2022年07月 | Page 1 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
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『世の中にたえて桜のなかりせば』『フェルナンド・ボテロ』『劇場版ラジエーションハウス』『劇場版 Free! the Final Stroke 後編』『大怪獣のあとしまつ』

未レビュー感想五つライトに(と言いながらなかなかライトにできひんなあ~)。

◆『世の中にたえて桜のなかりせば』シネマ・ロサ1

▲JKとじさまに同じ服を着せるのはどこかしら無理がある。

五つ星評価で【★★★主演の姉ちゃんがそんなに好みでない】
宝田明さんの遺作。妙に作り込まれたジャケットがダンディーではあるけど、牙を抜かれた着ぐるみテイストみたいでもある。とっても着せられちゃった感はあるが、宝田明自身がプロデューサーなのでイヤイヤでもなさそう。徳井優が何かやっぱり目を引く妙な役だった。韓国映画『パイプライン』のナ課長みたいな役だけど犯罪とは無関係。関係あったらもっと面白かったかもだ。


◆『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』文化村ル・シネマ1

▲💛。

五つ星評価で【★★絵は分かった】
そーゆー絵だってのは分かった。何故とか、何をもってそれを継続してるのかと言う「謎」の部分に関するもっとも濃い話を寝過ごしてしまった気がする。評伝をインタビューで埋めるドキュメンタリーはプラスαがないと、自分的にはもうもたないのは、映画に対して申し訳ない限りだ。


◆『劇場版ラジエーションハウス』トーホーシネマズ渋谷5

▲集合写真。アリスちゃんM-8号っぽい。

五つ星評価で【★★★こういうのはこういうのでよか】
ドラマの設定一切言わないのは男らしい。まあ見てて類推できるから一見さんだけど問題ない。医師2人に技師8人って、そんなに技師いるのか? って、そこはドラマ作りの基本の部分で説明されてるのかもしれない。積もるドラマは分からんが俺なら広瀬アリスとイチャイチャしたい。肉感的で情深そうでよくね?(情も良いけど身体目当ての方が優先です)。本田翼はいつもの本田翼でお姫様みたいに可愛いし、ちゃんと仕事で悩んでいるのだけど、どこかグッと今一つ踏みこんでこない感じ。それは主役の窪田正孝が必要以上に感情を崩して弱音を見せるような演技をする対極として、ちゃんとしなければいけないのかもしれないけれど、役回り的には損な役回りだ。逆に本田翼がつまらない位置にいるから、広瀬アリスのウェットさが生きるのかもしれない。そんな事いったら理不尽に「不快」でしかない高嶋政宏の立ち位置が一番偉くなってしまうが、あれはもうパック商品みたいな演技だしなあ。こういう集団物だとちょっと劣った弟子系のコメディ・リリーフを据えるが、これが浜野謙太、八嶋智人の二枚看板になってたのは面白かった。どっちもメガネである。放射線技師にはメガネはこの二人だけ。メガネ差別かよ。ちなみにこの二人が師事する放射線医師が浅野和之、彼もメガネである。三人出てくるとほぼ脇にずれていく話になる。ほんとメガネ差別かよ。ちなみに医師でメガネを掛けてるのも彼一人。まあ、リアルにメガネ率あげるとキャラ分かりづらいというのはあるが、なんかメガネ野郎としてはちょっと憤るものがある。
仕事場の中にあまり偉く扱われない天才が一人ってのはまあ普通におもろいし、そこに三角関係ぶちこんだり、命の選択問題ぶちこんだり、警察連れてきたり、強欲な幕の内弁当みたいな映画。ただいろいろ詰まっているがどこか一つに重点が絞れていずフラットなので、こんなのTVでいいじゃんという意見も出やすそうだ。その通り。TVだし。でも、映画としてダメって言うほど今の映画が偉い訳でもない。


◆『劇場版 Free! the Final Stroke 後編』新宿ピカデリー7

▲「ブリーフだ」って間違えると台無しになっちゃう奴。

五つ星評価で【★★★】みんなはるちゃんには甘い。監督お前もだ。まこちゃんの出番少ない。女性客しかいいひん。だ、誰。あの黒い女。はるちゃんに甘いのははるちゃんが主役だからしょうがないか。何はともあれ長い物語がきちんと終わりを迎えた事はめでたい事である。


◆『大怪獣のあとしまつ』新宿ピカデリー1

▲あっ、でも、このネタは好きです。

五つ星評価で【★★オタクとしては「おま、その程度か」としか言えない】
怪獣の死体どうするの? なんて昔から言われていた話だ。結論として、ずっと考えたり、話されていた以上の回答が提示されず、監督の持ち味である「グダグダ」が悪目立ちしてしまった。でも、三木聡監督って今まで作った映画がどれもこんなテイストなんで、監督自身は作品が炎上してしまった事を不思議に思ってると思う。じゃあ、今までのもちゃんと都度都度否定してくれよ、みたいな。問題は公開規模だ。公開規模がでかすぎて内容がキャッチーで話題先行で人が入りすぎた。その客層と映画が合わなかった。大衆は分かりやすい笑いじゃないとあかんのだ。そういう意味では「脚本・監督」を三木聡一人に担当させて、ダメ出しをしなかった東映のプロデューサーが一番の戦犯。映画に携わっていながら、映画を見る目がなかった。
はっきりいって私は三木聡の作風は昔から好きではない。でも、こういう「笑えない事を笑う」みたいなメタな笑いを細々とやっていくのなら、それはそれでいいと思っていた。よく言えば「味のある笑い」、悪く言えば「直接はおかしくない」。これだけで、大衆に挑んではいけない。それでもまだ、テレビはいい。表面上無償だから。劇場用映画はお金を払って見る。満足感が欲しくなる。多くの人にとって、それには不適な映画なのだ。なんか松本人志の映画みたいな。私自身は三木聡よりも怪獣に愛着を持っているので、自分のテリトリーに「こうこうこれは面白いでしょ」って大した考えのないコメディアンが闖入してきてしまった感じは甚だ不快だった。人が好きな物を茶化して笑いにするのなら、圧倒的な何かで捩じ伏せるくらいでないと納得できん。別にそうでなくても許す場合もある。それはそこに「愛」がある場合だ。怪獣への「愛」はなかろう、この映画に。自分は間口が広いから「SEX」があっても許す。それもないよなあ。


【銭】
『世の中にたえて桜のなかりせば』:シネマロサ水曜1100円均一。
『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』:ル・シネマ火曜1200円均一。
『劇場版ラジエーションハウス』:トーホーシネマズ火曜メンバーデー1200円。
『劇場版 Free! the Final Stroke 後編』:松竹メンバーカード+ネット割引1200円。
『大怪獣のあとしまつ』:松竹メンバーカード6ポイントで無料入場。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
世の中にたえて桜のなかりせば@映画.com
フェルナンド・ボテロ 豊満な人生@映画.com
劇場版ラジエーションハウス@映画.com
劇場版 Free! the Final Stroke 後編@映画.com
大怪獣のあとしまつ@映画.com
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です
大怪獣のあとしまつ@銀幕大帝
大怪獣のあとしまつ@徒然なるままに
大怪獣のあとしまつ@SGA屋物語紹介所

『グレイマン』ヒューマントラストシネマ渋谷2

◆『グレイマン』ヒューマントラストシネマ渋谷2

▲ライアン・ゴズリング賢者顔だな。クリス・エヴァンス顔がゴツゴツして何か怖い。

五つ星評価で【★★★★わら】
ツイッターでの最初の感想(↓)

くそおもしれえ。

もう、これしか言えなかった。こんなん配信で見せるのかよ。いや、劇場に足を運んで正解。こんなん『トップガン2』と同規模公開でも遜色ないよ。話ないやろみたいに言う人もいるが、話が大事な映画もあれば、そういうのどうでもいい映画もある。これは後者。まあ、ずっとアクションやってて飽きないのが凄いわ。最初の暗殺シークエンスで2階層下からの狙撃と言うアイデアも魅力的だが、結果、花火射出現場でのアクションに納まるが、その未見性が凄い。興奮する。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズや『イップ・マン』シリーズなんかの「そう見せるとは思わなかった」というスピリッツが受け継がれている。

主人公は不運な超人。ライアン・ゴズリングはいい意味でそこいらの兄ちゃんっぽい。「割り勘」が似合う雰囲気と言おうか。サイコなまでの正義感がない。生きる為に善事でも悪事でもこなすのだが、譲れない一線がある。上手いのが凄腕で強いのだが、多勢に無勢だったり、流れ弾に当たったりでちゃんと機能不能に陥ったりする。これがリアリティーを保っている。
その対比になる悪役はキャップことクリス・エヴァンスが演じるクソ野郎。あまりにクソ野郎で映画見終わってからクリス・エヴァンスだと気が付いた。これは逆に、サイコなまでの正義感を持っている。但し、正義か否かの基準が彼に利をもたらすかどうかだけだ。すげえ胸糞悪いが、彼が胸糞悪いからこそ映画は最高に盛り上がる。ライアン・ゴズリングと逆で、多勢に無勢とか、流れ弾に当たったりとかの不運は一切ない。神に愛されたゲス野郎である。
三人目のアナ・デ・アルマスもグレイマンを生け捕ったり、なかなか無視できない。あの『007/ノータイム・トゥ・ダイ』のあのスパイちゃんか。流石に今回は同じ服じゃなかったが、まあ、厚着は厚着でよろしい。パワーバランス的に無敵のクリス・エヴァンスを倒す為に単体では勝てないライアン・ゴズリングとアナ・デ・アルマスを組ませるというパワーバランスが上手い。ただ、そこに入るインド系の魔の手。彼の参戦で更にパワーバランスが引っ掻き回されるのが上手い。
最終的に『名探偵コナン』かよって都市破壊に進む手前の、ベンチ前後の攻防で、クリス・エヴァンスが「こんなコケにされて黙っていられない」とばかりに全世界を敵に回すように暴走しだしてしまうシーンが愉快でした。


【銭】
テアトルの会員割引+曜日割引で1100円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
グレイマン@映画.com
▼次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
グレイマン@ノラネコの呑んで観るシネマ
グレイマン@徒然なるままに

『きさらぎ駅』シネ・リーブル池袋2

◆『きさらぎ駅』シネ・リーブル池袋2

▲ポスター。

五つ星評価で【★★★★ホラーのどうでもよさが染みる】
『ゴーストブック おばけずかん』で、怖くないホラー映画をなじったので、怖いかどうかはともかく、好きなホラー映画を一つ取りあげてみたい。
ツイッターでの最初の感想(↓)

なんかホラーの楽しさといい加減さを満喫。佐藤江梨子だからきさらぎ駅なのか?

佐藤江梨子と言えば『キューティー・ハニー』。主人公の名前は如月ハニーだ。つまり、きさらぎ駅でハニーが急停車したから急停ハニーみたいな。という訳でもそりゃああるまい。都市伝説の一つで、ある一定の経路を辿ると存在しないきさらぎ駅に辿り着き、そこに到着した人間は神隠しに会い、元の世界に戻れない的な奴。

Aパート、Bパートに分かれ、Aパートはきさらぎ駅から戻った佐藤江梨子の体験談。Bパートはきさらぎ駅に侵入できた垣松祐里がAパートの知識を元に無双する。AパートもBパートも登場人物は加えられた一人を除いて同じ。駅に着いた時点で、前の参加者は駅到着以降の記憶を忘れている。つまり、ゲームクリア状態だ。このゲームっぽい点はちょっと『ゴーストブック おばけずかん』に似てる。ただ、気持ちが違う。『ゴーストブック おばけずかん』はそのゲーム的な性向から何回もリトライできる風な安心感が垣間見え、死への畏怖・真剣度が軽減して見える。『きさらぎ駅』はリセットを観客以外が知らないので、生きる為のあがきみたいな物が強く打ちだされる。と言うか、ゲーム的であるかどうかは関係なく、単にちゃんと恐怖に向きあっているかという事だろう。あと、おそらく予算が100倍くらい違いそうで、物凄く特撮がチープ。でも、好きとしか言いようがない。.見終わった後のガックリ感も今となってはいい思い出です(ガッカリ感ではない)。
ヒバゴンとかツチノコみたいな嘘すれすれのいかがわしい情報からよく一本映画作ったなっていう、とてつもない嘘くささ感が逆に「売り」だと思うな。


【銭】
テアトルの会員割引+曜日割引で1100円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
きさらぎ駅@映画.com

『ゴーストブック おばけずかん』ユナイテッドシネマ豊洲4

◆『ゴーストブック おばけずかん』ユナイテッドシネマ豊洲4

▲「よくぞ集まった。冒険者の諸君」的な1枚。

五つ星評価で【★★★ジャンルに伴うジレンマがある】
子供達の冒険物語としてはとても面白い。よく出来たロール・プレイング・ゲームみたいである。決められた筋立てをゴールを目指して進む。実はこの展開で恐怖は発生しない。題材として「おばけ」を使っているのに毛ほども怖くない。そこが個人的に好きでない理由だ。ここでの「おばけ」は「怪異」だったり「異形」だったりはしない。「でてこい。俺の友達、妖怪××」や「ピカチュウ100万ボルトだ!」などの妖怪ウォッチの妖怪やポケモンと等しい。そこに恐れはない。それは制御できるからだ。そして「おばけ」のビジュアルが可愛い。そこに商売上の戦略を感じてしまう。また、「おばけ」が基本的に人間のことを嫌っていない。それは彼等が人間が扱いやすい駒であるからではないのか。駒であるなら、彼等に独自の自由はない。彼等はルールの奴隷になる。ルールの奴隷になった妖怪と言うのはもう「妖怪」ではなく、「プログラム」にすぎない。だから、ゲームとしてはこの映画は楽しい。でも、そこを越えないし、本当はそこを越えた物であってほしい。ついでに「命がけの試練」がどう考えても命を落としそうにないのも気になる。タイムアップで本当に命を落として、神木隆之介と図鑑坊がニヤっと笑ったらダークでクールだが、そんな事は製作委員会にさせてもらえまい。
私、単に恐怖映画ではトラウマになろうが何だろうが恐れおののかせてほしい。と言う事で、出てくる「怪異」や「異形」を恐ろしいように磨き上げ、とても本で制御など出来ないような存在に仕立て、一度のミッションで重傷者を出し、「怪異」や「異形」も、絶体規範の中で押し付けられたルール故に仕方なく味方をしてくれるような、そういう苦難に満ちた映画であっても良い。それでこそ「怪異」や「異形」も光り輝く存在になるのだと思う。それをジュブナイル的な冒険物語にはみな求めてないだろうから実現しない事も知りつつ。
ガッキー、徐々におばさんっぽくなっているのだけど、可愛い。子供達と比較対象になる存在としての表情の付け方が上手い。
小学生女子もポワンとしてよし。男子三人もそれぞれの色があってよい。あの世代の男女はもっとよそよそしいかとも思うが、それは爺だからそう思う事であって、今は違うのかもしれない。畜生、呪われてしまえ。呪われた美少女にキスをする役目は俺にやらせろ。
ゴーストブックその物のCGや、世界観の中で家が勝手に解体再構成するなどは、とても気持ちいい仕上がりだ。

▲女の子が男の子の分身を自らの股間方向の空間にいざなってるという意味で意味深にいやらしい構図。

それにしても、妖怪ですら、何かの役に立たないと取り扱ってもらえない世の中と言うのは実に世知辛い。


【銭】
ユナイテッドシネマのメンバーズポイント2ポイントと引き換えに1000円で鑑賞。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
ゴーストブック おばけずかん@映画.com

『キャメラを止めるな!』トーホーシネマズシャンテ1

◆『キャメラを止めるな!』トーホーシネマズシャンテ1

▲監督、この角度からだと『ドラゴンボール』のミスター・サタンに似てる。

五つ星評価で【★★まさかまさかの】
あの『カメラを止めるな!』のリメイクなんだから、そら、よほどの能なしが撮らない限り、面白いに決まってる、、、、、、、、、、あかん、アカデミー賞監督能なしやん。オリジナル映画の笑いって、ロープの上を車輪で渡るみたいに繊細だったんだなあ。その辺、かなり、大甘で踏み外してロープでチンコ打ってドタバタしてるみたいな感じなんだけど、ひょっとしてフランス人にはこっちの方が受けたりするのか? 最初の30分、ゾンビドラマで見せる構成はオリジナルのも初見はキツいのだけど、妙に味があって引きこまれる。リメイクはここがかなりキツい。フランス人に分かる繊細な味が日本人には分からなかった可能性もあるが。後半、「あー、だから、こうだったのね」というのも、そんなにピッタリ嵌ってなかった気がする。ひょっとすると「劇伴」を入れるスタッフを役として関与させた為、音による乗りの誘導を上手く出来なかったのかもしれない。あと、後期『TAXi』でも感じたけど、フランス人って案外ウンゲロ好きなのかな。個人的には、そこに頼らざるを得ないセンスのない人ほど「山のようなウン、山のようなゲロ」で、ファンタジーみたいな超ウンゲロにしたがってしまう傾向がある。いや、オリジナルにもウンゲロ描写はあるけど、それをこれ幸いとばかり、「ここよ、ここが笑う所なのよ」という使い方は引く。
プラスアルファ。『キャメラを止めるな!』だが、『キャメロンは止めろ!』


【銭】
東宝ウェンズデーで1200円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
キャメラを止めるな!@映画.com
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キャメラを止めるな!@yukarinの映画鑑賞日記α
▼関連記事。
カメラを止めるな!(オリジナル)@死屍累々映画日記・第二章

『梅切らぬバカ』『TOVE トーベ』『ほんとうのピノッキオ』『ライダーズ・オブ・ジャスティス』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ギンレイホール

ギンレイホール縛りで5本。

◆『梅切らぬバカ』ギンレイホール

▲髪を切られると見せかけて、錬成陣を手で組み、大気から馬を作りだそうとしている塚地武雅。

五つ星評価で【★★★適切だけどもう少し外れてもよい】
ツイッターでの最初の感想(↓)

ちょうどいい具合に意思の疎通を欠く塚地武雅の演技に舌を巻きながら元気バカ徳井優も愉快。真相が表層に表れないのは正しい処世術かもしれないが溜飲は下げたかった。

映画としては、真相を明らかにして、主人公の保身を謀ってやる方が全くもって簡単だし、観客の膨れ上がった義侠心みたいな物とも折り合いが着くのだが、そうすると誰か別の者が犠牲の槍玉に上がってしまう。そういう犠牲の移譲みたいな事を敢えてやらなかったのはとても偉いし、正しいのだが、振りあげた拳の納めどころがない観客は非常に戸惑ってしまった。やはりあれか。真相がバレる。いじめになる。自殺する。自殺者の近親者が馬場に火を付け、焼けた馬の肉を自治会長とかに無理やり食わすとかまでやらないとダメか。

加賀まりこと塚地武雅は盤石。寅さんみたいにこれで何本も作れそうだけど、「恋」みたいな真ん中を貫くシリーズのコアがないので、作れば作るだけ同じ映画になってしまいそう。毎回、お隣さんを変えるか?
徳井優の元気バカ楽しい。
渡辺いっけいってだいたい大丈夫だけど、何か一ついつも欠けている役な感じ。今回もそう。
林家正蔵つーか、こぶ平と、広岡由里子がいる社会が「世間」なんだと思う。あの二人、もしくはどっちかが映画にいると、そこから地平線まで「ざー」っと「普通」が広がっていく感じがする。その観点から言うと、あんな何の変哲もない市街地みたいなところに高島礼子がいるのはおかしいのだけど、あれは馬という異物とキャラを打ち消し合ってるから大丈夫なのだろう。いざとなったら、あの馬に乗ってレスキューでも何でもする。そういうシーンがないだけ。林家正蔵や広岡由里子は馬とまぐわったりしないが、高島礼子なら馬とまぐわってもいい。もちろん映画に必要があるなら。高島礼子には「必然性があるなら馬とまぐわいます」とか大きな声で言ってほしい。


◆『TOVE トーベ』ギンレイホール

▲やすいヤニ蒸かすのかっけー。

五つ星評価で【★★東京ベーコン、いや、違う】
ツイッターでの最初と次の感想(↓)

ムーミン作者の伝記映画。申し訳ないが主演女優の顔が嫌い。目が菜葉菜に似てるのはいいけど口元が市原悦子っぽい。それは怖いだろ。ダンス上手すぎる。職も愛も一番を逃す話は辛い。/映画を作ってる人がトーベ・ヤンソンの業績に対してリスペクトを感じてないと思う。だから、イラっとする。

そりゃあ、トーベ・ヤンソンの人生は本人にとって楽しくなかったかもしれないし、辛かったかもしれないけど、辛い辛いうまく行かない経済で自立しても満たされない愛がない辛いばかりで、観客が彼女を好きになるような要素が薄い。彼女の辛さに対して映画製作者側は突き放した態度を取っていて、何かただ単に芸術的に都合のいい「辛い」を押し付けてるだけなんだと思う。同情してやれよ。そして、観客が彼女と一緒に協調できるように彼女の「辛い」を丁寧に観客に提示してやれよ。「ムーミン」が殊更に画面に出ないのは格調なんだろうか。作品について悩むシーンが多いのにムーミンも、ムーミン以外の画業も正面きって前面に出てこない。ドキュメンタリーじゃないから、そこは演技でという気持ちがあるのかもしれないが、それは私のような浅い観客にとっては分かりづらく優しくない演出である。


◆『ほんとうのピノッキオ』ギンレイホール

▲ほんとうらしいっすよ。

五つ星評価で【★★★ベニーニが追っかけてくる】
ツイッターでの最初の感想(↓)

ダークファンタジーと宣伝で言ってるのだが、寺山修司っぽいアングラが本当。そして又ベニーニなのか。ピノキオ、ゼペットとやって次もう一本作るなら妖精さんだな。ロバトラウマな怖さ。妖精さんが何故あんなに甘いのか分からない。

とりあえず前に作られた皺くちゃベニーニ版『ピノッキオ』が本当じゃなくてよかった。今回は暗く重いピノキオ。別にもっと明るくて短くてもいい。しかし、昔も今もピノキオが人間の子供になりさえすれば幸せでハッピーエンドみたいであるが、貧困は貧困のままだし、騙す大人は周囲に多いし、油断すると、人の子でもロバになる。何一つハッピーではない。それなのに、演出上ハッピーエンドで終わる事が一番の恐怖なのかもしれない。

いや、一番の恐怖はベニーニがまた、出てきた事かな。


◆『ライダーズ・オブ・ジャスティス』ギンレイホール

▲真ん中で立つマッツの立ち方が本当に無駄がなくって軍人みたい。

五つ星評価で【★★★★主筋に無関係の自転車少女にきゅん】
ツイッターでの最初の感想(↓)

流石北欧の至宝マッツ・ミケルセン。彼の従者になる三人の問題を抱える善人もキュート。人生はみな辛い。ラストはかなり甘口だが許したい。自転車を欲しがってた女の子がキュート。主人公の娘がちょっと憎らしげなのはいいキャスティング。

ミケルセンのサイコみたいに厳しい父親が問題を抱える三人の善人と付きあう中で復讐にのめり込みながらも、娘との関係を修復していく、ちょっと千鳥足みたいなフラフラした展開が逆に目新しい。ラスト近くのどんでん返しも見事。データは嘘を付かない。恣意的な物の見方が物事の正しさを狂わせる。日本政府かよ。


◆『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ギンレイホール

▲一生に一度河内のおっちゃんになったら言いたい言葉「ねえちゃん、小振りだけどぷりぷりやないけ」

五つ星評価で【★★あらまあ】
ツイッターでの最初の感想(↓)

パロマちゃんをもう一回見たかったのでギンレイで「ノー・タイム・トウ・ダイ」。アクションはいいけど、それを繋ぐ物語がテンポ悪くて説得力がない。重低音バンバンの007のテーマの編曲はとても良い。

アクションシーンはたいそう素晴らしい。が、後半、敵の基地に行く辺りはもう長いし疲れてるしでアクションにも集中できない。それに007のアクションってアクションの目的が分からずに行き当たりばったりに右往左往している物が多い気がする。映画の中でキャラクターがアクションをこなすのは通常何かしらのミッションをクリアする為である。困難なミッションを身体を張って成功するか失敗するかに観客は目を奪われる。それなのに、007のアクションは何をやればミッション成功なのかが分かりづらい。例えば、パロマちゃん初登場のアクションだが、このミッションは幽閉されている科学者を救いだし、自分達の陣地に連れ込めば成功。なのだが、幽閉されている筈の科学者が幽閉されていず、主人公の敵組織をガンガン壊滅して行く。そこに別陣営が科学者を奪いに来て奪われるグチャグチャもいい所である。その乱戦で、007は最後に美味しい所を浚う。それはミッションのクリアではなく、単に成果を分捕る世渡り上手なのでは? なんか、アクションの質は高いけど、そのアクションを支える感情ラインや観客との親和性みたいなのが今の007では全体的におかしい気がする。主人公は難関に挑む。それはいいけど、ただ勝てばいい訳でなく、過程も必要だし、過程が長すぎても行かん。デリケートやなあ。


【銭】
会員証で入場。『TOVE トーベ』と『ほんとうのピノッキオ』、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』はカップリング。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』はパロマちゃんを見たくて再見した。『梅切らぬバカ』のカップリング『老後の資金がありません!』は2回目そんなに見る気がそそらなくてパス。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
梅切らぬバカ@映画.com
TOVE トーベ@映画.com
ほんとうのピノッキオ@映画.com
ライダーズ・オブ・ジャスティス@映画.com
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ@映画.com
▼次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
ほんとうのピノッキオ@SGA屋物語紹介所
ライダーズ・オブ・ジャスティス@銀幕大帝
ライダーズ・オブ・ジャスティス@ここなつ映画レビュー
▼関連記事。
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(1回目)@死屍累々映画日記・第二章

2022.04~06アニメ覚え書き

◆『まちカドまぞく 2丁目』TBS
評判がいいので見出したら第二シーズンだったが、何となく気付かないふりしてずっと見てた。
闇の女帝・シャドウミストレス優子こと吉田優子がバカなのに健気でかわいい。
ナレーターの「がんばれシャミ子」が何気に優しくてホッコリする。
一番のお気に入りは無自覚にひどい喫茶店の料理人狐リコくんと、おそらく一番常識人である為にひどい目に会わされてるマスター。

◆『ツルネ』MXTV
京アニの『Free』の跡目。恋愛関係には発展しなそうだけど、女子が近くにいる。なのにすぐ男5人でつるんで世界に入ってしまう。ようも弓道なんて答の線引きが難しい物を選んだのが流石京アニ。

◆『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』MXTV
オタクが異世界に飛ばされて、やる気はそんなにないけどとってもいい奴で、パワー無双。正義の心は持っているけど弱者ヒエラルキーのオタクの願望を満たすゆるゆる気持ちいい展開。エロシーンになるとアニメーターが本気出す。3D作画なので、女アニメーターにそうじゃないこうやってみたいにモーション・キャプチャー付けてズコバコやってたら面白いが、みんな大人しいからそんな鬼畜な事はしていまい(ちょっとやっててほしい)。本編よりもOPの大袈裟なヘビメタにすげ正論のシャウト被せるのが泣くほど好き。エンディングもテロップないので歌詞は聞き取れないが「おっおっおっおっおっおっおー」の部分が変で好き。

◆『勇者、辞めます』MXTV
前半のお仕事コメディーみたいなのも嫌いじゃないけど、後半の有能と思ってた主人公がサイコパス寸前に追い詰められていた悲劇性に引かれてしまう。ラストはそうにしかならないよなという常識的な一線に留まった終わり方。安心と同時に残念でもある。

◆『であいもん』MXTV
長いタイトルは「異世界冒険譚 出会いもんすたー」。えーと、嘘。
無事1クール終了。毎回及第点ないい話。ラスト予告止め絵枠、集合カットで「じゃあね」風。この絵に「第二シーズン製作決定」と書きたかったんだろうと邪推。

『日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO』モーク阿佐ヶ谷

◆『日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO』モーク阿佐ヶ谷

▲今の企画だったらスタッフに対話型のロボットを出しちゃいそう。

五つ星評価で【★★あれ、そんなんでもないぞ】
旧TVシリーズのドラマレコードに映像化してないエピソードが三つあるのに目を付けて、それを新しい技術で完全再現した昔と同じ影像を付加して完成品とした、何とも珍しい作品。確か、このパターンはゴジラにも怪獣ナーモンってのがいた筈だ。但し、面白かつたら採用されてたろうから、各エピソードそんなに面白く感じない。災害救助隊なのにレスキューシーン少ないしね。
追加エピソードは「サンダーバード登場」「雪男の恐怖」「大豪邸、襲撃」の三つ。
発進シーンのメカとか見てるの楽しい。
街中のミニチュアなどは円谷の物を見馴れているせいか、ちょっと作りが荒く感じた。壮絶に凄いのは人形の日常生活の背景セットが作り物と思えない緻密さ。流石、ドールハウスとか本気で作る国。スーパーマリオネーションの糸がたまに見えるのも楽しい。豪邸の爆破シーンとかが数カットあるが、破片が大きい。円谷はやっぱ凄いんだなあ。
今回ペネローペとパーカーの出番が多いが、ペネローペが理不尽にパーカーをこき使ってるみたいで心休まらなかった。


【銭】
一般入場料金1200円だが、木曜が劇場サービスデーで1000円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO@映画.com
▼次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO@徒然なるままに
日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO@SGA屋物語紹介所

アニメ『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です(全12回)』MXTV

これ、前期(2022.04~06)のアニメの中で一番好きだった。
主人公は自分がやりこんだというよりレベルアップの為にやらされこんだ乙女ゲー世界にモブとして転生してしまったニート。この世界では王族と上位の貴族以外は男子の地位は極端に低い。主人公が転生したモブも地方貴族だが父親はブスの母親にさんざん虐げられて残念な生活を送っている。いわゆる「詰んでる」人生しか見えない世界設定の中、主人公がゲームの知識を悪用してチートしながら、安らかな人生を目指すオラオラ系物語。
本来のゲームのメインラインは貧乏だが真面目で性格のいいヒロインのオリヴィアが魔法学園に特待生で入学を許され、そこで5人の王族・貴族男子とめくるめく恋をしながら成長する、みたいな話。ヒロインの恋敵が悪役令嬢のアンジェリカだが、オリヴィアのゲーム上での役割を主人公リオンと同じ転生者のモブキャラ女マリエに奪われてしまった為、二人は王族攻略ラインから宙に浮いてしまい、何となくリオンとつるんでる。アニメはマリエが崩したゲームイベントをどうにかリオン達が回復し、ゲームメインイベント(恋愛)に関わらない考え方だったリオンがちょっと考えを改めるところで終わる。

変な言い方になるが、アニメ、絵が汚くて下手で、そこがいい。オリヴィアとアンジェリカなんて髪型が違うだけの美少女アニメの巨乳キャラにしか見えない。なんかたちの悪いアニメとかですぐ脱がされちゃいそうなキャラ。攻略対象の王族も美形を単に記号化しているだけでさっぱり魅力を感じない。つまりみんな役割が宛がわれているだけ。で、そういうキャラなのに恋愛が感じられないくらい絵が下手だと、設定である「クソゲー感」が強まる。主人公もかっこよくないし、エンディングの絵とかひどい。ひどすぎて、逆にそれを褒めたい。本当はどうか分からないが、ちゃんと分かって下手に描いてるんですみたいに思えてくるのは気が利いている。

主人公、憎まれ口を聞くし、性格の悪い行動もとるが、平和主義でどうにか全体の流れを好転させようと四苦八苦してるところに好意が持てる。リアルで人生つまんねーという観客(=俺)の鬱憤をグチグチ文句言いながらも晴らしてくれる。モブだけど最強という設定も良い。

モブのブスキャラが本気でブスなのは病みが深い。

『狐の呉れた赤ん坊』ラピュタ阿佐ヶ谷

◆『狐の呉れた赤ん坊』ラピュタ阿佐ヶ谷
五つ星評価で【★★★父ちゃんっぽいバンツマ】
特集企画「坂東妻三郎 田村高廣 永遠の親子鷹」から一本。
1945年、白黒、85分、初見、丸根賛太郎監督作品。
ツイッターでの最初の感想(↓)

落語の人情話みたい。バンツマの走りのシーンが素晴らしい。原聖士郎が出てて驚いた。

つーか、バンツマはほぼ初。『決闘高田の馬場』とかだけかな。ほぼ覚えてない。そーね、親子だから田村高廣をちょっと戦前的に骨太にした感じ。酒と喧嘩に明け暮れるダメ大人が子供を拾った事からよい父ちゃんになっていく時代劇ホームコメディー。まあとても安定した感じ。ツイッターは誤字してる。「原聖四郎」が本当。顔は分からないが『必殺シリーズ』に出てた大部屋役者。元々は大映の役者らしい。いや、それ以上もそれ以下もない。名前が懐かしかっただけ。映画内ヒロインの位置にいながら最後まで誰と結ばれる事もない橘公子という女の子が可愛い。あと、子供の病気の為に街道を猛スピードで驀進するバンツマを捉えた演出が素晴らしい。
子役が津川雅彦(5歳ってチコちゃんかよ)らしい。ひょえ~。


【銭】
一般入場料金1300円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
狐の呉れた赤ん坊@映画.com
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fjk78dead

Author:fjk78dead
ふじき78
映画を見続けるダメ人間。
年間300ペースを25年くらい続けてる(2017年現在)。
一時期同人マンガ描きとして「藤木ゲロ山ゲロ衛門快治」「ゲロ」と名乗っていた。同人「鋼の百姓群」「銀の鰻(個人サークル)」所属。ミニコミ「ジャッピー」「映画バカ一代」を荒らしていた過去もあり。

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