時頃、父ロードカナロアの牡馬が誕生しました。
予定日より3日遅れ。
体格の良い男の仔の誕生に、胸をなで下ろします。
ところが・・・・。
「大きいからなかなか立てないだろう」との予想通り、補助なしではなかなか立てず、立っても、うまく母乳を吸えず・・・。
時間だけがどんどん過ぎていくため、日付けが変わる前、とうとう母乳をしぼり、哺乳瓶で与えることになりました。
飲んでいれば、そのうち上手になるだろうと、1時間おきに、立たせて母乳を与えますが、朝方6時頃・・・・。
まるで、気を失ったかのように倒れ込むと、そのまま眠りについてしまいました。
「大丈夫?」
連絡した獣医さんには、とにかく飲ませること・酸素を吸わせること、そして保温の3点を言われます。
低酸素性虚血性脳症という診断。
低酸素・虚血による脳障害で寝てばかりいるのですが、手厚く看護すれば数日以内に改善し、その後は普通に競走馬になれるといいます。
原因は、定かではありません。
十数年前に、同じ病名の仔を看護したことがあり、「それなら」と気を取り直しますが、ぐったりと横たわる仔馬に「本当に、治るの?」と、不安ばかりが募りました。
最初は、乳房が張ってイライラしていた母馬も、我が仔の異常に気付いたらしく、とにかく静かにしています。
「偉いね・・・」
けれども、仔馬は、立つことすら出来なくなってしまいました。
頭だけ起こして、哺乳。
酸素吸入。
点滴と、抗生物質で感染予防。
とにかく、みんなが必死で、反応のない仔馬の肢をさすり、「頑張れ!」と声をかけ、酸素ボンベを買い足しに走りました。
午前中は、寝たままもがいたり、震えたりの症状が見られた仔馬が、徐々に落ち着き始めたのは、日が暮れる頃。
2回目の点滴の後、誕生から、丸一日たった11日の午後8時頃に、ようやく自分で頭を起こすようになりました。
それはまさに、長い眠りから覚めた、というような状況。
「なんとかなるかも!」
真っ暗な闇の中に、一筋の光が射しこんで来たのです。
9時半には、排尿。立たせて、哺乳することにも成功。
そして、午後11時。馬房の横の休憩所で、うとうとしていた私は、ザザッという音で起こされました。
見ると、目の前に、仔馬が立っています。夢ではありませんでした。
自力での起立、成功!
その後は、起立の失敗と成功を繰り返しながら、少しずつ元気を取り戻していったカナロアくん。
哺乳瓶からではなく、母の乳房から直接飲めるように、時間をかけて誘導し、早朝午前4時、それも成功。
スタッフが起きてくる頃には、起立・排尿・授乳と、すべてひとりで出来るようになったのでした。
みんな目を丸くして、ビックリ!
馬房内で跳ね回るようにもなり、まったく普通の仔馬と同じ状態に。
「この24時間は、何だったんだろう・・・・」
目の前で元気にしている仔馬を見ると、狐につままれたような気分。
「それがこの病気なんだ」と説明されても、原因などははっきりせず、疑問が残るものの・・・。
まずは、生き延びてくれたことに、とにかく嬉しい朝となり、「二晩寝てないんだから、寝たら?」と言われても、まったく眠る気などありませんでした。
今朝のカナロアくん。
「1日遅れで、生まれてきたと思えばいいね」
額の十文字が特徴。
長時間、人が手をかけただけあり、人懐こく、寄ってきます。
母馬も、すっかり安心して、飼料を食べたり水を飲んだりしていました。
乳母をめぐる一難去って、また一難。
今年は、何が起こるかわからないぞ・・・と、いう気持ちが、ふつふつとわいてきた朝でした。
予定日より3日遅れ。
体格の良い男の仔の誕生に、胸をなで下ろします。
ところが・・・・。
「大きいからなかなか立てないだろう」との予想通り、補助なしではなかなか立てず、立っても、うまく母乳を吸えず・・・。
時間だけがどんどん過ぎていくため、日付けが変わる前、とうとう母乳をしぼり、哺乳瓶で与えることになりました。
飲んでいれば、そのうち上手になるだろうと、1時間おきに、立たせて母乳を与えますが、朝方6時頃・・・・。
まるで、気を失ったかのように倒れ込むと、そのまま眠りについてしまいました。
「大丈夫?」
連絡した獣医さんには、とにかく飲ませること・酸素を吸わせること、そして保温の3点を言われます。
低酸素性虚血性脳症という診断。
低酸素・虚血による脳障害で寝てばかりいるのですが、手厚く看護すれば数日以内に改善し、その後は普通に競走馬になれるといいます。
原因は、定かではありません。
十数年前に、同じ病名の仔を看護したことがあり、「それなら」と気を取り直しますが、ぐったりと横たわる仔馬に「本当に、治るの?」と、不安ばかりが募りました。
最初は、乳房が張ってイライラしていた母馬も、我が仔の異常に気付いたらしく、とにかく静かにしています。
「偉いね・・・」
けれども、仔馬は、立つことすら出来なくなってしまいました。
頭だけ起こして、哺乳。
酸素吸入。
点滴と、抗生物質で感染予防。
とにかく、みんなが必死で、反応のない仔馬の肢をさすり、「頑張れ!」と声をかけ、酸素ボンベを買い足しに走りました。
午前中は、寝たままもがいたり、震えたりの症状が見られた仔馬が、徐々に落ち着き始めたのは、日が暮れる頃。
2回目の点滴の後、誕生から、丸一日たった11日の午後8時頃に、ようやく自分で頭を起こすようになりました。
それはまさに、長い眠りから覚めた、というような状況。
「なんとかなるかも!」
真っ暗な闇の中に、一筋の光が射しこんで来たのです。
9時半には、排尿。立たせて、哺乳することにも成功。
そして、午後11時。馬房の横の休憩所で、うとうとしていた私は、ザザッという音で起こされました。
見ると、目の前に、仔馬が立っています。夢ではありませんでした。
自力での起立、成功!
その後は、起立の失敗と成功を繰り返しながら、少しずつ元気を取り戻していったカナロアくん。
哺乳瓶からではなく、母の乳房から直接飲めるように、時間をかけて誘導し、早朝午前4時、それも成功。
スタッフが起きてくる頃には、起立・排尿・授乳と、すべてひとりで出来るようになったのでした。
みんな目を丸くして、ビックリ!
馬房内で跳ね回るようにもなり、まったく普通の仔馬と同じ状態に。
「この24時間は、何だったんだろう・・・・」
目の前で元気にしている仔馬を見ると、狐につままれたような気分。
「それがこの病気なんだ」と説明されても、原因などははっきりせず、疑問が残るものの・・・。
まずは、生き延びてくれたことに、とにかく嬉しい朝となり、「二晩寝てないんだから、寝たら?」と言われても、まったく眠る気などありませんでした。
今朝のカナロアくん。
「1日遅れで、生まれてきたと思えばいいね」
額の十文字が特徴。
長時間、人が手をかけただけあり、人懐こく、寄ってきます。
母馬も、すっかり安心して、飼料を食べたり水を飲んだりしていました。
乳母をめぐる一難去って、また一難。
今年は、何が起こるかわからないぞ・・・と、いう気持ちが、ふつふつとわいてきた朝でした。